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人気のNCヘッドフォンがモデルチェンジ
80%の外部ノイズをカット!
Sennheiser 「PXC 300」
8月初旬
標準価格:オープンプライス
実売価格:18,600円


■ 人気のノイズキャンセルヘッドフォンが一新

パッケージ

 本連載でも多くの機種を取り上げてきたノイズキャンセルヘッドフォン(NCヘッドフォン)。基本的には航空機や新幹線などの長距離、長時間移動用の負荷を低減するためのニッチ商品だが、特に地下鉄などの電車通勤者などに、日常的な利用でも注目を集めている。

 5,000円以下の製品から、41,790円のボーズ「QuietComfort2」まで、幅広いレンジの製品が用意されている。さらに、ボーズはノイズキャンセルヘッドフォンの源流とも言えるパイロット向けヘッドセット「Aviation Headset X」まで発売している。

 しかし、いくらノイズキャンセル機能付きとはいえ、ヘッドフォンに出せる金額は限られている。価格と性能のバランスの良さで人気を集めていたのが、Sennheiserの「PXC 250」だ。価格は2万円弱ながら、高い音楽再生性能と適度なノイズキャンセル効果、シンプルなデザインなどで、“QuietComfort2までは買えないが、ある程度のクオリティを求めたい”という層にマッチしていた。

 そのPXC 250が、「PXC 300」にモデルチェンジ。従来モデルのデザインを踏襲しながらも、ノイズキャンセル効果を向上させた「NoiseGuard Advance」を搭載、約80%の外部騒音をカットするという。従来モデルの“約65%の外部音カット”から、さらにノイズキャンセル性能が向上しているようだ。

 従来モデルと同様のやや大きめのノイズキャンセルユニット部は残念だが、それでも価格と性能のバランスを考えると、個人的にはPXCシリーズがNCヘッドフォンのベストな選択と考えていたので、新製品にも期待がかかる。早速購入し、テストしてみた。価格はオープンプライスで、購入価格は18,600円。大手量販店では約25,000円(10%ポイント還元)で販売されているようだ。



■ デザインも旧モデルからマイナーチェンジ

同梱品

 従来モデルのPXC 250と同様に縦長のノイズキャンセルユニットと、ヘッドフォン部から構成される。総ケーブル長が1.8mと相変わらず長いのが気になるところ。

 同梱品は、キャリングポーチと、航空機用のプラグアダプタと、ステレオ標準への変換プラグとシンプルだ。

 ヘッドフォン部は、一見するとPXC 250とほぼ同じで、ヘッドバンドを折りたためる。ただしPXC 250と比較してみるとユニット径は同じものの、ユニットの厚みはかなり増しており、イヤーパッドもソフトな触感のものに変更されている。

 ノイズキャンセルユニットもPXC 250によく似たデザインで、ボディにはNoisaGuard Advanceの文字。NCユニットにはNC ON/OFF用のスイッチを装備。電源は単4電池×2本となっている。

【PXC 300のスペック】
型番 PXC 300 PXC 250
(参考)
方式 ダイナミック密閉型
再生周波数帯域 8Hz~21,500Hz 10Hz~21,000Hz
能率 107dB 106dB
インピーダンス 300Ω
コード長 1.8m
重量 65g

ヘッドフォン部とNCユニット部から構成される ヘッドフォン部。ユニット部を折りたたみ可能 小さく折りたたんでキャリングポーチに収納できる
側面のPXC 300ロゴの銘板がシルバーになった NCユニットにNoisaGuard Advanceの文字を刻印 電源は単4電池×2本

PXC 300(左)とPXC 250(右)との比較
PXC 300ではユニット部のワンポイントカラーがシルバーに NCユニットの基本デザインは共通で、NoiseGuard Advanceの文字



■ NC ON/OFFの強い中低域が魅力

イヤーパッドの厚みが大幅に増した 装着例

 装着してみてすぐに気付くのはイヤーパッドの柔らかさ。PXC 250やPX 200と比較すると、耳穴部をソフトに覆うような触感で、耳との密着度はかなり高い。そのため、遮蔽性もPXC 300のほうが上回っているように感じる。側圧はやや弱めで、圧迫感はほとんどないが、下を向きながらノートパソコンで作業していると微妙に前側に傾いてきてしまうこともあった。

 それでは、音楽を再生してみよう。従来モデルと同様に、NC ON/OFFのいずれでも音楽再生が可能で、まずはNC OFFで聞いてみた。iriver T10やiPodと接続して出力したが、インピーダンスが300Ωと高いため、他のヘッドフォン利用時よりは若干ボリュームを上げた方が聞きやすい。

 NC OFF時の音質は、低中域がやや弱く、高域の分解能もそれほど高くない。再生レンジもあまり広くなく、大きな特徴はないが、音楽を聴いていてつまらないと言うわけではなく、地味ながらどんなソースにでも対応できるバランスの良さは維持している。

 しかし、従来モデルのPXC 250と比べると音場の広さや、分解能など、PXC 250のほうが一段上と感じる。PXC 250では、NC OFF/ONでも大きな音質差がなく、広い用途で利用できる点が気に入っていただけに、PXC 300の再生クオリティには不満が残る。NC OFFの音質ももう少しがんばって欲しいところ。

 また、標準プラグ変換アダプタを利用して、DVD視聴にも利用してみたが、バランスは悪くないものの、ユニット径が小さいこともありNC ON/OFFともに音場感に不満が残る。ノイズキャンセルヘッドフォンをそうした用途に使うというケースはまれだろうが、さまざまなシーンに適用できるユーティリティなヘッドフォンという意味では、少し力不足とも感じる。

 NC ON時にしてみると音質はぐっと変化する。PXC 250はNC ON/OFFで比較的音質変化の少ないヘッドフォンだったが、PXC 300はNC ON/OFFでかなり音作りが変わり、特に中低域の厚みがグンと出てくる。

 シンバルのオープン/クローズの感覚やベースの実体感、バスドラの強弱などに特に大きな違いが感じられる。高域の伸びが若干落ちるものの、楽曲再生時に顕著に気になるようなレベルではなく、音場もNC OFF時と大きく変わらない。ほとんどのソースではNC ONのほうが好ましい再生性能を得ることができるだろう。

 NC ON時の逆相成分による耳の違和感もさほど感じず、長時間のフライトなどでも安心して利用できそうだ。もちろん逆相成分の知覚は個人差が大きいので、実際に装着して違和感を感じたら利用をひとまずやめた方がいいだろう。


■ NC効果も向上

 比較的静かな編集部で利用してみたところ、NC OFFの状態でもイヤーパッドの変更などにより、ファンノイズなどをPXC 250よりきちんとカットしてくれるようだ。NC OFFでアコースティックな楽曲を聴いているとBGMが被ってしまうような深夜のファミレスでも、NCをONにするとほとんど音楽以外の音が聞こえなくなった。

 ただし、耳をすっぽりと覆うわけではないので、地下鉄構内などのノイズの大きな箇所ではNC OFF時の遮蔽性にそれほど大きな差は感じない。

 本題ともいえる、地下鉄でのNC効果もNoiseGuard Advance採用により、従来モデルより強化されている。地下鉄内の低周波音や、地下鉄のモーター、ロードノイズなどの一定の帯域の持続的なノイズ成分はかなり改善される。特にモーターや空調はほとんど聞こえなくなると言ってよく、PXC 250では若干聞こえる空調音もPXC 300では聞こえず、確かにNC性能が上がっていることが確認できる。

 カタログスペック的には80%のノイズをカットとのことだが、PXC 250のカタログ値ノイズカット65%と比較すると、聴感上の印象もだいたい2割増しという印象。また、音楽再生を行なわず、単にNC ON/OFFで比較するとそんなに大きな違いはないのだが、音楽を聴き始めると、PXC 300のほうがかなり聞きやすいと感じる。これには、PXC 300の厚めの中低域が大きく寄与していると思われる。

 ただし、ボースのQuietComfort2や、Aviation Headset Xのように、ヘッドフォンレベルでの遮蔽性が高いわけではないので、それなりに外部の音が聞こえる。もっとも、通勤電車などであれば、ある程度外部音が確認できた方がむしろ使いやすい。そうした意味では、通勤電車などでも使いやすいNCヘッドフォンと言えるだろう。

 連続再生時間はカタログ値で80時間。実際に40時間以上利用したが、使いはじめからNC品質に大きな違いは感じられなかった。なお、NCのON/OFFはNCユニットのスイッチで切り替えるが、オートOFF機能などは備えていない。できればオートパワーOFFも付けて欲しいと思うが、飛行機での睡眠時利用などを考えると、スイッチでのON/OFFのほうがリーズナブルということなのかもしれない。


■ 地道なマイナーチェンジモデル

NCユニットの大きさは相変わらず

 従来モデルの後継機とあり、NC性能や音質チューニングの面では変化が見られるものの基本設計はPXC 250から大きく変わっていない。そのため、従来モデルから気になっていたNCユニットの大きさという問題は全く解決されていない。

 適度なNC効果と音質のバランスは、地下鉄通勤者で、年数回の飛行機、新幹線利用という利用スタイルにはかなりマッチする。しかし、これだけ大きなユニットを日常的に持ち歩くのはやはり抵抗がある。特に、最近のオーディオプレーヤーの小型化が進むなか、プレーヤーより大型のNCユニットを日常で使いたくはない。一番のウィークポイントがほとんど改善されなかったという点はやはり残念に思う。

 ただし、価格と性能のバランスという意味では、年間10回以上大きな出張があるという人にしてみれば、十分回収できる高いレベルにある。PXC 250の買い換えという意味ではインパクトはないが、それでも順当なアップグレード版といえるだろう。個人的には、どうせNCユニットが大きいのならばMP3プレーヤーでも内蔵すれば、などと思ってしまうのだが……。

□ゼネラル通商のホームページ
http://www.gentrade.co.jp/
□Sennheiserのホームページ(英文)
http://www.sennheiser.com/sennheiser/icm_eng.nsf
□製品情報
http://www.sennheiser.com/sennheiser/icm_eng.nsf/root/products_headphones_streetwear_pxseries_500370
□関連記事
【1月8日】2005 International CESレポート【ヘッドフォン&デザイン編】
~ KOSS/SHURE/SENNHEISERの新モデルほか ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050108/zooma186.htm
【2003年4月18日】【デバ】地下鉄通勤者の最強のパートナー?
ノイズキャンセリングヘッドフォンの決定打!
Sennheiser 「PXC 250」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030418/dev021.htm

(2005年8月5日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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AV Watch編集部

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