■ 元祖MPEG-4プレーヤー内蔵HDDケースが一新 今回紹介する「Movie Tank II」は名前の通り、以前紹介した挑戦者「Movie Tank」の後継モデルだ。Movie Tankは、MPEG-2/4などのビデオ出力機能を搭載したHDDケースで、この分野のパイオニアとも言える製品。 Movie Tankが登場したのが2004年7月だったので、実に1年ぶりの新モデルとなる。当時はこのジャンルの製品は珍しかったが、その後は「AivX」「TViX M3000U」、「Movie Cowboy」など様々なアプローチの製品が数多く発売されており、これらに立ち向かえるだけの機能強化が図られたのかが気になるところだ。 なお、挑戦者ブランドは、アイ・オー・データ機器のPCパーツ向けブランドで、意欲的な製品が多い反面、初期不良交換以外のサポートを一切行わないため、製品の仕様を把握して自分の力で製品を使えるユーザーが対象となる。 ここ数年、パソコン上で録画してテレビ視聴を楽しむいわゆるテレパソユーザーの1人となり、この種の製品はあれこれ試用してきた。はたしてMovie Tank IIの使い勝手はどのようなものか、試作機をお借りして検証した。なお価格は、直販で15,800円だ。
■ 液晶ディスプレイを搭載! ボディカラーは2色用意
Movie Tank IIの最大の特徴として、本体前面上部に液晶ディスプレイを備えている点が挙げられる。ただし、この液晶ディスプレイはあくまでファイル情報や再生ファイルの選択などを行なう際に使用するためのもので、この液晶ディスプレイ上で動画再生表示は行なえない。 同梱品は、ACアダプタ、リモコン、コンポジット出力ケーブルなど。本体カラーはブラックとホワイトの2色を用意しており、好みに応じて色を選択できる。本体カラーが選べると言うのは、このジャンルの製品では珍しい。ケースの外形寸法は129×205×45mm(幅×奥行き×高さ)、重さは500g(HDD、電源を除く)。 前面には液晶ディスプレイの下に簡易操作ボタンを配置しており、リモコンなしでもある程度の操作が行える。背面には各種端子類を備え、映像出力はコンポジット以外にもSビデオ出力やコンポーネント出力に対応する。また光デジタル音声出力(メーカーサポート外)も備える。 映像出力端子は3.5mm径のミニジャックで、ここに独自のコンポジット出力ケーブル、またはコンポーネント出力ケーブルを接続して映像出力を行なう。できれば汎用的な端子を備えていてほしかったところだ。ただ、独自ケーブルを使用することによって、背面はかなりすっきりしているので、この辺りは好みによるところだろう。なお、オーディオ用の出力端子も同様に3.5mmのステレオミニプラグなので、こちらは汎用的なケーブルが使用できる。PCとの接続はUSB 2.0で行ない、ケース側のUSB端子はミニBタイプとなっている。
リモコンはレイアウトや形状が一新されており、ボタンの表記なども全て日本語になっている。ただ、サイズは前モデルと変わらず大型なのが残念。また、ボタンがゴム製なのでどうしてもクリック感に乏しく、ちょっとした操作は本体に備えるボタンに頼ってしまう。個人的にはもう少しコンパクトなものでもよいのではないかと思う。 内蔵可能なHDDは3.5インチサイズのIDEで、対応フォーマットはFAT32とNTFSに対応する。FAT32フォーマットを使用する場合、HDDの容量が32GB以上の時、Windwos XPなどで正常にフォーマットが行なえない上に、ファイルの単体サイズが2GB以上のファイルをコピーできないので、利用の際には注意が必要だ。 HDDの組み込みは本体を開いて行なう。ケースの側面にはそれぞれネジ穴が2個付いているが、購入直後の状態ではこのネジは締められておらず、HDDを組み込んだ後にネジを締めることになる。カバーはどこから開くのかがわかりにくく、カバーを開くまで悪戦苦闘してしまった。一見しただけでは、銀のフチの手前が開くのかフチごと開くのかがわからないのだ。結論としてはフチごと開くのだが、この辺りのフタの開閉の仕組みについてはワンタッチで開くようなスイッチを用意するなど、もう一工夫がほしかったところだ。 背面にはケースファンを1基備えており、寝室など静かなところではそれなりに耳につく音が出ている点も、ちょっと気になった。是非改善してほしい点だ。
■ メインの動画再生機能は申し分ない作り では、Movie Tank IIのメインである動画再生機能について見ていこう。本機では、MPEG-1/2/4といった基本的な映像ファイルに対応する。ビットレートはMPEG-1/2では最大8Mbpsまで、MPEG-4は最大4Mbpsまで対応する。また、ISOイメージやVOBファイルの直接再生にも対応する。音楽ファイルはMP3、WMA、OggVorbisで、画像ファイルはJPEGファイルのみ再生が可能。
実際に各種映像ファイルの再生を試してみたが、DivXやXvidフォーマットのファイルも問題なく再生が行えた。また、対応ファイルではないが、15Mbpsの高ビットレートのMPEG-2ファイルも問題なく再生できたほか、拡張子.m2pのファイルも問題なく認識、再生が行なえた。 ISOイメージファイルについても片面1層、2層のファイルを用意したがいずれも問題なく再生できた。ただし、ISO準拠のMPEG-4には対応しておらず、拡張子が.mp4のファイルは認識もされなかった。この辺りは搭載するデコーダチップが他社製品と同じSigma Design製「EM8511」なので、再生結果はある程度同じになってしまうのは仕方ないところだろう。
音楽ファイル再生時には、画面上では選択したファイルのカーソルが反転して、いきなり再生開始するが、搭載する液晶ディスプレイにはファイル情報や、再生時間などの情報が表示される。また、静止画ファイルの表示は、大きいサイズの画像であっても、画面に合わせて自動で縮小されて表示される。
続いてプレイリストを試してみた。まずはじめにプレイリストのメニューを選択すると、少々待たされた後で「プレイリストが無いので、新たに作成するか否か」の選択画面が表示される。ここでマルを選択すると、プレイリスト作成画面になる。 プレイリスト作成画面では、フォルダ内にある全ての対応ファイルがずらっと並ぶので、その中からファイルを選択してリストを作成する。音楽ファイルだけでなく静止画や動画ファイルなども混在したリストが作成できるので、用途によっては便利に使えるだろう。 ただ気になったのは、いざ作成したプレイリストを保存しようとしても、どこにも保存するための選択項目がない。試しに一度プレイリストメニューから抜けてから、再度プレイリストメニューを選択してみたが、最初の時と同じように少々待たされて、その後プレイリストがを新たに作成するかの選択画面になってしまった。今後ファームウェアのバージョンアップで保存が可能になるのかもしれないが、現時点では、プレイリストが保存ないのは残念なところだ。
■ 液晶ディスプレイを利用した新たな利用法 本体の液晶ディスプレイ上にファイルの情報やフォルダ情報が表示されるようになったことで、Movie Tank IIは新たな使い方が可能になった。本体の基本操作がテレビを見ずに行なえるほか、本体を寝室などに持ち運んで、テレビのない環境でMP3ファイルなどの音楽ファイルを再生する使い方だ。 確かに他の製品では操作するために、テレビなど画面出力を行う装置があることが前提の作りの製品ばかりだったので、単体で使えると言う点は非常に魅力的。試しに寝室に持ち込んで使用してみたが、特に問題なく音楽ファイルの再生が行なえた。 ただし、寝室で使う上で、気になった点もある。まずACアダプタが大きすぎること。本体と並べてもかなり大型で、据え置きで利用するならそれほど気にならないが、持ち運ぶことを前提にするなら、たとえ室内の移動であっても少々大きすぎる。 また、本体前面のボタンに内蔵したLEDが標準でONになっており、非常に派手。操作する時にボタンが光っている分には何の問題もないが、一度再生を開始した後にはこれらLEDはOFFにしたいもの。ところが設定の変更はテレビ出力していないと行なえないため、単体で使用しているとLEDをOFFにすることができないのだ。ワンタッチでLEDのON/OFFを切り替えられる仕組みを備えてほしい。 また、寝室用途を考えるなら簡易的なものでも構わないので本体にスピーカーを内蔵していれば、寝室に持ち込んだ時にいちいちスピーカーに接続しなくても、耳元で軽く音楽を流せるので便利だろう。また、前述のファン音の問題も寝室に持ち込むことを考えると改善してほしい点だ。
■ 液晶ディスプレイに価値を見出せるかが決め手 一通りMovie Tank IIを試してみたが、色々な製品が出て、差別化の難しいHDDケース製品の中で、新たなアプローチとしての液晶ディスプレイ搭載は歓迎したい流れだ。1台のHDDケースを使って居間から寝室まであちこちで楽しめるのは魅力的と言える。また、機能的に向上しながらも、Movie Tank登場時と同じ価格に抑えている点も評価したい。 ただ、液晶ディスプレイでできることが限られているため、どうしても中途半端な印象を受けてしまうのは残念なところ。特に設定変更を行うために結局テレビに接続する必要が出てしまうのは、音楽再生のみに用途を絞っても少々厳しい。 どうせやるなら、製品コンセプトは変わってしまうが、側面を丸々液晶ディスプレイにしてしまい、テレビなしで映像再生が行えるところまでやってしまえば、新たな魅力が生まれたかもしれない。 □挑戦者のホームページ (2005年8月12日) [Reported by 池 紀彦]
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