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第186回:自分でCCCDが焼けるプラグイン
~MaXMuseが採用した「S-CDR」を試す~



 「モーニング娘。」の楽曲などがダウンロード可能な音楽配信サイト、「MaXMuse」が4月1日からプレオープンした。これまでインターネットでの音楽配信をしていなかったアップフロントワークス所属のアーティストの楽曲が購入できるということで話題になっているが、その一方で、MaXMuseはS-CDRという新たな技術に対応している。これが一体どんなもので、従来と何が違うのか、またユーザーにとってメリットがあるのかなどを検証した。


■ 配信された曲をオーディオCDに焼ける

MaXMuse

 マックス・インターナショナル株式会社というベンチャー企業が運営するMaXMuseは、4月1日から新たにスタートした音楽配信サイトだ。基本的にはWMAを用いた音楽配信サイトなのだが、既存のWMA配信サイトであるExcite Music StoreListen Music Storeなどとは置いてあるコンテンツも、その仕組みもちょっと違っている。

 まず、そのコンテンツ内容を見てみるとジャンル的には、J-POP、JAZZ/FUSION、クラシック/ヒーリング、洋楽、ワールドミュージック、演歌/歌謡曲、フォークソングと7つある。しかし、グラウンドオープンが4月29日からで、まだプレオープンの段階だからなのか、楽曲数は極めて少なく、7ジャンルあるうち楽曲が入っているのはJ-POP、JAZZ/FUSION、クラシック/ヒーリングの3ジャンルのみ。それぞれの中身を見ても、数えられる程度のアーティスト、アルバムしかないのが実情だ。

 ただし、1つ大きな目玉がある。モーニング娘。、松浦亜弥、Berryz工房……といったアップフロントワークス所属アーティストの曲のダウンロードができ、しかも6月30日までの期間限定で158円/曲という低価格に設定されている。もっとも、これらアーティストのすべての曲のダウンロードができるわけではなく、あくまでも限定された曲ではあるのだが、ここに価値を見出す人もいるだろう。

 しかし、Digital Audio Laboratoryで注目したいのはそこではなく、このMaXMuseで採用されているDRM関連の技術。前述したとおり基本的にはWMA & WMTでの音楽配信であるため、ダウンロードしたマシンでのみ再生可能で、他のPCへのコピーはできない。また、Macintoshもサポート外だ。WMT対応のオーディオプレーヤーへの転送は基本的には1回だけだが、アップフロントワークスの楽曲のみは3回まで可能となっている。

 また、楽曲データのプロパティを見る限り、WMTにおけるオーディオCDへのライティングは不可となっているのが、そのオーディオCDへのライティングが可能となっているのが、MaXMuseのデータの面白いところだ。

WMT対応のオーディオプレーヤーへの転送は、基本的には1回 アップフロントワークスの楽曲のみ3回まで転送できる

 オーディオCDへのライティングはWMTを使って行なうわけではなく、MacrovisionのS-CDRという機能を用いて行なう。Macrovisionといえばコピープロテクション技術の老舗であり、音楽CDのコピープロテクション技術「CDS」(Cactus Data Shield)を所有するイスラエルのMidbar Techを買収した会社だ。S-CDRもその延長線上にある技術とえる。つまり、普通の音楽CDではなく、CCCDを作成するというわけである。

 国内のレコード会社が次々にCCCDを中止し、音楽配信の世界においても東芝EMIはWMA & WMTでの制限はかけつつも普通のオーディオCDのライティングを許可する時代に移りつつある。そんな中、あえてCCCDを作成する機能を投入することについては疑問には思いつつ、技術的にはちょっと面白いものがある。


■ 回数制限はあるもののCCCDへの書き出しが可能

 では、さっそくそのS-CDRという機能を使って、CCCDを焼いてみることにしよう。このS-CDRを利用するためには、まずMaXMuseのサイトからS-CDRをダウンロードしてインストールする必要がある。このソフトはWindows Media Playerのプラグインとなっており、WMP9およびWMP10上で動作する。インストールすると、ツールメニューのプラグインにS-CDRが現れるので、ここにチェックが入っていることを確認しておく。

S-CDRのインストール画面 ツールメニューのプラグインにS-CDRが現れる

 次に、MaXMuseからいくつかの楽曲をダウンロードし、これらを書き込み用に並べた。通常は、ここで書き込みドライブを設定し、「書き込みの開始」ボタンを押すと、オーディオCDのライティングがはじまるのだが、ここでは、書き込みのドライブとして「S-CDRプラグイン」を選択する。その上で、「書き込みの開始」ボタンをクリックするとS-CDRのダイアログが登場する。

 ここにある、回数の欄を見ると、3と2と1の表記がある。MaXMuseのほとんどの曲は3回までCCCDへの書き込みが可能で、アップフロントワークスの曲のみ1回となっている。なお、CDライティングは1回のみだが、その代わりポータブルプレーヤーの転送は3回までとなっているようだ。ちなみに下のスクリーンショットが2回となっているのは、すでに1回CDへの書き込み実験をしたためである。

 以上でCCCDへのライティング準備完了。あとは「書き込み」ボタンを押すとCCCDのライティングが始まる。

ダウンロードした楽曲 書き込みドライブとして「S-CDRプラグイン」を選択 S-CDRのダイアログ


■ 強力なCCCDが個人で作成可能に

自作のCCCDの再生を試みてもWMPではエラーが返される

 無事焼き込みは完了。さっそく完成したものを手元にあったCDプレーヤーで再生させたところ問題なく再生することができた。一方、これを再度WindowsマシンのCDドライブに入れてみたところ、Windows Media Playerが自動的に起動はするものの、エラーとなって再生することはできなかった。同様にMacintoshにも入れてみたが、やはり再生することはできず、立派な(!?)CCCDが完成しているようである。

 ちなみに、実際に市販されているCCCDにはいくつかの種類があるが、ものによっては普通のオーディオCDと変わらずにPCで再生できてしまうものがある。これはドライブとの相性にもよるそうだが、今回PlextorのPremium、PX-708A、SONYのDRU-500A、LGのGSA-4082Bという4つのドライブで試してみたが、いずれもCCCDとして機能していたので、結構強力なCCCDなのかもしれない。

 ただし、前回使ったSound Forge 8を使ってリッピングを試みた結果、あっさりリッピングできてしまった。プロテクト破りを推奨するつもりはまったくないが、実際のところ一旦CD-Rにライティングし、そこからリッピングするという作業は面倒なので、わざわざ実行する人も少ないだろう。

Sound Forge 8を使うとリッピングできてしまう 通常のWMAやMP3、WAVもライティング可能

 と、ここまでの話だけでは、MaXMuseというサイトを利用する人以外は関係ない話のように思えるが、実はここでダウンロードしたデータを使わなくてもS-CDRは利用できる。

 先ほどはMaXMuseからダウンロードした曲で実験を行なったが、S-CDRでライティングできるのは、こうしたものに限らず、通常のWMA、MP3、さらにはWAVでも利用できるのだ。もちろん、これらのファイルには書き込み制限はないから何度でも焼ける。そんなモノ好きがいるかどうかは分からないが、オリジナルのCCCDを手軽に作れるというわけである。

 これを商用で利用していいのか利用規定を読んでもよくわからないが、インディーズレーベルでCCCDをCD-Rで出したい、なんていうところがあれば、検討してみる価値があるかもしれない。


□マックス・インターナショナル株式会社のホームページ
http://www.max-inter.co.jp/
□MaXMuseのホームページ
http://www.maxmuse.com/pt/index.do
□関連記事
【3月31日】MaxMuse、「モーニング娘。」の楽曲を1曲158円で配信
-セキュアCD-R「S-CDR」対応。第二弾は松浦亜弥ら
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050331/maxm.htm

(2005年4月11日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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