~ USBオーディオインターフェイスの必要性と将来性 ~ |
ハーフラックサイズになり、USB 2.0オーディオの普及モデルとして登場したUA-101。10IN/10OUTの入出力を装備し、最高24bit/192kHzまで対応 |
UA-101は、ハーフラックサイズのUSB 2.0オーディオインターフェイスで、スペック的には、今人気のFireWireオーディオインターフェイス「FA-101」と非常に近い。実際、この2台を並べて見ると、赤と青の兄弟といった感じで、そっくり。ともに最高24bit/192kHzに対応し、10IN/10OUTという仕様だ。
44.1kHz、48kHz、96kHzの各モードではアナログ8ch、デジタル2chの計10IN/10OUTとして動作するが、192kHz時には6IN/6OUTになるという点でもFA-101と同様。これは、製品性能というよりも、PC側の問題のようで、24bit/192kHzを10chで同時に読み書きしようとすると、HDDへの転送速度などがボトルネックとなって、うまく動作しなくなるためだそうだ。
見た目がFA-101(下)とそっくり。デジタル2chの計10IN/10OUTとして動作するが、192kHz時には6IN/6OUTになる点もFA-101と同様 |
しかし、細かく見ていくと、UA-101とFA-101の間での、いくつかの相違点はある。まず1つ目はフロントの2chのアナログ入力にリミッターが搭載されたこと。これはUA-25やFA-66で搭載されて好評となっている機能で、急に過大な入力が来たときにでもクリップすることなくレコーディングを続けられ、なかなか便利だ。
2つ目は、リアにMONITOR OUTという2つの端子が搭載されたこと。これは、その名の通り、モニタ用の出力なのだが、設定次第で、どの音をモニタするのか自由に決められるようになっている。その設定というのは、コントロールパネルに組み込まれた、ミキサーで行なうようになっている。10chある出力および入力から必要なものを必要なレベルでミックスさせて出力可能となっている。このミキサーでの操作はあくまでもモニタ出力のためなので、実際の入力レベルや出力レベルに対しては一切影響が出ないようになっている。なお、ここにはPATCHBAYというものもあり、入出力チャンネルの割り当てができるようになっている。
リアにMONITOR OUTという2つの端子を搭載 | モニタ出力の設定は、コントロールパネルに組み込まれたミキサーで行なう | PATCHBAYでは、入出力チャンネルの割り当てが可能 |
DIPスイッチにより、各チャンネルの入力レベルを+4dBuと-10dBuのどちらにするか設定 |
そして3つ目は、小さなDIPスイッチによって、各チャンネルの入力レベルを+4dBuと-10dBuのどちらにするかを設定できること。普段、切り替えることはほとんどないが、どちらも利用可能というのは、なかなか嬉しいポイントである。
4つ目の違いは、フロントパネル右上のOUTPUT LEVELのボリュームに電源スイッチがつき、レベルを一番小さく絞ると、電源が切れるようになったことだ。実はこれが結構大きい意味を持つ。FA-101には電源スイッチがなかったため、ちょっと不便なことがあった。それは48kHzから192kHzに変更するなど、サンプリングレートを変更する際、FireWireケーブルを挿抜する必要があった。電源スイッチができたため、これを一度OFFにした後にONにすればいいようになったのだ。単純な仕様変更ではあるが、実際に使ってみるとかなり便利である。
そして5つ目は、製品の違いというよりも、FireWireとUSBの仕様の差から来るものだが、UA-101ではACアダプタが必須となる。やはり、これだけのオーディオインターフェイスとなると、かなりの電力を消費する。6pinのFireWireを使えば、それなりの電力供給が可能だが、USBの場合、最大で500mAまでしか電流を流せないため、そこからの電力だけでは動作しない。
もっとも同じFireWireでも4pinでは電力供給できないため、やはりACアダプタが必要であったわけだが、USBではとにかく必須なのだ。ノートPCでの利用を考えれば、Macintosh以外はFireWire端子があったとしても4pinなので実質は変わらないだろう。しかし、デスクトップマシンで、かつFireWireの6pin端子を装備したマシンで使うことを考えると、不便になったのは確かである。
■ ハードとドライバの完成度は高い
以上が、FA-101とUA-101の差であり、それ以外はほぼFA-101相当といっていいだろう。ただ、ここで改めて考えておきたいのが、USB 2.0対応オーディオインターフェイスの必要性と将来性についてだ。ご存知のとおり、いまやオーディオインターフェイスはFireWire全盛。従来のPCIから完全にFireWireにシフトしたのが、この1、2年である。Macintoshユーザーであれば、これで問題ないが、PCユーザーの場合、やはりFireWireは標準インターフェイスとはなっていないため、オーディオインターフェイスを使うためにFireWire端子を増設したという人も少なくないだろう。しかし、その一方でUSB 2.0は現在のPCならすべてのマシンに標準装備されているから、即利用できるというメリットは大きい。また、FireWireインターフェイスには相性問題もあって、オーディオインターフェイスを繋いだが、うまく動作しないというトラブルもあったようだが、USB 2.0ならそうした問題もほとんどなさそうだ。
とはいえ、EDIROLブランドの製品としてはUSB 2.0対応のものはUA-1000以来、約2年ぶり。その間に、FA-101、FA-66と立て続けに出してきたので、EDIROLもUSB 2.0を捨ててFireWireに移ったのでは、などという噂も出てきたが、ようやく普及機といえる価格帯でUA-101を投入してきたことになる。
また、UA-1000からUA-101が出るまでの2年間に、他社からはほとんどUSB 2.0対応の製品は出ていない。Creativeが「Sound Blaster Audigy2 NX」を出したのと、BEHRINGERが「BCA-2000」を出したくらいで、多くのオーディオインターフェイスメーカーは、まったく手を出していない領域であった。その理由は、以前、UA-1000の開発者インタービューをした際に、いくつか指摘されていたが、やはりWindowsのOS自体がUSB 2.0でのオーディオストリームに対応していなかったのが大きい。それが、Windows XP SP2の登場で、標準対応したため、ようやく下地が整ったというのが実情のようだ。
実際、UA-101を手元のPCで使ってみたが、非常に安定しているので、実用上まったく問題はなさそうだ。Windows Media PlayerなどMMEドライバで動作するアプリケーションでも、スムーズに動くし、WDMドライバのSONARとの相性はもちろんバッチリだ。また、ASIOドライバのCubase SXで動かしてもやはりとても安定して動くので、ハードおよびドライバの完成具合には心配なさそうだ。なお、レイテンシーの設定は、Windowsのコントロールパネルから開く画面の中で行なう。これを最小にした状態で、SONAR、Cubase SX上でレイテンシーの表示を確認したところ、ともに出力レイテンシーが3msec程度であった。
WDMドライバ、SONARとの相性も良い | ASIOドライバのCubase SXで動かしても安定して動く | レイテンシーの設定は、Windowsのコントロールパネルから開く画面の中で行なう |
■ アナログ性能ではUA-1000よりやや劣る
さて気になるのが、オーディオインターフェイスの性能がFA-101と比較してどうなのか、また同じUSB 2.0デバイスであるUA-1000と比較してどうなのかということだ。単純に想像すると、FA-101とは同等ではないかと思うのだが、UA-1000とはよくわからない。というのもUA-1000とUA-101は今後も併売されることとなり、UA-1000は最高で24bit/96kHz対応であるにも関わらずUA-101よりも高価なのだ。UA-1000はadat搭載というのが機能的には一歩上を行っているが、アナログ性能としてどうかは、例によって、いつかの実験を行なった。まずは24bit/48kHz時での基本性能チェックだ。まず、無音時のノイズレベルを見てみよう。この結果からすると-95dB程度だから、オーディオインターフェイスとしては、結構いいほうだ。FA-101およびUA-1000と比較すると、どれも同じ程度といった感じである。次に1kHzのサイン波のスペクトル状況を見てみよう。こちらの結果はFA-101とは同等だが、UA-1000のほうがやや上となっているようだ。
スウィープ信号の結果についてもやはり、FA-101と同程度で、UA-1000よりちょっと劣るといった感じである。微妙な差ではあるが、ここまでの結果からは、24bit/192kHzだから音がいいというより、やはり値段の差が、アナログ性能の差になっているということなのかもしれない。
無音時のノイズレベル | 1kHzのサイン波のスペクトル状況 | スウィープ信号 |
ちなみに、Rolandによると、UA-101はFA-101より音質性能を向上させた点があるという。それは、内部処理のDSPの性能をアップしたことだ。アナログ性能に影響を与えることはほとんどないと思うが、モニタレベルの調整をする際などに、音の途切れやノイズが入るようなことが完全になくなるとのこと。
次に、24bit/48kHzのモードを含め、24bit/96kHz、24bit/192kHzを利用して、RMAAでの測定を行なった。その結果は以下の通りだ。UA-1000でRMAAの実験を行なっていないので、正確な比較はできないが、この結果を見る限り、24bit/192kHzなどの高サンプリングレートでは、その性能は100%発揮できているわけではなさそうだ。
またこの結果はFA-101のものとかなり近い結果であることもわかる。この辺を見ると、スペックを取るべきか、アナログの基本性能を取るべきかと悩んでしまうところだが、アナログでの入出力が主な利用手段というのであれば、UA-1000も選択肢のひとつとして十分残しておく価値のあるものといえそうだ。
48kHz | 96kHz | 192kHz |
□ローランドのホームページ
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(2005年5月16日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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