■ ゴージャスな9型液晶のポータブルDVDプレーヤー
axionのAXNシリーズなどで認知された「海外製の廉価なポータブルDVDプレーヤー」というマーケット。最近は参入メーカーやバリエーションが増え、国内家電メーカーの製品とともに、量販店の一角を占めるようになった。 ブルードットもそうした海外製プレーヤーを扱う1社で、5/7/8型と多くの商品を取り揃えており、今回最上位モデルとなる9型の「BDP-1920」が追加された。販売価格を68,000円台に設定している店舗が多いが、早くも品薄の店が見受けられ、次回出荷分の予約を呼びかけている店舗もある。ブルードットによると、次の出荷は7月初旬ごろになるという。 BDP-1920の特徴はまず、液晶ディスプレイの解像度が800×480ドットと高精細なこと。9V型ディスプレイで同じ解像度の現行機種としては、松下電器の「DVD-LX8」(実売価格11万円強)が挙げられるが、BDP-1920の方が42,000円ほど安い。 さらに、DivXの再生を謳うのもポイント。パソコンに溜まったDivXファイルを他の部屋や外出先に持ち出して視聴できるので、PCでのDivX録画・収集派には何よりも強いアピールポイントといえるだろう。同社ではDivXの再生について「ポータブルDVDプレーヤー初」と謳っている。
天板は金属製で、ロゴなどによる演出を抑えたシンプルなデザイン。前面にラッチはなく、左右手前に設けられた磁石で天板を止める。バッテリ未装着時の本体の厚みは、手前が約2cm、奥側が約3cm(編集部実測)。全体的なボディの高級感はなかなかのもので、価格以上の満足感を得られそうだ。唯一、トレイカバーを開けると「キイ」と音を立てるところが残念。また、ディスプレイ周りを狭額化することで、もう少し横幅をつめられそうにも見える。 重量は本体のみで約1.05kg(カタログ値)、バッテリ装着時が約1.4kg(編集部実測)。ポータブルDVDとしては大柄な部類に属する製品なので、通勤・通学などで毎日持ち歩くのは少々難しそうだ。長期のバカンスや家庭内モバイルでの利用が主体となるだろう。また、カーシガレットアダプタも標準で添付されるので、車中での利用もオプションを買い足すことなく始められる。
コンポーネント出力端子を備えているのも特徴の1つ。専用のミニピン-RCA×3端子のコンポーネントケーブルが付属しており、プログレッシブ出力にも対応している。現在店頭で見かける製品で、コンポーネント出力を装備したポータブルDVDプレーヤーはほかに見かけない。テレビなどへの出力画質を重視するなら、強力な選択肢になるだろう。 そのほか、映像端子として、S映像/コンポジット出力を装備。切替スイッチでコンポジット入力も行なえ、モニターとしても使用できる。光デジタル出力も備え、この種のジャンルの製品として過不足のない入出力が用意されている。
■ 再生画質に問題なし、コンポーネント出力も可能
本体ディスプレイでの表示は、精細感が高く、上級機らしい高品質なもの。パネル解像度が効いているためか、D1解像度に満たない5型や7型クラスでは味わえないリアルさを感じる。 また、ダイナミックレンジ自体はそれほど広くはないものの、明部と暗部の階調性も優秀。微妙なグラデーションもそれなりに描けている。黒浮きもあまり気にならないし、中間色が緑っぽくなることもない。映像に十分没頭できるクオリティといえる。 ただし動きのあるシーンでは、斜めの線がギザギザになったり、映像がガタつくこともあった。また、輝度差の大きい部分の輪郭線に、赤や青の色がのることが多い。また、さすがに陽光下では視認性が著しく下がる。屋内用と割り切るべきだろう。 視野角の狭さも気になった。上下左右とも最近のノートパソコンのレベルを大きく下回る印象で、スイートスポットから少し首を動かすとコントラストが変わり、黒浮きが発生する。ポータブルDVDプレーヤーにとって視野角は、視聴時の場所や体勢の自由度を決める重要な性能になる。画面が大きい分、7V型などより余計に気になった。 画質調整項目は「ブライトネス」と「カラー」(共に0~16)のみ。映画ソースで一番調整したくなるコントラストがないのが寂しいが、白とびを抑えるくらいなら、ブライトネスである程度代用できる。また、色合いも特に調整の必要を感じないため、不満を覚えることはなかった もう1つ気になったのは、ディスクの回転音とシーク音の大きさ。再生中、常にキュルキュルという動作音がつきまとう。ただし、ヘッドフォンを使えば気になることはほとんどなかった。 バッテリはリチウムイオン(7V、5,400mAh)で、フル充電までの時間は約4時間。連続駆動時間は、公称で液晶ON時が約3時間、液晶OFF時が約5時間となっている。CD-Rに記録したDivXファイルを連続再生したところ、3時間25分で再生不能となった。 コンポーネント出力の画質は、三菱電機の28型CRT「28W-WR1」で検証した。コンポジットやS映像から切り替えると、にじみがすくなくすっきりとした映像が得られ、改めてコンポーネント入力の威力を実感した。また、プログレッシブ出力時に派手なクロマアップサンプリングが生じることもなく、ビデオ素材のプログレッシブ化もスムーズで美しい。確かに、据え置き型のユニバーサルプレーヤー、パイオニア「DV-578A」に比べるとダイナミックレンジや精細感で若干劣るものの、28型で見る限りその差はごくわずか。ポータブルDVDプレーヤーの出力画質としては充分高画質といえる。
■ ランダム、リピート操作はリモコン必須
リモコンなしの状態、つまり本体だけで操作できるのは、再生、停止、一時停止、早送り、早戻し、コマ送り、チャプタスキップ、DVDメニューへの移動、画質調整、表示アスペクト設定。 残りの機能は同梱のリモコンから操作する。たとえば、字幕や音声切替、OSDメニューの表示、初期設定メニューへの移動、タイトル/チャプタ/A-Bの各リピートなどではリモコン操作が必須となる。字幕と音声については、本体だけでもDVDメニューを活用することで切替は可能であり、ディスプレイのブライトネスも本体で調整できるので、「DVDを見るだけならとりあえずこれで十分」という判断なのだろう。 ただ、音声・字幕・アングル・チャプタ移動などを一括して操作する「OSDボタン」がリモコンにあり、これを本体にダイレクトボタンとして装備する方法もあったのではと思う。ランダム再生がリモコンからしか指定できないのも、音楽再生用途では不都合を感じた。 そのほかリモコンでは、タイトル/チャプタなどをサムネイルで一覧表示する「ダイジェスト」機能や、再生位置を記録する「ブックマーク機能」(リモコンでは“再開”ボタン)が利用できる。 初期設定メニューは、サイテックの「DVP-390C」などとよく似た構成。国内メーカーの製品と比べると、日本語フォントのセンスが古めかしい。各項目の選択と決定は、本体のカーソルボタンとENTERボタンで可能だが、初期設定に入るためにはリモコンが必要になる。
■ DivXの滑らかな早送りが可能
CD-R/RWで再生できるフォーマットは、公称でMPEG-4 SP(Simple Profile)、DivX 3.11/4.0/5.03/5.1.1/Xvid、MPEG-1/2、JPEG、MP3。 データを記録したCD-R/RWをセットすると、自動的にブラウザモードが立ち上がる。インターフェイスは、見た目も操作性もサイテックの「DVP-390C」とほとんど同じだ。カーソル移動で若干もたつくことがあるものの、操作はわかりやすい。映像、静止画、音声ファイルのいずれも同じインターフェイスを使用し、カーソルの上下でファイルの移動、ENTERで再生を開始する。また静止画のみ、左にプレビューが表示される。 テレビ録画をもとにした約30分のDivXファイル(720×480ドット、30fps)を再生したところ、読み込みに1秒ほどかかってから再生が始まった。再生はスムースで、ファイルによっては通常のDVDビデオと差異を感じない。さらにDVDビデオと同じく、2/4/8/16/32倍速の滑らかな早送りも可能。かつてのDivX対応プレーヤーに比べると、トリックプレイ時のストレスは大幅に軽減されている。
また、DivX再生においても、シャッフル/ランダム/フォルダ再生、コマ送り、スロー送り、ズームが行なえる。スロー送りとA-Bリピートの併用も可能。スロー送りは1/2、1/4、1/8、1/16倍速、ズームは2、3、4、1/2、1/3、1/4倍での表示切替に対応している。 ただし、DVDビデオで可能だった再生停止からのリジューム再生は無理だった。一度停止してしまうと、(電源ONを維持したままでも)必ずファイルの先頭からの再生になる。また、ブックマーク機能やダイジェスト機能はDivXでは利用できなかった。 CD-Rに記録したMPEG-2も再生できた。ただし、DVP-390Cと同じく高ビットレートのファイルはコマ落ちする。CDの転送レートの問題だと思うが、低レートのファイルにとどめておいた方が無難だろう。なお、WMVはファイルブラウザ上に現れず、RMP4は再生が途中で止まった。 なお、DVD-Rにデータ記録したDivXとMPEG-2などの再生も可能だった。その場合、MPEG-2もコマ落ちせず再生できた。
■ まとめ
DivXの再生など先進的な機能を盛り込みながら、外観も高級感があり、液晶ディスプレイの画質も問題ない。大型のポータブルDVDプレーヤーとしては、完成度の高い製品といえる。トレイカバーのつくりや動作音などに多少の不満はあるものの、実売68,000円前後という価格を考えれば、納得できる範囲だろう。プライベートルームでのサブプレーヤーとして、あるいはバカンス、キャンプなどで活躍しそうだ。 店頭でのライバルは、まずaxionの「AXN-3808R」だろう。ただしこの機種のディスプレイは8型で、DivX再生やコンポーネント出力に対応しないオーソドックスな製品。実売価格は5万円台前半だ。 次に、同じく9型ディスプレイという点では、DVD-RAMを再生できる松下電器のDVD-LX8(実売10万円前後)も比較検討の対象になる。DivX再生、重量、連続再生時間、コンポーネント出力、価格の面でBDP-1920に分があるものの、DVD-LX8にはDVD-RAMおよびWMAの再生機能、地上アナログチューナの内蔵、音声付き早見再生など、価格に見合う豪華な機能を誇る。SDメモリーカードスロットに記録したASF形式のMPEG-4ファイルを再生できるなど、付加機能については異なるコンセプトの製品といえる。利用スタイルにあわせて選ぶと良いだろう。
□ブルードットのホームページ (2004年6月10日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
|
|