■ ペガシスからMPEG編集ソフト登場 テレビ録画番組を編集する際の最重要課題は、なんといってもCMカットだろう。最近のDVDレコーダでは編集機能が充実した機種も多くなってきたが、GOP単位で編集機能しかなかったり、やたらと遅かったり、リモコンが使いにくかったりという機種もまだまだある。設定や調整の自由度はパソコンに勝るものは少ないが、パソコンでもCMカットに特化したソフトでの決定打はなかなかない。 MPEG編集ソフトがあまりなかった時代には、TMPGEncに搭載されていた「MPEGツール」で、MPEGファイルを切ったり、つないだりして、簡易編集を行なっていた人も多かった。しかし、「TMPGEnc 3.0 XPress」では、この「MPEGツール」機能が削除された。残念に思った人も少なくないだろうが、ああいった簡易的な編集機能は役目は終わったということだろう。 そこに登場したのが、「TMPGEnc MPEG Editor」だ。「TMPGEnc 3.0 XPress」や「TMPGEnc DVD Author」などのUIやエンジンを継承しながら、よりMPEG編集に特化している。通常版と、AC3コーデックを追加した「TMPGEnc MPEG Editor with AC-3 Pack TMPGEnc Sound Plug-in」が用意され、それぞれのダウンロード版が4,480円/6,480円で7月28日より発売、パッケージ版が6,980円/8,780円で8月27日より発売される。特徴は、フレーム単位の編集でも必要最小限の部分のみの再エンコードで出力可能となる「スマートレンダリング」に対応したこと。また、AC-3 PackではAC3の入出力をサポートしている。さらに、TMPGEnc DVD Author 1.6と同様のフィルムロール風のカット編集も行なえるとあって、これは期待できそうだ。 なお、試用したバージョンはβ版のため、製品版では一部仕様が異なっている場合がある。
■ とにかくカット編集の高速動作が魅力
それでは早速使ってみよう。インターフェイスは「TMPGEnc 3.0 XPress」などで採用しているTechnical Wizardを踏襲しており、プロジェクトの作成にはスタート画面で[プロジェクトの開始]もしくは、[プロジェクトの読み込み]を選択する。 起動画面にフィルムを鋏でカットしているイラストが大きくあしらわれていることからも、このソフトがカット編集に特化したソフトであることが伺える。 操作体系はTMPGEnc 3.0 XPressとほぼ同等で、ファイルのインポートのほか、DVDビデオ/-VR形式のソースの読み込みにも対応する。AC-3 Packではドルビーデジタル(AC-3)音声の入力/出力もサポート。特にDVDレコーダでは音声にドルビーデジタルが使われているケースが多いので、レコーダからのインポート作業が中心の場合は、AC-3 Packを選択したほうがいいだろう。もっともAC-3対応プラグインの「TMPGEnc Sound Plug-in AC-3」は、TMPEGEnc XPressやTMPGEnc DVD Authorのものと共通で、それらのユーザーであれば、別途購入する必要はない。また、同社のホームページから、必要に応じて単品で購入することもできる(2,980円)。
カット編集の画面でインポートしたファイルの編集が行なえ、編集画面はTMPGEnc DVD Authorと同様のフィルムロール風のもので、GOP単位でサムネイルが表示される。サムネイル下のスライダーで位置を進めて、「前へ」、「次へ」ボタンでGOP単位での移動が可能。センターの青いラインが編集点となっており、カーソルキーやマウスホイールでフレーム単位の移動を行ない、カットするポイントを指定。不要部分を選択してカットするというシンプルなものだ。 スライダーで任意の編集ポイントまで移動できるほか、サムネイル部をマウスで右クリックすることで、高速シークモードに入り、早送り/巻き戻しが行なえる。マウスの動きにあわせて矢印が表示され、早送り/巻き戻し速度を10段階で調整できる。また、指定時間分のシークには、キーボードの[PageUP]/[PageDown]ボタンに秒単位/フレーム数単位の割り当ててを行なうことできる。
【お詫びと訂正】 特筆すべきはそのレスポンスのよさで、Pentium M 1.3GHzのThinkPad X31でもサクサク動作する。1時間番組の編集時にスライダーで一気に30分ぐらい移動すると、さすがにサムネイル表示が追いつかないこともあるが、それでも1秒程度できちんと追従して表示される。「TMPGEnc DVD Author 1.5」と比較しても、インターフェイスのデザインが洗練されたほか、動作もかなり高速化されていることが実感できた。 なお、「TMPGEnc 3.0 XPress」で搭載していたインターレース解除や、ゴースト除去、ノイズ除去といったフィルタ機能は装備していない。音声ズレ補正やフェードイン/アウト、2カ国語音声のON/OFFなどの音声フィルタ機能は搭載しているが、これらを利用するとクリップの音声がすべて再エンコードとなってしまうので注意が必要だ。 複数のファイルを読み込むこともできる、それぞれのファイルのカット編集を行ない、出力時に任意の順番に並べて結合して出力することも可能となっている。
■ 出力設定もシンプル。720pソースの編集にも対応
カット編集が終わった後に、OKを押すと出力画面があわられる。TMPGEnc 3.0 XPressでは、DVD、ビデオCD、スーパービデオCD、XDVDなどの出力を最初にウィザードで選択する形をとっていたが、MPEG Editiorでは読み込んだファイルをMPEG/DVDビデオ/XDVD/ビデオCD/SVCDなどをターゲットとして指定し、出力するだけのシンプルなもの。 VR形式での出力には対応せず、DVD/CDへの書き出し機能はない。あくまでカット編集に特化したソフトになっており、ソースをMPEG Editorで作成し、DVD化などには別途オーサリングソフトを利用するという形になる。 出力設定画面ではアスペクト比などの設定が行なえるが、ビットレートの変更などは行なえない。[再エンコード部分解析]のボタンをクリックすると再エンコードされる部分の情報を確認できる。30分番組をCMカットしたファイルの場合、解析に約2分10秒かかった。
30分の720×480ドット/8MbpsのMPEG-2ファイル(1.76GB/MPEGオーディオ)のCM部をカットして、22分50秒(1.33GB)に編集/出力した際のエンコード時間は3分40秒。なお、音声を再エンコードした場合は9分34秒となった。 バッチエンコードにも対応。また、MPEGファイルの映像/音声の分離/結合を簡単に行なえる[MPEGツール]も備えている。ただし、TMPGEnc Plus 2.5のMPEGツールで備えていたMPEGファイルの結合機能は搭載しない。 また、ビクターのHDV対応ハイビジョンカメラ「GR-HD1」で撮影したデータの編集にも対応する(GR-HD1からのデータ読み込みには専用ソフトウェアが必要)。要するに720pのMPEG-2素材を編集できるということだが、実際にGR-HD1で記録した約1分のMPEG-2ファイル(1,280×720ドット)を読み込んでみると、SD解像度の時とさほど変わらない速度でカット編集が行なえた。カット編集画面のサムネイル表示間隔は[通常のMPEG用]、[XDVD用]、[Iピクチャのみ向け]から選択できる。
合計2分(260MB)の720pの映像素材(音声無し)を53秒に編集し、出力(116MB)した際にかかった時間は1分58秒。Pentium M 1.3GHzのThinkPad X31での結果なので、遅く感じるが、同社ではPentium 4 3GHz/Opteron 246以上で論理2CPU以上、メモリ1GB以上での利用を推奨しているので、そうした高速なPCであれば、より高速な出力が可能となるはずだ。720pのMPEGファイルを簡単にカット編集できる点では、非常に優秀なソフトといえると思う。もっとも現状気軽に扱えるようなHD素材はほとんどないわけだが……。
■ 最強のCMカッター 一昔前よりも、マニアの注目度は高くなくなってきたPCでのテレビ録画/編集だが、逆に、コンシューマ向けパソコンの多くが、テレビチューナカードを搭載した製品となるなど、一般層への「テレパソ」普及も進んでいる。 そうした中で、付属のアプリケーションに不満を持つ人も多いだろうし、DVDレコーダの編集機能に満足できないといった人もいるだろう。競合製品としては、カノープスのMpegCraft/MpegCraft DVDや長瀬産業の「TransRecorder SceneCutter 1.0」などもあるが、MpegCraftはAC3対応やVR対応がイマイチだったりするし、SceneCutterはもとよりGOP単位の編集しかできない。そうした不満点をうまくフォローしつつ、動作レスポンスを高速化して“CMカッター”としての完成度を高めている。とにかく効率的にCMカットできるソフトが欲しいという人には最適な製品だ。 □ペガシスのホームページ (2004年7月9日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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