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新エンコーダ「XCode II」でMPEG-2トランスコードに対応
携帯機器との連携も魅力!
アイ・オー・データ機器 「GV-MVP/GX」
発売日:1月末
標準価格:26,565円


■ ハードウエアトランスコード機能搭載のキャプチャカード

 パソコンのビデオキャプチャを楽しむ人の多くは、HDDにそのまま蓄積するか、録画した映像ファイルを編集/オーサリングした後、DVD-Rなどの記録型DVDメディアに保存していることと思う。

 しかし、平均4MbpsのMPEG-2フォーマットで録画した場合、単層DVDメディア1枚に保存できる時間はおよそ150分。30分番組なら5本分が1枚に収まる程度。VHSテープなどと比較した場合、標準録画より長時間である反面、3倍速録画には遠く及ばない。勿論低ビットレート設定を利用すれば、更に長時間の映像を保存できるので、手動で録画設定を行なう場合、自分で録画する番組の重要度を考えて画質設定を変更すればよい。

 しかし、PCでも「おまかせ録画」などキーワードを元に自動で録画可能な機能を備える製品が増えている。こうなってくると、どの画質設定を使うかが悩ましくなる。低画質設定でおまかせ録画をしていて、もしその中に永久保存版にしたいお宝映像が紛れ込んでいた場合に、低画質設定にしていたことを後悔することになるからだ。かといって何でもかんでも高画質設定で録画していると、HDDの消耗も激しいく、保存時にも1枚のDVDメディアに収められる時間が短くなってしまい、コストパフォーマンスが悪くなってしまう。

 そこで今回は、アイ・オー・データ機器が新たに発売したハイエンド向けビデオキャプチャカード「GV-MVP/GX」を試してみることにした。特徴はMPEG-2のハードウェアトランスコード機能を搭載すること。トランスコードとは一度録画した映像を任意の方式/圧縮率で再変換する機能で、これを利用すれば常に高画質で録画しておき、あまり重要でない映像はトランスコードすることで1枚のDVDメディアにより長時間の映像を詰め込めるようになる。

 GV-MVP/GXではこのトランスコード機能をハードウエアで処理することで、ソフトウェア処理と比べて高速に処理が可能だという。


■ 標準サイズのカード。XCode IIエンコーダを初採用

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 カード本体は他のキャプチャカードと変わらないレイアウトで、見た目には特に目新しさは感じられない。カードのサイズはそれほど大型ではないものの、決して小型ではないので、ケース内にゆとりがあった方がいいだろう。

 松下製のチューナーユニットを備え、外部入力端子にはS映像/コンポジット入力を備える。高画質化機能は3D Y/C分離や3Dノイズリダクション、フレームシンクロナイザやゴーストリデューサなど、高画質化の機能を一通り備える。搭載するMPEGエンコーダチップはViXS Systems製「XCode II」。XCode IIは低ビットレート時の画質の優秀さには定評ある製品で、ソニーのPCベース多チャンネルHDDレコーダ「VAIO type X」でも採用されていたエンコーダチップだ。

 なお、同社のほかのキャプチャカードと同様に複数枚同時接続による最大6番組の同時録画にも対応している。


カードサイズは167.64×106.68mm。チューナのほかMPEGエンコーダやNEC製の3D Y/C回路などを搭載する チューナはPanasonic製 エンコーダチップはViXS製のXcode IIを採用する
アンテナ入力のほか、S映像、コンポジット映像、アナログ音声入力を装備 NEC製の3D Y/Cチップなども搭載


■ 録画アプリ「mAgicTV5」は、ややクセのあるUIだが機能は充実

mAgicTV5

 録画用のアプリケーションには同社独自開発の専用ソフト「mAgicTV5」を利用する。キーワードを設定して自動で録画する「おまかせ録画」機能や、HDDの残り容量を管理し、新規の録画にHDD容量が足りなくなった場合は、自動的に古い番組を消去する「自動容量確保機能」を備えている。

 その他にトランスコード機能を使用するための専用ソフト「GVencoder」、DVDオーサリングソフトの「PowerProducer 3 for I-O DATA」、ビデオ編集ソフト「PowerDirector Express」、ケータイムービー活用ツール「Video Tool Box 2 SE」、携帯電話で外部から録画予約できるようにする「reserMail」がバンドルされる。


mAgicガイドのEPG情報量は大きく、重複録画などが確認しやすい

 mAgicTV5はメインのアプリケーションで、複数番組の同時録画にも対応している。まずテレビ視聴を試したが、直感的に操作できるので、使い勝手はよい。ただし、チャンネルの切替や録画開始時の動作がややもっさりとしており、チャンネルを押して1テンポ待たされてから切り替わるのは、使っていてややストレスを感じた。

 おまかせ録画機能やiEPGによるテレビ番組表を使う場合には、別途「mAgicガイド」が起動する。最近では録画用アプリケーションの画面内にEPGの番組表が表示される製品も多いが、テレビ映像を横目に番組表をチェックするような用途も考えると、単体アプリケーションとして動く方が使い勝手がよい。

 別ウィンドウなので、[Alt]+[Tab]のショートカットを使えば切替も簡単だ。現在の時刻とリンクして番組表内にタイムラインが赤色で表示されたり、予約設定を行なった時間には別途印が付けられているので、重複予約などを避けやすい作りになっている。

 おまかせ録画はキーワード以外にも同ジャンルの番組全て予約対象にしたり、時間帯で絞ったりと1つのおまかせ設定で細かい調整が可能。ただし、一度予約を完了してしまうと、手動の予約設定と自動予約設定の違いが判別できないので、おまかせ設定を誤ると不要な予約が一気に増えてしまい判別するのが難しくなってしまう。おまかせ設定による予約は何かのマークを設けるなどの工夫がほしかったところ。

おまかせ設定画面。キーワードや時間を指定してEPG情報を抽出して、録画する おまかせ設定を誤ると手動の予約設定と自動予約設定の違いが判別できない


 また、予約録画時間の1分前にmAgicTV5を起動して視聴していると、アプリケーションの終了を促す警告が現れる。警告を無視していれば録画開始時にmAgicTV5が自動で終了するが、終了をしないを選択すると予約録画は開始しないので注意が必要だ。警告に従うと、今まで視聴していたmAgicTV5が終了し、予約待機状態のまま待たされる。この間はmAgicTVでのテレビの視聴は行なえない。

 予約録画開始後には手動で「mAgicPlayer」を起動することで録画中の番組の視聴が可能となる。予約録画が終了すると、そこでmAgicPlayerは停止。その後もテレビを見続けたい場合にはmAgicPlayerを閉じて、再度mAgicTVを起動する必要がある。再生や編集のメニューが多く並ぶ中で録画中の番組を視聴するのは、今表示されているものが録画中のファイルなのかどうかが分かりにくいので、イマイチ落ち着かない。

 また、手動で録画を開始した場合にはこういった動きはせず、mAgicTV上で視聴しつつ録画を行なうので統一感に欠ける。アプリケーションの頻繁な起動/終了は何となく使っていて落ち着かないので、録画に関してはできれば単一のアプリケーション内で解決してほしいものだ。なお、mAgicPlayerは複数のプレーヤーの起動が可能で、CPUパワーが許す限り、同時に複数の録画番組を視聴することができる。


mAgicTVで番組を見ながら録画が行なえないのは残念 mAgicPlayerは複数の起動が可能



■ MPEG-2トランスコードは高速。携帯との連携も魅力

GVencoder

 トランスコード機能は付属のソフトウェア「GVencoder」で行なう。売りとなっているハードウエアによるトランスコードが対応するのはMPEG-2フォーマットのみ。つまり前述のように一度高画質設定で録画したファイルを低ビットレートに再変換するといった用途に使うのに向く。

 ハードウェアでの出力設定では解像度が720×480/352×480/352×240ドット、ビットレートが1~15Mbpsまでを1Mbps単位で指定できる。「GV-MVP/GX」で、高画質(720×480ドット/9Mbps)モード記録した32秒のMPEG-2ファイルを同解像度で1~2Mbpsトランスコードした場合、6~8秒程度で変換終了する。

 また、片面1層/2層のDVDメディア容量に合わせてトランスコードのビットレートを自動で設定する機能を備えるので、1枚に収めたいファイルをまとめてトランスコードすれば、メディア容量に対して最適なビットレートに変換できる。


GVencoder GVencoderではハードウェアによるMPEG-2エンコードのほか、ソフトウェアエンコードとなるが3GPP形式などでの書き出しも可能 ハードウェアトランスコードの設定画面

 PSPなどの携帯プレーヤー向けに動画を変換する際に、あらかじめファイルサイズを小さくしておくことで、変換時間を短くする用途にも使うことができる。

 例えば再生時間が1分間の15MbpsのMPEG-2ファイルをPSP専用の変換/転送ソフト「Image Converter2.1(プレビュー版)」で変換を行なうとおよそ25秒の時間がかかるのに対して、1MbpsのMPEG-2ファイルなら15秒程度で完了する。1分のファイルでこれだけの差が出るのだから、この効果は映像の時間が長ければ長いほど大きくなる。

 また、ソフトウエアによるトランスコードになるが、携帯電話用の動画フォーマットである3GPPや3GPP2への変換も可能なので、対応携帯電話を持っているならかなり便利に活用できる。なお、PSPのメモリースティックビデオやプレイやんで利用されているSD-Video形式に直接変換する機能は備えていない。


mAgicTVでの録画予約時にGVencoderの書き出しが選択できる

 さらに、mAgicTVの予約設定のメニューには録画終了後にトランスコードを実行するように設定することも可能なので、これを設定しておけば夜中に録画した番組を録画終了時に自動でトランスコードを行ない、朝には変換済みの動画ファイルが出来上がっているという使い方も可能。朝の通勤時に、寝てる間に録画した番組を視聴するといった使い方もできる。

 ただし、対応携帯電話に関しては注意が必要だ。特に同社のGVencoderに関する情報サイトでは、対応端末は掲載されているが、端末固有のファイルサイズについての情報などが書かれておらず、これに関しては別途確認をする必要がある。著者の持つ携帯電話はauのA5502Kで、GVencoderのサイトには対応端末として掲載されていたため、嬉々としてGVencoderを試してみたが、どんなファイルを変換しても正常に再生されない。おかしいと思いあちこち検索してみると、UleadのWebサイト上に、携帯電話の再生可能ファイルサイズの上限に関する情報を発見。A5502Kでは最大512KBまでのファイルしか再生できないことが判明した。

 どちらかというと、怒りの矛先はA5502Kに向けられたわけだが、こういった例もあるので、自分の携帯電話の対応に関する情報を集めておいた方がいいだろう。

 また、これは同社の保証対象外の行為となるが、GVencoderでは、本機で録画した映像以外のファイルでもトランスコードできるので、携帯電話と連携して使いたい人にとってはかなり魅力的なソフトウエアになる。設定にもよると思うが、携帯用の動画変換を行なうフリーソフトなどと比較しても変換速度は遜色ない。



■ 2Mbpsでも十分使える画質

GRTを搭載。様々な画質設定が可能

 画質モードは高画質/標準/長時間の3モードが用意されているほか、1~15Mbpsまでのカスタム設定も可能。ビットレートは高画質が9Mbps、標準が4Mbps、長時間が2Mbps。通常長時間モードは解像度をQVGA程度まで落としたものが多いのだが、720×480ドットで2Mbpsでもそこそこの画質を実現できるというのが、XCode IIの大きなアピールポイントだ。

 画質については、テストした環境では、元々ゴーストが出にくいため、ゴーストリデューサの恩恵を感じることはなかった。だが、3Dノイズリダクションはかなり明確に効果を感じることができた。特に地方局の放送録画時に起こるざらついた感じの映像がすっきりした映像になったのはうれしい点だ。ただ、好みの問題かもしれないが、ノイズリダクションをONにしていると、OFFの場合と比べてやや画が眠くなってしまうようので、ノイズが気にならない局の番組を録画する際には、OFFにしておく方がいいかもしれない。こうした個別の映像設定を局単位で調整ができるのは便利だ。

 また、1Mbpsや2Mbpsなどの低ビットレートMPEG-2については、確かにブロックノイズが気になる箇所もあるが、特に2Mbpsについてはビットレートを考えると、かなり優秀で、4Mbpsの映像と比べてもそれほど遜色のない映像になっているように感じた。VHSを使っているときに3倍速録画を多用していた人に対してなら、これらの低ビットレートのMPEG-2には意味があると思う。MPEG-1による録画はできないが、それを補うのがこうした低ビットレートのMPEG-2なのだろう。

 また、1Mbpsでも352×240ドットにまで解像度を落とせば、ブロックノイズなどはほとんど感じられないので、ポータブルプレーヤー用として活用する際には解像度を落としておくというのもいいだろう。


動画サンプル
画質
モード
解像度
(ドット)
ビットレート サンプル
ユーザー設定(15Mbps) 720×480 15Mbps 15mbps.mpg(56.4MB)
高画質 9Mbps high.mpg(24.4MB)
標準 4Mbps normal.mpg(16.0MB)
長時間 2Mbps long.mpg(9.3MB)
高画質からのハードウェアトランスコード
720×480 2Mbps 2mbps.mpg(8.9MB)
1Mbps 1mbps.mpg(5.2MB)
352×240 1m352.mpg(5.0MB)
DVデッキ「WV-DR5」で再生したCREATIVECAST Professionalの映像をRF経由でGV-MVP/GXに入力し、各モードでHDDに録画した。全て3DY/C分離ON、3DNR OFFに設定している(c)CREATIVECAST

動画サンプルの再生は、再生環境やビデオカード、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


■ トランスコードに魅力を感じるなら買い

 GV-MVP/GXは、同カードの複数枚接続にしか対応していないようなので、単価の高い本機を複数枚購入するのはちょっとコストパフォーマンスが悪い。低価格カードのGV-MVP/RX2Eなどと併用できればよかった。

 実勢価格が23,000円前後とやや高めだが、搭載する高画質機能とハードウエアによるMPEG-2トランスコード機能に魅力を感じたなら買っても損は無いだろう。GVencoderによる携帯用動画への変換機能も非常に使い勝手がよく、付属ソフトとしての完成度が高いのも見逃せない点だ。

 ハードウエアMPEGエンコードチップを搭載するビデオキャプチャカードもずいぶん定着してきた感があるが、今後はこういった携帯電話や携帯AVプレイヤーなどとの連携機能が製品の売りとして充実していくのかもしれない。できればPSPやプレイやんむけのプロファイルのサポートや、さらには携帯プレーヤー用のビデオ形式へのハードウェアトランスコードに対応してもらえると、より応用範囲が増えていくだろう。


□アイ・オー・データ機器のホームページ
http://www.iodata.jp/
□ニュースリリース(GV-MVP/GX)
http://www.iodata.jp/prod/multimedia/tv/2005/gv-mvpgx/index.htm
□関連記事
【1月12日】アイ・オー、「XCode II」搭載のTVキャプチャカード
-従来比6倍のトランスコードを実現
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050112/iodata1.htm

(2005年2月10日)


[Reported by 池 紀彦]


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