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第144回:24bit/192kHz 6in/6out対応のRoland「FA-101」を検証
~ Mac OS X標準ドライバ対応のFireWireインターフェイス ~



FA-101

 これまで何度か話題に出た、EDIROLの24bit/192kHz対応のFireWireオーディオインターフェイス「FA-101」がついに発売された。ポート的には10in/10outを備えながらも、ハーフラックサイズに納めたコンパクトサイズの製品だ。



■ Mac OS X標準ドライバに対応した「FA-101」

 昨年7月にUSB 2.0対応のオーディオインターフェイス「EDIROL UA-1000」を発売したRoland。これまで同社は、USB製品を中心にオーディオインターフェイスのラインナップを展開していたため、USB派のRolandという見方もされていたが、一転してFireWire製品をリリースした。UA-1000がメタリックブルーであったのに対し、「FA-101」はメタリックレッド。どちらも結構目立つ配色であり、並べてみるといかにも対極的な製品という感じである。

UA-1000

 UA-1000が24bit/96kHzであるのに対し、FA-101が24bit/192kHzであるためFA-101がその上位に位置付けられるようにも思えるが、価格的には店頭で税込み58,000円程度とUA-1000より3万円程度安い設定。以前Rolandに話を聞いたときには、確かにサンプリングレートのスペックではFA-101のほうが上であるが、内蔵されているマイクプリアンプのグレードがUA-1000のほうが上であったり、adatインターフェイスに対応しているなどの点で、UA-1000の価格設定が上になっているということだった。

 また、UA-1000は完全にWindows用となっている一方、FA-101はWindows XPとMac OS Xの双方に対応しており、どちらかというとMacintoshに主眼が置かれているようだ。もちろん、今回使ってみてWindowsにおいても、まったく問題なく動作したが、WindowsにおいてはFireWireのチップセットが標準になっていないこともあり、USB 2.0対応のUA-1000のほうが、より安定しているそうだ。

 実際、FA-101の国内におけるプレス発表はアップルと共同で行なうなど、アップル側も全面的にバックアップしている。これまでも、MOTU製品やM-Audio製品など、いくつものFireWireオーディオの先行製品があるのに、なぜこんな形で……と疑問にも思ったのだが、そこにはひとつの理由があった。

 このFA-101の発売とほぼ同じタイミングで、AppleがOSのアップデートによりFireWireオーディオを標準サポートするようになったのだ。そして、その標準のドライバで動作する初のオーディオインターフェイスがFA-101ということになる。

 この標準のドライバを使うためには、OSをMac OS X 10.3.3にアップデートした上で、アップルのサイトにあるアップデータ「FireWire Audio Driver Update 1.0.8」をインストールする。手元のPowre Mac G5で実際に試してみたところ、本当に何の問題もなく簡単に認識し、動作してくれた。ためしにCubase SX 2を起動してみても、あっけないほど簡単に使うことができた。

Mac OS X標準ドライバを入れるだけでFA-101を認識 Cubase SX 2からも問題なく認識された

 ちなみに、この「FireWire Audio Driver Update 1.0.8」をインストールした環境において、現在のところM-AudioのFireWire401など他社製品は動作しないし、今後も既存製品に対応することはない模様だ。というのは、USBオーディオにおいてもMacやWindowsで標準のドライバで動作するハードの仕様があるのと同様に、FireWireにも標準の仕様が定められ、それにはじめて準拠する形で登場したのがFA-101であるからだ。

 今後は各社からこの仕様に準拠したものが発売されると予想されるが、現在ある他のFireWireオーディオインターフェイスは、すべて各社のドライバをインストールする必要があることになる。


■ 24bit/192kHzの同時入出力数は6in/6out固定

 FA-101がMac OS Xといい関係にあることを述べてきたが、ここから先の音質の検証については、実験環境の関係により、Windowsで行なっているのでご了承いただきたい。

FA-101の背面

 音質テストに入る前に、気になっていたのが24bit/192kHzにおける同時入出力可能なチャンネル数だ。FA-101自体はアナログの入出力が8チャンネルずつ、S/PDIFの入出力がステレオ2チャンネルの計10in/10outという仕様になっているが、これをフルに利用できるのは24bit/96kHzまで。24bit/192kHzにおいては、10in/10outは無理だという。

 以前にも少し触れたが、これはFireWireの転送速度の問題ではなく、HDD側が追いつかないためだそうだ。確かに単純計算すると24bit/192kHzにおいては1チャンネルだけで24bit×96kHz=約4.6Mbpsとなる。そのためもし10チャンネルを出力することを考えれば46Mbpsが必要となり、それがバラバラのトラックに記録されたデータを再生するとなれば、HDDもかなり忙しくなる。ATA133、さらにはSerialATAの150Mbpsという規格を考えても、なかなかシビアなデータの読み取りである。いくら高速なドライブでも無理が生じてくるというわけだ。

 1月のNAMM SHOWでFA-101をお披露目した後も、この仕様が決まっておらず、Rolandに話を聞くと、2in/2outは間違いない、4in/4outはなんとかなるかもしれない……なんていうことを話していたが、最終的には6in/6outで落ち着いたようである。この6in/6outというのは、マシン環境によって異なるものなのか、また4in/8outとか2in/10outといった組み合わせが可能なのか気になっていたのだが、実際に使ってみると192kHz時には6in/6out固定という仕様だった。

96kHzで10chの入出力に対応

 FA-101の場合、本体で44.1/48/88.8/96/192kHzを選択するロータリースイッチがあり、これを設定した上でFA-101の電源を入れ直すとその周波数になるという仕組みになっている。そこで、まず96kHzのモードで起動すると確かに10チャンネル分の入出力ができるようになっていた。これはWDMでもASIOでも同様である。

 そして192kHzのモードにしてみると、6in/6outとなる。ドライバの時点で固定されてしまうわけである。このことについてはWindowsもMacitoshも同じである。

192kHzに変更すると、6in/6outに固定される

 なお、バッファサイズの設定などはコントロールパネルにあるアイコンから変更可能になっている、一番バッファサイズを小さくしたときにレイテンシーは2.875msecという結果であった。

バッファサイズの設定 最小レイテンシーは2.875msとなった

 さっそくこの24bit/192kHzでの音を試してみたが、非常に澄んだ音でキレイというのが第一印象。先日の発表会においても、その場でアコースティックギターの音をコンデンサマイクで拾ってレコーディングをしていたが、なるほどこれが192kHzでのレコーディングか、と感心したほどであった。UA-1000とマイクプリアンプの品質が異なるとのことだが、その差を192kHzというスペックでカバーしてしまっているのかもしれない。

FA-101のブロック図

 ちなみにFA-101のブロック図を見ると、各入力の音はDirect Monitor mixerを使ってモニタ出力できるようになっている。面白いことに、ここにはSoft Control SWというものが用意されており、これを使うと、ソフトウェア側からモニタリングスイッチのオン/オフの設定ができるようだ。

 ところで、実際に192kHzで音を再生しているときに気になったことが1点。ほかのモードで使っている際には光るレベル表示のLEDが一切点滅しない。Rolandの担当者によれば、スペックのギリギリまで使って6in/6outを実現するため、LEDの表示もオフにしたという。


■ ノイズレベルは小さく、良好なテスト結果

 というわけで、いつもと同じ実験をしてみた。つまり、入出力を直結した上での性能チェックである。今回はINPUT3/4をOUTPUT3/4と直結させた。これはマイクプリアンプを通さない音であり、信号は+4dBu、入出力ともバランス対応となっている。また、とくにアッテネータ、フェーダーなどは存在しないので、この直結において何の設定もしていない。

 さっそく結果をご覧いただきたい。ノイズレベルが非常に小さく、1kHzサイン波での結果を見てもS/Nはとてもよく、高調波なども極めて少ない。また、48kHz動作時におけるスウィープ信号の結果を見ても、非常にフラットとなっている。

何も出力していない状態のものを録音 サイン波を出力 スウィープ信号を出力
FA-101の測定結果

 ここで試しに以前に同じ実験を行なったUA-1000の結果と比較してみるとちょっと面白い。ノイズレベルはほぼ同じレベルであるのに対し、サイン波の結果、スウィープ信号の結果は微妙な差ではあるがUA-1000のほうがいいのだ。

何も出力していない状態のものを録音 サイン波を出力 スウィープ信号を出力
【参考】UA-1000の測定結果

 いずれも48kHzでの実験だから、それぞれの機材の特徴を最大限活用しているわけではなく、特に192kHzの特徴を生かせていないとはいえ、同条件で比較するとUA-1000のほうがハイグレードというのはこの結果からも見えてくる。

 また、先日とりあげた実験ツール「RMAA」でもテストを行なった。上記と同様に48kHzで行なったものに加え、96kHzでのテスト、192kHzでのテストを実施、それをレポート形式でHTML化しているので、参考までにご覧いただきたい。

48kHzのテスト結果 96kHzのテスト結果 192kHzのテスト結果

 以上、FA-101について検証しがいかがだっただろうか? 価格の割に機能、性能ともなかなか優れた製品といえそうだ。個人的にはFireWireからのバス電源供給で動作するACアダプタが不要というところも気に入った。今後、UA-1000とFA-101、どっちが主流の製品になるのか、他社がFA-101と同様にMac OS Xで標準動作するハードウェアを出してくるのかなど、注目していきたい。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/FA-101.html
□関連記事
【4月26日】ローランド、FireWireオーディオインターフェイスを28日に発売
-Mac OS Xの標準ドライバで24bit/192kHzに対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040426/roland.htm
【2月16日】【DAL】Rolandグループが新製品を発表
~ 24bit/192kHz対応低価格FireWireインターフェイスなど ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040216/dal133.htm
【1月16日】ローランド、FireWireオーディオインターフェイス
-24bit/192kHz対応。24bit/96kHzの10ch同時録再可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040116/roland.htm
【2003年7月14日】【DAL】ついに登場したUSB 2.0オーディオインターフェイス ローランド「UA-1000」をテスト
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030714/dal108.htm
【2003年9月22日】【DAL】USB 2.0対応Audioインターフェイス「UA-1000」
~ 開発者に聞いたUSB 2.0採用のわけ ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030922/dal116.htm

(2004年5月10日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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