■ デジタルカメラの動画対応が進む 昨年来、デジタルカメラの動画対応が、地道にブームになりつつある。代表格といえるのが、縦型のシューティングスタイルでSDメモリーカードへのMPEG-4録画が可能な「Xacti C1/4」シリーズといえるが、そのほかにもペンタックスの「オプティオMX4」や、ソニーの「DSC-M1」などMPEG-4動画機能を謳う製品も多い。 また、松下電器のD-snapや、ビクターのHDDビデオカメラ「Everio」なども加えると、ビデオカメラとデジタルスチルカメラの境界は曖昧になりつつある。しかし、そうしたビデオ対応製品の多くは縦型のシューティングスタイルを採用して、「ビデオらしさ」を演出しているが、カシオのMPEG-4記録対応のデジタルカメラ「EXILIM PRO EX-P505」は一見普通のデジタルカメラ風のスタイル。 EXILIMブランドにしては“際だった薄さ”を感じさせないが、こうしたスタイルのビデオカメラはほとんどない。また、価格的にも55,000~60,000円程度と、500万画素CCD/5倍ズーム搭載のデジタルカメラとしては妥当なラインだ。
■ 予想外に小さいボディとバリアングル液晶が魅力
まず、一見して驚かされるのがボディサイズ。ニュースリリース時の写真を見た時には小ささは感じず、「どこが“EXILIM”? 」と思ったが、実際に手に取ってみると、想像していたよりかなり小型で驚いた。外形寸法は98.5×73.5×55.5mm(幅×奥行き×高さ)。本体のみの重量は約215g。 ボディはブラックを基調に落ち着いたデザイン。グリップ部の感触が樹脂っぽいのが気になったが、ボディデザインはシックでなかなか格好いい。本体上部にズームレバー/シャッターや、マイクやポップアップ式のフラッシュ、モードダイヤルなどを装備する。
右側面にはストラップリングと、DC IN、USB端子を装備。USB端子はAV出力を兼ねた独自形状となっている。左のレンズ側面にはフォーカスモードボタンとEXボタンを装備。EXボタンを押すことで、液晶画面上にホワイトバランス/ISO感度/測光方式/AFエリアの4つを呼び出して設定できる。 背面には2.5型液晶ディスプレイを装備。可動式のバリアングル液晶モニターとなっており、ローアングル撮影などにも活用できる。光学ファインダーは備えていない。液晶右脇に、MENUボタンとコントロールボタンを備え、各種設定が行なえる。底面にはバッテリとSDカードスロットを装備。三脚穴も備えている。 本体のスペックとしては1/2.5型の525万画素CCDを搭載。記録メディアはSDメモリーカード/MMCで、7.5MBの内蔵メモリも搭載している。静止画の記録解像度は2,560×1,920~640×480ドットで、それぞれにFine/Nomal/Economyの3モードが用意される。レンズは光学5倍ズーム(F3.3~F.3.6)で、焦点距離は38mm~190mm(35mm換算)。
■ 良くできた動画撮影機能。付加機能も魅力的
それでは早速撮影してみる。撮影モードはモードダイヤルで選択する。モードダイヤルには静止画関連が、静止画/BS(ベストショット)/A(絞り優先)/S(シャッター優先)/M(マニュアル露出)/パスを用意、映像はムービー/ショートムービー/ムービーベストショットが用意される。 通常のムービー撮影には、ムービーモードを選択する。ワイド端が38mmから使えるので、ワイド端が50mm近くになってしまっている最近のDVカメラと比べると、ワイド側を生かした撮影が可能だ。 また、デジタルカメラのおまけムービー機能だと、動画撮影中にズーム操作ができない製品がほとんどだが、「EX-P505」では特に問題なくズームできる。きちんとした動画カメラとして利用できる。
さらに、静止画モードから動画モードにダイヤルで変更した際も画角が維持されたままモード変更されるなど、シームレスに使えるのも印象的。ただし、三洋のXacti DMX-C4の様に動画撮影中の静止画撮影はできない。 ボディデザインは普通のデジタルスチルカメラなので、両手でホールドした方が手ぶれは防げるが、重量が軽いので片手でも十分使える。またバリアングル液晶を採用しているため、撮影の自由度はかなり高いといえそうだ。
また、レンズ左脇のEXボタンで、ホワイトバランスやISO感度、AF測距点などを素早く選択できるなど、操作性も優秀。 画質は、最上位モードの「高品位」は、解像度が640×480ドット、ビットレートが約4.2Mbpsでデジタルカメラの動画機能として考えれば満足行くレベル。 だたし、細部の情報量や解像感はさほど高くなく、MPEG圧縮に伴うと思われるモスキートノイズも散見される。特に水面などの表現には最高画質でもかなりノイズがのってしまう。 画質モードは3つ。内容は以下の表を見て頂きたい。
ダイアルを[BS]にあわせるとベストショットモードとなる。これは、人物/風景/花火/夜景/サイレントの5モードが用意されており、シーンにあわせた撮影が行なえるというものだ。同モードでSETボタンを押し込むことでシーン選択が可能となる。 [人物]は、色強調が肌色に設定され、絞りを開放して背景ボケを生かした撮影ができる。[風景]はフォーカス無限遠、シャープネスハード、彩度高めに設定される。夜景は感度を増感、花火はホワイトバランス太陽光で、フォーカス無限遠とするもの。サイレントは音声なしで速度がはやめの無声映画のように撮影するという。花火など設定が面倒な利用シーンでは、非常に重宝するだろう。 デジタルカメラでは珍しくなくなったシーンモードだが、動画にも用意しているあたりに、デジタルカメラのおまけ機能を超えたカシオの気合いを感じさせる。
USB端子は独自形式で、AV出力も兼用。専用ケーブルを利用してテレビ出力が可能となっている。また、ムービーの簡易編集機能も搭載している。「前部をカット」、「中間をカット」、「後部をカット」の3パターンのカットが用意されており、任意のカット方式を選んで、削除したいポイントを指定、指定したポイントの前/中間/後をカットする。シンプルで使いやすいが、ムービーの結合機能は備えていないので、本格的な編集を行ないたい場合はパソコンを利用するべきだろう。
残念なのは、パソコン用の編集ソフトが貧弱なこと。付属ソフトはユーリードの「VideoStudio おまかせモード SE VCD」だが、基本的に読み込んだ動画/静止画ファイルの順番を並び替えて、BGMをつけてDV形式に変換したり、ビデオCDに書き出すというシンプルなもの。せっかく動画機能を強化したのだから、編集ソフトを用意して欲しかった。また、DVDへの書き出し機能が無いのも寂しい。 録画形式はMPEG-4だが、コーデックとしては[MS MPEG-4 V2]、ファイル形式はAVIとなる。パソコンで転送した際には、Windows Media Playerではそのまま再生できるが、Macintoshはサポート外となっているので注意が必要だ。 ややこしいのは同じMPEG-4対応を謳っていても、たとえば三洋のXacti CシリーズはISO標準準拠のMPEG-4(.MP4)、松下のD-snapはSD-Video(.asf)、ソニーの「DSC-M1」は、メモリースティックビデオ(.MP4)など、数々のバリエーションがありすぎること。さらに、今回のP-505がMS MPEG-4 V2(.AVI)とかなりわかりにくくなってしまっている。 コーデックの統一などは難しいと思うが、同じ「MPEG-4対応」でここまで違うのは考え物。最終的にDVDにするのであれば、編集/オーサリングソフトを使うので問題はないのかもしれないが……。
■ 豊富なモードが用意される静止画撮影機能
静止画撮影については、デジカメWatchのレビューに詳しいのでそちらを参照して欲しいが、絞り優先、シャッター優先、マニュアルなどが選択でき、なおかつ、動画と同様のベストショット機能を備えるなど機能的には、コンパクトカメラの中でもかなり充実している部類といえる。 もちろんEXボタンによる各種設定の一発呼び出しも可能。しかも、ベストショット機能は、ムービーより遙かに選択肢が多く、人物や風景など基本的なモノから、文字を写す、食べ物を移すなどの22パターンの設定を用意してある。この違いを見るだけでも楽しいだろう。静止画の記録解像度は2,560×1,920~640×480ドットで、それぞれにFine/Nomal/Economyの3モードが用意される。
さらに、シャッターを押す前の5秒間を動画を記録する「パストムービー」や、1回のシャッターで前後合わせて8秒間のムービーが撮影できる「ショートムービー」などの機能も充実している。実際に使うか? と聞かれるとかなり微妙な機能な気もしたが、使ってみるとなかなか面白い。 また、記録した動画から静止画を生成する「モーションプリント」や、撮影した静止画にカメラのマイクを利用して30秒間の音声を追加できる「アフレコ」機能も備えているなど、付加機能は充実している。電源は付属のリチウムイオン充電池を使用し、連続撮影時間は静止画で約550枚、動画で約2時間。
■ 良くできたムービー/スチルカメラ。モノとしての魅力も十分 各デジタルカメラメーカーもムービー機能の強化を図っているが、あくまでデジタルカメラの撮影スタイルの延長で、ムービー対応を強化したP505のアプローチは面白い。DVカメラは購入しても年数回しか使わないというユーザーが多い中、こうしてデジタルカメラのビデオ対応が強化されることは、「ビデオ」の撮影シーンを広げるという意味でも意義深い取り組みだろう。 パストムービーやショートムービーといった付加機能は、具体的な使い道というのはあまり浮かばないが、新しい用途提案、実験と考えれば理解できる。なにより機能として、デジタルガジェットとしてのP-505の魅力を高めているとも感じる。 価格も5万円台とまずまず手頃。完成度も高く、ハードウェアとしての不満点はほとんど無い。強いていえば、ビデオカメラとして使うからこそ、手ぶれ補正機能は欲しいところだ。 ともあれ、ちょっとビデオカメラで遊んでみたいという人には最適なカメラとなるだろう。P505を手にした多くの人が、まずは「小ささ」に驚く。店頭などで手に取ってみるとつい買ってしまいそうになる、モノとしての魅力を放つユニークなカメラだ。 □カシオのホームページ (2005年3月4日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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