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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第149回:米国に1年遅れて国内発売された
ソニー製DVD-RW対応ハンディカム「DCR-DVD101」


■ 日本初登場のDVDハンディカム

 2003年のCESで華々しくデビューしたソニーのDVDハンディカム。記録媒体にDVDを採用したビデオカメラは、当時から既に日立が出していたが、従来のハンディカムとは一線を画すカラーリングと、カタツムリみたいな独特のフォルムで大注目であった。しかし、日本ではいっこうに発売の気配がなかった。

 筆者もてっきり開発を諦めたものとばかり思っていたので、CES 2004のソニーブースで「アレは辞めたんですか」と訪ねたところ、実は米国でのみ発売していたのだという。

 日本で発売しなかった理由は憶測でしかないが、おそらく日本人にとってはボディサイズに違和感があるだろうという点、先行する日立らDVD-RAM勢の様子を見たいという点、DVDに対する日米のリアクションの違いみたいなところがあったのかもしれない。

 そして今年3月20日、DVDハンディカムの2代目モデルとなる「DCR-DVD201」、「DCR-DVD101」が、日本でも発売された。両モデルの基本的な差は、レンズやCCDといった光学系。DVD201がメガピクセル採用なのに対し、DVD101では68万画素となっている。記録媒体として8cmのDVD-RとDVD-RWを採用した点でも、ソニーがDVDというメディアをどう料理したのか、気になるところだ。

 既に発売済みではあるが、今回は下位モデルのDVD101をお借りすることができた。さっそく試してみよう。


■ 期待以上にコンパクトなボディ

 まずボディから見ていこう。直系8cmの円盤メディアを使用するということで、形状にはどうしてもこの面積が必要となる。これをいかにまとめるかがDVD系カメラのポイントとなる。

 基本的な形状は、グリップ側にDVDドライブを縦に搭載するという、日立が始めたオーソドックスな形状。だがソニーがうまいのは、見た目以上に小さく見せるデザインだ。実際に寸法で比較しても、日立のDVDカム新モデル「DZ-MV580」よりDVD101のほうが小さいのだが、数値以上のコンパクトさを感じさせるテクニックは一流だ。

体積よりも薄さを感じさせるデザインはさすが ドライブ部周辺の作りもスマート

 印象として感じるのは、体積よりも「薄さ」である。日立MV580がレンズ鏡筒部を大きめにとって光学系を強化し、ドライブ部はホールド感を高めるための盛り上がりを加えたため、全体的にモッコリ方向に進化した。

鏡筒部の太さに比べてレンズはかなり小さめ

 それに対してソニーはドライブ部を極力薄くし、鏡筒部をギリギリまで小さく短くした。これによってレンズ部よりもドライブ部が出っ張っているという、ちょっと意表を突く形状となっている。だが見た目の小ささという点では圧倒的で、多くの人はこのサイズに納得することだろう。

 ホールド感という意味では、手のひらにピッタリ密着し、指の引っかかりを大きく取った日立MV580のほうが安定感はある。ソニーDVD101はその点、「箱」をベルトで手にくくりつけられているような違和感を感じる。だがホールド感を無視しても「カッコイイ方がイイ」という評価が下るのが、コンシューマのキビシイところなのである。

 ではスペックを絡めながら細かいところを見ていこう。まず光学系だが、レンズはフィルタ径25mmのカールツァイスバリオゾナー。解放F値1.7と結構明るめなのだが、レンズ径は実測で13mmと、かなり小さい。ズームは光学10倍で、35mm換算で43~430mm。最近のビデオカメラは、一時期よりもワイド端が広くなる傾向にあって結構なことだ。


レンズ下には赤外線受光部と、ナイトショット時に照射する赤外線ライトが仕込まれている

 CCDは68万画素で1/6インチサイズ。なおこのモデルでは動画も静止画も同じ34万画素で撮影するため、静止画で画角が広くなるということはない。さらに撮れる静止画も640×480ピクセルでしかないわけで、このカメラでわざわざ静止画を撮る意味はほとんどないだろう。

 ちなみに上位モデルのDVD201では、動画を69万画素で撮影するので、解像感はおそらくDVD101よりも勝る。なおフィルタに関しては補色であるという資料は見つからなかったが、原色だったら普通自慢げにスペックで謳うハズなので、やっぱり補色系だと思って間違いないだろう。

 向かって右側の操作部には、3つのボタンとジョイスティック。基本的なメニュー操作はすべてジョイスティックで行なう。液晶モニタ内部にはジョイスティック操作に関するダイレクトボタンが多く用意されており、メニュー階層のトップがダイレクトにボタンとして出ているという感じだ。


 液晶モニタは2.5型の反射液晶を採用しており、液晶フレーム脇にバックライトのON/OFFボタンがある。またその下には録画ボタンもあり、撮影時に左手で液晶モニタを支えながら、すぐにRECできるのは便利だ。また液晶開口部には、扉が開けやすいよう、凹みが付けられている。これは三脚の船を着けたとき、液晶を開けるのに便利なのだ。こういった細かいところが、カメラを作り慣れているメーカーのノウハウが生きる部分だ。反対にこの切り込みがない日立MV580は、船を着けてしまうと液晶が開けられなくなってしまい、不便だった。

液晶を閉じれば、ボタン類はシンプル モニタ内部は結構ボタンが多い

 ボタン類がほとんど右側にあるので、カメラ後部はシンプルだ。モードダイヤルは再生、動画撮影、静止画撮影の3モードを切り替える。電源はダイヤル中央部を2秒ほど長押しする方式。

 カメラ上部には、フォトボタンとズームレバーがある。ズームは最近平行スライド式のものが流行っているが、個人的には倒れる形のレバー式のほうが使いやすいと思う。

反射液晶を採用し、脇には録画ボタンもある ボディに凹みが付けられており、モニタが開きやすい

 鏡筒部前方には、ナイトショット関係のボタンが集まっている。NIGHTSHOT PLUS入/切のスライドスイッチと、SUPER NIGHTSHOTへの切り替えスイッチだ。

 DVDドライブ部は、前方が開くという新方式。ケースなしのメディアを挿入するため、扱いやすいようにフタは90度ぐらい大きく開く。またメディアを外しやすいよう、一部に凹みが付けられているのも親切だ。

親指操作部はシンプルにまとまっている 鏡筒部前方にあるナイトショット関係のボタン類

 またこのDVDハンディカムシリーズには、メモリースティックなどメモリーメディアのスロットがない。静止画もすべてDVDメディアに記録するようになっている。

大きく開くドライブ部のフタ メディアを外しやすいよう、ここにも凹みが


■ 撮ってみると、うーん

ディスク認識にえらく時間がかかる

 では実際の使い勝手を確かめてみよう。使用できるメディアはDVD-Rと-RW。記録フォーマットとしては、DVD-RはDVDビデオフォーマットのみ、DVD-RWではDVDビデオとDVD-VRフォーマットが使える。本体で編集できるなど、DVDらしいメリットを求めるならば、DVD-RWでDVD-VRフォーマットを使用するのが妥当だろう。

 VRフォーマット済みのメディアを挿入すると、メディア認識までなんと30秒弱かかる。いったん認識すれば、次の電源投入時には5秒ぐらいで起動するのだが、DVテープと違って収録時間の短い8cmDVDでは、メディアを入れ替える機会も増えるだろう。そのたびに30秒は、若干辛いものがある。ちなみにメディアのフォーマットも30秒程度だ。段取り良く準備しておかないと、現場であわてることになる。

 ちなみに日立DVDカムの場合は、メディア認識に20秒強かかるが、メディア挿入後10秒ぐらいで録画ボタンを押せば、そこからでも撮り始めることができる。記録用バッファを早めに解放するからだろう。

 画質モードは、HQ、SP、LPの3種類。全モードVBRで記録し、オーディオはAC3を採用している。一方日立MV580では、VBRで撮るのは最高画質であるXTRAのみで、それ以外はCBR記録、音声は全モードデフォルトでMPEG Layer2、条件付きでLPCMとなる。最高モード以外では、VBRを採用しているぶん、DVD101のほうが画質的に有利だろう。また音声もAC3を採用し、メディアもDVD-RWということで、若干再生互換性が高いと言える。

サンプル静止画
(画角別)
モード ワイド端 テレ端
動画
静止画

画質モード比較
HQSPLP

画角サイズ比較
4:3 16:9

フレアの赤い点が目立つ

 このカメラにはWideモードもある。一応スクイーズで撮れるのだが、画角が広がるわけでもなく単に上下が切れて撮影されるだけなので、使うメリットがどこまであるか疑問だ。よって今回は4:3モード中心に撮影してみた。

 撮ってみてわかるのは、光学系の力不足だ。特にレンズはいくらなんでも手を抜きすぎだろう。ド派手なフレアの出具合は、カールツァイスの名が泣くぜって感じである。またCCDも、スミアの出はキツいほう。コストがドライブ周りに取られてしまって、光学系ケチったなぁという印象だ。


一応ボケてると言えないこともないのだが……

 映像的には、やはりDVDのMPEG-2記録ということもあって、ロングショットの細かいディテールなどは潰れがち。HQとSPの顕著な違いは、このディテールの表現だろう。同じような水面を撮っても、日立MV580のほうがブロック感が押さえられている。

 ボケ足はアウトフォーカスしているような感じではなく、なんか滲んだような独特のボケ具合だ。

 実際に撮れた絵をあとで見ると、発色は思ったほど悪くないのだが、反射型液晶モニタでは色味が淡泊に出てしまって、撮影中にこれ大丈夫かと思うこともしばしばあった。なんか、撮ってるときがつまんなかったのだ。


曇天の夕暮れという悪条件にしては、発色自体は悪くない 中央部のディテールは悪くないが、周辺部に若干色のにじみを感じる

 オートフォーカスに関しては、近い被写体にはうまく働かないこともあった。この場合は、マニュアルでフォーカスをアバウトに合わせ、そののちオートに戻すとちゃんと働く。

 静止画に関しては、若干絞りの値が変わるが基本的にはビデオと同じ系統の色処理を行なっているようだ。モードを変えることでオートホワイトを取り直しているのかもしれない。撮影のタイミングによって、同じように撮れたりまったく違った色で撮れたりする。

動画での撮影。目視ではこちらのトーンに近い 同アングルを静止画で撮影。かなり色味が違う

 それにしても撮ってて気になるのは、ビデオモードから静止画モードへの切り替えの遅さだ。ダイアルを回してから切り替わるのに、10秒ぐらいかかる。同じ解像度の絵しか撮れないのに、いったいその間なにやってんスかと感じる。また静止画の保存も遅く、これも1枚撮ったら10秒ぐらい待たされる。正直にDVDに書き込むのを待つのではなく、メモリに貯めといてバックグラウンドで書くという方法も採れたのではないかと思う。


■ 再生レスポンスに難あり

サムネイルの表示はかなり遅め

 DVDカメラのメリットは、撮影後に本体だけである程度の編集ができるところだ。本体機能として、撮影だけでなく、この部分も気になるところだろう。

 再生モードにして「ビジュアルインデックス」ボタンを押すと、動画、静止画、プレイリストに分かれてサムネイルで撮影画像を確認することができる。だがこのサムネイルの表示スピードが、かなり遅い。ぽつ、、、ぽつ、、、ぽつ、、、といった調子で表示される。日立のDVDカムはその辺ちゃんとメディア内部にインデックス用データを持っていて、サムネイル表示はちょっと読み込んだあと、一気にドドッと表示される。この辺りの作りも、まだまだDVDカメラ1年生といった感じだ。

 クリップを直接切った貼ったするよりも、プレイリスト編集が主な編集スタイルとなる。このあたりはDVDレコーダなどと同じ考え方だ。DVD101の方式は、最初にプレイリスト作成などのコマンドを選んでから、サムネイルにチェックを入れて追加していく方式。感覚的にはこちらの方がパソコン的という意味でわかりやすい。

クリップの追加は、サムネイルにチェックを付けていく方式 クリップの移動も同様の手順だ

 順番の入れ替えも、複数クリップにチェックを付けて、ブロックをまとめて移動が可能。そう言う意味では、非常に段取りよく編集できるシステムとなっている。ただしこれもクリップのリドローが遅いので、快適に編集という感じがしないのは残念。

 各クリップのトリミングは、2つに分割していらないほうを消していくという方式。だがビデオの編集では、撮影したクリップの真ん中のところだけ使うというケースがほとんどなので、それを前提としたIN/OUT指定方式の方が良かっただろう。

トリミングは、映像を2分割していく方式

 本体編集以外にも、PCで編集する手段もある。これにはディスクを直接PCに突っ込む方法と、USBで映像を転送する方法の2種類が取れる。

 DVD-RWでVR撮影したものをディスクでやりとりするためには、ファイナライズを行なう必要がある。だがメディアに70%ほど記録したものをファイナライズするのに、約6分半かかった。ファイナライズの手間を考えたら、PCへの取り込みはUSB 2.0を使うほうが楽だろう。

 メディアで直接やりとりするなら、PCではなくDVDレコーダを使って編集するといった使い方をしたほうが、メディアのメリットを生かせる。ただしDVD-RWのVRモードは、再生互換がキビシイので、手持ちのレコーダとの互換性を事前にチェックすべきだろう。

 VD101には、PC用編集ソフトとして、ピクセラの「ImageMixer」というソフトが付属してくる。またインストール時にはWindCDR Lite for DATAも一緒にインストールされるので、DVD101をUSB接続のDVDドライブとして使うことも可能だ。

 ImageMixerは、メディア内コンテンツの管理と編集、DVDのオーサリングから書き出しまでを行なう総合ツール。ただ編集ツールとして見ると、機能的には十分とは言えない。まあ感じとしては、DVD MovieAlbumよりは若干マシかという程度である。


 例えばトリミング編集画面では、プレイとポーズが1ボタンのトグルではないので、編集点で止めるのが煩わしい。またIN点へのGoToがないので、編集点のトリム修正がやりにくい。

 各ボタンの説明が画面左下に文章で出るのは結構なのだが、ボタン類はすべて上にある。見た目は綺麗なのだが、ボタンの機能を把握するのに上を見たり下を見たりと、いそがしいことこの上ないソフトである。

カメラに付属するピクセラのImageMixer Ver1.5 for SONY DVD Handycam 編集機能は細かいところの使い勝手がもう一歩


■ 総論

 リライタブルDVDメディアの可能性を引き出したという意味では、DVD記録のビデオカメラというのは画期的な製品であることに異論はないだろう。カメラ本体で編集までできて、完パケも同じメディアでいいというのは、テープメディアでは絶対になし得ない便利さだ。

 だが現状のビデオカメラは、価格的には10万以下でも、かなりクオリティの高い絵が撮れるようになってきている。DVD101も、サイズ、価格ともにがんばって、よくまとめてきているとは思う。静止画撮影やナイトショットなども一通り装備し、ビデオカメラとして求められるものはすべて載せている。だが残念ながら映像的には、これほんとに中身ソニーで作ってんの? と聞きたくなるようなクオリティだ。日本で売るのを渋った理由も、こんなところにあるのかもしれない。

 例えば以前レビューしたキヤノン M100や、日立MV580のサンプル画像と比較してほしい。季節は1カ月ほど違うが、同じような場所で同じようなモノを撮ってるので、比較しやすいだろう。これら3つのビデオカメラは、実売でほぼ同価格帯なのである。

 これらの画像を比べてみて、「大して違わないんじゃないの」とか、「このぐらいの差ならいいよ」と思う人もいることだろう。それだったら、カッコイイDVD101を選ぶというのも、その人に合った選択だ。

 ただそれは承知の上での選択であるから、ユーザーに結果の責任がある。画質がよくわからない人に対して、MV580より薄い小さい、DVカメラより便利便利、というだけで盲信的にDVD101を勧められるかと言われれば、ちょっとキビシイ。上位モデルのDVD201は、CCDが違うので、もうちょっとマシかもしれない。機会があれば試してみたいところだ。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200402/04-0219/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/handycam/PRODUCTS/DCR-DVD201_101/
□関連記事
【2月19日】ソニー、8cm DVD-R/RW採用の国内初「DVDハンディカム」
-全モードでVBR記録、8cmメディアも同時発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040219/sony.htm

(2004年4月7日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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