~ 「iTunes 4.5」の追加機能も検証 ~ |
Mac版の日本語iTunes 4.5 |
すでにご存知の方も多いと思うが、4月28日にAppleがiTunesの新バージョン、iTunes 4.5を発表した。英語版はMacintosh版、Windows版ともにリリースしているが日本語版はまだMaintoshc版のみであり、日本語版は5月中旬のリリース予定となっている。
とりあえず、手元のPowerMac G5は自動アップデートを設定しているので、知らないうちに(実際には確認の上アップデートしていたはずではあるが)、iTunes 4.5になっていた。
Windowsの英語版iTunes 4.5 |
一方のWindowsも、そろそろ上がっているかなと思ったが、5月16日現在まだ日本語版は4.2という状態だったので、とりあえず英語版をインストールしてみた。これまであるさまざまな圧縮フォーマットがWindowsベースのものであるため、やはり比較のしやすさという面ではWindows環境で行なったほうがいいので、ここから先は英語版ではあるものの、Windows版のiTunes 4.5で見ていくことにする。
さて、一番最初に気になるのは、やはりそのロスレス圧縮のApple Lossless。Losslessというからには、音質劣化が生じないオーディオ圧縮であり、MP3やAAC、WMAなどの非可逆圧縮とは大きく異なる。正確にはiTunes本体に搭載されたのではなく、そのバックグラウンドで動作するQuickTime 6.5.1が持った新機能ではあるが、ここでは、QuickTimeはiTunesの1モジュールであると捉えて、話をすすめていこう。
ロスレス圧縮については、これまでも、このDigital Audio Laboratoryで何度か扱ってきたが、具体的なものとしては、以下のようなものが存在している。
HDDが大容量化した時代に、半分程度にしか縮まらないのをどう捉えるかは人それぞれだが、個人的にはあまり積極的に使うつもりはない。やはり面倒のないWAVやAIFFを使ったほうが楽だし、各ソフトとの互換性も取りやすい。また、ポータブルプレーヤーで使うには大きすぎると思うし、そもそも現状のポータブルプレーヤーおよびそのヘッドフォンの性能ならMP3やAACで十分だと思うからだ。
とはいえ、非可逆圧縮オーディオの音は許せないと思っている人も結構いるようなので、そうした人にとっては、今回のApple Losslessは待望のフォーマットだったのではないだろうか。ポータブルプレーヤーでは最も普及しているiPodが対応したことで、PCのHDDでの保存に留まらず、さまざまな用途が見えてきそうだ。
ポータブルプレーヤーでは「Rio Karma」がオープンソースのFLACに対応しており、今後OggVorbisとともに対応するプレーヤーが増えてくる可能性はあるが、やはり現状最も売れているiPodがロスレス対応したのは非常に大きなポイントといえるだろう。
■ 圧縮率と変換所要時間をチェック
早速、実際にどのくらいのファイルサイズになるのか試してみた。実験に利用したデータは2種類。ポップス系の曲でAreareaの「愛のあかし」という3分56秒の曲と、モーツアルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調 K.525 第4楽章」の第4楽章「ロンド(アレグロ)」の3分23秒だ。方法は簡単。まず、保存形式がデフォルトではAACになっているので、これをApple Losslessに変更する。その上で、CDをブラウズし、変換したい曲を選択して、右クリックするとコンテキストメニューが表示されるので、ここでApple Losslessへの変換を選択すればいい。
保存形式をApple Losslessに変更し、右クリックメニューから変換する |
拡張子がAACと同じ「.m4a」なため、ちょっと紛らわしい |
ただ、せっかくであれば、FLACやWMAなど他のロスレス変換との変換率を比べるとともに、その時間を計測してみたかったので、あらかじめリッピングしておいたWAVファイルから変換を行なった。方法自体はCDから行なうのもまったく同じ。その結果生成されたファイルの拡張子を見ると、「.m4a」。AACと同じ拡張子であるため、ちょっと紛らわしい。
それぞれの曲をCDからリッピングしたWAVファイルを含め、ファイルサイズは表のとおりである。結論からいえば、各エンコーダ間での圧縮率の差はほとんどないといっていい。強いていえばMonkey's Audioの圧縮率が一番高く、しかもこれは標準モードなので、高圧縮モードにすればさらに圧縮率が上がることが予想される。その中で、iTunes 4.5が搭載したApple Losslessは平均的な結果ということができる。
フォーマット | ファイルサイズ | 圧縮率 | 変換時間 |
WAV | 40,685KB | - | - |
Apple Lossless | 27,642KB | 67.94% | 10秒 |
WMA Lossless | 27,013KB | 66.40% | 16.5秒 |
Perfect Clarity Audio | 27,697KB | 68.08% | 7秒 |
FLAC | 27,547KB | 67.71% | 5秒 |
Monkey's Audio | 26,752KB | 65.75% | 7秒 |
フォーマット | ファイルサイズ | 圧縮率 | 変換時間 |
WAV | 65,866KB | - | - |
Apple Lossless | 14,790KB | 22.45% | 7.5秒 |
WMA Lossless | 14,182KB | 21.53% | 12.5秒 |
Perfect Clarity Audio | 15,102KB | 22.93% | 6.5秒 |
FLAC | 14,951KB | 22.70% | 4.5秒 |
Monkey's Audio | 13,972KB | 21.21% | 6.3秒 |
また、圧縮時間はMonkey's Audioだけは自動計測されるが、それ以外はストップウォッチを片手に行なった結果なので、小数点以下はあまり信頼できない数値ではある。とはいえ、結果的にFLACが最速で、Windows Media Auido Losslessが一番遅く目立つほかは、そう大差はないといったところである。
完全に元通りになる |
今回はロスレス圧縮なので、いつもの圧縮フォーマット検証のような音質チェックをしても無意味なので、ここでは行なわない。ただ、本当にロスレス圧縮できているのかを念のためチェックするために、WAVファイルに再変換して、元データと比較してみた。
iTunes 4.5ではWAVファイルへの変換も、Apple Losslessへの変換とほぼ同じ手順でできてしまう。結果の比較はefu氏制作のWaveCompareを使ったのだが、見事というか当然というか、1ビットの違いもなく合致した。
■ そのほかの追加機能
WMAファイルをiTunesへドラッグ&ドロップするだけでAACに変換される |
さて、このApple Losslessを搭載したiTunes 4.5だが、ほかにもいくつかの新機能が搭載されている。とくにWindowsユーザーにとって大きいのはWMAへの対応だ。正確にいえば、WMAの再生が可能になったわけでなく、インポートが可能になり、自動的にAACへ変換するというものである。
実際、DRM(著作権保護機能)がかかっていないWMAファイルをiTunesへドラッグ&ドロップで持っていくとダイアログが表示される。これをOKとすれば、今後はWMAを普通に読み込めるようになる。もちろん、一度読み込めばAACに変換されるので、iPodへの転送も可能となる。
そのほかにもプレイリスト機能の向上、CDカバーの印刷機能の搭載など、いろいろな強化が図られている。iTunes Music Storeで、自分の持っている楽曲(データそのものではなく、持っている曲名のみ)を公開する「iMix」という機能なども搭載されている。
ただ、一番気になるiTunes Music Storeの日本でのサービススタートについては、今のところ新しい動きはない。以前、スティーブ・ジョブスは2004年中に日本国内でサービスをはじめると発表していたが、本当に実現できるのか、この点にもぜひ注目していきたい。
□Appleのホームページ
http://www.apple.com/
□iTunes 4.5のホームページ
http://www.apple.com/itunes/
□関連記事
【4月28日】Apple、新Losslessコーデック採用の「iTunes 4.5」を公開
-iTunes Music Storeでプレイリスト公開が可能に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040428/apple.htm
【2003年4月29日】米Apple、1曲99セントのAACを使用した音楽配信サービスを開始
-20万曲を用意。無制限のCDへの書き出しやiPodにも転送可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030429/apple2.htm
(2004年5月17日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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