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第41回:720pプロジェクタのトップセラー機が一新
~画質やメンテナンス性を改善「三洋電機 LP-Z3」~


 松下「TH-AE700」に続いて、三洋もLP-Z3を投入。昨年の人気プロジェクタが、今年も順当なモデルチェンジを行なってきた。前回取り上げたTH-AE700の同価格帯のライバル機だ。


■ 設置性チェック
  天吊り金具等はLP-Z2から流用可能。トップクラスの移動量のレンズシフトも継承

 LP-Z3ではカラーバリエーションがシルバーとブラックの2色が設定され、シルバーはLP-Z2ライクなカジュアルなイメージに、ブラックは高級感のある面持ちに仕上がっている。

 色だけでなく、投射レンズ周りのデザインには起伏の入り方が変更されており、LP-Z2とは異なるイメージに仕立てあげられている。しかし、本体サイズは359×273.5×115.7mm(幅×奥行き×高さ)で、若干高くなっている以外はLP-Z2とほぼ同じ、重量も約4.1kgでLP-Z2と同じだ。基本的な取り回し感覚はLP-Z2と変わらない。

 実際、天吊り金具用取り付け金具「POA-CHB-Z2」(15,750円)と低天井用の天吊り金具「POA-CHS-US01」(31,500円)はLP-Z2のものがそのままLP-Z3用純正オプションとして設定されている。現在LP-Z2ユーザーならば、単純にLP-Z2とLP-Z3を付け替えることができる。

写真はLP-Z2で壁掛け設置を行なった例

 LP-Z2専用の設置スタイルとして提案された壁掛け設置にも、LP-Z3は対応している。壁掛け設置とはプロジェクタを部屋の壁に投射レンズを上向き(映像を天井に投射する方向)に設置し、ミラーで反射させてスクリーンに投影するというもの。プロジェクタ設置に特別な台を必要とせず、スクリーンと反対側の壁に省スペースに設置できるメリットがある。また、レンズシフト機能と組み合わせれば、スクリーン正面に相対させる必要はなく、(レンズシフト機能が及ぶ範囲内で)壁のデッドスペースとなっている部分に自由に設置できる。

 この壁掛け設置は三洋独自に提供しているわけで、かなり強い訴求が期待できる。ちなみに、壁掛け設置の場合、対応したランプ配置と光学エンジン設計、内部吸気排気構造が必須であり、他のプロジェクタで無理矢理に同様の設置するのはお勧めできない。ランプ内のガス密度が偏って色むらを引き起こしたり、吸気排気機構が性能を発揮できずオーバーヒートを引き起こす危険性がある。

 投射レンズは光学1.3倍ズームの短焦点タイプ。100インチ(16:9)を約3.0mで投射できる。一般的な個人ユースでは問題ないが、10~12畳以上の部屋で投射距離が長めになる設置ケースでは投射映像が大きくなりすぎる場合もある。たとえば12畳の部屋で投射距離を部屋の全長いっぱいの約6mとした場合、投射映像はズーム率最小にしても150インチ(16:9)になってしまう。壁掛け設置の場合は、部屋の全長そのものが投射距離になってしまうので、この設置スタイルで導入を検討している人は設置シミュレーションを念入りに行なうべきだろう。ちなみに、ライバルのTH-AE700では、2.0倍ズームレンズの採用で、投射距離約3.0mでも約6.0mでも100インチ(16:9)サイズに投射できる。その意味では大きい部屋への設置ケースではTH-AE700の方が柔軟性が高いといえる。


前面 レンズ部 使用しないときにはこのように投射レンズ側のカバーを閉めておくことができる。ちなみに、カバーが閉まっているときには、リモコンによる電源オンが使えない。この点には留意したいところ

 レンズシフト機能は上下方向に±1画面分、左右方向に±0.5画面の移動が可能で、これもLP-Z2と同等だ。これはライバルのTH-AE700を凌駕するシフト量となっている。本棚の最上段天板に載せる疑似天吊り設置では、プロジェクタ本体の天地を逆転して設置するのがセオリーであるが、1画面分下げて投影できるLP-Z3であれば、疑似天吊りではなく本棚の上に普通に設置すればよい。TH-AE700よりも優れた部分だ。

 光源ランプは超高圧水銀系ランプの135W UHPランプでLP-Z2と同等のものだが、ランプの型式番は「POA-LMP86」に変更された。ただし、輝度スペックはLP-Z2と同一であるし、光特性や寿命についてLP-Z2から具体的な改善をしたというアナウンスもない。価格も31,500円と据え置きなので、無理してLP-Z2のものを流用したり、逆にLP-Z2がLP-Z3用のランプを利用することに意味はないだろう。

右側のスリットはダミーで穴が空いていない

 静音性については、口径15%アップの大型静音ファンを組み合わせるなどの改良を加えた結果、ランプ最大輝度駆動(ブライトモード)時で29dBを達成した。さらに、シアターブラックモードでは23dB。両方ともスペック的にはクラス最高の静音性能ということになる。実際にランプ最大輝度(ブライトモード)でプレイステーション 2(SCPH-30000モデル、以下PS2)と比較してみたが、LP-Z3の方が静かなほど。当然シアターブラックモードであれば一層静かになる。全く無音というわけではないが、シアターブラックモードなら直線距離で2mほど離せば、視聴位置からほとんど気にならない。

 光漏れは、正面からみて左側面側の排気スリットから若干あるが、投射映像への影響は皆無といってよい。LP-Z2同様に、右側のスリットはダミーで穴が空いておらず、排気口はこの左側面スリットに集約されている。ここを塞いでしまうと本体内部がオーバーヒートを起こす危険性があるので、台や本棚などに設置しようと考えている人は、左側面部付近に物を置かないように気を配りたい。



■ 接続性チェック
  PC入力はアナログRGB。デジタル入力としてHDMIを装備

背面

 色以外の外観上の違いは最小限のLP-Z2とLP-Z3だが、背面の接続端子パネルには変更の手が入っている。

 ビデオ系接続端子は、コンポジットビデオ入力、Sビデオ入力の他、D4入力とコンポーネントビデオ入力が1系統ずつある。LP-Z2からはコンポーネントビデオ端子が1系統増設された。

 PC系はLP-Z2に実装されていたDVI-I端子が、アナログRGB入力端子に取って代わっている。

 さらにHDMI入力端子が新たに追加された。日本でもHDMI搭載機が増えてきており、この流れに沿ったものだ。ちなみに、競合のTH-AE700もDVI-D端子が廃されHDMI端子に取って代わっている。今後、プロジェクタでは標準的な装備になっていくだろう。



■ 操作性チェック
  リモコンが新デザインに

 電源投入後、実際の投射映像が出るまでの所要時間はコンポーネント入力映像で約12秒後(実測)とかなり高速だ。

電源ボタンだけは赤く発光。それ以外のボタンは緑色で発光。一新されたリモコンだが、全体的なボタンレイアウトの基本形はLP-Z2譲りだ

 電源スイッチを入れてオープニング画面ともいえるSANYOロゴが表示されるまで約9.0秒(実測)、実際にコンポーネントビデオ入力の映像が表示されるまで約31.0秒(実測)。LP-Z2と比較すると幾分か改善されているようだが、最近の製品としては遅めな部類であることに違いはない。

 リモコンはデザインを一新。使いづらかった十字パッドが廃止され、独立ボタン配置タイプの十字キー方式になった。

 ボタンは[LIGHT]ボタンのみ蓄光式で、この[LIGHT]ボタンを押すことでリモコン上の全てのボタンが自照式で発光する。自照ボタンの数が少なかったLP-Z2のリモコンと比べると、かなりの改善が施された。

 基本的な操作系は良くも悪くもLP-Z2と同じ。[MENU]ボタンをメニューを呼び出し、十字キーの上下でメニュータブを選択し、右方向キーでそのタブ内の調整項目選択に移行する。項目の設定値の変更を行なうには、左右方向キーを押すか、あるいは調整項目選択時に[SELECT]ボタンを押せばいい。するとメニュー自体が消えて、その調整項目だけが画面下部に表示され、設定値の影響をカット&トライで確認しながらじっくりと調整できる。値そのもの増減は左右方向キーで行なう。設定値をデフォルト値に戻すには[RESET]ボタンを押せばいい。

 メニュータブを右方向キーで選択させて、値も左右方向キーで調整という操作系が直感的でなくやりづらい。細かいことだが、この操作系設計だと、右方向キーを連打するとタブが選択され、調整項目が選択され、さらには値の変更までがなされてしまうのである。右方向キーを押してアイテムが選択される操作系なのに、左方向キーを押した場合に一つ前のメニューに戻れないのも腑に落ちない。

 具体的な改善案として、調整値の増減は上下方向キーで行なえるようにしてほしい。これで左右キーはアイテム選択、上下キーは値の上下、左キーで前階層に戻れることも直感的に理解できる。今の操作系では[CANCEL]ボタンと[SELECT]ボタンにあまり存在価値がないばかりか、複雑にしている要因になっている気がする。

 未だ問題の多い操作系ではあるが、改善された部分もある。

 1つは入力切り替え操作部分だ。LP-Z2でわかりにくかったこの部分が、LP-Z3ではリモコン下部左側に立て配列された[VIDEO]、[S-VIDEO]、[C1]、[C2]、[HDMI]、[PC]の独立ボタンで直接目的の入力切り替えができるようになった。なお、念のために補足しておくと[C1]がコンポーネントビデオ入力、[C2]がD4入力に対応している。

 入力切り替えの所要時間はSビデオ→コンポーネントビデオで約1.3秒(実測)、コンポーネントビデオ→PC(アナログRGB)で約1.2秒(実測)と、まずまずの早さ。ただし、切り替えた映像が表示された直後は色味がおかしく、そのあと約1秒ほどかけて正しい色へ直していく、という振る舞いをする。何も表示されない黒画面を2秒間見せられるよりはずっとマシではある。

 アスペクト比切り替えは、独立ボタンの[SCREEN]を押すことで順送り式に切り替えられる。アスペクトモードは非常に細かく多彩なものが用意されており、あまりアピールポイントにはならないかもしれないが、おそらくこの種類の多さも、このクラストップだと思われる。

 アスペクト比の切り替え速度は約0.5秒(実測)。ほとんど待ち時間はゼロと言っていい。

 画調モードの切り替え操作は、LP-Z2とは変わり、[DARK]と[CLEAR]の2つのボタンで切り替えるユニークな仕組みが導入された。

 [DARK]ボタンを押すと、完全暗室に適した画調モードである「クリエイティブシネマ」、「ピュアシネマ」、「ナチュラル」、「ビデオ」といったモードが順送り式に切り替わる。一方[CLEAR]ボタンの方は、絶対輝度を優先した明るめの画調モード「ダイナミック」、「パワフル」、「グラフィック」が順送り式に切り替わる。それまで完全暗室で見ていたが一時的に部屋を明るくしなければならないときになど、明るい「ダイナミック」のような画調モードにダイレクトに切り替えられるというのは便利だ。ありそうでなかった面白いアイディアだと思う。

 ちなみに画調モードの切替所要時間もほぼゼロ秒で、操作とほぼ同時に切り替わる。

 画質調整は「コントラスト」、「明るさ」、「色の濃さ」、「色合い」、「色温度」「画質(シャープネスに相当)」、「ガンマ補正」といった一般的な項目の他、「フィルム(3-2/2-2プルダウンIP変換)」、「ランプモード(ランプ駆動方式)」といった映像エンジンの機能設定までが調整可能で、これらの設定状態は4つまでユーザーメモリーとして記憶させることができる。

 LP-Z2ではこのユーザーメモリの管理方式がわかりにくかったが、LP-Z3ではシンプルに、4つのユーザーメモリが全入力系統で共有される仕組みを採用した。つまり、たとえばコンポーネントビデオ入力の映像で調整してその状態をユーザーメモリ1に保存した場合、たとえSビデオ入力やPC入力の映像に対しても、呼び出せばユーザーメモリ1の調整状態が適用できる。もちろん入力系統によっては、意味をなさない調整項目もあるわけで、そういったものは無視される。

 LP-Z2ではビデオ系で4メモリ、PC系で4メモリで別系統管理されていたのに対し、LP-Z3は本当に4つしかないので、その意味ではユーザーメモリの数は実質的に減っている。しかし、LP-Z3のユーザー層を考えれば、それほど大きな問題にはならないと思われる。

メニュー画面


■ 画質チェック
  公称輝度は据置きでコントラストを2,000:1に改善。発色も理性的に

 公称最大輝度は800ANSIルーメン。スペック的には先代LP-Z2と同じということになる。ランプ駆動モードをブライトモード(出力最大)にし、絞りを開放にしたときの値だ。映画鑑賞などでは絞り機構を活用することになるわけで、その場合はこの値より暗くなる。

 「800ANSIルーメン」というスペックは、ライバルTH-AE700よりも低いが、実感としては両者ほぼ同等いう印象。実際、800ANSIルーメン・スペックの状態でLP-Z3を蛍光灯照明下でも使用してみたが、暗部階調はなくなるものの映像自体は問題なく楽しめる。食事をしながらバラエティ番組やスポーツ中継などをTV的に楽しんだり、明るい場所でのプレゼン用途にも十分使える明るさを持っている。

 コントラスト性能は、TH-AE700と同じく2,000:1をうたう。ただし、TH-AE700と同じく、レンズ絞りを最小にして、リアルタイム3Dガンマ的な機能である「リアクトイメージモード」を活用したときの値だ。よって同じコントラスト比2,000:1のDLPプロジェクタやLCOSプロジェクタと比べると、不満に思うことがあるかもしれない。

 この「リアクトイメージモード」とは、入力映像のトータル輝度レベルを察知し、これにインタラクティヴに反応してランプ輝度をリアルタイム制御する仕組みだ。

 たとえば明るいシーンでは、人間の視覚は明るい箇所を基準にして瞳孔を絞ってシーンを見ることから、暗部階調が浮き気味になっても相対的に沈み込んで見えて気になりにくい特性を持つ。明部のまぶしさの方が脳には気持ちよく感じられる。その特性を利用し、LP-Z3のリアクトイメージモードでは、明るいシーンではランプをより明るく点灯させ明部の輝きを倍増する操作を行なう。

 逆に暗いシーンでは、人間の瞳孔を開き、なるべく多くの光を取り入れてみようとする。LP-Z3のリアクトイメージモードでは、暗いシーンにおいてはランプ輝度を下げ、暗部階調がリニアに見えるようにガンマ補正を行なう。

 こうした一連のシーケンスを見るうちに、人間の脳内では時間積分的な幅広い明暗の対比を感じられるようになるというわけだ。

 LP-Z3の2,000:1というコントラスト比は、暗いシーンでの最暗部と、明るいシーンでの最明部との対比でハイコントラストな対比スペックを達成している。アクション映画における銃撃戦のような、明暗が数秒おきにダイナミックに変化するシーンでは、この仕組みは効果的に働き、視聴者に強い臨場感を訴えてくれる。

 ちなみにLP-Z3のリアクトイメージモードは「新」が付加されて「新リアクトイメージモード」という名称になったが、基本的な仕組みは変わらない。実質的な違いは、リアクトイメージモードのバリエーションが2つに増えたという点くらいだ。

 LP-Z3ではリアクトイメージモード1と2があり、1は輝度をランプ出力100%~70%の間で変化させ、2では90%~70%の間で変化させる設定となる。2の方が最大輝度が低くなるのでコントラスト表において1に劣るが、常に静音モードで動作できるという静音面でのアドバンテージがある。

上下左右のレンズシフトを若干行なった状態でズーム率最大で150インチ程度の画面で投影したときの画素の拡大写真。青が左にズレる色収差が出ている。画素を区切る格子目も結構強く出ている。ちなみにこの色収差の出方は画面の位置によっても違うようだ

 この他、LP-Z3では、ハイコントラスト実現のために絞り機構を搭載している。絞りは迷光を抑えて黒浮きを低減、映像にしまりを与える効果がある。LP-Z2にも搭載されていた機能だが、LP-Z3ではこの絞り具合を63段階に調整できるようになった。

 パネル解像度はLP-Z2から引き続き1,280×720ドット解像度のエプソン製D4タイプの透過型液晶を採用する。いわゆる720pリアル解像度対応パネルで、最近のこの価格帯のプロジェクタの標準解像度だ。

 透過型液晶と言うこともあり、画素を縦横に区切る格子線があるにはあるが、60インチ前後の画面サイズで視聴位置を2mもとればあまり気にならない。この2mの視聴位置で画面サイズを150インチ程度にまで拡大するとやはり気になってくる。

 赤、青、緑の純色系の鮮烈さはLP-Z2譲り。階調表現も(画調モードにもよるが)概ね、リニアな感じにまとまっており、良好だ。白色も色温度「中」設定状態で純白に近く、非常にナチュラルに感じられる。トータルな画作りとしてはLP-Z2での青緑が強く出る傾向は大分抑えられ改善を見たが、依然と派手目な傾向は相変わらず三洋的というべきか。

 LP-Z2ではガンマ演算のみがRGB各10bit精度だったが、LP-Z3では、入力映像が入れられた直後からRGB各10bit処理が行なわれるようになった。映像エンジンがフル10bit化されたことになる。LP-Z2では調整を追い込んでいくと「あっちを立てればこっちが立たず」的な調整の難しさがあったが、LP-Z3はこのフル10bit化の甲斐あってか、そうした難しさはかなり軽減されているように思う。

 レンズシフトを活用したことによるフォーカス斑は最低限に抑えられているが、シフト量が大きい時には映像の外郭部に色収差が若干出る。

 また、これは純白のみのテスト画面を投射してテストして気が付いたのだが、シフト状態とは無関係に不規則なパターンの若干の輝度斑が感じられる。レンズシフトを使うとこのムラも移動することから、映像エンジン部の特性だと思われる。実写映像では気になることはまずないだろうが、CGやゲーム画面、アニメ等を投射したときには気になるかもしれない。


プリセット画調モード
 ソースはDVDビデオの「モンスターズ・インク」(国内盤)。撮影にはデジタルカメラ「D100」を使用した。レンズはSIGMA 18-50mm F3.5-5.6 DC。
 撮影後、投影画像の部分を800×450ドットにリサイズしてから画像の一部分(160×90ドット)を切り出した。

(c)DISNEY ENTERPRISES,INC./PIXAR ANIMATION STUDIOS
 
●クリエイティブシネマ色温度=低1、ホワイトバランスR=+5/G=0/B=-2、リアクトイメージモード=2、絞り=-38) 
 色温度を若干低めに設定されているので若干赤みを含んだホワイトバランスになる。「ナチュラル」よりもコントラストを犠牲にして、階調表現のリニア性にこだわったモード
 
●ピュアシネママ(色温度=低3、ホワイトバランスR=+12 G=0 B=-4、リアクトイメージモード=シアターブラック、絞り=-63 最小)
 色温度を下げた上に赤を強めたモードで、草木などの緑系の発色が黄緑に振られ違和感がある
 暗部階調を沈み込ませないで視覚化するという意図が強く働いているようで、暗い階調がブースト気味となり、映像の暗い部分がしっかりと見えるようになる反面、コントラスト感が乏しくなる。名前の印象とちがって、使いどころがないモードだ
 
●ナチュラル(色温度=中-0、ホワイトバランスR=G=B=0、リアクトイメージモード=ブライトモード、絞り=-32)
 色温度は「中」設定のため、白色は純白になり、引き締まった感じになるが、人肌表現には暖かみが残っている。暗部階調に対しては「ピュアシネマ」にあったような人為的な操作は感じられず、コントラスト感も十分に体感できる。LP-Z3ではいわゆる「標準」という名称の画調モードがなくなってしまっているが、実質的にはこのモードがその役割を果たしている印象で、とりあえず迷ったすらこのモードで見てみるといい
 
●ビデオ(色温度=高、ホワイトバランスR=-3 G=0 B=+4、リアクトイメージモード=1、絞り=-20)
 色温度が高めに設定され、白に青みが出てきて涼しげな画調になる。暗部から中明部にかけての階調表現はリニアだが、明部階調には若干のブーストを効かせてている関係で表現としてはコントラスト重視な画作りとなる。とはいえ明部は飛ばされておらず階調表現力は維持されているので嫌みな感じはない。汎用性は高いモードだと思う
 
●ダイナミック(色温度=低1、ホワイトバランスR=+5 G=0 B=-2、リアクトイメージモード=1、絞り=0 開放)
 絞り開放に設定し、暗部を意図的に沈み込ませ、明部は飛ばし気味にした明るさ重視の画調モード。蛍光灯照明下での視聴や、プレゼン目的に特化したモードだ。ランプ駆動モードはリアクトイメージモード1に設定されているので、一応シーン適応した明暗表現には対応している
 
●パワフル(色温度=中、ホワイトバランスR=G=B=0、リアクトイメージモード=ブライトモード、絞り=0 開放)
 基本的にはダイナミックと同じだが、ランプ駆動モードを最大輝度固定(ブライトモード)としている点が異なる。色温度はダイナミックよりも一段高めに設定されており若干涼しげな色合いになるのも相違点となっている。用途的にはダイナミックと同じだが、明るい部屋での常用モードは、どちらかといえばこっちの方が適している
 
●グラフィック(色温度=高、ホワイトバランスR=-3 G=0 B=+4、リアクトイメージモード=1、絞り=-63 最小)
 階調表現はダイナミックやパワフルと同傾向の作為的なものになっているが、絞りは最小に設定されランプもリアクトイメージモード1に設定されており、[CLEAR]ボタンで選べる画調モードにしては暗い。CGやゲーム用という解説が添えられているが、あまり使い道が感じられない

映像タイプ別のインプレッション
◆DVDビデオ(パイオニアDV-S747A/コンポーネントビデオ接続)
 480i/480pソースの1,280×720ドットパネルへの拡大表示の品質に不満はなし。斜め線もいやなジャギー感はほとんど感じられない。
 画調モードは「ピュアシネマ」では赤っぽすぎる上にコントラスト感に乏しいため、名前の割には使えないモードと判断。人肌の温かい感じを重視したいのならば「クリエイティブシネマ」もいいかもしれないが、草木や空に黄緑感が強く出るので見慣れるまでかなり強い違和感を感じる。結局、コントラスト感と階調表現の正確性のバランスが取れているのは「ナチュラル」だけで、常用はこれしかないという印象を持った。
 アニメ映画やCG映画のような、原色表現の鮮烈さを楽しみたい場合には「ビデオ」もいい感じにはまる。若干シャープネスが強いので実写映画ではざらつき感を感じることも。

 インタレースソースを入れたときのプログレッシブ化ロジックの品質は及第点。コーミングが出ることもなくぼやけすぎている感じもない。
 
●ハイビジョン(コンポーネントビデオ接続)
 1,920×1,080ドットのリアルハイビジョン映像が1,280×720ドットのパネル解像度に圧縮表示されることになるわけだが、目立ったジャギーやぼやけ感もなく、その品質はまずまずといったところ。周波数の高い縞模様などの表現では圧縮表示特有の揺らぎ感は出てしまっていたが、それでもハイビジョン映像特有の精細感とクリア感はそれなりに楽しめる。

 画調モードはこのケースでも「ナチュラル」が一番だろう

 
●PC(RADEON9800PRO)
入力解像度 結果(DVI接続) 結果(アナログRGB)
640×480ドット
848×480ドット
(640×480と誤認)
856×480ドット
(640×480と誤認)
800×600ドット ×
1,024×576ドット ×
(ドットが間引かれた
ような表示になる)
1,024×768ドット ×
1,152×864ドット ×
1,280×720ドット
1,280×768ドット
(1,280×720と誤認)
1,280×960ドット
(表示が波打つ)

(ちらつく)
1,280×1,024ドット ×
(ちらつく)
1,360×768ドット
1,600×1,200ドット × ×
1,920×1,080ドット × ×

 PCとの接続はHDMI-DVI変換アダプタを用いて、PCとデジタルRGB接続を行なった。

 なお、LP-Z3のHDMI端子は、背面パネルの一段奥まったところに端子が実装されている。そのため、今回用意した変換アダプタでは、この凹部分に変換アダプタのボディ部分が引っかかってしまい、そのままで接続することができなかった。

 結局、変換アダプタのHDMI端子側の周囲の樹脂部分を削り取ったが、その他の市販のHDMIケーブルや変換アダプタでも同様になる可能性がある。購入の際には注意したい。

今回使用したMONSTER CABLEのHDMI-DVI変換アダプタ「MONSTER400 FOR HDMI」。購入して早々に、コネクタ先端上面を焼きごてで削り落とすことになった コネクタ先端上面の加工をしないと挿すことができない
 
●ゲーム(PS2/コンポーネントビデオ接続)
 目立った残像はなく、縦横無尽にスクロールするゲームであっても問題なくプレイすることが出来た。プログレッシブモードは「L1」設定がベスト。「L2」設定では強いコーミングが出る。プログレッシブモードをオフにすればインタレース表示の映像のままプレイすることも可能。3-2プルダウンプログレッシブ化の設定であるフィルムモードの設定はオンでもオフでも映像への目立った影響はなし。
 結論としては、「デフォルト設定のままでOK」ということだ。


■ まとめ

 LP-Z2で問題となった、「エンジン部への埃混入による斑点状の色むらの発生」について、LP-Z3では、ユーザーの手である程度の対処が講じられるように改善されている。

 LP-Z3では映像エンジン部へ付着した埃を吹き飛ばすための専用ブロアがセットに付属しているのだ。本体底面にはゴムパッキンでカバーされた穴があり、この穴にそのブロアを挿入して空気を送ることで映像エンジン部の埃を(うまく行けば)取り去ることが出来る。これは、ユーザーにとっては心強いメンテナンス機能だといえる。

メンテナンス用ブロアが標準付属。穴はRGBの各液晶パネルの表面と裏面にコンタクトできるように3つ開けられている。このメンテナンス用に前面黒色の画面を投射するクリーニングモードも新設されている

 もう一つ、エプソン製D4液晶パネル採用の全てのプロジェクタに共通して発生する縦縞問題について。LP-Z2に引き続き、この液晶パネルを採用するLP-Z3では、この問題について、専用の調整メニューを設けて対策を講じている。

 とはいっても、内蔵された調整用テスト映像を見ながら、縦方向の明暗パターンをRGB各レベルで調整できるだけの簡易なもので、多少低減できる程度のものの根本的な解決にはならない。これについては「おまけ機能」程度と捉えた方が良さそうだ。

調整用のテスト映像

 「LP-Z2から買い替えるべきか」については、「LP-Z2の取り付け金具類が全て持ち越せる」という点で買い替えの敷居はかなり低いことは確か。LP-Z3では強いクセのあった発色の傾向も、理性的なものになった。ただ、輝度スペックと解像度は据え置きで、コントラストは上がったことになっているが、前述のような仕組みで実現している値であり、リアクトイメージモードや画調モードも新モードが追加されたが、正直、これらがLP-Z2からの買い替え検討派にとって魅力的なポイントになっているとは思えない。

 静音性の強化、新設計のリモコン、接続性の向上については世代を重ねた上での順当な進化といったところ。LP-Z2ユーザーが、「まともになった出色」を求めるのであれば、移行のしやすさもあり、買い換えても損はしないだろう。

 また、TH-AE700とLP-Z3を比べると、基本的な映像エンジンのスペックはほぼ同一で、輝度スペック的にはTH-AE700が上回るものの、実際の見た目に大きな違いはない。TH-AE700の強みは長焦点にも対応できる2.0倍のズームレンズとTH-AE700独自のスムーズスクリーン機能ということになると思う。大きい部屋で適度な画面サイズに投射したいならば、TH-AE700を選択することになろだろう。

 LP-Z3の強みとしては、壁掛け投射やレンジの広いレンズシフトなど狭い部屋での設置性の高さが挙げられる。また、「ミラノブラック」と「プレシャスシルバー」の2色の本体カラーを選べるのも、プロジェクタを目立つ位置に置かざるを得ない設置環境では、大きなポイントとなるだろう。

□三洋電機のホームページ
http://www.sanyo.co.jp/
□製品情報
http://www.sanyo-lcdp.com/z3/index.html
□関連記事
【9月10日】三洋電機、電動アイリス搭載のホームプロジェクター「LP-Z3」
-リアル10bit処理の画質システム「トパーズリアル」採用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040910/sanyo.htm
【10月22日】【大マ】ついにレンズシフト対応のカジュアル・シアター
~熟成された画質と高い設置自由度 松下電器「TH-AE700」~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041022/dg40.htm

(2004年11月5日)

[Reported by トライゼット西川善司]


= 西川善司 =  遊びに行った先の友人宅のテレビですら調整し始めるほどの真性の大画面マニア。映画DVDのタイトル所持数は500を超えるほどの映画マニアでもある。現在愛用のプロジェクタはビクターDLA-G10と東芝TDP-MT8J。夢は三板式DLPの導入。
 本誌ではInternational CES 2004をレポート。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化している。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。

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