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HDDレコーダ内蔵テレビはアリなのか?
かんたんタイムシフトの「ちょっとタイムface」
東芝 「ちょっとタイムface 32LH100」

発売日:5月下旬発売
標準価格:オープンプライス
実売価格:328,000円


■ デジタルレコーダ時代のテレビデオ?

 フラットパネルテレビ市場は、コストとスケールを重視してデバイス面での統合が進んだこともあり、液晶やプラズマなど各方式ごとに陣営が分かれ、メーカーの事業方針が明確になってきた。そうした中、価格下落圧力も強く、気がついてみたら普及の目安とされていた「インチ1万円」もとうに当たり前。

 ただ、液晶やプラズマ、SEDなどのデバイスやその画作りでの差別化を強く訴求するメーカーは多いものの、機能的にはさほど差が無く、ある意味ほぼ横並びともいえる。

 そんな中機能面で一際変わったアプローチをとるのが東芝だ。2004年11月発売の「face LZ150」シリーズではLAN HDDへの録画という提案をしていたが、今回ミドルクラスの製品として投入してきた「LH100シリーズ」の特徴は“HDDレコーダ内蔵”だ。愛称は「ちょっとタイムface」。

 HDDレコーダ内蔵テレビとしては、日立のプラズマテレビ「Wooo」の上位モデルなどがあるが、Woooでは最上位機の付加価値製品という位置づけで、とにかく機能が多く、価格もそれに準じて高価だった。

 しかし、ちょっとタイムfaceでは、ミドルクラスの製品として37/32/26型の液晶テレビにHDDを内蔵。価格もほぼインチ1万円で、今回取り上げる32型の「32LH100」では33万円弱といったところ。製品発表時のレポートでもお伝えしているとおり、「HDD録画によるタイムシフトをより多くの人に」というコンセプトの元、開発されたという。

 録画機と受像器を一体化した製品としてはVHSとテレビを統合したいわゆる「テレビデオ」が一頃もてはやされたが、DVD時代に入って発売されたDVD/HDDレコーダ内蔵テレビはいまいち売れ行きはよろしくないようだ。しかし、その市場にあえて東芝が戦略製品として「ちょっとタイムface」を投入してきた。ちょっとタイムfaceは、デジタルレコーダ時代の「テレビデオ」になるのか? 早速テストした。



■ 一見すると普通の液晶テレビ

 一見すると普通の32V型液晶テレビだが、下面にやや大きめな台座を備えている。ここが、160GBのHDDレコーダ部で、スタンド代わりにもなっている。

 32型のIPSパネルを搭載し、パネル解像度は1,366×768ドット。輝度は500cd/m2、視野角は上下/左右32型が176度。チューナは地上/BS/110度CSデジタルと地上アナログを2系統を搭載する。

 左側面には、D4入力×1、S映像入力×2、コンポジット入力×2、アナログ音声入力×2、デジタル放送録画出力、アナログ音声出力を装備。HDMI入力がないのが、最近のテレビとしてはやや残念なところだ。

一見すると普通の液晶テレビだが、HDDレコーダを内蔵しているので、やや台座部が大きめ 背面
左側面にD4入力やビデオ入力を装備する USB端子も装備。USBキーボードも接続できる B-CASカードスロット

 台座部には、ちょっとタイムボタンや、録画、再生ボタンなどを装備。簡単な録画/再生操作が行なえる。本体と台座部はi.LINKで接続されている。なお、HDDレコーダ部は、交換用のユニット「THH-16U1」も用意されている。ただし、交換ユニットはHDD故障時のオプションと位置づけられており、HDD容量の拡張などは行なえない。

 ユニットはHDDだけでなく、著作権保護のためのLSI基板なども含まれており、HDDレコーダ部のほぼ全交換となる。そのため、オプション価格も約5万円程度とやや高めだ。

 外形寸法は79.4×35.1×66.7cm(幅×奥行き×高さ)、重量は26.7kg。サイズ的にはやや奥行きが長いのだが、通常のテレビラックの場合、レコーダやビデオデッキを収納するために、40cm程度の奥行きがあるので、特に問題なく収納できるだろう。そういう意味では本体にHDDレコーダを内蔵したことによるサイズ的なデメリットはほとんど感じない。欠点といえば、壁掛けできないことだろうか。

台座部に録画ボタンなどを装備 地上/BS/110度CSデジタルチューナを装備する。HDDレコーダ部との接続はi.LINK HDDレコーダ部。ユニット内に録画用のLSI基盤などを内蔵している

リモコン。中央にちょっとタイムボタンを装備する

 リモコンは上位モデルの「LZ-150シリーズ」とほぼ共通のデザインながら、カラーをダークシルバーを基調にしたものに変更し、シックな印象を高めている。BS/CSデジタル用のチャンネルボタンを上部に配し、BS/CSボタンで両放送を切り替え可能。その下に地上デジタル/アナログ用のチャンネルボタンを配し、地上デジタル/アナログの切り替え用ボタンも装備する。

 中央下部に方向キーを中心として円形にボタンを配し、番組表や戻るボタン、録画番組視聴や写真再生、インターネット機能などを利用可能とする「face ネット」ボタンを備えている。LZ150シリーズとの大きな違いは、円形ボタンの上の「二画面ボタン」が「ちょっとタイムボタン」に変更されたことで、ここでちょっとタイム録画開始と、スキップが行なえる。

 データ放送用の青/赤/緑/黄のボタンやチャンネル切り替え/音量切り替えボタンなどを下部に、下のカバーを外すと各種設定が行なえるメニューボタンや3桁チャンネル番号指定を行なう「3桁入力」ボタンなどがある。

 BSデジタルのチャンネルボタンがNHK1、スター、BSフジなど各チャンネルに割り当てられているほか、BS/CSや地上デジタル/アナログの切り替えも容易で、個人的は使いやすいリモコンと感じた。




■ 起動や操作レスポンスは高速。画質も良好

 電源投入から映像が出画までの時間は、約3秒程度とかなり高速で、HDD内蔵による起動時間の遅れなどはないようだ。リモコンのチャンネル切り替えやBSデジタル/地上デジタルなどのチューナ切り替えも瞬時に行なえ、アナログテレビとほぼ遜色ないレスポンスが実現できている。地上デジタル初期には、起動の遅さやチャンネル切り替えの応答性能の悪さがデジタルテレビの弱点としてよく指摘されてきたが、ほぼ解消されてきていると感じる。

 液晶パネルは「国産のIPS系」とのことで、パネル解像度は1,366×768ドット。輝度は500cd/m2、視野角は176度。デジタル放送を中心に視聴してみたところ、輝度が高く、明るいリビングでも十分細部まで確認できる明るさが印象的だ。

画質モードは3つのプリセットと2つのユーザーメモリが用意される

 画質モードは、「あざやか」、「標準」、「映画」、「メモリー」が用意され、「メモリー」でカスタマイズしたものを「映像プロ1」、「映像プロ2」に保存できる。画質調整項目は「ユニカラー」、「明るさ」、「黒レベル」、「色の濃さ」、「色あい」、「画質」、「詳細調整」などが用意される。画質設定機能的には十分といえそうだ。

 画質モード別に視聴してみると、「あざやか」は近距離でみると目に痛いぐらい明るく、「映画」は明るいリビングではやや輝度が足りない。通常の使用時には「標準」がベストといえる。視聴環境にもよるが、個人的には標準でも若干明るすぎると感じた。その場合は「メモリー」から、任意の値にカスタマイズして、2つのユーザープリセットを作成できるので、こちらを利用すればいい。

 応答速度は公表されていないが、サッカー中継のカメラの高速パンでも残像ボケはさほど気にならない。しかし、カメラを中心に360度回転するようなアクションシーンではやはり若干のボケは感じられた。

 画質や普通のテレビとして利用する際に、特に足りないと感じさせるようなところはなく、強いていえばHDMI端子は欲しかったという程度。普通に家庭のメインテレビとして使うのに十分な機能を有している。


■ 録画予約は非常にシンプル

 通常のテレビとしては十分だが、ちょっとタイムfaceの特徴はなんといってもHDDレコーダ部分。デジタル放送を中心に録画機能をチェックした。

 チューナは地上/BS/110度CSデジタルが各1系統、地上アナログが2系統。そのため、地上デジタル録画中に地上デジタルの裏番組、BSデジタル録画中に、BSデジタルの裏番組のを視聴することはできない。しかし、地上デジタルの場合は、地上アナログに切り替えれば、一応裏番組視聴も可能だ。

EPG画面。情報量は十分 faceネットの予約選択画面

 録画予約は非常にシンプル。HDDレコーダをテレビに内蔵したことで、録画予約が非常に容易になっている。録画予約自体は、通常のデジタルレコーダと同様にEPGで行なうのだが、たとえばデジタルレコーダを利用する場合は、テレビをつけて、「ライン2」などレコーダを接続した外部入力を選択し、別途レコーダを立ち上げて、レコーダからEPG画面を出力して、初めて録画予約が行なえる。

 一方ちょっとタイムfaceでは、テレビをつけて番組表ボタンを押すだけでEPG画面が起動するので、そこで番組を選択して、録画予約するだけ。接続や外部入力選択などのプロセスをまるまる省けるので操作はとてもシンプルだ。いままでデジタルレコーダを利用したことの無い人でも一度で理解できるだろう。

 とにかく予約したければ、「番組表ボタンを押して、カーソルキーを動かして」とだけ教えれば、機械音痴な人でもほとんど戸惑うことなく扱えそうだ。強いて悩みそうなところを挙げると、EPGの放送切り替えかもしれないが、基本的に通常のテレビ視聴時と同じで、リモコンの地上D/Aと、BS、CSボタンで放送を切り替えるという方式。テレビの視聴方法さえわかってしまえば問題はないだろう。単体レコーダに比べてわかりやすさという点では大幅に上回っているのは間違いない。

 EPGは同時に6ch分表示可能なのだが、デジタル放送では1局に付き2~3chの枠があるため、現実には3局程度の情報しか表示されないのがやや残念なところ。もっとも今のところどのデジタル放送対応機器でも同じ表示方法なので、今後業界全体でもう少しデジタル放送EPGの表示方法についてよりより方向を探っていって欲しいと思う。

 また、feceネットボタンから予約メニューを呼び出すと、Gコード予約や日時指定予約も行なえる。EPG予約時に、日時をスキップして予約したい時には、EPG画面でリモコンの赤ボタンを押すと、素早くスキップしてその日時の番組表に移動可能。青ボタンで現在時刻に戻ることができるなど、録画マニアにも使いやすい仕様になっている。

 放送局が送出するデジタル放送のEPGを元に録画予約を行なっているため、野球延長などで放送時間がずれた場合にも、かなり高い確率で追従して録画予約が実行される。大事件が起きて、番組が大幅に変更された場合などでなければ、ほぼ間違いなく録画実行できそうだ。

 録画モードは、デジタル放送のMPEG-2 TSをそのまま記録するTS(HD)と、SD解像度にコンバートするTS(SD)のほか、XP (9.3Mbps)/SP(4.8Mbps)/LP(3.0Mbps)も用意される。通常はTSモードで録画するといいだろう。また、外部機器との連動予約機能も搭載している。

録画予約画面 番組表で赤ボタンを押すことで、日時切り替え画面が立ち上がる 外部出力を利用した外部機器との連動予約機能も搭載

 録画予約で唯一戸惑ったのは、録画重複時の予約。録画予約を試みて、前の予約と重複すると、[以前の予約を消去しますか]というダイアログが出て、消すか現在の予約を入れないかを選ぶだけ。例えば15分だけ重複しているので、その15分を後ろにずらして予約を入れるという使い方ができない。この場合は日時指定で予約する必要がある。


■ ちょっとタイム機能もなかなか微妙

 録画番組の視聴もシンプルで、faceネットボタンで、専用UIのface netを立ち上げる。そこで[録画した番組を試聴したい]を選択して、番組を選択するだけだ。「誰にでもタイムシフトの魅力を感じてほしい」という製品コンセプトどおりの簡単さ。

 また、番組選択画面から、青ボタンを押すと録画リストが現れる。ここでは、各番組が動画付きプレビューで確認できるほか、番組のロックが行なえる。なお、録画した番組は160GBのHDDがいっぱいになると自動的に古い番組から順に削除される。もし、消したくない番組がある場合は、ロックをかけておく必要がある。

 再生/停止や早送り/戻しなどは中央周辺のボタンに集められており、操作もシンプルでわかりやすい。また、リモコン中央のちょっとスキップボタンを押すことで30秒のスキップが行なえるのでCMスキップ時などには重宝する。なお、ちょっとスキップボタンは5秒/10秒/30秒5分が割り当てられる。

faceネットの録画番組選択画面 録画リストでプレビューや番組ロックが行なえる

 160GBという容量はTS HDモードで録画した場合は、BSハイビジョン放送で約13時間、地上デジタルで約15時間。この時間が多いと感じるか少ないと感じるかは、ユーザーによるだろうが、よほどのヘビーユーザーでなければ、特に問題はないだろう。

 なお、録画した番組をDVDなどに書き出す機能は備えていない。側面にデジタル放送出力端子を備えてはいるものの、コピーネバーで出力されているため、光学メディアへの出力は行なえない。あくまで一次キャッシュ的にHDDを利用する、タイムシフトのためだけにHDDを使うというのがちょっとタイムfaceの考え方だ。

 もちろんヘビーユーザーには物足りないかもしれないが、とにかくシンプルな録画予約/再生を考えると、「タイムシフト」を多くの人に体験してもらうには、ちょうどいいHDD容量と感じた。今までのレコーダでは敷居が高すぎると感じたユーザーでも十分魅力的な製品になっている。

ちょっとタイムボタンを押すとちょっとタイム録画を開始

 そして、一次キャッシュとしての考え方をより進めているのが、ブランド名ともなっている「ちょっとタイム」録画機能。テレビ視聴中の急な来客や電話などの場合に、リモコンのちょうど中央部にある「ちょっとタイム」ボタンを押すことで、録画を実行。その部分を30/60分にわたり録画を続けることで、見逃しを防ぐというものだ。

 操作は単にちょっとタイムボタンを押すだけ。約3秒弱で録画を開始する。離席した後、戻ってきて再生ボタンを押せば、ちょっとタイムボタンを押した箇所から再生が始まる。録画時間は30/60分と制限無しで、初期状態では30分に設定されている。たとえば、カーレースでラスト間近な緊迫した場面だけれど、トイレに行きたいといったときなどには重宝するだろう。

 少しとまどったのは、録画番組として認識されないこと。ちょっとタイム録画でHDDに記録したので、後でもう一度番組リストから呼び出せるだろうと考えたのだが、リストには登録されず、そのまま消えてしまう。一時離席時のバッファという考え方なので、後で再度視聴したい時にはきちんと録画を行なっておく必要がある。

ちょっとタイム録画を開始すると画面右下に録画を示す表示が現れる ちょっとタイム録画の時間は30/60分/なしが選択可能

 もう一つ特徴的な機能は、「今すぐニュース」。あらかじめ録画するニュース番組を選択しておくだけで、リモコン上部の今すぐニュースボタンを押すと、最新のニュースが呼び出せる。ニュースは9番組登録可能で、例えば6時/19時/22時と指定している場合、23時に帰宅してボタンを押すと22時のニュースが、朝7時に起きてボタンを押すと6時のニュースが一発で呼び出せるというものだ。

 当初はあまり使わないかな、と思っていたが、使ってみると意外と便利。ニュースを知りたいときはもちろん、見る番組が無い時に何となくニュースを見ていると、それなりに実りあることをしているような気がしてくる。

 また、「正午のNHKニュースで、○○社に公取委が入ったらしい」など、後で知ってもなかなか情報にアクセスできないこともあったりするので、いろいろな意味で重宝するシーンが多いと感じた。

リモコン上部の今すぐニュースボタン 録画するニュース番組を登録する


■ 簡単タイムシフトがテレビ市場を変える?

 とにかく簡単にデジタル放送を録画/再生できるという意味では、非常によくできた製品だ。操作が簡単なので、これから録画するという意識も持たずに、“とりあえず押さえておく”的な気軽な録画予約が可能。ちょっとタイム録画などは、あまり録画しているという意識もなく視聴できる。当たり前のことのようにタイムシフトが行なえている、という感覚は今までになかった製品といって間違いない。

 現在販売されているハイブリッドレコーダなどでは、実際のところDVDに書き出す人は少なく、単にHDDを利用したタイムシフト的な利用が多いという。そうしたユーザーであれば、テレビにHDDを内蔵した方がリーズナブルだろう。ちょっとタイムfaceがある程度の成功を収めれば、他社も確実に追従してくるだろうし、たとえそうならなくても、いつかはHDDレコーダ内蔵テレビがある程度のシェアを得る時代が来るのではと感じた。

 価格的にもインチ1万円程度ということもあり、ハイビジョンレコーダと同サイズの液晶テレビを購入するよりは安価に収まる可能性が高い。なにより、使ってみるといままでのDVDレコーダによる録画とは異なる録画感覚が味わえるので、液晶テレビの購入を検討しているのであれば、非常におもしろい選択肢になるのは間違いない。個人的には、「将来」を考えるとHDMI端子ぐらいは装備して欲しかったのだが……。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2005_04/pr_j1803.htm
□製品情報
http://www.toshiba.co.jp/product/tv/lh/index_j.htm
□関連記事
【4月18日】東芝、HDDレコーダ内蔵の液晶テレビ「ちょっとタイムface」
-37/32/26型を用意。“タイムシフト文化”の普及を図る
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050418/toshiba1.htm
【2004年11月5日】【デバ】録画機能を内蔵したテレビの進化形
世界初Ethernet経由のデジタル録画に対応
東芝 「液晶face 32LZ150」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041105/dev091.htm

(2005年6月3日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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