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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第145回:日立が繰り出すDVDカム Wooo第2弾「DZ-MV580」
~ 進歩か停滞か、岐路に立つDVD記録カメラ ~


■ 女性に受けた前モデル

 昨年この時期に発売された日立DVDカム「DZ-MV350」と「MV380」は、意外にも、と言っては失礼かもしれないが、20代から30代の若い女性に多く売れたそうである。いや一応30代、無理を承知で40代も「若い」と言っとかないと、筆者としても今後の執筆活動にいろいろ差し障りがあるので、ソコは軽ーくスルーするよーにナ。

 人気の秘密はもちろんDVD記録という目新しさもあるが、ディスクの使い勝手の良さが認知されたことと、サイズがかなり小さくなって、普通のビデオカメラ並みになったことが受けたようだ。

 さてそんなDVDカム、既にCESレポートなどでご存じだと思うが、米国ではソニーの8cmDVD-R/RWに記録するDVDCAMが好調である。それに牽引される形で、日立のDVDカムも、以前よりも4~5倍の売れ行きを示しているという。

 日本よりも先に米国でブレイク気味のDVDカム。この春の新モデル「DZ-MV550/580」は、よりDVDらしさをより強化した製品であると聞く。前モデルから継承された2ラインナップ攻勢で、MV550がノンメガピクセル機、MV580がメガピクセル機だ。

 大いに小型化されて注目を集めた前作から1年、DVDカムはどのように進化したのだろうか。さっそく見てみよう。


■ サイズ、フォルムはほぼ前作どおり

付属のレンズカバー3種

 今回お借りしたのは、メガピクセル機のDZ-MV580(以下MV580)だ。前作では、メガピクセル機とノンメガピクセル機で鏡筒部のサイズが違っており、デザイン的にノンメガピクセル機のすっきり感が際立っていたのだが、今回の2モデルはどちらもまったく同サイズ。若干カラーが違うが、どうせ同サイズならメガピクセル機を選択するケースも多くなるだろう。

 まず見た目の大きな違いは、ビデオカメラとしてはおそらく史上初の、レンズ鏡筒部の着せ替えできるカバーを3種類同梱することだろう。MV580では、クロムメッキ、ダークブルー、ガンメタリックの3つが付属している。

 最初にプレスリリースを見たときは、いやそれはどうよーと思ったものだ。しかし実際に実物を手にとって付け替えてみると、あっあっこれはこれで結構楽しいかも。やってみると意外にイメージが大きく変わるものだ。

デフォルトのクロムメッキはピッカピカ 地味ながらしっかり主張のダークブルー 目立たずシブいガンメタリック

 日立さんとしては、1モデルでも一瞬3つのカラーバリエーションに見えるのでお得、というところもあるだろうが、鏡筒部はカメラ本体から出っ張っていて、もっともキズ付きやすいところでもある。そこが取り替えられて末永く新品気分でいられる点で、ユーザーにとってメリットがあるかもしれない。なお下位モデルMV550付属のカバーはこのカラーではないので、注意して頂きたい。

鏡筒部は大きいがレンズは小さめ

 レンズはフィルタ径37mmだが実測で19.6mmと、鏡筒部の太さの割には小さめ。光学10倍で解放F値1.8。動画の画角は35mm換算でワイド端53.4mm、テレ端534mm。同じく静止画ではワイド端35.4mm、テレ端354mmである。なお手ぶれ補正は電子式だ。

 光学ズーム10倍とワイド端53.4mmは今となってはやや物足りないが、そういう向きには、下位モデルのMV550の方がいいかもしれない。こちらはメガピクセルではないが、光学ズーム18倍、ワイド端40.5mmだ。

 CCDは1/3.8型の102万画素、有効画素数は動画で約40万画素、ワイドで約53万画素、静止画で約96万画素となる。なおMV580では、16:9モードでCCDエリアを横に広げてもまだ左右に余裕があるので、ワイド撮影でも手ぶれ補正アリを可能にしている。

 右サイドのフォルムは、カメラ全体の印象を象徴する部分だが、今回はここにディスクをイメージさせる円形をデザインした。

 だが、あまりディスクにこだわり過ぎてもシツコイように思う。反対側にはディスクを入れるためのドライブ部が丸くドカーンとくっついているわけだし、四角い要素の多いカメラボディに無理矢理円形を持ってきても、全然小さく見えないのではないか。

 そもそもこう言った手法は、初期モデルのMV100で失敗していると思うのだが。筆者は前モデルMV-350のほうが、デザイン的に高度だと思う。

 側面に並ぶボタン類は、前モデルと形状が若干違うが、配列などはまったく同じ。液晶内部のボタンも機能的配列は同じだが、若干大きくなって押しやすくなっている。

右サイドにはディスクをイメージさせる円形が 液晶内部のボタンは大きくなり、押しやすくなった

 今回のモデルで新たに加えられた機能が、「かんたんボタン」だ。これを「入」にするとメニュー類が大幅に簡略化され、機能のナビゲーションも表示されるため、カメラが苦手な人でも撮影ができるようになっている。

通常のメニュー表示 「かんたんボタン」入時のメニュー表示

 液晶モニタは、2.5型約12万画素のTFT。ワイドモード時にはちゃんと横長で表示されるが、メニューを出すと4:3に戻ってしまう。もともとそんなに設定を変更しなければならないカメラではないため問題はないが、苦肉の策という気がしないでもない。

 逆サイドに回ってみよう。DVDドライブ面にSDカードスロットがあるのは前モデルと同じだが、階段状に盛り上がった独特のデザインとなった。これによってグリップ感が向上したということだが、今度は視覚的にすごくせり出しているような印象になってしまうのは残念だ。

ドライブ部に階段状の盛り上がりがデザインされた ディスク開口部のフタにSDカードスロットがある

 実際に持ってみると、不思議と前モデルMV380よりも軽く感じる。実際には5gしか違わないのだが、MV580のほうが重心が低くなっているため、そう感じるようだ。


■ 画質はかなり上がっている

 では実際に撮影してみよう。MV580の特徴は、手ぶれ補正アリのスクイーズ記録16:9モードだ。よって今回も、ワイドモード中心に撮影してみる。画質は最高のXTRAモードだ。

 まずワイド端だが、やはり53.4mmでは引ききれない。だいたいこれぐらいで入るだろうと三脚を構えても、そこから3mぐらい下がらないとダメ、というケースが何度かあった。先週のキヤノンM100も同じような焦点距離ながら、手ぶれ補正OFFにすれば画角が広がることで、ずいぶん助かっていたわけだ。

サンプル静止画
(撮影モード・画角別)
モード ワイド端 テレ端
4:3
16:9
静止画モード

最短はかなり寄れる。もうレンズのアタマは花びらの中に突っ込んでいる

 その代わりといってはナンだが、近距離の撮影はかなり近くまで寄れる。特にマクロモードみたいなものはないのだが、ほとんど被写体にレンズが当たるぐらいまで近寄ってもピントが合う。

 以前のモデルで弱点とされていた液晶モニタの表示は、上や下からの認識性がアップしている。また輝度も十分で、スキー場など周りがまぶしい状態でもちゃんとモニタリングできた。

 レンズはややフレアが出やすいほうだと思うが、以前よりは押さえられている。また絞りの形を工夫したのか、ボケ味は結構良くなっている。一方CCDは、相変わらずスミアに弱いのが残念だ。今回は雲が全くなく、先週のキヤノンM100の時よりは条件が厳しいので、その分割り引いて考えないと可哀想ではあるが、夕景などは撮り辛いだろう。

スミアもかなり派手に出る ボケ味はなかなか綺麗だ

 色の発色は、補色系にしてはかなり強く、梅の淡い色などもよく表現できている。また前モデルで不足がちだった解像感もグッと高くなっており、もはや普通のDVカメラと遜色ないと言っていいだろう。特にMPEG記録で弱かった、水面や木の葉の揺らぎといったランダムで動きの激しい被写体でも、ブロックノイズが出なくなった点は安心材料だ。

夕暮れ時の淡い色も再現性はいい 補色系にしては発色が強い
動画サンプル
従来苦手としていたシーンも綺麗に撮れる

 静止画撮影は、DVD-RAMとSDカードどちらかを選択して記録できる。DVD-RAMを使えば、静止画を最大1,998枚も撮影できるのもミソだ。静止画の画質は、色味などの面でビデオとあまり変わらないものの、コントラストが強くなかなか見栄えのする絵になっている。

コントラストが強く見栄えのする絵 淡い色もよく出ている 細かいディテールもまずまず良好

 難点をあげるならば、ビデオと静止画の切り替え時のレスポンスの悪さだ。特にビデオ撮影してからSD静止画に切り替えると、DVD-RAM書き込み中はモードが切り替わらないため、場合によっては10秒ほど待たされることになる。子供や動物をメインで撮るユーザーにとっては、この遅さは致命的だ。「今いいシーンだから写真も!」と思っても、10秒待たされてはチャンスを逃してしまう。

 同じDVD-RAMに静止画を記録するのであれば、書き込みを待つ必要もあるだろうが、メディアが全然別のSDカードに切り替えるときも同じぐらい待たされる。せっかく2メディアを搭載しているメリットが生かされていないのではないだろうか。


■ 総論

 今回のDVDカムは、前モデルと比較すると、グリップベルトの支点位置や電源スイッチの形状など、細かい部分の改良もあるものの、デザイン的なスマートさに欠ける。いろいろいじくりすぎて、ごちゃごちゃした印象になってしまったのは残念だ。

 操作性の面でも、ボタンの機能や配置など、新しい面は見られない。本体メニューでは「かんたんボタン」が付いたのは女性ユーザーへの配慮として評価できるが、以前のモデルで指摘したメニュー配列の悪さもそのままだ。さらにバンドルソフトも、1年前のモデルとバージョンまで同じとあっては、新モデルの魅力と言われてもかなり苦しい。

 ただ画質はかなり向上しており、MPEG特有の荒れのようなものはかなり克服してきている。画質面で二の足を踏んでいた人は、今回のモデルは見直すきっかけになるだろう。

 新しもの好きの目から見ればいささか新鮮みの薄い新モデルであるが、家電として広く普及するためにはコロコロ仕様が変わるのは良くないという考え方もある。同じような製品をしつこくしつこく露出することで、世の中に浸透させるという戦術も、ないではない。

 DVDカムは、テープメディアでは得られない可能性を沢山持っており、方法論として将来性を感じさせる。そして同時に誰しも気づいてる点だが、どうしてもDVDドライブのサイズから、これ以上小さくなりそうもないという宿命を感じさせる。

 「それでいい」のか「それだからダメ」なのか。ユーザーにとっては迷うところだ。ただ方向性として、「ビデオカメラと同じですよ」といった路線以外の製品もあっていいだろう。今後の思い切った発想の転換を期待したい。

□日立のホームページ
http://www.hitachi.co.jp/
□製品情報
http://dvd.hitachi.co.jp/cam/product/cam550/index.html
□関連記事
【2月2日】日立、レンズカバーを3色から選べるDVDカム2機種
-上位モデルは16:9のワイド撮影機能を搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040202/hitachi.htm
【2003年3月5日】【EZ】第3世代に突入したDVDCAM「DZ-MV350」
~ 洗練されたデザイン、いよいよこれは買いか!? ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030305/zooma99.htm

(2004年3月10日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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