■ 一見地味な第4世代iPod 24日のiPod mini発売を直前に控えた7月19日、第4世代iPodが突然発表された。6月のWWDCでの発表が噂されたがそこでは発表されなかったため、しばらく新製品発表は無いと考えていた。それだけに、意外な時期の発表だった。 デザイン的にはかなり大きな変更が行なわれているが、第2世代のWindows対応、第3世代の薄型/軽量化など、今までの大きなモデルチェンジに比べると第4世代iPodは比較的地味な変更に感じる。 主な変更点は、以下のようになる。
目玉となるのは、バッテリとUSB充電だろうか。いずれにしろ大幅なプラットフォーム革新が行なわれた第3世代と比較するとやや地味な印象は残る。インパクトがあるのはその価格だ。第3世代iPodでは20GBモデルが44,940円、15GBモデルが33,390円で、15GBモデルは今回の20GBモデルと同様にドックリモコンなしだった。今回20GBモデルはリモコン/ドックが省かれる代わりに1万円以上低価格化された。 ともあれ、現在1.8インチHDDプレーヤーで圧倒的なトップシェアのiPodが、主力製品の20GBモデルを1万円以上の値下げするとあれば、他社に対する大きなプレッシャーになるし、消費者としてはかなり値頃感もでてくる。また、アップデートの内容の多くもユーザーから要望が多かったポイントで、使い勝手の向上にも期待される。
■ リモコンやドックを省いて低価格化 パッケージはキューブ型で、カラフルな外箱をはずすと、おなじみの折りたたみ式の中箱が現れる。中箱を開くと誇らしげな「Designed by Apple in California」の文字が記されており、さらに同梱品の箱には「Enjoy」とプリントされている。箱を開くたびに、早く使いたいと思わせる演出はアップル製品ならでは。
同梱品は本体のほか、USB 2.0ケーブル、FireWire(IEEE 1394)ケーブル、ACアダプタ、CD-ROM、ヘッドフォンといったシンプルなもの。第3世代の20GBモデルから、リモコンやドックが省かれたのは賛否両論あるだろうが、従来のリモコンは再生停止やボリュームコントロール程度の機能に乏しいものだったので、個人的にはさほどマイナスというものでもない思う(もっとも電車などで見かけるiPodユーザーのほとんどはリモコンを使っているようだが……)。 ドックの省略は残念だが、AppleStoreで単品購入できる(5,040円と高いが)し、新たにUSBでも充電可能となったり、なおかつ実売が安くなっていることを考えればあまり問題ではないと思う。なお、iPod miniのプレス説明会で聞いたところでは、ドックは第3世代iPodと同等品とのことなので、旧製品のユーザーであれば流用可能だ。 キャリングケースも省かれているが、デザイン的にもイマイチで個人的にはまったく必要なかった。iPodの場合、サードパーティからアクセサリが豊富に用意されているので、それらから好みのものを選択して、使いこなす方が楽しいだろう。 それでは本体を見てみよう。第3世代のiPodでは、MENUや、再生など4つのボタンをホイールの上部に配していたが、第4世代ではそれらのボタンを統合し、再生/停止などの操作ボタンもホイールに取り込んだ「Click Wheel」(クリックホイール)に変更された。 厚みは従来モデルより1.2mm薄くなったが、さほど違いは感じられない。個人的には第4世代のClick Wheelの操作感やシンプルなデザインはいいと思うが、起動時にうっすらとオレンジに点灯する第3世代iPodのイルミネーションが気に入っていた。ギミック感や、モノとしての魅力はやや後退したようにも感じる。
底面にドックコネクタを装備。FireWireケーブルはACアダプタとつなぎ合わせて充電用ケーブルとして利用できるほか、パソコンにFireWire端子(6ピン)があれば、iPodと直接接続して充電できる。また、新たに付属するUSB 2.0ケーブルでは、パソコンとUSB 2.0で接続して、充電できるようになった。
■ 良好なクリックホイールの操作性。駆動時間も1.5倍に
それでは、早速データを転送。オーディオソフトはApple謹製の「iTunes 4.6」。AACやMP3、AppleLossless、WAV、AIFFでの取り込みが行なえるほか、ジャンルやアルバム、アーティストごとの検索が容易に行なえる。 また、プレイリスト再生機能や全ライブラリの曲を、さまざまな条件で絞り込む「スマートプレイリスト」、自動選曲や再生予定の曲の追加、削除、並べ替えなどができる「パーティシャッフル」なども備えている。 なお、iPodではタグ情報を元にDB管理を行なうので、MP3のID3Tagなどはきちんと作りこんでおいたほうがいい。もちろん音楽CDからiTunesを用いて変換すれば、WAVEやAppleLossLessでもきちんとデータ管理できるので、基本はiTunesを利用したほうがいいだろう。 iTunesでは基本的に全てのPC上のライブラリと同期する設計となっているため、iPodを接続すると自動的に新規のファイルやプレイリストの同期が開始される。もちろん手動でiPodを更新するような設定も可能だ。MP3を中心とした8.48GBのライブラリをUSB 2.0経由で転送したところ、20分で同期が終了した。 第4世代iPodの操作は、新搭載のClick Wheelを使用する。Click Wheelは、iPod miniで既に導入済みのインターフェイス。ホイール状のタッチパッドと、押しボタンを統合しており、指先でなぞってホイール操作が行なうほか、上下左右と中央部分のボタンを押し込むことで、メニューの選択や取り消し、再生/停止などの操作が行なえるというもの。
ホイールから手を離すことなく、ほぼ全ての操作が可能で、iPod miniに比べてホイール口径も大きいため操作性は良好だ。アルバム/アーティスト/ジャンルごとの検索が行なえるのはもちろん、メニューのカスタマイズにより作曲者ごとの検索メニューなども用意されている。 メインメニューにはミュージック、ブラウズ、エキストラなどの操作が割り当てられているほか、新たに[曲をシャッフル]のメニューも追加されている。 [曲をシャッフル]は全ライブラリからのシャッフル操作。ライブラリを活用しながらBGMとして流しておくような用途が多い場合は、起動してすぐにシャッフル再生が行なえるので、ありがたい機能だろう。 音楽を聞く場合はメインメニューのミュージックから、プレイリスト/アーティスト/アルバム/曲/ジャンルなどから検索し、任意の曲やアーティストを選択できる。ホイールで、速度を変えながらスクロールできるので、大量の曲目管理も非常に容易で、目的のファイルにたどり着きやすい。このあたりのインターフェイスのつくりのよさは、iPodの最大の強みといえるだろう。 また、電池容量の拡大によりバッテリ駆動時間も約12時間と従来(8時間)の約1.5倍に延長している。128~160kbpsのMP3ファイルをシャッフル再生して計測したところ、約13時間30分と、カタログ値を上回る結果となった。バッテリの残量表示は、1ドット単位で表示していくタイプなので、詳細なステータスが確認できるのもうれしいところだ。 さらに、ACアダプタやIEEE 1394ケーブルからの充電に加え、USB 2.0からの充電にも対応。出張時にパソコンを持っていく場合であればiPod用のACアダプタを持たなくてもすむし、外出先でiPodのバッテリがなくなってしまった場合などでもUSB搭載パソコンを持っていれば充電できる。特にWindows PCのユーザーには非常にうれしい機能強化といえるだろう。
■ 音質は良好。On-The-Goの大幅進化がうれしい 音質は、従来のiPodを踏襲した素直なサウンドで、傾向としては大きく変わらない。情報量はさほど多くないが、ポータブルオーディオプレーヤーとしては満足いく性能だろう。
iAUDIO M3と比較すると、全体的にiPodのほうがヌケが悪く、情報量も少な目だ。やや低域が物足りないようにも感じるが、顕著に低域が弱いわけというわけでもない。それよりイコライザ機能は20種を超えるプリセットモードが用意されているのにもかかわらず、ユーザーモードがないため、好みのイコライザ設定が行なえないのが気になる。 [Bass Reducer]とか[Treble Booster]など、使わなそうなプリセットをたくさん入れるぐらいであれば、ユーザー設定が行なえるようにしてくれるとありがたいのだが……。iPodのホイール操作ではイコライザ設定を行なうのが難しいからなのだろうか? 付属のイヤフォンも従来製品と同じものと思われる。低域はやや弱いが、中高域にかけての分解能などは、付属イヤフォンとしては満足いく品質。そのまま使っても問題は無いだろう。もっとも「白いイヤフォン」は、iPodユーザーの目印ともなっているので、iPodユーザーであることを電車内などでアピールしたくない人は、変えたほうがいいのかもしれない。
また、ライブ盤などで曲間を詰めて再生する、いわゆる「ギャップレス再生」には対応していない。対応しているプレーヤーはRio Karmaくらいで少ないものの、ライブの盛り上がりなどが、一瞬寸断されるのはやはり気になるもの。 一応CDからのリッピング時に[詳細設定]-[CDトラックを統合]とすると、アルバムを1ファイルとしてリッピングできるが、いちいち作成するのも面倒。次世代機、できればファームウェアのアップデートなどで対応してもらいたいところだ。 新iPodで注目されるのは「On-The-Go」機能の強化。On-The-Go機能は、iPod上でプレイリストを作成できる機能で、ライブラリから任意の曲を選んで表示が点滅するまでホイール中央の決定ボタンを長押しすると、リストに登録される。第3世代iPodでも備えていたが、新iPodではこのOn-The-Goプレイリストが複数登録できるようになった。
[ミュージック]-[プレイリスト]-[On-the-Go]-[プレイリストを保存]から作成したプレイリストを保存できる。1度保存されると、On-the-Goプレイリストはリセットされ、新たなプレイリストが作成可能となる。On-the-Goプレイリストの作成数には特に制限は無い。 また、次回のシンク時にOn-The GoプレイリストをiTunesに自動転送する機能も搭載した。つまり、iPod上で作成したプレイリストをiTunes上に保存し、再編集などが行なえるということ。 従来のOn-The-Goは作りっぱなしだっため、面白い機能であるものの、あまり活用できなかった。しかし、iTunes上に保存できるようになったことで、例えば会社帰りの電車で週末のドライブ用にプレイリストを仮に作成して、家に帰ってiTunesで本編集、iPodとシンクして車で聞くなど、さまざまな活用が考えられる。
個人的には、オーディオプレーヤーの楽しみを広げる面白い取り組みと感じた。かつて、一生懸命オリジナルテープ作成にいそしんだ記憶のある人であれば、かなりハマる機能ではないだろうか? また、iTunesからiTunes Music Store(iTMS)にアクセスしてみると、日本からは曲購入こそできないものの、ユーザーやアーティストが作成したプレイリストなどを見ることができる。それらを参考にオリジナルプレイリストを作成するのも面白い。こうしたプレイリスト再生機能の充実はiPod/iTunesの魅力を支える大きなポイントとなっていると思う。
また、アドレス帳やカレンダー、メモ、ゲームなども搭載している。ゲームはブロック崩しの「ブリック」に、落下傘を撃ち落とす「パラシュート」、イントロクイズ「ミュージッククイズ」、「ソリティア」が入っている。iPodらしいのはミュージッククイズで、音楽のイントロを5秒程度流して5択で曲名を応えるというもの。 試しにやってみたが、自分で購入したCDの曲のはずなのに、全然記憶に無かったり、思い出せなかったりといったこともちらほら。HDDに好きなだけ詰め込めるので、それだけ普段聞かない曲が大量に入っていることがよくわかった。
■ オーディオプレーヤーとして正常進化。安くなって競争力も強化 デザイン的にも機能的にも大幅な変更は感じられないが、旧モデルの不満点をうまくつぶしながら、着実な進歩を遂げた製品になっている。特にUSB充電の対応とバッテリ駆動時間の延長はユーザーにとってはメリットが大きい。On-The-Goの進歩も「痒いところに手が届く」強化点といえる。 録音機能やフォトストレージ、ビデオ再生といった付加機能は無いが、iTunesなど周辺ソフトウェアや操作性などの完成度は、他のプレーヤーをリードしている。AirMac Expressなどのホームオーディオ向けの周辺機器も発売され、第4世代のiPodとあわせ、パーソナルオーディオソリューション市場での地位をさらに確固たるものにしそうだ。 他のプレーヤーメーカーの対抗策としては、液晶リモコンや音質、カスタムEQ設定や、ビデオ対応などの付加機能になるのかもしれない。しかし、第4世代iPodがなにより市場に与えるインパクトが大きいのは33,390円という価格だろう。従来の15GBモデルと同じ33,390円ということで、20GBモデルでは4万円台が相場となっていた市場に、トッププレーヤーが低価格で参入してしまった形だ。そのため、クリエイティブが発売予定の「Zen Touch」(29,800円)を除き、他社のプレーヤーには割高感も出てきた。 早速、東芝が30日発売予定のgigabeatの20GBモデル「gigabeat G22」の直販価格を約7,000円値下げし、39,800円に改定するなど、影響が出てきている。ともあれ、今回の新モデルにより価格競争力でもトップクラスとなったわけで、価格戦略も含め他メーカーの今後の対応も楽しみだ。 □アップルのホームページ (2004年7月30日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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