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第183回:DivXダイレクト録画可能なTVキャプチャユニット登場
~ プレクスター初の映像関連製品「ConvertX PVR」 ~


■ DivXにリアルタイムエンコード

 パソコンのテレビ録画機能は、もはや当たり前を通り越した感がある。少なくともメーカー製デスクトップ機ではデフォルトで内蔵されており、市販キャプチャユニットのターゲットは、ホームノートPCユーザーに移ってきたようだ。USB 2.0対応の外付けTVキャプチャユニットは簡単にインストールできることもあって、根強い人気がある。

 そんな中、DivXにハードウェアエンコードで録画するという製品が現われた。プレクスターの「ConvertX PVR PX-TV402U/JP」(以下ConvertX PVR)だ。同社としては、国内TVキャプチャ市場では初の製品となるが、既に米国では製品を発売していたという。

 DivXでTV録画と言えば、過去にいくつかそう言う製品が出ているが、従来はソフトウェアエンコードのため、いったんMPEG-2などのファイルに録ったのちエンコードするなどという仕様であった。だがConvertX PVRはハードウェアエンコーダを搭載しているため、最初からDivXで録画できるのがウリ。DivXハードウェアエンコード製品としては、最も早く市場に出た製品と言えそうだ。

 お手軽DivX録画は実現するのか。早速試してみよう。



■ 見た目はノーマル

 ConvertX PVRは、ハードウェア的には一般的なUSBキャプチャユニットと大きな違いはない。ユニットは横置きが前提だが、縦置き用のスタンドも付属しており、スペースに合わせて設置が可能。前面にはコンポジットビデオ/オーディオとSビデオの入力がある。

前面は外部入力端子とステータスLED 背面はUSBと電源、RF端子 縦置きスタンドも同梱

 背面にはACアダプタ用電源とUSB端子、RF入力端子があるのみ。天板と底板には通気口が沢山空いているが、内部にファンなどがあるわけではないので、全く無音だ。仕様としては、メインのエンコーダにWIS technology社製「GO7007SB」を採用、DivXだけでなく、MPEG-1/2、MPEG-4のエンコードが可能だ。チューナはソニー製を採用している。

 せっかくなので中味を見てみよう。中心にあるGO7007SBは、さほど大きなチップではない。その上にあるのがNTSCデコーダ、右上の小さなチップはオーディオのコントロールチップだ。下はUSBのコントローラ、右のチップはメモリだろう。画質に対する機能などは詳しいスペックが公開されていないため不明だが、NRやGRについてはそれらしいチップが見あたらないので、搭載していないようだ。

■■ 注意 ■■

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チューナーユニットにはソニー製を採用 真ん中のチップがWIS technology社製「GO7007SB」

 ConvertX PVRに付属するソフトは、全部InterVideoの製品だ。テレビ視聴や番組録画は「WinDVR 5」、DVDオーサリングソフトとして「WinDVD Creator 2」、動画視聴ソフトとして「WinDVD 5」、あとはドライバである。

 実はこのドライバとWinDVR 5に対しては、既にプレクスターからアップデータが出ている。DivX形式でキャプチャした場合に、ファイルサイズが4GBを超えないように変更されたようだ。

 まずはテレビ録画ソフトのWinDVR 5を起動して、チューナの設定である。国内製品であれば、地域と言えば県や放送エリアを選ぶものだが、ここでは国を選んだ後にオートスキャンさせるという、海外製品のような作りとなっている。ちなみにスキャンさせると、もちろんチャンネルはちゃんと見つかるのだが、放送局名は自分で入力しなくてはならない。いくら初期設定だけとはいえ、結構面倒だ。

テレビ録画はWinDVR 5で行なう オートスキャンしても局名などは自分で入力する

 とりあえず今回の製品で一番気になるのは、コーデックごとの画質である。録画可能なコーデックと解像度などの組み合わせは、あらかじめプロファイルとして定義されている。プロファイルには膨大な数があるが、DivXとMPEG-2に関しては音声がMP2かMP3かの違いがあり、その差でさらに数が2倍になっている。プロファイルを一覧で見てみよう。

膨大な数のプロファイルがある

【プロファイル一覧/主要録画サンプル】
コーデック 記録モード 解像度 ビットレート サンプル
(DNR
DivX Home Theater Highest Quality 720×480 4Mbps
ezsm01.avi(10.5MB)
Home Theater High Quality 3Mbps  
ezsm02.avi(8.1MB)
Home Theater Medium Quality 2Mbps  
ezsm03.avi(5.66MB)
Portable High Quality 640×480 2Mbps  
ezsm04.avi(5.39MB)
Portable Medium Quality 352×240 768kbps  
ezsm05.avi(2.19MB)
Handheld High Quality 176×114 200kbps
Handheld Medium Quality 128kbps
MPEG-4 HQ 720×480 4Mbps  
ezsm06.avi(10MB)
GQ 3Mbps  
ezsm07.avi(7.9MB)
SP 2Mbps  -
LP 352×240 1.5Mbps  
ezsm08.avi(4.5MB)
EP 700kbps  -
MPEG-2  HQ 720×480 6Mbps  
ezsm09.mpg(13.4MB)
GQ 4.5Mbps  
ezsm10.mpg(12.4MB)
SP 352×480 3Mbps  
ezsm11.mpg(8.88MB)
LP 2Mbps  -
EP 352×240 2Mbps
MPEG-1 VCD 1.15Mbps  -
編集部注:DVデッキ「WV-DR5」で再生したRF出力し、CREATIVECAST Professionalの映像をRF経由で録画した。掲載した静止画のキャプチャは800×600ドットでキャプチャしている。(c)CREATIVECAST Professional

 動画ファイルの再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 DivXでの録画では、さすがに3M、4Mクラスは破綻のない画質が楽しめる。MPEG-2で言えば6Mbpsぐらいに相当する画質が得られている。2Mbpsになると早い動きでは破綻が出るが、録画して見るだけなら問題ないだろう。それ以下になると、急にビットレートが半分以下になり、画質もそれなりになる。

 Handheldクラスになると、なんとか内容がわかる程度だ。このあたりは、何らかのポータブルデバイスに転送して見るという使い方だろう。そこそこのビットレートでそこそこの画質ということであれば、DivXよりもむしろ、MPEG-4のLPやEPモードのほうが良好のようだ。

 ユーザーが自分でプロファイルを作る機能はないので、録画を行なうときにこの中から選択することになるわけだが、まあリアルタイムエンコードとしては妥当なところだろう。


■ 録画ソフトが致命的

iEPGはテレビ画面内に出る

 日常的に使用するということになれば、録画ソフトの出来は重要だ。だが実際に数日使ってみると、WinDVR 5というソフトはいろいろと問題が多い。

 録画予約には、ONTV JapanによるiEPGが使えるのはいいのだが、その表示画面がテレビ画面内に出る。つまりテレビを「ながら見」しながら番組表を利用するということができない。またテレビ画面を小さくしておいたときは、当然サイトの画面も少ししか見えないことになるので、iEPGを使うたびに画面を広げる必要があり、非常に面倒だ。

 実際に録画予約を行なうと、まず毎週録画設定がないのに驚く。常に1回録画になってしまうのである。さらに録画品質は常にMPEG-1/VCDになっており、いちいち設定しなくてはならない。そこでDivXを選択すると、今度はDivXでは4GB以上の録画ができない旨のダイアログが出る。「次回から表示しない」を選択すればいいのだが、このダイアログは実際に録画がスタートするときにも、また出てくる。しかもOKで閉じない限り、ずーっと出たままである。

 このダイアログは、公開されたアップデータを適用してから出るようになったのだが、こんなにDivXで4GB以上録れないということをしつこいぐらいに主張されても、困っちゃうよなぁ。


iEPGでの予約では、毎週録画ができない DivXで録画しようとすると、4GB制限のダイアログが表示される 録画が開始されるときにも同様のダイアログが出る

 予約した内容は、「スケジュール」内に保存されるのだが、驚くべき事に予約内容の修正もできない。新しく追加するか、消すしかないのである。今はシーズンオフだからいいが、野球延長対応などはどうするつもりなのだろうか。

 毎週録画を設定しようと思って、手動でスケジュールを設定しようとしたところ、ここでもDivXを選ぶとまた例の4GBのダイアログが出てくる。さらに毎週録画設定も、何日から毎週録画スタートという設定ができない。さらに月曜から金曜までの帯番組の指定もできない。さらに番組録画中のスリップ再生もできない。

スケジュールの内容は、編集できない 手動による毎週録画録画では、単純に毎週同じ時間に録画できるだけ

WinDVD Creator 2ではDivXに出力できるが、ソフトウェアエンコードになる

 もうなにからなにまで、出来ないことだらけなのである。WinDVR 5は、名前が示すとおりもうバージョン5になるのだろうが、おそらくこれまでちゃんと評価されたことがなかったのだろう。キャプチャユニット自体の性能は問題ないのだが、このソフトを採用したおかげで、大きく使い勝手が後退してしまっている。

 ハードウェアエンコーダのGO7007SBは、リアルタイムの2~3倍でDivXをにエンコードできる能力を持っているそうなので、MPEG-2からのエンコードに利用したいと思う人もいることだろう。だがだ残念ながらその能力を生かすチャンスが与えられていないようだ。

 付属のソフトウェアには、ファイルをハードウェアエンコードできる機能を持ったものがないのである。付属のオーサリングソフト、WinDVD Creator 2では、MPEG-2ファイルをDivXに出力する機能は持っているのだが、スピードから見てソフトウェアエンコードになってしまうようだ。


■ 総論

 DVDレコーダの普及と低価格化が進んでしまった現在においては、PCでテレビ録画を行なう意義みたいなものは薄れつつある。それでもPCでの録画にこだわるからには、もっと便利であったり柔軟であったりする必要があるわけだ。

 DivXによる録画は、そういう意味で最後の砦とも言える機能だ。むろんDivXで録画するということは、ユーザーとしてもCMカットなどの編集は最初から期待していないことになる。その利便性はやはり、ノートPCでも大量に録画できるというファイルサイズであったり、ポータブルデバイスに転送できるといった点だろう。

 ConvertX PVRは、そういう「わかったユーザー」に向けた製品だと思うのだが、いかんせんWinDVR 5の出来が足を引っ張っている。ワールドワイド仕様としては及第点なのかもしれないが、日本市場はかなりレベルが高いことを考えると、もうちょっとそれにあわせた機能が欲しい。

 このDivXのハードウェアエンコーダ採用製品は、他社からのリリースが続きそうな気配だ。先週もエルザジャパンから、同じエンコーダを採用したUSBキャプチャ製品が発表された。こちらはチューナーユニットに松下製を採用しているという。

 そして気になる録画ソフトは、以前からエルザ製品で採用されているという「NFO.TV Plus」だ。筆者はまた使ったことがないのだが、ふつーに今どきの機能が乗っているのであれば、今回取り上げたConvertX PVRよりも期待できる。

 結局のところ、ハードウェアの性能を生かすも殺すも、ソフトウェア次第なのである。ConvertX PVRは、DivXハードウェアエンコードという類い希な機能を持ちながら、もう一歩使い勝手で踏み込みが足りないのが残念だ。次期モデルに期待したい。

□プレクスターのホームページ
http://www.plextor.co.jp/
□製品情報
http://plextor.jp/product/pxtv402u/index.php
□関連記事
【2月18日】米Plextor、DivX認定を取得したUSB 2.0ビデオコンバータ
-ハードウェアDivXエンコーダ搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040218/plextor.htm

(2004年12月15日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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