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第191回:より洗練された国産オーディオソフト「DigiOnSound5」
~ ノイズ除去などをさらに強化し、低価格化も実現 ~



DigiOnSound5

 国産のオーディオ編集ソフト、デジオンの「DigiOnSound」が1年半ぶりにバージョンアップし、「DigiOnSound5」として6月17日に発売される。今回のバージョンアップで、Professionalではないスタンダード版でも5.1chサラウンドの編集が可能となったことに加え、ノイズリダクション機能が強化された。

 またタイムストレッチをはじめとするエフェクト機能も一新され、ユーザーインターフェイス周りもかなり洗練された。海外勢が圧倒的なシェアを占めるオーディオ関連ソフトの中で、着実に進化し、他のソフトを上回るまでに成長してきたDigiOnSoundの最新バージョンの機能、性能をチェックした。



■ 低価格でサラウンド編集に対応

エフェクトを中心にさまざまなポイントを強化した

 DigiOnSoundは初期バージョンの登場が'99年だから、今年で6年目になる。Digital Audio Laboratoryでも初期バージョンから見てきたが、当初のものと比較すると、かなり進歩し、機能、性能ともにこなれてきた。最大32bit/192kHzにまで対応し、マルチトラックのオーディオ編集ができるというのが、DigiOnSoundの基本であるが、今回はエフェクトを中心にいろいろな機能が強化されている。

 基本的なユーザーインターフェイスは変わらないが、今回のDigiOnSound5になってデザインが一新され、前バージョンまでの野暮ったさから脱却したというのが第一印象である。

 DigiOnSoundの前バージョンでは、上からDigiOnSound4 ProfessionalDigiOnSound4、DigiOnSound4 Expressという3種類が存在していたが(そのほかにバンドル版のLEというバージョンもある)、今回はProfessionalを廃し、DigiOnSound5、DigiOnSound5 Expressの2ラインナッなった。

 前バージョンでは、Professionalのみが5.1chサラウンド編集に対応していたが、今回はスタンダード版であるDigiOnSound5でも同様の機能を搭載した。ただし、ProfessoinalにあったDolbyDigital AC-3のエンコード機能はオプション扱いとなり、ダウンロード販売での提供となる。ちなみに、価格はスタンダード版が47,250円、オプションのエンコーダも同様の47,250円だから、両方足して94,500円。前のProfessionalよりも若干安い価格設定となっている。

 このことからもわかるように、DigiOnSound5はDigiOnSound4のバージョンアップというよりもDigiOnSound4 Professionalのバージョンアップと考えたほうがわかりやすい。違いは、AC-3エンコーダがオプション扱いになったことだけであり、安い価格でサラウンド編集が楽しめるようになったわけだ。

 ちなみに、DigiOnSound5 Expressは10,290円で、サラウンド機能は搭載されていない。また、トラック数は6つまでで、プラグインに対応していなかったり、プラグインエフェクトに対応していなかったりと、いくつかの制限はある。ただ、基本的な機能は備わっているので、サラウンド機能が不要であれば、Expressでも多くのユーザーは満足できるだろう。


■ ノイズの「取り込み」と「削除」が可能

 さて、そのサラウンド編集機能自体は、前バージョンとほとんど変わっていないので、ここでは割愛するが、今回のバージョンで強化された目玉といえるのがノイズリダクション機能。ご存知の方も多いと思うが、DigiOnSoundはこれまでもノイズリダクションにはかなりこだわりをもってがんばってきている。このDigital Audio Laboratoryでも以前いろいろなソフトでノイズリダクションのチェックを行なってきたが、その際の指標となっていたヒスノイズ、ハムノイズ、クラックルノイズの3つについては、それぞれの専用のノイズリダクションを用いて対処するようになっている。

ヒスノイズ ハムノイズ クラックルノイズ

 そのほかにもノイズゲートという機能を装備していたが、今回新たに「取り込み」および「削除」という機能が追加された。取り込みというのは、ノイズパターンの取り込み機能。つまり、恒常的にあるノイズのパターンを認識し、学習するというものであり、テープのヒスノイズや機械のファンの音、環境的な騒音などを取り込むことができる。その上で、「削除」を実施すれば、音全体から、ノイズをきれいに除去することができ、かなりクリアな音に生まれ変わる。

ノイズパターンの取り込み 減衰量などを指定して削除できる

 効果的に利用するためには、テープ再生音の無音部分を選択し、ヒスノイズのみを学習させ、全体からそれを取り除くという使い方をするといい。考え方としては、SoundForge 8にもバンドルされたNoiseReduction 2.0と非常に近いものだが、操作自体はずっと簡単であり、誰でも簡単に使えるというのが大きな特徴だ。


■ タイムストレッチにもユニーク機能を追加

 エフェクト機能もいろいろと強化されている。新機能としてはパラメトリックEQが搭載された。このP-EQは3バンド、5バンド、7バンド、9バンドと4つのモードを持ち、ローシェルフ、ハイシェルフまで備えた非常に強力なもの。

 9バンドもあるものを使いこなすのは難しそうだが、いろいろなプリセットが用意されているので、まずはこれを使い、気に入らなければエディットして使うというのがいいだろう。実際、音を聴いてみると、なかなかいい効き具合で、使いやすい。通常は3バンドもあれば十分ではないだろうか。また、グラフィックEQのほうもバンド数を増やし、20バンドも扱えるようになった。一般ユーザーにとっては、こちらのほうがわかりやすいだろう。

パラメトリックEQを新搭載 グラフィックEQは20バンドも扱える

「アタック情報を追加する」というパラメータを追加

 一方、ほかのソフトと比較してもユニークで、使える機能が「タイムストレッチ」。タイムストレッチ自体は、以前からDigiOnSoundに搭載されていたが、今回、「アタック情報を追加する」というパラメータが加わった。ここにチェックを入れると、スレッショルドとエンベロープの設定ができるようになっているのだが、これはスレッショルドを超えた音に対してエンベロープ処理を付加する。

 強制的に固定のエンベロープをかけて役に立つのだろうかと最初疑問に思ったが、実際に使ってみるとその効果はすごい。とくにドラム系の音にかけてみるとわかるが、単純にタイムストレッチ処理をすると音色自体が妙になってしまう音が、このエンベロープによって、クッキリとした本来の音に戻ってくれる。これはぜひ使ってみる価値があるだろう。

 試しにドラム音を用いて、アタック情報を入れずにそのまま1.3倍の時間へのタイムストレッチ処理したものと、アタック情報を追加してタイムストレッチしたものを、それぞれMP3にした。聴き比べてみると、その違いがハッキリわかるはずだ。


【サンプル音声】(MP3)
オリジナル
(ドラム)
エンベロープ
OFF
エンベロープ
ON
sample1.mp3
(94KB)
sample2.mp3
(121KB)
sample3.mp3
(121KB)


■ 使いやすさも向上した各エフェクト

 それから単純な機能であるが、新たに加わったのがボイスキャンセラー。ボイスキャンセラーはカラオケなどを作るためのもので、センターキャンセラーなどともいわれている機能だ。センターに位置する音を消すことで、ボーカルを消し去る仕組みで、特にちょっと古い曲などでは非常に効果がある。

 なお、今回のバージョンからこれらエフェクトを起動するためのエフェクトランチャーなるものが追加された。単にメニュー操作のものを、ボタン操作可能にしただけであるが、波形編集ソフトになれていない人にとっては、ある程度はわかりやすくなったかもしれない。

ボイスキャンセラー エフェクトランチャー

 このようにエフェクト面を中心に機能強化されたDigiOnSound5だが、もちろん従来のバージョンと同様にASIOドライバをサポートし、DirectXプラグイン、VSTプラグイン、DMOプラグインにも対応しているから、お気に入りのエフェクトは何でも使える。また、エフェクトチェインという機能もあり、プラグインエフェクト、そしてDigiOnSoundオリジナルのエフェクトを含め、複数のエフェクトをつないで使うことができるので、エフェクトは存分に使いこなせそうだ。


□デジオンのホームページ
http://www.digion.co.jp/
□関連記事
【5月16日】デジオン、マルチトラックサウンド編集ソフト「DigiOnSound5」
-ノイズパターンを解析して除去する機能などを追加
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050516/digion.htm
【2004年3月15日】第137回:マルチチャンネルAC3作成に対応した
~ デジオン「DigiOnSound4 Professional」を試す ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040315/dal137.htm

(2005年5月23日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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