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MPEG-2/4 HDDプレーヤー自作キット登場
DivXも再生できる?
挑戦者 「Movie Tank」
発売日:7月下旬
店頭予想価格:16,000円前後


■ “挑戦者”が市場に本格参入

 今回取り上げるのは「挑戦者」のMPEG-2/4プレーヤー自作キット「Movie Tank(SOTO-3.5U/M)」。外付けのUSB 2.0 HDDケースに、MPEG-1/2/4のビデオ再生機能を搭載したという一風変わった製品で、実売価格は16,000円程度。

 HDDは付属しないが、自作PCユーザーなどでは、3.5インチHDDが余っているという人も多いだろう。そういった余剰HDDの有効活用にもなり、現在のHDDの市場価格は160GBで1万円程度なので、あわせて購入しても3万円でおつりがくる。PCでのテレビ録画ユーザーには非常に面白そうな製品だ。

 ちなみに、挑戦者はアイ・オー・データのPCパーツ向けのブランドで、パワーユーザーをターゲットにしている。そのため初期不良交換以外のサポートはなく、“自分で問題を解決できる”ユーザー向けのブランドとなっている。従来は秋葉原の同社ショールームと、インターネット直販のみでの取り扱いとなっていたが、Movie Tankなど14日発表の製品からPCショップや大手量販店などでも展開していくという。


■ 結構ゴツイ本体。フォーマットに注意

同梱品

 同梱品はきわめてシンプルで、本体のほか、ACアダプタ、縦置きスタンド、リモコンなど。本体はアルミ外装の作りのしっかりしたもので、重量も520gと結構重い。外形寸法は199×50×119mm。消費電力は13W。

 本体前面の一番左に電源ボタンを備え、POWERランプ/HDDランプ/IR受光部/PLAYERランプ/USBランプなどを配している。背面にはUSB 2.0端子のほか、コンポーネント映像出力やS映像出力、コンポジット出力、アナログ音声出力を備えている。どうみても光デジタル出力にしか見えない端子が付いているが、これについては「サポートしていない」とのこと。


本体前面に電源ボタンなどを備える 背面にUSBやコンポーネント、S映像、コンポジット、アナログ音声などを装備。光デジタルは「サポートしていない」という 縦置きにも対応する

リモコン

 リモコンは、0~9までの数字キーなどを備えたやや大型のもの。ANGLE/SUBTITLEなどのボタンを見ると、DVDプレーヤー用のものを転用していると思われる。「Movie Tank」にはこんなに多くの機能はないはずなので、小ぶりのものでもよかったと思うが……。

 HDDは内蔵していないため、ケースを空け、手持ちの3.5インチHDDを搭載する必要がある。ケースは左右側面でネジ止めされており、ネジをはずすとカバーを開けることができる。本体内部にはファンを内蔵しており、デコーダチップのSigma Designs「EM8501」などを配した基板とIDEケーブル、電源ケーブルなどを備えている。

 搭載できるHDDは3.5インチ40~250GBまで。400GBのHDDも発売されているが、Movie Tankではチップの制限から250GBまでのサポートとしているという。HDDの接続は、HDDをマスターに設定し、IDEケーブルと電源ケーブルを接続するだけというシンプルなのも。HDDのマスター/スレーブ設定さえ知っていれば、特に戸惑うことはないだろう。


側面のネジをはずしてHDDを搭載する IDEコネクタや電源コネクタを装備。下面に冷却ファンを備えている Movie Tankのロゴを刻印

 HDDのフォーマットはFAT32/クラスタサイズ32Kが推奨されている。なお、Windows 2000/XPからリムーバブルディスクのフォーマットを試みると、32GB以上のHDDでも32GBのHDDとしてフォーマットされてしまうため、同社では専用のフォーマッタを挑戦者のホームページで公開し、そちらでフォーマットを行なうよう呼びかけている。



■ DivXの再生も可能。リモコンに難あり

 早速電源を入れてみる。今回利用したのはHDDは、Maxtorの250GB HDD「MaXLine Plus II 7Y250P0」だが、起動してみるとHDDのスピンアップ音やシーク音のほか、ファンの回転音も若干聞こえる。とはいえそんなに大きな音でもなく、ビデオ再生時などに気になるほどではない。

 パソコンに接続して電源を入れると、通常のUSB HDDとして認識され、データの転送が可能となる。対応OSはWindows 2000/XP。

メニュー画面

 パソコンからデータを転送し、本体を起動するとメニュー画面が表示され、VIDEO/AUDIO/PHOTOなどの再生ジャンルの選択が行なえる。

 なお、PCの電源が入っていて、Movie TankをPCと接続している場合は、パソコンからリムーバブルディスクとして認識されている。そのため、ムービープレーヤーとして利用はできないので、USBケーブルを抜くか、パソコンの電源を落とさなければならない。リモコンでリムーバブルディスク/ムービープレーヤーの機能を切り替えられれば便利だと思うが、実現は難しいのだろう。

 まずはビデオファイルを再生た。ファイルの選択操作などはリモコンのカーソルキーで行なえる。本体のレスポンスは良好だが、リモコンの指向性が強く、きちんとリモコンを本体前面の受光部を向けないと操作できない。説明書によれば受光範囲は7m、左右30度とのことだが、リモコンでの操作が中心となるだけに、もう少し受光部を大きめに取り、広範囲で操作できるようにしてほしかった。


メニュー画面

 対応フォーマットはMPEG-1/2/4。対応ビットレートはMPEG-1/2が最大8Mbps、MPEG-4(AVI)が最大4Mbps。MPEG-2の再生を試したところ、2~8Mbps(CBR)のファイルは問題なく再生できたが、15Mbpsの高ビットレートファイルはMovie Tank上から認識されなかった。また、拡張子が.m2pのファイルも認識できないので、転送前に.mpgなどにリネーム必要がある。.m2pで録画するテレビキャプチャカードなどでは、拡張子を.mpgで録画するように設定したほうがいいだろう。

 デコーダチップは、Sigma Disignsの「EM8501」で、多くのDivX対応プレーヤーで採用しているEM850x系のもの。チップ自体はDivXをサポートしているので、おそらくDivXも再生できるハズ。Dr.DivXで作成したファイルなどを中心にテストしてみたが、特に問題なく再生できた。また、コンポーネント端子も備えており、480p/720p/1080iでの出力にも対応する。なお、S映像とコンポーネントの同時出力は行なえない。

 MPEG-1/2の早送り/巻き戻しは分単位のスキップ機能となっているが、MPEG-4系のファイルには、8/16/32倍速の早送りとなる。リモコンの操作の後1~3秒程度のバッファ時間があるが、その後はスムーズに早送り/巻き戻し動作が行なえる。

スキップ設定画面 コンポーネント出力の設定も行なえる デコーダチップはSigma DesignsのEM8501

 できること自体はLinkPlayerなどと、さほど変わらないので目新しさはないが、増設HDDがビデオプレーヤーになるという発想は非常に面白い。不満点としては、リモコンの利用範囲の狭さと、不要なボタンがあまりにも多いこと。リモコンの操作時に常に受光部を意識しながら操作しないとなかなかうまく動いてくれない上、不要なボタンが多く、例えば早送りをしたいのに間違えて次のファイルに飛ばしてしまったりすることもある。ANGLEなどどう考えてもMovie Tankで使い道がなさそうなボタンに加え、なぜか0~9までの数字キーも付いていて、実際に使うボタンが半分程度というのはさすがにどうにかしてほしい。

 また、パソコンと接続すると、ビデオ再生中でも有無を言わさずリムーバブルストレージに切り替わってしまうのも残念。Movie Tankはパソコンからは通常のUSB HDDとして認識されるため、テレビキャプチャカードの録画用ドライブとしてMovie Tankを指定して録画することもできる。しかし、Movie Tankで動画再生中に、録画の実行のためパソコンが立ち上がると問答無用で再生を停止し、リムーバブルHDDとして動作してしまう。プレーヤーとして使うときはUSBケーブルを抜けばいい話なのだけれど、ビデオプレーヤーとして、Movie Tankを使いこなすには、このあたりの運用方法に工夫が必要となるだろう。


■ オーディオ機能は結構使える

AUDIOのメニュー画面

 また、オーディオファイルや静止画ファイルの再生にも対応する。[AUDIO]の画面では、MP3のオーディオデータが再生できる。フォルダ別にファイル名順で表示されるので、パソコンでアルバム/アーティスト別などにフォルダ管理し、そのまま転送すればオーディオジュークボックスとしても利用できる。

 特殊再生機能としてはリピート再生とランダム再生を備えている。WMAやOGG VorbisファイルはMovie Tank上で認識できなかった。また、オーディオ出力については、セットアップ画面でデジタル/アナログと選択できる。同社によれば光デジタルはサポート外とのことだが、特に問題なく出力できた。

 [PHOTO]機能は、最大4MBまでのJPEGの静止画像表示が可能。[Playlist]では、ビデオやオーディオを混ぜてプレイリスト再生を行なうことができる。

音楽再生画面 再生中のファイル確認も行なえる デジタル出力も設定できる
PHOTOメニュー画面 リストからENTERで決定した順にプレイリストを作成する


■ PC録画派にお勧めの低価格ビデオ出力機器

 機能はシンプルだが、実売価格で16,000円程度と価格も安く、160GBのHDD(実売1万円程度)とあわせても26,000~27,000円程度で構成できる。特にPCでのテレビ録画ユーザーには非常に魅力的な製品だろう。また、パソコンをアップグレードしてHDDが余っている人や、HDDを増設するついでにちょっとした付加機能が欲しいと思っている人など、幅広くアピールできる製品だ。

 リモコンや、PCとのUSB接続時にビデオ再生が行なえないなどの不満点もあるが、外付けHDDケースにMPEG再生機能をつけるという視点は面白いし、HDDビデオプレーヤーを最も安価に実現したという点も評価できる。

 少々高くてもネットワーク対応で、NAS的に利用できるとより便利だと思うのだが、実際に5月のAVeLフェアではLAN対応の「Movie LAN Tank」も出展していたので、そうした発展にも期待したい。

 ノンサポートの挑戦者製品ということもあり、それなりのパソコンユーザー以外には敷居が高いかもしれないが、パソコン向けの安価にビデオ出力環境が欲しいというユーザーには面白い選択肢が登場した。

□挑戦者のホームページ
http://supertank.iodata.jp/
□製品情報
http://supertank.iodata.jp/products/soto35um/index.html
□関連記事
【7月14日】アイ・オー、挑戦者ブランドのMPEG-4プレーヤー自作キット「Movie Tank」
-自作PC向けブランド“挑戦者”を本格展開へ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040714/iodata.htm
【4月26日】アイ・オー、「AVeLフェア」を開催。MPEG-4プレーヤー自作キットを展示
- XVD TVキャプチャカードやSDビデオレコーダも出展
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040426/iodata.htm

(2004年7月16日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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