■ 究極かつ最強のおバカ番組の映画版がDVDに!
米国ではTV放映を観た大人や、小学生たちがマネして大怪我を負い、社会問題にまで発展したという超大問題番組が、なぜかパラマウントというメジャー資本で映画化までされてしまった。それが、「ジャッカス・ザ・ムービー」だ。 なんと、2002年アメリカ公開時には「ザ・リング」を抜いて、初登場No.1を記録したという。しかし、あまりにも過激な内容と、日本で無許可でロケしたため権利がクリアできていない映像が含まれていたこともあリ、日本での公開は危ぶまれていた。 が、熱狂的なファンの声援と、関係者の努力により2004年10月に「東京国際ファンタスティック映画祭2004」に、「映画秘宝スペシャル 秘宝ジャッカスまつり~世界のバカ大集合~」として、日本のためだけに本編を再編集した「日本特別版」が上映された。その後、シネマライズ・ライズX(渋谷)ほか4館で上映され、劇場公開11週のロングランとなった。 それが、ついに「ジャッカス・ザ・ムービー 日本特別版 スペシャル・コレクターズ・エディション」(以下、ザ・ムービー 日本特別版)としてDVD化され、4月22日に発売された。内容が内容なだけに、かなりマイナー映画と認識していたので、量販店では仕入れられているかすら不安だった。しかし、実際にはDVD売り場に平積みされている店舗が多くて驚かされた。売り切れるほどではなかったが、世間的にもそれなりに認知されているようだ。 価格は4,179円と、ハリウッド映画としては一般的な価格。ちなみに、TV版も「放送された様々なネタを適当に収録した」というDVDが、「Vol.2」(PDA-256、3,129円)と、「Vol.3」(PDA-257、3,129円)の2枚が既に発売されている。なお、Vol.1の日本での発売は未定となっている。 さらに、Vol.2、Vol.3とザ・ムービー 日本特別版をセットにした初回限定生産のBOX「ジャッカス ワーニングBOX」(PPSJ-1000、9,114円)も、4月22日に発売されている。 別々に買うと10,437円なので、BOXで買うと1,323円お得になる。ただ、ディスク自体はまったく同じもので、アウターケースに収納されている以外は、BOX独自の特典はない。既に、Vol.2、Vol.3を持っていれば、BOXではなくて、ザ・ムービー 日本特別版だけを購入すればいいだろう。ただし、R-18指定となっているので、その点は注意したい。
■ スパイク・ジョーンズも参加 ジャッカスというTV番組は、ジョニーが「自分にスタンガンを放つ」というパフォーマンスのVTRを製作し、それがMTVの目にとまったことで誕生した。製作にはジョニーの高校時代の同級生でもある「マルコヴィッチの穴」の監督スパイク・ジョーンズも参加。スパイク・ジョーンズは、イタズラにも参戦している。 その番組が全米で大反響となり、ブラッド・ピットや、タランティーノ監督も熱狂的なジャッカス信者だという。「ジャッカス・ザ・ムービー 日本特別版」では、スティーヴォー、バム・マージェラ、クリス・ポンティアス、ジェイソン“ウィーマン”アキュナといったTV版でお馴染みのメンバーに加え、スケーターのトニー・ホーク、BMXプロのマット・ホフマン、K1選手のバタービーン、女子キックボクシングの熊谷直子、元ブラッグ・フラッグのヘンリー・ロリンズも出演している。 映画の冒頭には「番組内で危ないことをしているのはスタントマンか、ただのバカです。よい子やクソガキ、それから精神年齢の若い大人の皆さんは絶対にまねしないでください」という警告に加え、「自分たちで録ったバカなビデオをMTVに送らないでください。送ってきても、こちらでは一切見ません。はっきりいって迷惑です」との注意書きもある。きっと、くだらないビデオがたくさん送られてくるのだろう。 体を張って馬鹿馬鹿しいことに挑戦するというのは、お笑いウルトラクイズとか、アポなしのころの電波少年、探偵ナイトスクープ!など日本のバラエティ番組にも多い。ただ、日本の番組の場合、日本人の感覚もあってか、TVで流せる限界のラインというのがなんとなく存在するように思う。例えば、ワニにどれだけ近づけるかというのは、バラエティ番組で定番のバツゲームだが、そこで本当に噛まれたら放送できない。それ以外にも、怪我をしても、血を流すとダメになり、排泄物関係が画面に映るのもまずい。というような、なんとなく線引きがある。 しかし、ジャッカスでは子供が思いつきそうなことを、その感覚のまま実際にやってしまう。例えば、雪が積もった日に、男の子なら誰しもやったことがある、雪におしっこをかけて、「氷レモン」。それを、大人が実際にやって、そのまま食べてしまう。誰でも経験のある、紙で手をきるというのを、わざと指の間を紙で切りまくり、舌まで紙で切る。見ているだけでも、こちらも痛くなってくる。 とはいえ、大画面に投影される映画版だからか、TV版に比べるとゲロの類は少なめ。もちろん、比較すればの話で、映画版でももちろん登場する。映画のスクリーンに、作り物ではないゲロやウンコが写し出せれることは非常に珍しいだろう。個人的には、最後の腹部単純X線写真にミニカーが写る「ケツ・レントゲン」は秀逸だと思う。 米国版では、前述の様に日本でゲリラ撮影を行なったため肖像権などクリアされていない映像が含まれているが、日本版では「電器店でパーティーボーイが踊りまくる」など数エピソードがカットされている。その代わりに、米国版DVDの特典映像から数エピソードを追加・再編集されている。ちなみに、収録されている大ネタは37。 なお、下ネタも多いので、いろんなものがポロリしているが、基本的に無修正でそのまま映し出されている。といっても、出てくる人間はバム・マージェラの母親以外、男ばかりだが……。
■ 劇場版でもジャッカスの雰囲気を壊さない画質 DVD Bit Rate Viewerでみた本編ディスクの平均ビットレートは6.67Mbps。本編が約87分と短めだが、1枚に映像特典も1時間以上収録していることもあり、少し低めだ。チャプタ数は40で、各ネタに直接ジャンプできるようになっている。 映像はビスタサイズを、スクイーズで収録。元々高画質を求める内容でもなく、画質はフィルムではなくビデオ調。本編の中でカメラが見切れるのだが、キヤノンの「XL1」(XL1sかもしれないが)や、ソニーのベーカムばかり。映像特典のメキングの中で、「あんな大きなカメラをもったの初めて」とか、「カメラマンが、それ何状態」と語られている。 また、「大スクリーンでどう映るか何度も試した。フィルム選びに苦労した」とも話している。これも、高画質なものを追求したわけではなく、“ジャッカスらしさ”を追求したのだろう。全体的にDVなどのホームビデオのような鮮やかで鮮明だが、深みがなく、フィルムの様な質感はない。そういったこともあり、DVDとの相性はよく、画質的には問題ない。この映像の軽さも、ジャッカスだろう。 音声は英語をドルビーデジタル5.1chのみで収録し、ビットレートは448kbps。5.1chであることに驚いたが、内容的に活用されているシーンはほとんどない。唯一、オープニングとエンディングだけは映画ということで非常に凝っており、サラウンド効果も使われている。 字幕は、日本語と英語を収録。ただ、非常に淡々と普通の日本語に訳されているので、多少違和感があるかもしれない。雰囲気的にもうまく吹き替えができれば、臨場感がより増すように思う。なお、英語字幕も収録されているので、教科書では勉強できないスラングが覚えられるかもしれない。
なお、本編のエンドクレジットにはDVD特典映像の「追加撮影映像」、「アウトテイクス」のいくつかの映像が約21秒使用されている。また、「キャスト&スタッフのバイオグラフィー」、「フォト・ギャラリー」は英語のままだが、日本語訳集が同梱されている。 メイキングでは、監督のジェフ・トレメインが、映画化した理由を「希望通りに“ジャッカス”を続ける唯一の方法だから」と語り、「クレイジーなことをやるには映画しかない」と、思いのほか熱い気持ちで劇場版が作られていることがわかる。
■ 誰かと一緒に見るときは、人を選ぼう 趣味さえ合えば、価格分は十分楽しめるだろう。合わないと、気持ち悪くなることは確実だ。日本人的感覚の線引きを超えているので、誰かに見せるときは、その人のことをよく選ばないと、「なんでこんなものを見せたんだ!」と涙目で怒り狂うかもしれないので、気をつけたい。
一方、はまりさえすれば「こんな面白いものが世の中にあったのか!」と喜んでもらえることは間違いない。万人にはお勧めできないが、是非一度はどんな映像か見て欲しい作品だ。
□パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパンのホームページ (2005年5月10日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
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