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第193回:Mac miniにデザインマッチしたFireWireオーディオ
~ TERRATEC「PHASE 24FW」をテスト~



 Mac miniとピッタリなサイズということで売り出されている、小型のFireWireオーディオインターフェイス、TERRATEC「PHASE 24FW」。コンパクトで低価格ながらも、24bit/192kHz対応でなかなかの高音質という話なのだが、使い勝手や、本当に高音質なのかチェックした。



■ “偶然”Mac miniにデザインマッチ

 先日、ACIDやSoundForgeのレビューをしたときに、代理店であるHookUpに行って担当者と話をしたのだが、その際に話題になったのが、今回取り上げるTERRATECのPHASE 24FWというコンパクトなオーディオインターフェイス。

前面 背面にFireWireを装備

Mac miniと偶然デザインマッチ

 コンパクトながらもなかなか音質もよく、ドライバの開発力などの技術力もかなりしっかりしている、という。ただHookUpは、これまでも機会を探していたが、日本に投入してすぐに売れそうという機材があまりなかったため、TERRATEC製品の発売はしていなかった。しかし、PHASE 24FWはMac miniと横幅がピッタリ同じサイズで、かつ性能もいいということから、初めての発売に踏み切ったというのだ。

 もっともサイズが同じというのは偶然で、Mac miniの上に置いてみたら、ピッタリだったので、「Mac miniに最適」として売り出したのだとか。確かに、横幅こそ合っているが、Mac miniとはデザインがまったく異なるので、誰の目からも、たまたまであることはすぐにわかってしまうが………。


 一方、個人的にはTERRATECの印象はあまりいいものではなかった。というのも、以前何度か雑誌でサウンドカード、オーディオインターフェイスのレビューをしたことがあったが、あくまでもローエンドのコンシューマ用というイメージであり、音質もかなりひどいものだったからだ。正直言って、なんでこんなメーカーのものをHookUpが取り扱うようになったのか、ちょっと疑問だった。

 しかし調べてみると、TERRATECはドイツのPC周辺機器メーカーで、サウンドデバイスのみならず、ビデオカードやテレビキャプチャカード、WebCamなど多岐にわたって取り扱っているメーカー。筆者が以前にレビューしたのは、こうしたコンシューマ向け製品としてのサウンドデバイスだったのだが、これらとは一線を画したProfessional Audio Solutionsという位置づけで、TERRATEC PRODUCERというブランドを打ち出しており、HookUpが評価していたのは、このブランドの製品のことだった。

 同ブランドでは、ギターサウンドをリアルタイムにMIDIへ変換するユニットのAXONシリーズ、19インチラックのミキサーやアンプ、フィルター、シンセイサイザなどのSINEシリーズなどがある。中でも、注目すべきが、PHASEシリーズというオーディオインターフェイス群。新製品であるFireWire対応のPHASE 24FWのほかにもPCIバス接続のもの、USB接続のものなどいろいろラインナップしているようだ。

 前述のとおり、現在国内で扱われているのはPHASE 24FWのみで、価格はオープンプライス。実売価格は37,000円弱。Mac miniに限らずMacintosh全般、そしてWindowsでも利用可能だ。スペック的には24bit/192kHzに対応して、アナログが2IN/4OUT、デジタルがS/PDIFコアキシャルで2IN/2OUT、さらにMIDIが1IN/1OUTで扱える。もちろんFireWireの6PIN接続した場合は、バス電源供給でACアダプタなどは不要となる。



■ シンプルなドライバ周り。ルーティングはやや戸惑う

 Mac miniに最適というので、これに接続してみたところ、ピッタリなのは大きさだけではなさそう。EDIROLのFA-101やFA-66などと同様、ドライバをインストールすることなく、そのまま認識し、使うことができた。

 先週のTigerの検証で用いたマシンにそのまま接続したので、当然OSはTigerだが、とくに不具合もない。ただし、この標準のドライバだけではPHASE 24FWの各種設定ができないため、ユーティリティをインストールすると、それぞれの端子に何を割り当てるかの設定などが可能なミキサーが利用できるようになった。

ドライバのインストールなしにMac miniから利用できる ユーティリティでミキサー機能を追加

 一方、Windowsで利用する場合には、ドライバのインストールが必要になる。もっとも、インストール作業はいたって簡単であるし、このインストールでミキサーもいっしょに入るため、手間としてはほとんど同じといっていいだろう。ミキサー画面は基本的にはMacと同様だが、ASIO設定や色の設定などができるようになっている。なおASIOの設定は単にバッファサイズ=レイテンシの調整のみのようだ。

Windows用のドライバ画面 WindowsでのASIO設定画面

 実際に動かしてみて、最初ちょっと戸惑ったのが下のRoutingという項目。ここをクリックすると、いくつかの選択肢があるのだが、要するに各端子に出力する信号をここで選択する。デフォルトではDigital Mixerとなっており、PCからの出力信号、それに各入力端子への信号をミックスして出力するようになっている。その際のミキサーが上にあるフェーダー類なのだ。デジタル入力については、外部からデジタル信号が入っているのを感知して、はじめてアクティブになる。

Routingで出力信号を選択 コントロールパネル

リアにTRSフォンのモノラル出力×2、DINのS/PDIF出力を装備。前面のヘッドフォン端子がアナログの3/4chになっている

 また、ここに3種類のルーティング先が用意されているが、ぱっと見た目にはリアにTRSフォンのモノラル出力が2つ、DINコネクタ経由で接続するコアキシャルS/PDIFが1つあるだけで、3つあるように思えない。

 しかし、実はフロントのヘッドフォン端子が単なるモニタ用ではなく、アナログ出力の3/4chという扱いになっている。リアはバランス端子となっているので、音質重視であればリアを用い、手軽に使うならフロントをという位置づけのようだ。

 なお、フロントのステレオヘッドフォン端子をモノラル2つに分けるアダプタがついているほか、出力レベルをヘッドフォン用にするかライン用にするか切り替えるスイッチも先ほどのミキサー画面上に用意されている。


Digital Mixer上で音量調整を行なう

 ヘッドフォンで聞く限りなかなか抜けのいい高音質。ちょっと期待できそうだ。一方、アナログ入力は先ほどのリアのTRSフォンのみ。もちろんアンバランスの入力も可能ではあるが、ハイインピーダンスに対応していないので、ギターなどに直結することはできない。また、キャノン入力はないし、当然ファンタム電源などにも対応していないから、コンデンサマイクなどを直接接続することはできない。ある程度用途を絞り込んでの利用となりそうだ。

クロックは32/44.1/48/88.2/96/192kHzが選択できる

 そのほかの設定項目としてはクロックがあり、32kHz、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、192kHzの切り替えが可能。この際、オーディオインターフェイスのFireWire端子の挿抜や電源のオンオフというのは必要ないが、切り替えてから安定するまで5秒程度はかかってしまう。以前、EgoSystemsのQuataFire 610を使った際も、やはりその程度の時間がかかっていたので、システム上そんなものなのかもしれない。ちなみに、Macで同様の切り替えをしてみたら、すぐにできたので、Windowsの問題なのかもしれない。

 なお、先ほどのRoutingの選択肢で気づいた人もいるかもしれないが、PHASE 24FWでは、アナログ入力をそのままデジタル出力へ、反対にデジタル入力をアナログ出力へスルーさせることができる。つまり、これをA/Dコンバータ、D/Aコンバータとして利用可能なのだ。ACアダプタで電源を供給しておけば、コンピュータを接続しなくても使うことができ、コンピュータの電源を落とす直前の状態を保持していてくれるので、結構便利に使うことができそうだ。



■ 音質は良好

 というわけで、いつものように音質測定の実験に入ってみよう。前述したとおり、PHASE 24FWには2種類のアナログ出力があるが、やはりここでは、リアパネルにあるTRSフォンの2chを直結して測定することにする。入力のレベルはHigh、Mid、Lowの3種類があるが、Lowを設定した結果、出力と同じ-6.0dBが得られたため、ここに設定した。また、Routingの設定でDigitalMixerを選択していないため他にレベルを設定するところは存在しない。

 まず、ノイズレベルを見てみよう。見ると左右チャンネルともに若干DCオフセットが乗っているようなので、SoundForge上で取り除いてみた。これを見てもわかるとおり、最大でも-96dB程度とノイズレベルは非常に低いことがわかる。

ノイズレベル DCオフセットをSoundForgeで除去した際のノイズレベル

 続いて、サイン波のスペクトラムを見ても、これも優秀。高調波が微妙にあるだけで、参考値としてのS/Nも85.20dBを記録している。そして、スウィープ信号の結果を見ても、かなりきれいな直線を描いている。この3つの結果から見れば、トップクラスに入る成績といえる。もちろん、これはバランス接続しているので、そもそもいい結果になりやすい傾向ではあるのだが……。

サイン波のスペクトラム スウィープ信号

 また、今の結果はさまざまな機材と比較できるようにつくった48kHzでのテストプログラム。やはりせっかくなら48kHzに限らず96kHzさらには192kHzでのパフォーマンスも確認したいところだ。

 そこで、例によってRMAAでのテストも行なってみた。結果は以下の通りである。192kHzにまであげるとIMDの結果が若干落ちてしまうが、それ以外は完璧といってもいいほどの好成績となっている。この価格からすれば、かなりパフォーマンスのいい製品といえるのではないだろうか?

48kHz 96kHz 192kHz

 ただし、前述したとおり、ハイインピーダンス対応になっていないためギターなどは直接接続できない、キャノン入力がないといったウィークポイントがあることは確かだ。また入出力数や光デジタル対応していないことなどもネックのひとつといえるだろう。その辺は割り切った上でというのであれば、なかなかいい選択肢であるといえそうだ。

□TERRATECのホームページ(独文)
http://www.terratec.de/
□フックアップのホームページ
http://www.hookup.co.jp/
□製品情報
http://www.hookup.co.jp/soundcard/terratec/phase24.html

(2005年6月6日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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