■ Zenシリーズが最安20GB HDDプレーヤーに ソニーの本格参入などで活気付いたこの夏のHDDオーディオプレーヤー市場。専門誌だけでなく、一般誌でもソニー vs アップル的なアングルで語られることも多く、HDDプレーヤーへの世間的な認知度も徐々に高まってきている。 そうした中、アップルが発売した第4世代iPodは、既にレポートしたとおり機能やデザイン的には一見大きな変化は無いが、着実な進歩が伺える製品となっていた。その新iPodで驚かされたのが価格戦略。iPod 20GBで33,390円という価格は、競合他社を一気に引き離す低価格。この市場にかけるアップルの意気込みが感じられるというものだ。
しかし、19日の新iPod発表直後の22日、クリエイティブ メディアは新HDDオーディオプレーヤー「Zen Touch」を発表。20GB容量のHDDを搭載しながら29,800円と、iPodより3,000円以上低価格のプレーヤーとなっている。 従来は2.5インチHDDプレーヤー「Zen Xtra」や1インチHDDの「MuVo2」などを発売していた同社だが、今回初めて1.8インチHDDプレーヤーに参入した。やや大きめな筐体で、ホワイトを基調にしたデザインにタッチパッドの採用など、iPodを思い起こさせる雰囲気もあるが、iPodの倍の24時間連続再生は魅力的。さらに低価格とあってはiPod追撃の一番手となるかも?
■ 結構大き目の本体だが、デザインはシンプル
パッケージはブリスターパックで、同梱品は、本体のほか、ACアダプタ、USBケーブル、CD-ROM、イヤフォン、キャリングケースなど。リモコンは付属しない。 本体は、白のアクリル素材を基調としたデザインで、2インチの青色ELバックライト付き液晶ディスプレイ(160×104ドット)を装備する。シンプルですっきりしたデザインは個人的には好印象だ。 操作部は、中央に静電式のタッチパッドを採用。タッチパッドの上部に[OKボタン]、パッド左脇に[戻る]ボタン、[MENU]、[RANDAM]、右脇に[トラック前戻し]、[再生/停止]、[トラック先送り]ボタンを備える。 本体左側面に電源ボタンと、ボリューム上下ボタンを備え、右側面にAC入力端子を装備する。本体上部にはヘッドフォンジャックとUSBポート、ロックスイッチを備えている。背面もシンプルだが、iPodのようにベタベタ指紋が付かないのはありがたい。
外形寸法は68.6×22×104.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約203g(バッテリ含む)。第4世代iPodと比較すると一回り以上大きめで、重量も重く感じる。特にZen Touchのほうがだいぶ厚くなっており、初代iPod(厚み19.9mm)と比べてもやや厚い。しかし側面が面取りされているため、Zen Touchのほうが手になじみ持ちやすい。いずれにしろ、いまどきのHDDプレーヤーとしてはやや大きめではある。
■ タッチパッドの操作感はまずまずだが、慣れが必要
オーディオデータの転送はUSB 2.0経由で行なう。転送ソフトは、付属のオーディオ統合ソフト「MediaSource」、もしくはエクスプローラライクな転送ソフト「NOMAD Explorer」を利用する。 MediaSourceでは、CDからのリッピングのほか、データ管理やプレイリスト作成、オーディオ転送などが行なえる。アクのあるデザインと日本語フォントの質は、好みが分かれるところだろうが、使い勝手は悪くない。 再生回数やレーティング、新規追加トラックなどを検出し、自動的にプレイリスト化するスマートプレイリストも搭載。また、追加/変更されたファイルだけ自動更新する「AudioSync」も備えている。 対応するオーディオファイルはMP3/WMA/WAV。Windows Media AudioのLossless/Professionalの作成も可能だが、Zen TouchではLossless/Professionalに対応しない。なお、DRM対応のWMAも転送可能となっている。 MediaSourceから8.5GBライブラリをAudioSyncでZen Touchと同期した際の転送時間は、52分25秒。USB 2.0にしてはやや遅めだ。
USBストレージクラスには非対応だが、NOMAD Explorerをインストールすればエクスプローラ的な操作画面からデータやオーディオの転送が行なえる。エクスプローラの操作が好みであれば、こちらを使ってもいいだろう。なお、クリエイティブではDRM対応WMAの転送には、NOMAD Explorerを使わず、MediaSourceを利用するよう推奨している。
本体のメインメニューには、ライブラリ/再生リスト/再生モード/デバイス設定/情報など用意されている。 音楽を再生するときは、[ライブラリ]から曲を選択するか、[再生リスト]を利用する。ライブラリでは、プレイリストやアルバム、アーティスト、ジャンルなどの検索モードが用意されている。 アルバム/アーティスト検索や曲検索画面で、OKを押すと[直ぐに再生]などのメニューが現れ、再生や再生リスト追加が行なえる。再生リストは本体上で作成できるプレイリスト。アルバムや曲を選択し、OKボタンを押すとメニューが現れ、[リストに保存]を選択するとリストに曲やアルバムが追加される。 iPodでいうOn-The-Go機能だが、再生リスト画面で名前をつけて保存をすると、MediaSourceへのプレイリスト書き出しも行なえる。新iPodのOn-The-Goと比べると名前をつける分だけ、手間がかかるものの使ってみるとなかなか楽しめる機能だ。
気になるのはZen Touchの名前の由来ともなっているタッチパッドの操作性だろう。操作は、タッチパッドで上下スクロールを行ない、操作したいモードを選択。OKボタンで決定するというもの。OKボタンで決定すると下の階層へと移動、上の階層に戻る場合は[←]の戻るボタンをクリックする。 タッチパッドを上下に指でなぞると、上下スクロールを行なう。パッドの上/下部を長押しすると高速スクロールとなるため、10GB弱のライブラリ管理でもかなり高速に目的のアルバムやアーティストまでたどり着くことができる。ただし、1、2列の比較的近い項目の移動には、慣れるまでは行ったり来たりを繰り返してしまう。下まで高速スクロールした後に、OKボタンまで指を戻すのは億劫にも感じるが、本体の[設定]から、タッチパットのクリックに、決定動作を割り当てることもできる。 タッチパッドの感度設定も行なえるので、初期状態の操作感がしっくりこない場合は、低/中/高の3段階で調整可能。また、一番上の[検索]をクリックするとアルファベット順の検索が行なえる。たとえばZで始まるアーティストなどを検索する時は、アーティスト検索画面で検索をクリック、アルファベットメニューをたどると一気にZで始まる最初のアーティストまでジャンプできる。 やや気になるのは再生中の早送り/戻しや曲スキップ/バックボタンについて。機能自体は普通なのだが、送り/戻しともにタッチパッドの右側についているのだ。使いにくいというわけではないのだが、多くのプレーヤーでは、左側が曲戻し、右側に曲送りが、割り当てられている。そのため慣れるまでは間違えて操作しやすいので注意が必要だ。 操作レスポンスは良好で、アルバム/アーティストなどモードを切り替えた時にも、直ぐに検索画面が立ち上がり、待ち時間なしに操作が行なえる。新採用のインターフェイスのため、やや戸惑う箇所もあるが、動作速度は高速で、慣れてしまえば軽快に操作できる。
■ 音質は良好。無理にタッチパッドを使わなくても……
付属のヘッドフォンは、ネオジウムマグネットを採用したというインナーイヤー型で、MuVo2と同じものと思われる。やたらと音場は広く、さらに低域の再現性がイマイチで、特にベースやバスドラの音が聞きづらい。高域も癖があり、ストリングス系のソースなとでは、はまると気持ちよく感じることもあるが、総じてバランスが良くない。 ヘッドフォンをShure E2cやSennheiser MX400に変更して、本体の音質をチェックしてみる。非常に素直な印象で、低域から高域までバランスよく再生できる。第4世代iPodと比較してみると、低域がしっかり出るほか、情報量も十分で個人的にはZen Touchの方が好ましいと感じた。
イコライザはナチュラル/クラシック/ディスコ/ジャズ/インスト/ポップス/ロック/ボーカルなどのプリセットのほか、4バンドのパラメトリックイコライザで、カスタム設定も行なえる。 ただ、このあたりの設定にもタッチパッドをフル活用するのが結構面倒。任意のフェーダをタッチパッドの上下で選択/決定し、設定値を調整するのにまたタッチパッドの上下を利用する。UI上で左右の移動となるフェーダ選択は左右の曲スキップボタンなどに割り当て、フェーダ調節だけタッチパッドで行なえばいいと思うのだが……。また、時計の設定なども全てタッチパッドでやらないといけないのでわずらわしい。 そのほか、リピート再生や再生リスト曲の全リピート、再生リストのシャッフル再生、ランダム再生(全ライブラリの対象)に対応する。タッチパッド左下のRANDAMボタンで1クリックでランダム再生できるのも目新しいところだ。 また、メインメニューには[レコーディング]の項目もあり、別売のマイク内蔵型FMワイヤードリモコン「CNWR-W」(直販価格4,599円)を使用し、FMラジオの録音やボイスレコーディングも行なえる。 バッテリは内蔵型で交換できないが、駆動時間はカタログ値で24時間とかなり長時間再生ができる。実際に128~160kbpsのMP3を中心にランダム再生を行なったところ、25時間以上再生が可能だった。なお、充電はACアダプタのほか、USBからの充電も可能。充電時間はACアダプタの場合4時間、USB経由の場合は約8時間。
■ 2万円台買える唯一のHDDオーディオプレーヤー タッチパッドは、慣れるまではやや戸惑うかもしれないが、検索性やレスポンスはよく、インターフェイスは思いのほか使いやすく仕上がっている。 iPodとの価格差は3,000円強だが、gigabeat G22など他のプレーヤーと比較して1万円程度安く、2万円台でHDDプレーヤーに手が届くというのは大きな魅力。ボディはやや大きめだが、手に収まりやすい形状で、片手で使いづらいVAIO Pocketなどと比べると取り回しはいいだろう。 カスタム設定で音にこだわりたいユーザーや、皆が持っているiPodとは違うプレーヤーを持ちたい、という人にはよい製品だと思う。それだけにデザインはもう少しiPodから離れたデザインイメージを採用してほしかったのだが……。 □クリエイティブのホームページ (2004年7月30日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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