■ ビデオカメラはテープからランダムアクセスメディアに
ビデオカメラのセールスランキングで近年顕著なのがDVDカメラの伸張。さらに、HDDを記録メディアとして利用するビクター「Everio」なども人気を集めており、テープから光ディスクやHDDなどのランダムアクセスメディアに人気が移行しつつある。 DVDカメラについては、日立を皮切りに、松下電器、ソニー、そして先日新製品「DC20/DC10」を発表したキヤノンなど、出揃いつつある。そして、HDDカメラについては、ビクターがEverioシリーズで積極展開しているほか、東芝も参入意向を表明している。さらに、松下電器のD-snapや、三洋電機のXactiシリーズなどメモリーカードにMPEG-4で記録するビデオ/スチルカメラも発売されている。 そんな中、エバーグリーンがMicrodrive対応のMPEG-4(ASF)カメラ「DN-HDDV8000」を発表した。直販価格は19,800円で現在はキャンペーン価格として17,800円で販売されている。 16MBの内蔵メモリのほか、CF TypeIIスロットを備え、CF/Microdriveが利用できるのだが、Microdriveは別売となっている。Microdriveの実売価格は4GBが19,800円前後、6GBが24,800円程度と考えると、本体価格の倍以上となってしまうが……。 パッケージを見ると、AIPTEKという会社が製造メーカーのようだ。400万画素CCDを搭載するMPEG-4ムービーカメラで、最大5GBまでのMicrodriveをサポート。MPEG-4での動画撮影のほか、400万画素(ソフトウェア補間で最大600万画素)の静止画撮影や、MP3再生機能なども搭載している。
■ 大きめなボディ。質感はチープ
本体のほか、同梱品は単3乾電池×4、ストラップ、イヤフォン、USBケーブル、ミニ三脚、キャリングケース、CD-ROMなど。CD-ROMには、ビデオ編集ソフト「PowerDirector PRO」などを収録している。ミニ三脚が付属するというのはなかなか嬉しい。 本体の第一印象は「デカい」ということ。外形寸法は47×123×67mm(幅×奥行き×高さ)で、特に奥行きと高さが思っていた以上に大きい。D-snapやXactiなどと比べると2周りは大きい印象で、Everioのフラッグシップモデル「GZ-MC500(80×118×55mm)」よりかなり大きい。「DVカメラ」といってもさほど違和感のない大きさだ。 もっとも、電源が単3アルカリ電池×4本ということを考えれば、ボディのかなりの部分は電池で占められているのだが、それにしても面食らう大きさ。ボディもかなりチープで、全体的におもちゃ感が漂う。貸出機固有の問題かもしれないが、特に背面の操作パネル脇にあるUSBやDC入力を隠すカバーがきちっと固定できないあたりは、かなり安っぽい。 前面に装備するレンズは、F3.5の単焦点。カバーガラスのずっと奥の方に小さな穴が開いている。さらにレンズの下には静止画撮影用のフラッシュ、さらにその下部にはマイクを内蔵している。向かって左側面にはモノラルスピーカーと、単3乾電池を収納可能なバッテリーケースを配置する。 上面にはズームレバーと静止画撮影用のシャッターボタンを備える。背面には静止画/動画撮影や再生モードなどを切り替えるモードダイヤルと録画ボタン、十字キー、MENU/ENTERボタンを用意。左側面には電源ボタン。さらに可動部を開くと2インチの液晶ディスプレイが現れ、その下にCF/Microdrive用のイジェクトレバーを装備する。CF/Microdriveスロットは本体下面で、標準的な三脚穴も備えている。 ボタンの工作精度も今ひとつで、特にズームレバーの遊びの大きさは使い易そうには思えない。液晶ディスプレイ裏のCF/Microdrive取り出しレバーや、その周りの「単にプラスチックです」的な仕上げには、日本の大手メーカーのようなクオリティを期待すべくも無い。 しかし、単3電池を入れてみると、適度な大きさと重量感があり、かなりビデオカメラらしいホールド感を得られいる。持ち運ぶ際にはやや大きいのだが、実際に撮影する際にはちょうどいい大きさとも言えるかもしれない。
■ 撮影しやすい大きさだが、画質はイマイチ
まずは撮影してみよう。電源は左側面、液晶ディスプレイの上部に備えており、撮影/再生モードはモードダイヤルで選択する。モードは動画撮影、再生、静止画撮影、ボイスレコードなどが選択できる。 動画撮影モードの起動時間は7秒弱。動画記録モードは、TV HQ(640×480ドット)/TV S(352×288ドット)/Web HQ(320×240ドット)/Web S(176×144ドット)の4モードが用意されている。フレームレートは640×480ドット時に最大11fps、352×288ドット時には最大30fpsとなる。設定メニューは英語など8カ国語が用意されるが、日本語メニューは備えていない。
撮影は至ってシンプルで、2型液晶を見ながら撮りたい箇所で録画ボタンを押すだけ。画質設定機能としては、露出補正機能を備えており、十字キーの右ボタンを押すと順に+1/+2/+3/-3/-2/-1/0と変更できる。 また、撮影中に上部のシャッターボタンを押すことで、フォーカスモードを無限遠(200cm~∞)/人物(100~200cm)/マクロ(40~100cm)の3段階に変更できる……ハズなのだがうまく切り替えられない。しかし、MENUでAFをONにすることで切替可能となった。オートフォーカスの考え方がイマイチよくわからないが、一応フォーカスの範囲が3段階、手動で切り替えられることは確認できた。なお、フォーカスモードは録画中にしか切り替えられない。
ホワイトバランスはAUTOのみで、蛍光灯下では迷うこともあるが、屋外ではまずまず満足いく性能を見せてくれる。EV以外の撮影機能が無いこともあり、「豊富な機能を覚えられない」、といった人には使い勝手がいいのかもしれない。
レンズは単焦点で4倍のデジタルズームを搭載する。上部のズームレバーで利用できるのだが、このデジタルズームはほとんど当てにならないので注意されたい。というのもズーム時に1.2/1.4/1.6と0.2倍ずつ刻んでズームしていくのだが、ズームした画像はそのズーム倍率で一瞬止まってしまうので、後で画像を見るとカクカクの映像になってしまう。しかも、最大VGAの画像を拡大しているだけなので、解像度という意味でも物足りない。あくまで、緊急時のため程度に考えておいた方がいいだろう。 画質については、最高画質のTV HQとTV S以外はあまり使いようがないというのが正直なところ。レンズの解像力がイマイチなこともあり、全体的に眠めの画になってしまうのは致し方ないところ。また、VGAモードでは、フレームレートが11fpsということで、大きな動きのある被写体を追う足りなくなる。 VGAモードで顕著だが、パンすると動きに引っかかりが感じられるほか、ラティチュードも狭いので、特に屋外撮影での白飛びには気を付けたい。Webモードも悪くはないが、この程度であれば今時のケータイの動画カメラ機能でもカバーできるだろう。
とはいえTV HQとTV Sモードであれば、携帯電話のカメラ機能よりは、かなりいい品質で録画できる。もっとも、Xacti C4などの本格的なMPEG-4カメラやMPEG-2記録のHDDカメラEverioシリーズなどと比べると画質の面ではかなり見劣りするのも事実だ。 例えばXacti C5が4万円台で、プラスSDカード代が必要とはいえ、価格なりのクオリティの差があると言えるだろう。DVカメラと遜色ないクオリティを求めず、あくまでトイカメラ的に利用するというのがいいだろう。そうした意味では、デジタルカメラ用のCFが余っているユーザーなどにはちょうどいい製品と言えるのかもしれない。 編集ソフトとして「PowerDirector 3」が付属。カット編集やビデオCD/DVDへの書き出しも可能となっている。
■ 機能は充実も使い勝手はもう一歩
静止画機能もシンプル。画質モードは6M(ソフトウェア補間による2,832×2,128ドット)/4M(2,304×1,728ドット)/2M(1,600×1,200ドット)/VGA(640×480ドット)が用意される。 画質モードは、MENU画面で設定。撮影時の設定変更は十字キーの左でフラッシュ設定(ON、自動、OFF、スローシンクロ)、右で露出設定(±3)を変更できる。MENUのAdvance設定で、ホワイトバランス設定(太陽光/曇り/蛍光灯/電球/AUTO)、ISO感度(100/200/400/AUTO)を変更可能。撮影は、シャッター半押しでAFが作動し、シャッターボタンをさらに押し込むと撮影できる。 このシャッターの押し方がなかなか難しく、半押しでフレームが表れ、フォーカスが確認できるのだが、その後シャッターを切るにはかなり強く押し込まないといけない。強く押し込もうとすると、手ぶれしてしまうので、シャッター操作には慣れが必要だ。 画質は、動画と同じく白飛びには注意が必要だが、条件さえ合えば発色は悪くなく、それなりに満足行く画質で撮影できる。
また、MP3プレーヤー機能も搭載している。ROOTフォルダ以下の[MP3]フォルダにMP3データを転送して、モードダイヤルを再生モードにあわせる。そこで、録画ボタンを押すと静止画/動画再生モードとMP3再生モードの切替が可能となる。USB 1.1のため、PCとUSB接続した際のファイル転送速度は遅めだ。 MP3ファイルは停止/一時停止中に十字キーの左右で選択できる。ただし、フォルダ階層は認識できないので、MP3フォルダに全ての音楽ファイルを転送する必要がある。また、日本語ファイルは認識できない。 録画ボタンで、再生/一時停止が可能で、再生中に左右キーを押すことで早送り/巻き戻しが行なえる。ボリュームは上下キーで変更する。また、再生中止にENTERボタンを押すことでHOLDとなる。 機能は豊富だが、使い勝手は今ひとつ。正直オーディオプレーヤーとして利用するには厳しい仕様だ。音質的にも特筆すべき点はないが、ヘッドフォンが付属するのは嬉しいところだ。ヘッドフォン出力のほか、MENUの設定画面から本体スピーカー出力も選択できる。さらに、ボイスレコーディング機能も搭載しており、ADPCM形式でのボイス録音が可能。
ビデオ出力機能も搭載しており、付属のケーブルを介してテレビに出力もできる。ただし、元々ドイツ向けの製品ということもあり、初期設定ではPALになっているので注意が必要だ。
■ どのレベルの動画撮影をしたいのかが分かれ目に 機能的には充実しているが、評価の分かれ目になるのはやはり動画の撮影品質だろう。DVや日本の大手メーカー製のMPEG-4カメラと比較すると、画質的にはかなり劣るのは事実。自分が求める画質がどのレベルなのかを見極めながら、「DN-HDDV8000」でも十分実用的、あるいはWeb公開程度の利用であれば選択肢としては悪くないだろう。 ただし、別途Microdriveを購入するとなると、本体込みで3万円を大幅に超える。デジタルカメラのCFやMicrodriveと共用できると言う人はまだしも、コスト面でもそんなに割安感はないかもしれない。 また、最近ではデジタルスチルカメラでも、カシオのEXILIM「EX-S500」やキヤノン「PowerShot S2 IS」など、VGA/30fpsの動画撮影が可能な製品が登場している。静止画の記録品質はもちろんそれらの製品の方が高く、動画についてもかなりレベルの高い記録が可能。しかも、光学ズームも利用できるとあれば、利用シーンはそれらのスチルカメラのほうが広いかもしれない。 やはり、位置づけとしてはデジタルガジェット的な扱いになるだろう。DVまでは必要ないが、簡単に動画を撮影できるカメラが欲しい、とりあえずビデオ撮影を試してみたい、という人にはちょうどいい価格の製品かもしれない。 □エバーグリーンのホームページ (2005年8月19日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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