■ いつかはワイヤレス iPodに代表されるポータブルオーディオプレーヤーの普及に伴い、ヘッドフォン市場もかつて無い活況を呈している。通勤電車内などでは、今までほとんど見ることの無かった大型ヘッドフォンや、耳栓型イヤフォンなど多種多様なヘッドフォンを見かける。 しかし、デジタルプレーヤーの時代になっても、大きな進歩がないのがワイヤレス化。電車内では、「プレーヤーを取り出そうとして絡まったイヤフォンケーブルをほぐしているうちに一駅通過しました」という風景も見うけられる。 そうした課題を克服すべく期待されるのがBluetoothによるワイヤレス化なのだが、携帯電話などでのヘッドセット採用例は比較的増えてきているものの、オーディオプレーヤーでの採用例は少ない。数少ないBluetooth対応HDDオーディオプレーヤー「VHD-5500」を発売していたNHJは先日破産してしまった……。 プリンストンテクノロジーの「BTST-9000D」は、オーディオ専用のプロファイルであるA2DPをサポートしたネックバンド式のBluetoothヘッドフォン。開発はCellink。付属のオーディオアダプタと組み合わせることでオーディオプレーヤーとヘッドフォン間をワイヤレス化できる。さらにマイクも内蔵しており、携帯電話用のBluetoothヘッドセットとしても利用可能だ。
■ ユニークなデザインのヘッドフォン部
ネックバンド式のヘッドフォン部とオーディオアダプタから構成されるBluetoothヘッドフォン。同梱品は充電用ケーブルとACアダプタ、キャリングポーチとシンプルだ。 ヘッドフォン部は開放型でユニット径は28mm。左ハウジングに充電端子、右ハウジングには下部に電源ON/OFFスイッチとスキップ/停止用のジョグダイヤル、上部にボリュームボタン、側面に再生/一時停止ボタンを装備する。なお、再生や停止、ジョグダイヤルの左右曲送り機能などは、別売のUSBアダプタ「PTM-UBT2」用のもので、オーディオアダプタと組み合わせでは使わない。
三角形をモチーフにしたユニークなデザインが特徴で、ハウジングはピアノ調のブラックを基調にしたシックな印象。ネックバンドはややチープだが、中央で折り曲げ可能な折りたたみ型となっている。外形寸法は151×116×64mm(幅×奥行き×高さ)、重量は70g オーディオアダプタ部はステレオミニの音声入力とコントロールボタンを装備する。外形寸法は44×34×14mm(幅×奥行き×高さ)、重量は20g。ヘッドフォン/オーディオアダプタともに内蔵リチウムイオン充電池を備えており、最大6時間の連続駆動が可能となっている。充電はACアダプタ経由で行ない、製品添付の二股の充電ケーブルを介して双方の充電を行なう。
■ 音質は満足。ワイヤレスと使い勝手はトレードオフの関係
まずはiPodと接続して、Bluetoothヘッドフォンとして利用した。まずは、ヘッドフォン部とアダプタ部を相互に認証(ペアリング)させる必要がある。 ペアリングはヘッドフォン/アダプタの双方で操作が必要で、ヘッドフォン側の電源をONにし、ジョグダイヤルを約6秒間長押しすると、再生/停止ボタンの脇のLEDが青/赤に点滅する。そこで、アダプタ部のボタンを、アダプタのLEDが青/赤に点滅するまで押し続ける。アダプタ側のLEDが点滅すると通信設定が開始され、5秒程度で通信が確立される。一度ペアリングを行なうと、電源をOFFにしても設定は維持される。
ペアリングを行ない、ヘッドフォンとアダプタの電源をONにすれば、ワイヤレスヘッドフォンとして利用可能となる。三角形をモチーフにしたユニークなデザインを採用しているが、このデザインも好き嫌いが分かれるだろう。ヘッドフォン部はイヤーパッドのフニャフニャした触感が独特で、遮音性もさほど高くない。音を出していないと、外部音がほぼそのまま聞こえると言う印象。外部への音漏れもそれなりにある。
ボリューム操作は右ハウジング上部のボタンで行なえる。インピーダンスは32Ω。また、プレーヤー側でもボリュームコントロールが可能となっている。ボディの質感は今ひとつなのだが、音質はなかなか良好。低域は弱いが音場にゆとりがあり、思いのほか奥行きある再生が楽しめる。情報量はさほど多くないものの目立ったクセもなく、ワイヤレス伝送のヘッドフォンにありがちな、ダイナミックレンジの狭さなどは感じさせない。ただ、静かな楽曲だと「サー」というノイズが聞こえてしまうのが残念。 ヘッドフォン/アダプタ間のBluetooth伝送には音楽用プロファイルのA2DPを利用している。なお、ヘッドフォン自体はA2DPのほか、HSP(Headset Profile)、HFP(Hands-Free Profile)の各プロファイルをサポートしており、マイクを利用して携帯電話のヘッドセットとしても利用可能となる。 ヘッドフォンとしては素直な音作りで、好感が持てるのだが、遮蔽性能が今ひとつなので地下鉄などの騒音の多い環境での利用には適さない。伝送距離は約10mで、編集部でテストしたところほぼカタログ値程度の伝送が可能だった。また、音が切れる際にもデジタル赤外線の用に不快なノイズを伴うことが無く、すっと音が途切れるのも、Bluetoothのメリットと言えるかもしれない。 基本的な性能は満足いくものだが、実際にオーディオプレーヤーと組み合わせて利用する際には注意したい点もある。まず、音楽を聴くために、ヘッドフォンの電源を入れて、アダプタの電源をいれて、その後、プレーヤー側で選曲操作を行なわなければならない。 ヘッドフォン側で選曲できないので当たり前ではあるのだけれど、普通のヘッドフォンでは単にプレーヤーで選曲するだけで音が出る。それと比較すると音を出すまでのプロセスの多さが面倒ではある。また、電源オートOFF機能なども無いので、使い終わったらプレーヤーの電源を切った後、ヘッドフォンの電源をOFFにしてアダプタの電源も切る必要がある。ケーブル無しの手軽さと、操作のシンプルさのどちらを選ぶかは悩ましいところだ。 なお、ヘッドフォンには再生/停止ボタンやジョグダイヤルがプレーヤーの操作はできない。これは別売のPC用のUSB Bluetoothアダプタ「PTM-UBT2(実売3,800円)」で、再生や停止操作を行なうためのものとなっている。ポータブルプレーヤーのほか、PCでも音楽をワイヤレスヘッドフォンで聴きたいといった人には「PTM-UBT2」と組み合わせて利用するのもいいだろう。
また、他のA2DP対応のBluetooth機器との連携が可能なほか、ヘッドフォン部にはマイクを装備しており、HSP/HFPに対応。携帯電話のハンズフリーヘッドセットとしても利用できる。ボーダフォンの「903SH」を利用してみたところ、問題なくヘッドセットとして利用できた。ただし、903SHではA2DPに対応していないためオーディオ用のヘッドフォンとしては利用できない。 なお、バッテリ駆動時間はヘッドフォン/アダプタともに6時間。5時間強の連続再生が可能だったが、バッテリの残量が確認できないので、使っているうちにいつ切れるか不安になってしまうあたりが悩みどころ。
■ Bluetoothを積極活用する人に Bluetoothヘッドフォンとしての基本的な性能は十分満足いくもの。質感やデザインは好みが分かれるところだが、ヘッドフォンとしての性能は申し分ない。しかし、使い勝手では、ワイヤレスと電源ON/OFF操作のどちらに重きを置くかで、評価は分かれそうだ。 ユニークなデザインとワイヤレス環境を重視すれば面白いだが、価格は14,800円とやや高価。首掛け型の512MBオーディオプレーヤーが購入できてしまう価格なので、PCとの連携などBluetoothをポータブル用途以外に積極的に活用するような人でないと、価格に見合う価値を見いだすのは難しいかもしれない。オーディオプレーヤーでのBluetooth採用例が増えてくると、新しい展開もあると思うのだが……。 □プリンストンテクノロジーのホームページ (2005年8月26日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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