■ 高音質プレーヤーがモデルチェンジ 今回取り上げるのは、バーテックスリンクのシリコンオーディオプレーヤー「iAUDIO U2」。バーテックス リンクではiAUDIOシリーズ開発元の韓国COWON SYSTEMSと総代理店契約を締結し、本格的に市場展開を図る旨を発表しているが、iAUDIO U2は、その提携発表後の第1弾製品となる。
従来モデルの「iAUDIO4」も以前取り上げたが、録音/FMチューナなど一通りの機能を備えつつ、BBEなどの高音質機能が魅力的な製品だった。機能や音質には満足だったが、「強いて難点を言えば、USB利用時の取り回しの悪さと、もう少しポケットに収まりの良いデザインにして欲しかった」と書いているとおり、小さな不満点は残った。 しかし、iAUDIO U2ではUSBコネクタへのアクセスも良く、本体も小型化かつ角が落とされており、ポケットに収まりやすいサイズとなるなど不満点は解消。さらに、電源もリチウムポリマー充電池となり、USB充電も可能となるなど細かい機能強化も図られており、デザインも一新された。 256/512MBモデルと1GBモデルが用意されるが、店頭予想価格は256MBが25,000円前後、512MBが32,000円前後、1GBが45,000円前後。256MBモデルは他社製品よりやや高めな価格設定で、1GBモデルもシリコンプレーヤーとしては安いが、HDDプレーヤーと比べると容量比では割高感は否めない。 しかし、ライン録音やFM録音などの機能は充実しており、さらなる小型/軽量化が図られるなど、シリコンオーディオならではメリットを生かす方向に進化しているようだ。ボディカラーは256MBがルビーレッド、512MBがサファイヤブルー、1GBがプラチナブラックとなっている。今回は256MBモデルでテストした。
■ 小型化されて可搬性が向上。デザインも良好
同梱品は、ヘッドフォンやネックストラップ、ラインケーブル、USBケーブル、USB接続ジャック、本体ケースなど。 本体の外形寸法は25×18×73.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は34g(本体のみ)とiAUDIO4の32×17×75mm/重量33gから1回り小型化された。さらに角を残したスクエアなデザインだったiAUDIO4に比べ、丸みを帯びたデザインに変更されたため、手に持った感触はスペック以上に小さく感じる。本体の塗装も高級感があり、モノとしての魅力は十分だ。 128×64ドットの4ライン表示液晶ディスプレイを装備。液晶画面は、iAUDIO4では左側に再生曲名やビットレートなどのファイル情報を表示、右側に再生レベルや曲数、再生モードなどの再生情報を表示していたが、iAUDIO U2ではファイル情報/再生情報をまとめて表示している。 再生画面上でBBEなどのエフェクトやイコライザモード、シャッフルなどの再生モード、再生レベル、曲名、再生時間、曲数、ビットレートなどをまとめて表示できる。やや窮屈にも感じるが、1画面で確認できる情報量という意味ではiAUDIO4を引き継いで優秀だ。 操作ボタンは、液晶脇に方向キーの「5Direction Key」を備えるほか、本体上面にREC/A-Bと、再生/一時停止ボタン、HOLDスイッチを備えるというシンプルなもの。ほぼ全ての操作や設定が5Direction Keyで行なえるようになっている。ヘッドフォン出力端子のほか、ライン入力端子も装備。さらに、マイクやFMチューナも内蔵している。
同梱品で特徴的なのがACアダプタ。iAUDIO U2ではDC入力を備えていないため、充電はUSB端子経由で行なう。そのためACアダプタの先もミニUSB端子の形状となっている。ACアダプタを利用せず、PCと接続してUSB経由で充電することも可能だ。 iAUDIO4では安っぽい雨ガッパみたいな素材だった本体ケースも、黒を基調にグレーのモールドを施したデザインに一新された。無骨ではあるがスポーティなイメージにはなったと感じる。
■ 5Direction Keyで操作性も向上 本体の操作は、5Direction Key(以下5D Key)を中心に再生/停止ボタンなどを組み合わせて利用する。5Direction Keyを押し込むと、MENU画面が立ち上がり、再生モードやエフェクトの有無などの各種設定が行なえる。またMENUの一番上の[Mode]を選択すると、[MP3 Player]、[FM Radio]、[Voice Recorder]、[Line-in Recorder]の4モードが用意され、ライン/マイク録音などの機能切り替えが行なえる。
オーディオプレーヤーとして利用する際には[MP3 Player]を選択する。オーディオプレーヤーとしては、MP3/WMA/WAVEに対応。ビットレートはMP3が8~320kbps(VBR対応)、WMAが20~192kbpsをサポートする。Ogg Voribisには対応していない。 PCからのオーディオ転送はUSB 2.0経由で行なう。USBストレージクラスに対応し、iAUDIO U2の[MUSIC]フォルダにファイルのドラッグ&ドロップするだけ。また、付属ソフトの「JetShell for iAUDIO U2」を利用したオーディオ転送も可能となっている。 iAUDIO4では、USB転送時に本体の電池カバーを開けてUSBコネクタを接続する、という面倒な仕様だったが、iAUDIO U2ではUSBコネクタのゴムカバーを外すだけで接続できる。
操作体系は非常にシンプル。本体上面の再生/一時停止ボタンで再生、停止を行なうほか、5D Keyでほぼ全ての設定や操作が行なえる。iAUDIO4では曲送り/戻りスイッチやMODEスイッチなどを備えていたが、iAUDIO U2では5D Keyにそれらの操作が割り当てられ、よりシンプルになった。
5D Keyを長押しすると、ナビゲーション画面となり、フォルダ階層表示が行なえる。ここで、ファイルを選択すると再生が開始される。ナビゲーション画面利用時にRECボタンを押すと、画面が再生画面に切り替わる。
また、ナビゲーション画面ではファイルを選択し、5D Keyを押し込むと[Play now]、[Add to List]、[Intro]、[Delete]とメニューが選択可能になる。Play nowは再生開始、Introは曲のイントロを再生する。また、Add to Listは本体のみでプレイリスト作成する[Dynamic Playlist]用で、ナビゲーション画面からファイル/フォルダを追加していくだけで、再生リストを作成できる。 ナビゲーション画面で長押しを行なうと、ナビゲーションモードが立ち上がり、フォルダ表示の[Music Files]のほか、[Dynamic PlayList]が現れる。Dynamic PlayListでは本体で作成したプレイリストの再生に対応する。
再生画面では、上面の再生/停止ボタンと、5D Keyで操作を行なう。5D Keyの上下がボリュームの上下、左右で曲送り、戻し、左右に長く倒すことで早送り/巻き戻しが行なえる。iriverのiFPシリーズでは早くからこうした方向キーを採用していたが、iAUDIO U2でも非常に直感的に操作ができる。ナビゲーション画面はiAUDIO4を踏襲しているが、5D Keyの導入で、iAUDIO4のスイッチ式キーよりも使い勝手ははるかに向上している。
■ 音質も良好。BBEやMach3Bassの効果は大きい
iAUDIO製品の特徴としてBBEやMach3Bassなどの高音質化機能が挙げられる。初期状態ではBBEが5、Mach3Bassが10とかなり高レベルに設定されており、そのまま聞くと高域の解像感や低域のボリュームが印象的だ。 イコライザをノーマルにし、高音質化機能を全てOFFにして聞いてみたが、際立った特色は無いが、バランスはなかなか良好。ソースを選ばず対応できるだろう。付属のヘッドフォンはiAUDIO4と同タイプの後部が出っ張った独特のデザインのものだが、広めの音場が特徴的で、中高域のヌケが良い。付属のヘッドフォンとしては非常にクオリティが高いものだ。
MENUの[JetEffect]から、7モードのプリセットモードを備えた「5 Band EQ」と、中高音を補い位相補正を行なう「BBE」、低域の末端周波数を補う「Mach3Bass」、MP3圧縮時のロスを補完する「MP3 Enhance」、擬似サラウンドの「3D Surround」、「Pan」などが選択できる。 iAUDIO製品ではお馴染みの「BBE」は、中高域の位相補正などで、音の再現性を高める技術で、10段階のレベル設定が行なえる。特に高域の解像感とチャンネルセパレーションの向上は顕著に感じられる。かけ過ぎると音場が狭くなるような印象もあるが、レベル5程度までであれば、ソースを問わず効果が感じられると思う。 また、Mach3Bassでは低域の量感が自然に向上できる。10段階のレベル設定が可能で、レベルを上げても不自然な音の変化は少ない。ポータブルプレーヤーでは低音が不足しがちなので、結構重宝する。MP Enhanceも、低域から高域まで自然に出力されるようになり効果は大きい。ただ、BBEを高レベルに設定してMP3Enhanceを併用すると、音割れが目立つ。BBEをレベルを控えるかOFFにして使ったほうが良さそうだ。
■ 録音機能やFMラジオも搭載。USB充電にも対応
モードセレクト画面では、「FM Radio」、「VoiceRecorder」、「Line-in Recorder」なども選択でき、ボイスレコーディングやライン録音、FM再生/録音などが行なえる。 「VoiceRecorder」では、内蔵マイクによりMP3形式での録音が可能。10段階のマイク感度設定が行なえ、ビットレートは96/112/128kbps。32kbpsからの録音モードが用意されていたiAUDIO4に比べると選択できるビットレートが減っており、録音はモノラルとなる。マイク位置が背面で、マイク感度がイマイチだったりするものの、会議や講演などの録音程度であれば、十分使えそうだ。 「Line-in Recorder」も同様に96/112/128kbpsのMP3形式での録音に対応。音声をもモニタしながら入力感度も10段階で設定可能なほか、入力音声からトラック間の空白を自動検出し、個別ファイルにするAuto Syncも0(OFF)~8までのレベル設定が用意されており、CDからの録音にも十分対応できる。録音品質も満足いくものだ。
FM Radioは、オートスキャンで自動選局が行なえ、簡単にFM受信が可能。ライン入力録音などと同様に、96/112/128kbpsのMP3形式で録音もできる。
バッテリは内蔵リチウムポリマー電池で、再生時間はカタログ値で約20時間。BBE 5/Mach3Bass 10として、ボリュームレベル26で連続再生したところ約16時間50分で再生停止した。 ACアダプタ利用時の充電時間は約2時間で、パソコンのUSB端子経由での充電も可能となっている。また、本体設定の[General]に充電速度設定の[Charge]の項目も用意されており、NormalとSlowが選択可能となっている。これは旧型のPCやバッテリ駆動のノートPCなど、給電能力の低いPCからの充電用と位置づけられており、Slowに設定した場合の充電時間は約6時間30分となっている。
■ 大きさ、機能/性能は満足。カラーバリエーションが欲しい 従来モデルの欠点をつぶしつつ、小型、軽量化が図られており、非常に良くできたオーディオプレーヤーとなっている。価格は256MBモデルで25,000円前後と、2万円そこそこの他社製のメモリープレーヤーと比較するとやや高め。しかし、録音機能の充実や、音質や作りのよさなどを考えれば納得いく価格差だと思う。また、本体の小ささも大きな魅力といえるだろう。
問題はiPod miniなどの1インチHDDプレーヤーとの価格差だろう。さらに512MBモデルは32,000円前後と、1.8インチHDDプレーヤーのiPod 20GBとほぼ同価格帯となってしまう。容量的にはHDDには届かないが、小型化という意味ではHDDプレーヤー、特に1.8インチHDDプレーヤーより大幅に小さくできる。 小型を最優先すればシリコンオーディオ、容量を優先すればHDDとなると思うが、iAUDIO U2は「小さくて手軽」というシリコンの長所をうまく生かした製品に仕上がっている。“HDDよりシリコン”というユーザーには非常に良い選択肢だと思う。 強いて文句をつけるとするとカラーバリエーション。256MBがルビーレッド、512MBがサファイヤブルー、1GBがプラチナブラックと決められてしまっているのが残念なところ。毎日持ち歩くうえ、首掛けでの利用を想定した製品なだけに、好みのカラーを選べるというのは非常に重要なことだと思う。直販限定などでもカラーを選択できるといいのだが……。 □バーテックス リンクのホームページ (2004年8月20日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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