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第40回:ついにレンズシフト対応のカジュアル・シアター
~熟成された画質と高い設置自由度 松下電器「TH-AE700」~


 人気のカジュアルシアター・プロジェクタ、パナソニック「TH-AE700」が今年も順当なモデルチェンジを行なった。この価格帯クラスは前モデルユーザーの買い換え需要も多いだろう。前モデル「TH-AE500」からどんな部分が変わったのかも含めて紹介する。


■ 設置性チェック~ レンズシフト機能をついに搭載。2.0倍ズームレンズと相まって設置自由度はトップクラスに

TH-AE700

 外観にはあまり変化がないようにも見えるが、実際には若干大きくなっている。重量も約700g増加し、3.6kgとなった。TH-AE500でも利用できたTH-AE300の天吊り設置用の天吊り金具「TY-PKE300」はTH-AE700でも引き続き利用可能。また、専用の「TY-PKE700」(47,250円)が設定された。TY-PKE700では、天井からの距離の調整が行なえるようになっている。

【訂正】記事初出時に、「TH-AE700ではTY-PKE300は利用できない」としておりましたが「TY-PKE300」も利用可能の誤りでした。お詫びして訂正いたします

 また、仕様の詳細は後述するが光学系も新設計になったことにより、テレコンバージョン・レンズ「TY-LECTE300」、ワイドコンバージョン・レンズ「TY-LECWE300」もTH-AE700の対応オプションから外されている。前モデルからの買い換えは、全く新しい製品への買い換えと変わらないことになる。


筐体は一新され、サイズも一回り大きく、重くなった

 投射光学系は新設計となり、このクラスでは最高レベルの2.0倍ズームレンズを実装する。100インチ(16:9)の最短投射距離は約3.1mと先代TH-AE500並だが、2.0倍ズームレンズのポテンシャルが活かされるのは大きな部屋の最後部に設置したい場合だ。約6.0mの距離で投射しても100インチ(16:9)の画面に映像を収められる。TH-AE500では別売りのテレコンを組み合わせなければ不可能だった、12畳~16畳の大きめなリビングなどの最後部への常設が可能となった。

右がレンズシフト操作用スティック。上にシフトした場合、ネジツマミを締め付ける前にレンズの自重でスティックが垂れ下がってきてしまうことがある。これならば他機種でも採用している回転ボリュームタイプの操作の方がよかった

 TH-AE700の設置面における最大の改良点は、レンズシフト機能を搭載した点だろう。シフト量は左右方向に投射画面サイズの±25%、上下方向に±63%と必要十分なものになっている。

 リビングテーブルのような背の低い台の上への設置でも、レンズシフトで投射画面を上に持っていけば、下駄を履かせることなく投射画面を現実的な高さへ投射できる。疑似天吊りにも台置きにも対応できなかった、中半端な高さの棚の最上段の天板に設置したい、といったケースにも、台置き設置の形で投射レンズを若干下向きにシフトすれば問題なくスクリーンに画面を収めることが可能だ。

 スクリーン中央正面のスイートスポット位置に座ると頭が投射レンズを塞いでしまうようなケースでも、TH-AE700を横にずらした形で投射画面を横にシフトすれば対応できる。TH-AE700はデジタル台形補正機能(縦方向のみ)を持ってはいるが、ほとんどこの機能のお世話になることはないと思われる。

 レンズシフト操作は本体全面、投射レンズ横に設置されたジョイスティック状のレバーで行なう仕組み。スティック先端にはネジ状のツマミがあり、これを締め付けることで、そのシフト状態でロックすることができる。スティック中央位置にはクリック感があるので、レンズシフト状態をニュートラルにしたいときにはこのクリック感を探ればいい。

 一見、直感的な操作感を連想させるこの操作系だが、実際に操作してみると意外にやりにくい。スティックがニュートラル位置にあると、結構力を入れなければスティックが動かず、力を入れすぎると、ものすごい勢いでシフトしてしまう。スティックが中央位置にないときも指一本で操作するのは困難で、力のいれ具合が非常に難しい。

 ランプはTH-AE500同様の超高圧水銀系だが、新タイプとなり、駆動方法の改善と相まって、公称ランプ寿命はTH-AE500の1.5倍の3000時間となった。交換ランプは「ET-LAE700」(26,250円)でユーザー交換が可能だ。

 本体側面や背面にあるスリットは吸気口で、排気口は前面、投射レンズの横にあるスリットから行われる。ファンノイズはファン制御「高」ではプレイステーション 2(SCPH-30000モデル、以下PS2)よりも大きいが、「標準」では、それ以下になる。「高」の時でも、ユーザーから直線距離で2mも離れればほとんど音として気にならない。

 吸排気口となる各スリットは斜めに切り混んだ構造になっているので、外観上の光漏れはほとんどないといっていいレベル。投射映像への影響はゼロだ。


■ 接続性チェック~DVI-D入力を廃してHDMI入力を搭載

TH-AE500同様、TH-AE700でも稼働時にDC12Vを出力するTRIGGER端子は健在。電動開閉するスクリーンやシャッターとの連動を取る目的で活用できる

 ビデオ系接続端子はコンポジット入力、Sビデオ入力、コンポーネントビデオ入力、D4入力が各一系統ずつで、背面パネル形状の違いはあれど、TH-AE500とまったく同等だ。PC入力系はD-Sub15ピンのアナログRGB入力が1系統。

 そして、TH-AE700ならではの接続端子としてHDMI端子が新設されている。その代わりTH-AE500に搭載されていたDVI-D端子は姿を消している。HDMI端子のデジタル映像は実質的にHDCP対応のDVI-D端子と同列なので、市販の変換コネクタなどを利用すれば、PC映像をDVI-D経由でデジタル接続できる。



■ 操作性チェック~直観的なインターフェイスで調整が可能

 電源投入後、実際の投射映像が出るまでの所要時間はコンポーネント入力映像で約12秒後(実測)とかなり高速だ。

リモコンは従来モデルのイメージを踏襲しながら、新たにCOLOR.Mボタンを装備

 いろいろと新設計が採用されたTH-AE700ではあるが、リモコンについてはTH-AE300以来のものが流用されている。歴代モデルを知るユーザーは「またこれか」という印象を抱きそうだが、このリモコン自体のデキはよく、大きな不満はない。底面のくぼみに人差し指を当てて持てば、親指が自然と十字キーの中央に乗るようになっているエルゴノミックデザインは好感触だし、[LIGHT]ボタンを押せば全ボタンが自照式でオレンジに発光する点も及第点が与えられる。また、リモコン操作自体の感度も良好。

 入力切り替え用ボタンは、[VIDEO]、[CMPNT]、[HDMI/PC]の3ボタンがあり、それぞれのボタンを押すたびにそのボタンにカテゴライズされた系統の映像入力が順送り式に切り替わる。具体的には[VIDEO]を押せばコンポジット入力とビデオ入力が、[CMPNT]を押せばコンポーネントビデオ入力とD4入力が、[HDMI/PC]を押せばHDMI入力、アナログRGB入力が順送り式に切り替わる。

 入力の切り替え所要時間はSビデオ→コンポーネントビデオで約1.3秒、コンポーネントビデオ→アナログRGB入力で約1.3秒という結果(いずれも実測)で、高速だ。

 アスペクト比は[ASPECT]ボタンを押すたびに順送り式に切り替わる方式。アスペクトモードは[4:3]、[16:9]、[ジャスト]、[ズーム]、[Vスクロール]の5種類。切り替え所要時間はゼロ秒で、操作とほぼ同時に切り替わる。

 [ジャスト]は、画面中心の歪みを抑えたまま4:3映像をワイド化するモード。[ズーム]は俗に言う「レターボックス」モードで、4:3映像にはめ込まれた16:9映像を切り出して拡大表示するモードだ。[Vスクロール]はアナログRGB入力時専用モードで、表示画面の縦解像度がパネル解像度(720ドット)を超えるときに、表示映像の任意部分をパネル解像度(1,280×720ドット)で切り出して表示する特殊モード。表示エリアの選択はリモコンの十字キーで随時行えるようになっている。

 画調モードは[PICTURE]ボタンを押すことで順送り式に切り替わる方式。TH-AE500では、この画調モードの切り替えだけ、なぜかサブメニューが開いてからの十字キー選択になっていたが、TH-AE700では改善されている。なお、画調モードの詳細については後述する。ちなみに切り替え所要時間は実測で0.5秒程度。アスペクト比切り替えと比べると一瞬もたつく感じがあるが、待たされるような感じではない。

 ユーザー調整可能な画調パラメータはTH-AE500と基本的には同じ。「ピクチャー(コントラストに相当)」、「黒レベル(ブライトネスに相当)」、「色の濃さ」、「色合い」、「シャープネス」、「色温度」といったものが基準値に対して“±いくつ”といったオフセット設定の形で設定できる。色温度もK(ケルビン)指定でなく“±”指定なのもTH-AE500と同じだ。この他、TH-AE700特有の動的絞り制御である「ダイナミックアイリス」機能のオン/オフもユーザー設定が可能になっている。

メインメニュー 映像の調整。ダイナミックアイリスのON/OFF設置画も行なえる

 調整マニアのために用意されたアドバンスドメニューはTH-AE700でも健在。RGB3原色それぞれの出力特性(ガンマ、コントラスト)を設定でき、これを最大3つまでユーザーメモリとして記憶できる。ユーザーメモリの管理方式はTH-AE500と同じ方式で、コンポジット、Sビデオ、コンポーネント、D4の各入力で3つのユーザーメモリを共有し、別の3つのユーザーメモリをHDMI、アナログRGB入力で共有する。

 また、ユーザーメモリはプリセット画調モードに対して「どのくらい補正するか」という管理方式であるため、プリセット画調モードと対(ペア)になるイメージになる。たとえば[シネマ1]を調整してユーザーメモリ1として登録すると、[シネマ1]モード選択時には必ずユーザーメモリ1の設定内容が反映されるようになるのだ。逆に別の画調モードを選択しているときにユーザーメモリ1を選択すると、それまで選択されていた画調モードはキャンセルされ、ユーザー設定の反映された[シネマ1]に切り替わる。結構ややこしいので、扱いには慎重を要する。

アドバンスドメニュー その他の設定

 さて、リモコンをよく見ると最下段に[COLOR.M]という、TH-AE500のリモコンにはなかった新しいボタンがあることに気づく。これは画調モード調整を新しいインターフェースで行なえる、TH-AE700の新機能の呼び出しボタンになっている。

 このボタンを押した瞬間、投射画面は静止し、十字カーソルが現れる。この十字カーソルはリモコンの十字キーでダイレクトに操作でき、静止中の投射画面の任意の箇所を選択すれば、その箇所の色がクローズアップされ、この色をどんな傾向の発色に変更するかを調整できる。実際には同系色の色に影響が及ぶので、なかなか思い通りに扱うのは難しかったりもするのだが、これまでの数値操作のみの画調調整モードと比べれば格段に直感的に行なえる。なお、この選択式の色補正は、最大8ポイントまで記憶できるようになっている。

新インターフェースのカラーマネージメント機能。「編集」を選択する カーソルが現れるので、調整したい色があるところへカーソルを移動。移動はリモコンの十字キーで行なう ピックアップした色を色を見ながら編集できる。肌色にもっと赤みを付けたい、草木の緑を深い緑にしたい、青空や海をもっと鮮烈な青にしたい……といった具体的な要望を手っ取り早く叶えてくれる手段として威力を発揮してくれる
(c)Disney Enterprises,Inc.


■ 画質チェック~ダイナミックアイリスなどの新機能は、画質にどう影響するか

 採用液晶パネルは、1,280×720ドット解像度のもので、TH-AE500と同じだ。公称光出力は1,000ANSIルーメン。スペック的にはTH-AE500よりも150ANSIルーメン明るくなったわけだが、TH-AE500も家庭内での実用上、十分な明るさを有していたこともあり、TH-AE700の輝度アップは体感上あまり実感がない。

 そして、公称コントライト比は、透過型液晶プロジェクタとしては最高レベルとも言える2,000:1を達成している。ちなみに公称光出力も公称コントラスト比も、「ダイナミックアイリス」有効時のスペック表記となっている。

 ダイナミックアイリスとは映像の輝度レベルに合わせて動的なランプ駆動、ガンマ補正、そして絞り制御を行なう機能だ。明るいシーンではランプの最大パワーを活かした画作りに、暗いシーンでは光量を抑えて、絞りを絞って迷光を抑えて黒浮きを低減させる動作を行なう。よって公称光出力はランプ最大光量、絞り開放による最大の明るさのときであり、コントラスト比はこの時の明るさと、光量最小、絞り最小の時の暗さの対比になる。なお、動的な絞り制御は1/60秒単位でリアルタイム変化に対応しているという。

 スペック的にはTH-AE500からかなり、上を行くような表記になってはいるが、光量が多くなる制御ケースでは、やはり透過型液晶特有の黒浮きは若干ある。コントラスト比2,000:1というスペックから、DLPプロジェクタ並のコントラスト比を連想してしまうかもしれないが、TH-AE700のコントラスト比は一連の映像を見て時間積分的に感じられるもの、と考えた方がよい。中明色が映像全体を覆っているシーンでは、やはり若干の黒浮きが見られ、全体として淡い画作りになる。しかし、宇宙戦闘シーンのような、暗いシーンを見ている中で突如爆発が起きたりするような場合には、その明暗の対比を強烈に実感する事ができる。

若干レンズシフトした状態での投射映像の拡大写真。画素単位の色収差はまだ見られるがTH-AE500よりは幾分か改善されているように見受けられる

 数ある720p透過型液晶プロジェクタのなかでも、TH-AE500だけが持っていた特殊機能「スムーススクリーン」機能は、TH-AE700にも継承されている。これは、画素単位に入射光が複屈折(光が境界面で2方向に分かれて進む現象)するような水晶屈折板を透過型液晶パネルに張り合わせた微細光学技術だ。見た目として、画素格子の影が画素の光で埋まるような感じで投影される。

 TH-AE700には“NEW”が付加された「NEWスムーススクリーン」機能が搭載されたわけだが、1画素が“田”の字のように分割されて拡大されて見える独特な画素形状はTH-AE500から変わりなし。アニメのような単色領域が多い映像は、透過型液晶プロジェクタ特有の粒状感が目立ちがちなのだが、TH-AE700では120インチ程度にまで拡大しても、1~2mほど離れた視聴位置からはほとんど画素格子が見えない。

 発色については、超高圧水銀系ランプ特有の青緑の強い傾向はTH-AE500同様に上手く抑えられており、後述する画調モードにもよるが、白色も純白に近く、人肌にも黄緑感はなく血の気が感じられる。

 階調表現は3板式液晶系特有のリニア感が上手く出ているが、表示画面の大半を白にして、その一部分にグレースケールを表示したりすると、迷光が最暗部に影響し、かなり灰色に見える。つまり、いわゆる黒浮きが目に付くようになる。


プリセット画調モード
 ソースはDVDビデオの「モンスターズ・インク」(国内盤)。撮影にはデジタルカメラ「D100」を使用した。レンズはSIGMA 18-50mm F3.5-5.6 DC。
 撮影後、投影画像の部分を800×450ドットにリサイズしてから画像の一部分(100×75ドット)を切り出した。

(c)DISNEY ENTERPRISES,INC./PIXAR ANIMATION STUDIOS
 
●ノーマル
 階調性のバランスの取れたモード。白色は太陽光を受けた白Tシャツのような純白。
 発色の傾向はブラウン管に近く、明るい方向のダイナミックレンジが高く取られており、デジタル放送などのハイビジョン映像とのマッチングはよい。画作りとしてはシャープネスが強く調整されており、映像ソースによってはざわつき感が感じられる。シャープネスを-3~-6とするとナチュラル感が向上する
 
●ダイナミック
 超高圧水銀系ランプの特性がそのまま出ているような印象で青緑が強く出る。また、最明部が飛ばし気味になり、黒浮きがかなり強くでる。それでも中明色付近ではリニアな階調性が健在で、映像を見たときにはそれほどいやな印象はない。
 シャープネスが「ノーマル」以上に強調されており、繊細なグラデーションを楽しむ用途には不向き。完全に遮光できないときにテレビ代わりに視聴したいときや、ゲーム、PCプレゼン向き
 
●シネマ1
 ハリウッドのカラリスト、デビッド・バーンスタイン氏監修の画調モード。色温度がぐっと下がり、白も赤みを帯び、柔らかい色調になる。階調性も正確。シャープネスを押さえ込んである関係で、グラデーションもしっとりとした感じでアナログな美しさを放つ。特に肌色の発色がリアルに見える。
 しかし、明るさを抑えている関係で表現のダイナミックレンジは意外にも狭い印象を受ける。たとえば中明色が支配的になる映像ではコントラスト不足を感じることも。全体的にトーンか抑えられた人物描写中心の映画鑑賞向きか
 
●シネマ2
 「シネマ1」を基調としながらも、色温度は「ノーマル」程度にまで高められたモード。明るさも若干強くなり、「シネマ1」のコンラスト不足が補われている。明るくなっているとはいえ、階調性の破綻はなし。「ノーマル」で気になったシャープネスの強すぎ感もなし。
 汎用性は「シネマ1」よりも高いと感じられ、「ノーマル」で違和感を感じたらこれにするといい
 
●シネマ3
 画作りの基本は「シネマ1」としながらも、色温度と明るさを「シネマ1」と「シネマ2」の中間あたりに設定したモード。結果的に中明部の表現力が増した印象になる。「シネマ1」でコントラスト不足を感じつつ、「シネマ2」よりはトーンを抑えたいという向きに活用したいモード
 
●ビデオ
 発色の傾向は「ノーマル」に近いが、中明色以上の階調表現を急激に上げていったようなモード。見た目的には「ノーマル」のコントラスト強調版といった感じになる。
 映像の立体感は「ノーマル」「シネマ2」以上だが、相対的に暗部階調表現が雑に見える。個人的にはあまり用途を感じられないモード
 
●ナチュラル
 色温度、光量、シャープネス等のチューニングは「シネマ1」に近い印象だが、暗部から明部までの階調をよりリニアに可視化することを心がけているのが特徴的なモード。
 たとえば黒い服のシワの様子や、黒い車やピアノへの映り込み表現などは、このモードがもっとも正確に表現される。
 しかし、透過型液晶プロジェクタの特性上、階調表現のスタート地点である、もっとも暗い“黒”が若干明るく出てしまっているため、ダイナミックレンジが不足している印象が否めず、映像全体としてのコントラスト感は「ノーマル」や「シネマ2」に及ばない。

映像タイプ別のインプレッション
◆DVDビデオ(パイオニアDV-S747A/コンポーネントビデオ接続)
 映像の描写力は文句なし。DVD映像ソースとのマッチングは良好だ。インターレース映像を入れたときに働く、2-3プルダウンのプログレッシブ化ロジック「シネマリアリティ」も優秀なようで、美しいフレームが得られていた。

 お勧めの画調モードは、人物表現主体ならば「シネマ1」、晴天の屋外シーンを多く含むタイトルならばシャープネス調整をした「ノーマル」がいい。迷ったら階調表現とダイナミックレンジがベストバランスな設定の「シネマ2」を選択するといい

 
●ハイビジョン(コンポーネントビデオ接続)
 ハイビジョン映像の解像度は1,920×1,080ドット(インターレース)。一方、TH-AE700のパネル解像度は1280×720ドット。画素数的に約半分の縮小表示となるわけだが、この縮小表示ロジックが優秀なこともあってか、その解像感は十分感じられる。たとえば、チェック模様のような複雑な線模様が絡む衣服、ウェーブの掛かった髪の毛などの表現も、その質感がぼけることなく描写されていた。

 お勧めの画調モードは、色ディテールの全てが視覚される「ナチュラル」

 
●PC(アナログRGB入力/RADEON9800PRO)
入力解像度 結果
640×480ドット
848×480ドット
856×480ドット
800×600ドット
1,024×576ドット △(640x480と誤認)
1,024×768ドット
1,152×864ドット ×
1,280×720ドット
1,280×768ドット △(1024x768と誤認)
1,280×960ドット △(1280x1024と誤認)
1,280×1,024ドット
1,600×1,200ドット ×
 HDMI-DVI変換ケーブルが入手できなかったために、PCとの接続テストはD-sub15ピンのアナログRGB端子接続でのみ行なった。パネル解像度と完全一致し、1対1にマッピングされる1,280×720ドット解像度の画面モードの表示が最も美しかった。常用するならばこれだろう

※パネル画素に一対一に対応した表示……、正常表示……、表示はされるが一部に違和感あり……、表示不可能……×

 
●ゲーム(PS2/コンポーネントビデオ接続)
 PS2のインターレース映像は「シネマリアリティ」機能が効いているとコーミングがひどく出る。これを回避するにはメニューで「シネマリアリティ」を「オフ」とすればよい。
 画面が縦横にスクロールゲームをプレイした際にも、目立った残像はなかった


■ まとめ~TH-AE500から買い替えるべきか否か?

 待望のレンズシフト機能と、高倍率ズームレンズの搭載で、競合機に引けを取らない設置性の自由度を獲得したTH-AE700。

 レンズシフト機能の搭載によって心配されたフォーカスムラだが、目くじらを立てるほどはひどくない。PC映像をパネル解像度の1,280×720ドットで入れて文字コンテンツを表示した場合には、「なるほど」と気付くことが出来るが、一般的な映像コンテンツの視聴で気になることは全くない。

 画質についても定評のあったTH-AE500からさらに高められた感じで、型番の「+200」分の進化を遂げている。とはいえ、TH-AE500からの買い換えを強く奨励できるかというと、そうともいえない。現状でうまく設置できているのならば、「高い設置自由度」は無関係なことだし、パネル解像度にも変わりはない。高められた輝度スペックとコントラストスペックは、前述したように、体感上の差はさほど無い。上級のLCOSプロジェクタや中堅のDLPプロジェクタと比べると黒浮きはやはりある。

 それでは、ホームシアター初心者の“ファースト”プロジェクタとしてはどうか? こうした向きには、TH-AE700は文句なく、お勧めできる。熟成された画質と高い設置自由度は、もはや“カジュアル”シアターという定義を超えたレベルに到達している。30万円出して低解像度のローエンドクラスのプラズマテレビなどを買うより、絶対TH-AE700を購入した方が満足のいく映像鑑賞が楽しめるはずだ。

 さて、最後に、最近の透過型液晶プロジェクタの評価の際に必ず話題になる「縦縞状のシミ」について触れておこう。これは、残念ながら、TH-AE700にも存在することが確認できた。映像が左右にパンする時に、見えた。これは業界的には「採用している液晶パネルの一律な仕様」という事になっているようだ。とある液晶パネルメーカーの技術者によれば、「もともと透過型液晶プロジェクタには存在した問題なのだが、最近の製品の高輝度化によって多くの人に認知されるようになった」と言っていた。多くのユーザーが気が付くようになったのだからこそ、早急に改善されることを期待したい。

□松下電器のホームページ
http://matsushita.co.jp/
□ニュースリリース
http://matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn040902-1/jn040902-1.html
□製品情報
http://panasonic.jp/theater/projector/index.html
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~動的光量制御も備えた松下電器「TH-AE500」~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031113/dg27.htm

(2004年10月22日)

[Reported by トライゼット西川善司]



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