■ 市民権を得たフラッシュプレーヤー デジタルオーディオプレーヤー市場の拡大に伴い、通勤電車や町中で見かけるプレーヤーにも変化が出てきている。iPodなどのHDDプレーヤーについては、昨年からそれなりに出回っていたが、今年に入って普及が実感できるのは、フラッシュメモリープレーヤー。それも首に掛けて使っている人がかなりの勢いで増えている。 各プレーヤーメーカーは以前から「首からかけて、アクセサリーのように使って欲しい」的な提案をしていたのだが、本格的に見かけるようになったのは、1月のiPod shuffleの発売以降だろう。しかし、HDD型と異なり、フラッシュプレーヤー市場の面白いところは、iPodの一人勝ちではないということ。 町中でよく見かけるのは、iPod shuffleに加え、Rioの「Rio Unite 130」、ソニーの「NW-E505/507」、「アイリバー N10」など。 そんな中、アイリバー・ジャパンはフラッシュプレーヤーの新製品となる「T10」、「T20」、「T30」、「H10.Jr」、「U10」を発表。7月より順次発売する。マニア的に注目度が高いのはMPEG-4対応のマルチメディアプレーヤー「U10」かと思われるが、T10/20/30シリーズは同社の主力製品「iFP-700/800」の後継シリーズとのことで、販売の中心になるのはこちらだろう。 今回は「T10」の1GBを試用した。T10は、フック装備が特徴的なフラッシュメモリプレーヤーで、256/512MB、1GBモデルを用意。直販価格は256MBモデルが12,980円、512MBが17,980円、1GBが22,980円。カラーリングは、256MBがライムグリーン、512MBがチェリーレッド、1GBがオレンジイエローとなっている。
■ フック付きのユニークなデザイン
同梱品は、本体のほか、イヤフォン、ネックストラップ、USBケーブル、キャリングケースなど。CD-ROMは同梱されない。簡単ガイドや取扱説明書も付属する。 外形寸法は85.8×40.8×29.4mm(幅×奥行き×高さ)。製品写真を見た時には、平面的なデザインなのかと思っていたが、思いのほか厚みがあって驚いた。 単3電池が入るので4cm近い厚みも当たり前ではあるが、同社の従来製品iFP-700シリーズを踏襲したイメージで、U10/T20/T30の発表会では、「トライアングルデザイン」と呼ばれ、アイリバーのデザインへのこだわりの一つと紹介されていた。 本体前面には、カラー表示に対応した1.01インチのCSTN液晶ディスプレイを装備し、ID3タグ表示が可能。液晶側面に上下左右ボタンとその中央に決定ボタンを備える。このボタンの外側にあるスライド式のスイッチがHOLDボタンとなる。 本体上面には、再生/停止、A-B、録音ボタンを装備するほか、ヘッドフォン出力やUSB 2.0も備えている。本体下面には電池ボックスが用意される。
デザイン上の最大のポイントは、なんと言っても操作ボタン脇に備えたフック。基本的に付属のネックストラップを装着するモノだが、このフック部が20度ほどの角度がついており、ストラップの接続部も同様に斜めにカットしたようなデザインを採用している。 非常にアクの強く無骨なデザインだが、同時にスポーティな印象も受ける。個人的にはなかなか格好いいデザインだと思う。
ネックストラップから下げた姿は、ビビットなカラーリングと相まってかなり目立つ。電池を除いた重量は約49g。電池を入れてから首に掛けると、最初は少し重いと感じたが、慣れれば気になるレベルでもない。 また、フック部はカラビナのようにベルトループなどに引っかけることも出来る。鞄のストラップ部に着けるなど、使用シーンはかなり広がりそうだ。フックの剛性も高く、しっかり装着できる。電源は単3乾電池で連続駆動時間はカタログ値で約53時間。
■ シンプルな操作体系
オーディオデータの転送はUSB 2.0経由で行なう。USBストレージクラスに対応しており、音楽ファイルをパソコンからT10のルートフォルダにドラッグアンドドロップするだけで、転送が可能。137MBのMP3ファイル転送時の転送時間は47秒。 再生対応フォーマットはMP3、WMA、OGG、ASFで、MP3は8~320kbpsのビットレートをサポートする。転送ソフトは付属しないが、DRM付きのWMAファイルはWindows Media Playerから転送できる。また、取扱説明書ではWindows Media Playerでのリッピング、オーディオ転送を推奨している。 起動するとMUSICモードが立ち上がる。操作は液晶脇の丸形のボタンのほか、上部の再生/停止、A-Bリピート、録音ボタンを利用する。 丸形のボタンの中央はNAVI/モードボタンで、ボタンを押し込むと、モード切替が可能となり、丸形ボタンの左右で、MUSICモードのほか、BROWSER、FM RADIO、RECORDING、SETTINGの各モードの変更が行なえる。 MUSICモードでの操作は非常にシンプル。NAVIモードボタンを押すと、ブラウズモードに入るので、左右のボタンで階層移動、上下のボタンで階層内のファイル/フォルダ選択を行なう。このブラウザモードは基本的にT10内のフォルダをそのままブラウズできる。 ブラウズ画面で、楽曲を選択して再生ボタン、もしくは丸形ボタンの右を押すことで再生が開始される。再生モードの操作は、丸形ボタンの上下でボリューム、左右が曲スキップ/バック、左右の長押しが早送り/戻しとなる。レスポンスは良好で、操作のタイムラグはほとんどない。
また、再生モード時にA-Bボタンを押すと、リピート点選択。さらに、A-Bを長押しするとイコライザ選択が行なえる。再生モードで録音ボタンを長押しすると、通常再生のほか、リピート再生、シャッフル再生などに切り替えられる。1ボタンでほぼ全ての再生系設定を呼び出せるので、非常に使いやすい。 ユニークなのはHOLDスイッチ。ボタンの丸枠の外側のスイッチを下に倒すとHOLDとなる。なお、電源のON/OFFは再生/停止ボタンの長押しに割り当てられている。 カラー液晶により視認性も向上しているが、ジャケット表示機能などは備えていない。ブラウザモードでは、画像ファイルの表示も可能なのだが、対応ファイルがBMPのみなのが残念なところ。
■ 豊かな低域が魅力のスポーツ仕様
それでは音をチェックしてみよう。まず、イコライザ設定をノーマル、SRS WOWもOFFにして、再生してみたが、低域の厚みが印象的。ボーカルの定位もぐっとセンターに出くるため、「SRS WOWをONにした?」と錯覚したが、この音が初期設定と再確認して驚いた。 張りのある中低域とボリューム感ある低音が魅力的で、ハードロックや、ジャズ、ヒップホップ系のソースにはマッチする。高域は、艶やかさこそ無いものの、情報量は十分。音場もポータブルプレーヤーとしては広めで扱いやすい。外観のイメージ通りに、スポーティで派手な音だ。 付属のイヤフォンは、ユニット径が大きめで、デザイン的には以前同社製品で採用されていたSennheiser MX400などに近い印象。分解能が高いわけではないが、ほかのプレーヤーで使ってみても、低域の太さを感じさせる。イヤーパッドも付属するので、ある程度の遮音性を確保できる。なかなか良くできたイヤフォンだ。 ヘッドフォンを変えてみたところ、T10自体の低域も強めではあるものの、付属ヘッドフォンの時と比較すると、かなり低域の印象は薄くなる。Shure E2CやSenehiser PX200、Philips SBC-HN060などのヘッドフォンを利用してみたが、付属イヤフォンが一番相性がよかった。 イコライザは、Normal/Rock/Dance/Classic/Jazz/Party/Live/U Bass/Pop/Metalの10モードと5バンドのユーザーEQを装備。さらに、SRS WOWも備えている。SRS WOWをONにしたようなセンター定位と低域の強さが特徴なので、SRS WOW、特にTruBassに関しては弱めの設定が適していると感じた。
また、FMラジオ機能やボイスレコーディング機能も搭載。FMラジオの録音機能も搭載しており、録音形式はMP3.HIGH/MIDDLE/LOWの3モードの選択が出来る。連続再生時間はカタログ値で約53時間。テストのため連続再生したところ、約20時間で、インジケータが一目盛り減った。
■ デザインが気に入れば「買い」 機能的に目新しい点は無いが、フック付きのスポーツモデルという、他に無いデザインが魅力的な製品だ。デジタルオーディオプレーヤーの機能も操作性も成熟してきた昨今では、デザインは大きなセールスポイントになるだろう。
イヤフォンのクオリティも十分で、音質的にもインパクトがある。使い勝手もよく、機能の不足も無いので、スポーティな乾電池採用プレーヤーが欲しいといった人にはかなり有力な選択肢になるだろう。 競合の多いクラスの製品ではあるが、よりシックなデザインを求める人には、先日発表されたT20も用意されている。 大きな不満はないが、あえて注文をつけるとしたら、メモリ容量ごとにカラーを選べないことだろうか? いつも身につけるモノだけに、一番気に入ったカラーデザインの製品を持ちたいところ。直販サイトや直営ショップでだけでも、好きなカラーと容量を自由に組み合わせられると嬉しいのだが……。 □アイリバージャパンのホームページ (2005年7月1日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
AV Watch編集部av-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
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