※試作機でのレビューです。製品版とは仕様が若干異なる可能性があります。
■ いち早く地上デジタルのHD録画に対応
2003年12月1日に地上デジタル放送が開始され、3カ月が過ぎようとしている。現在の小出力の状態では視聴地域が限定されているため、「日常的に視聴している」という人はまだ全国では少数派だろう。しかし、いずれアナログ放送からの切替を迫られていることもあり、単価の高い大型テレビ市場では、すでに地上デジタルチューナ搭載モデルへのシフトが加速している。 そんな中、ハイブリッドレコーダとして国内初の地上デジタルチューナ搭載モデルが2月に登場した。シャープの「DV-HRD2」は、地上アナログチューナに加え、地上/BS/110度CSのデジタルチューナを搭載。地上デジタルおよびBSデジタルのHD放送もそのままの画質で160GBのHDDに記録でき、さらにSDにダウンコンバートした後、DVD-R/RWへ書き出せる。 シャープではすでにBS/110度CSデジタルチューナを搭載した「DV-HDR1」と「DV-HDR10」を発売しており、今回のDV-HRD2はHRD10に地上デジタルを追加したモデルと考えてよいだろう(ただし、HDDはHRD10の180GBから160GBに小容量化している)。 本体は幅430mmのフルサイズAV機器ながら、奥行きは260mmと短い。ラック内など狭い場所への設置も容易だ。その代わり、ACアダプタが別付けとなっている。また、前面パネルなどに一部樹脂パーツを使用しているものの、値段に見合った高級感は確保している。 特徴的なのは、前面中央のイルミネーションパネル。現在のチャンネルやダビングの状態などを表示する領域だが、録画時に赤、再生時に緑、ライブ視聴時に青に発光するのが特徴。シンプルだが、現在の状態が分かりやすく便利だ。まぶしく感じるときは、リモコンでOFFにもできる。
背面にはD4をはじめ、S映像、コンポジットの各出力端子が並ぶ。さらに、地上デジタル、BS/110度CSデジタル、地上アナログのアンテナ入出力や、光デジタル出力、i.LINK、Ethernetなどを装備する。
リモコンは、同社製品に多い先の薄いヘラ状の形状。受信できる放送が多いこともあり、小さなボタンがぎっしりと並べられている。デジタルレコーダはボタンが多くなりがちだが、その中でも最多クラスだ。多用する「戻る」や「終了」ボタンが小さく、押しづらいのが残念。また、編集でよく使うコマ送り/コマ戻しボタンは、スキップボタンと兼用になっている。普段はスキップボタンだが、一時停止中にコマ送り/コマ戻しボタンになるという仕組みだ。 ただし、カーソルキーと決定キーが押しやすく、各ボタンの配置も考えられているので、慣れてしまえば問題なく利用できる。また、カーソル周りの良く使うボタンが蓄光式になっているのもうれしい。30秒スキップとリプレイボタン(15秒戻し)も便利だ。BS/110度CSデジタルのために、テンキー脇に「3桁入力」の専用ボタンを設けるなど、デジタルチューナのメーカーらしい配慮も見られる。
また、操作がわからなくなったら、「スタートメニュー」を開くことでほとんどの機能にアクセスできる。もちろん一部のメニュー内では「録画リストから編集へ」といったメニューの横断も行なえるので、覚えていると作業が早くなる。画面下に常に出るオンラインヘルプも便利だ。 操作で気になったのは、一旦ライブ映像に戻さないと先に進めないケースが多いこと。たとえば、録画番組を再生している途中に、ほかの録画番組を見るため録画リストに戻ろうとすると、「ライブ映像に切り替えてください」とのメッセージが現れる。停止ボタンを押すなど、現在再生中の番組の再生が終えない限り)、録画リストに切り替えられないのだ。HDDモードとDVDモードの切替も同様で、操作を煩雑に感じる場面が多い。
■ ハイビジョンを含む多彩な録画が売り
ハイビジョンとSDの両方を録画できるため、録画システムは複雑だ。 まず、地上/BS/110度デジタル放送の録画モードとして、「HD/SD録画」がある。受信したデータをそのままHDDにストリーム記録するモードで、HD映像や5.1ch音声などなんでも記録できる。EPGを使った録画予約も可能。録画した番組をSDに変換してDVDに書き込んだり、i.LINK経由でD-VHSなどにムーブすることもできる。ただし、プレイリストの作成など、編集機能の一部が制限される。次に、SD記録のみの「VR録画」。アナログ放送はもちろん、デジタル放送でも利用できる。録画品質を「FINE」、「SP」、「LP」、「EP」、「MN(マニュアル)」から選ぶことができ、MNは32段階を選択可能。すべての編集機能を享受できるのも特徴で、DVD-RWへの直接録画にも対応する。 最後に、DVD-R/RWへの「ビデオフォーマット録画」がある。こちらもSD記録のみで、その名の通りビデオフォーマットで記録する。CMカットなどの編集は不可能だ。
さらにややこしいのは、これらの録画モードに、コピーワンス(1回だけ録画可能)と、高速ダビング(無劣化ダビング)がからむこと。 コピーワンスに関しては、HD/SD録画、VR録画で録画、ムーブとも可能。HDD、またはCPRM対応DVD-RWで対応できる。ビデオフォーマット録画の場合、DVD-R、DVD-RWとも録画は行なえない。
高速ダビング設定とは、「ビデオフォーマットのDVDにダビングする際、高速ダビングするか等速ダビングするか」を設定するもの。ただし、フレーム単位での編集が不可能になるなど、VR録画でありながら、ビデオフォーマットに近い性質になる。録画後、VR録画の高速ダビング設定を解除することは可能だが、再び高速ダビング設定を適用することはできない。 録画モードごとの制限を文章にするとややこしいので、表にしてみた。
機能制限のうちで当面問題になるのは、フレーム単位での編集だろう。特にDVD-Rへ高速ダビングを考えているなら、録画予約の時点からあきらめなければならない。 EPGは地上/BS/110度CSのみ取得でき、地上アナログについては利用できない。EPGは文字が大きく、一覧性は今1つ。現状ではSDテレビとつなぐことも考えられるので、低解像度での表示も仕方がないところだが、本機のユーザーの大部分がハイビジョン対応テレビを所有していると思われるので、BDZ-S77のようなEPGの拡大縮小表示があれば面白かったと思う。 EPGのほか、Gコードや日付指定による録画予約が可能。さらに、「かんたん予約」と呼ぶ方法も選択できる。これは、録画したい時刻とチャンネルのグリッドを塗りつぶすと、それがそのまま録画予約になる方式。「何曜日の何時から、何チャンネルで」という情報を元に予約するには、わかりやすく効率の良い方法だ。しかし、15分単位でしか設定できない。
HD録画したトゥルーハイビジョンの地上デジタル映像はさすがに美しい。DVDにダビングするとSDになってしまうが、それでも同じ番組を地上アナログで録画したときに比べ、精細感や階調性が優れている。また、地上デジタルだとSD放送もゴーストがない分、地上アナログ放送より録画品質は格段に良くなる。4月からはコピーワンスによる制約を受けることになるが、ライブラリ派なら、地上デジタルへの移行を積極的に考えたい。 CMカットには2つの手段がある。1つは「シーン消去」で、消去したいシーンを選択し消去するもの。もう1つは番組とCMの切れ目にチャプタを設定し、CMチャプタだけを選択、消去する。前者はDIGA、後者はRDシリーズと同じ趣きだ。チャプタ設定は編集画面だけでなく、再生中の画面でも可能なので、視聴しながらチャプタを打ってしまうのがお勧め。HD録画番組も同様に編集できるのがうれしい(ただしフレーム単位ではない)。
編集機能では珍しく、編集結果を元に戻すアンドゥ機能を搭載している。戻すのは1回だけに限られるが、民生用レコーダでは珍しい。また、DVD-RWのファイナライズ解除やDVD-R/RWからの書き戻し(等速)、ジャストダビングなど、最近のレコーダに備わっている機能はたいてい装備している。 ダビングを実行する時間帯を指定できる「ダビング予約」も便利だ。本機では録画中のダビング動作に対応していないので、ダビングのタイミングがシビアになりがちだ。予約録画を設定していない深夜に設定するなど、お世話になる機能だろう。 なお、上の表にある「スーパーピクチャー」とは、再生時における輪郭強調。ソフト1段階、シャープ3段階で設定できる。「デジタルガンマ」はガンマカーブの設定で、主に暗部階調を3段階に変化させる。画質設定としては、そのほか「3次元Y/C分離回路」、「デジタルノイズリダクション」、「クロマディレイ設定」(輝度信号と色信号のずれを調整)が用意されている。
■ まとめ
現在、ハイビジョンをそのまま録画する場合、選択肢はD-VHS各機種とBDZ-S77しかない。テープメディアのD-VHSはコストに優れるが、利便性が低い、コピーワンス番組のムーブ対応も不安を覚える。また、BDZ-77は地上デジタル放送の録画に来春にもアップデートで対応するが、現在のところ、ハードもメディアも高価だ。 そうなると、HDDだけとはいえ、地上デジタルをハイビジョンで録れるDV-HRD2の存在は大きい。地上デジタルへの環境移行を考えているなら、購入候補に入れるべきだろう。すべての録画機能を理解するまでがややこしいが、慣れてしまえば日常の中でスピーディに操作できる。 なお、3月15日には250GB HDDを搭載した上位モデル「DV-HRD20」が発売される。HRD2の13時間に対し、HRD20ではハイビジョン映像を21時間録れるので、ハイビジョン録画を主体とするならこちらもお勧めだ。
□シャープのホームページ (2004年1月19日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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