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第219回:ATRACが使えるもうひとつのジュークボックスソフト
~ SonicStageより動作が機敏な「BeatJam 2006」 ~



 「ウォークマンAシリーズ」の登場もあって、ATRACが扱えるデバイスの数もずいぶん増えてきた。もちろん、その大半はソニー製品なわけだが、PCと接続するためのソフトは何も「Connect Player」と「SonicStage」だけではない。今回は、ATRACでのエンコードからウォークマンへのデータ転送も可能なもうひとつのソフト、ジャストシステムのBeatJam 2006を取り上げる。



■ 入手方法が特殊なBeatJam 2006

 アップデータの登場により、当初よりはよくなったが、いまだにスピード面などで問題も多いConnect Player。そうしたこともあって、ウォークマンAの全機能は使えないものの、あえてSonicStageを使っているというユーザーも少なくないようだ。

 しかし、このSonicStageのほかにも、同等の機能を持ち、ATRAC3やATRAC3 Plus、そしてMP3やWMAでのエンコードが可能で、各ウォークマンシリーズや、Net MD、メモリースティックデバイスへ、セキュアなデータ転送を可能にしたソフトとして、ジャストシステムの「BeatJam 2005/2006」がある。

 最近はあまり目立たないが、BeatJamは国産のジュークボックスソフトとしては結構、歴史のあるソフトで、初代のMP3 BeatJamが発売されたのは'99年のこと。その後、「BeatJam X-TREME」、「BeatJam XX-TREAM」、「BeatJam 2005」、「BeatJam 2006」と進化してきた。このDigital Audio Laboratoryでも何度か取り上げたことがあったが、BeatJam XX-TREMEからATRAC3にも対応するようになり、オプションとしてデジタルオーディオプレーヤー対応強化キットが登場したことにより、ウォークマンやNetMD、MiMD、PSPなどへセキュアなデータ転送が可能となった。

 さらに、転送機能を統合させて進化したBeatJam 2005が2005年4月に、ユーザーインターフェイスを一新させたBeatJam 2006が昨年末にリリースされている。

 その製品ラインナップ上、ちょっとわかりにくいのが「BeatJam 2006」。正確にはBeatJam 2006という製品は存在しておらず、現在あるのは「BeatJam 2006 SE」と「BeatJam 2006 LE for ORICON」の2種類。このうち、BeatJam 2006はBeatJam 2005またはプリインストール版BeatJamユーザーを対象に、無償でダウンロード可能なアップデート版で、「Go to BeatJam 2006キャンペーン」として、5月31日までの限定でダウンロード可能となっている。

BeatJam 2006 SE BeatJam 2006 LE for ORICON

 つまり、BeatJam 2006 SEは単体で購入することはできず、まずパッケージ版(直販価格3,360円)か、ダウンロード版(1,980円)を入手の上、アップデートする必要がある。

 一方、BeatJam 2006 LE for ORICONはオリコンの音楽配信サイト「ORICON STYLE」で無償ダウンロード配布されているソフト。ORICON STYLEの標準ソフトとして提供されている。ご存知の方も多いと思うが、ORICON STYLEはWindows Media Audio形式での音楽配信を2005年3月から展開していたが、昨年12月からはATRAC3での配信サービスも並行して行なわれるようになり、それと同時にBeatJam 2006 LE for ORICONが提供されるようになった。


■ SonicStageと機能は似ているが、ロスレスは非対応

 となると、無償配布されているBeatJam 2006 LE for ORICONを入手するのがお得のようにも思えるが、チェックしてみたら、やはり当然のように機能に大きな違いがあった。BeatJam 2006 SEはCDからのリッピングして、ATRACやMP3、WMAファイルを生成することができるのに対し、BeatJam 2006 LE for ORICONはその機能を持たず、ダウンロードして、デジタルオーディオ・プレイヤーへ転送する機能のみに限定されている。そのほかの機能も含め、それぞれのソフトでできる主な機能を下表にまとめてみた。

機能 SE LE
Musicライブラリ機能(ATRAC/MP3/WMA再生)
DigitalAudioプレイヤーへの転送
音楽CDの作成
ATRAC CDの作成 ×
CDからPCへの録音 ×
CDからDigitalAudioプレイヤーへの録音 ×
RoomStyleプレイヤーのサポート ×
OpenMG Audio形式への変換
DigitalAudioプレイヤーデータの編集
MusicStoreへのアクセス

 また、転送可能なデジタルオーディオプレイヤーなどは両ソフトともに下表のとおり。

製品 メーカー
販売元
型番
ネットワークウォークマン ソニー NW-E507、NW-E505、NW-E407
NW-E405、NW-E307、NW-E305
NW-E107、NW-E105、NW-E103
NW-HD5、NW-HD3、NW-HD2、NW-HD1
携帯ゲーム機 SCE PSP
Hi-MDプレーヤー ソニー MZ-DH10P、MZ-RH10、MZ-NH1、MZ-NH3D
バッファロー MD-HUSB
Hi-MDドライブ ソニー DS-HMD1
ポータブルMDレコーダ 松下 SJ-MR270
シャープ IM-DR80 Auvi(アウビィ)
Net MD対応ウォークマン ソニー MZ-N920、MZ-NE810
携帯電話 NTTドコモ Music Porter II、Music PORTER
CDウォークマン ソニー D-NE20、D-NE920、D-NE820
USB メモリースティック
リーダー/ライター
ソニー MSAC-US40、MSAC-US30

 これを見てもわかるようにウォークマンAシリーズは、対象になっていないが、SonicStage同様で実際に接続すれば転送は可能だった。ただし、ウォークマンA特有のアーティストリンクなどの機能はサポートされていない。

 また、BeatJam 2006 SEにはRoomStyleプレイヤーという全画面表示されるプレイヤー機能も持っている。これはモーションパッケージ(ユーザーインタフェース、ムービー、曲情報表示の組み合わせ)と呼ばれる仕組みを利用して全画面で表示するもので、いろいろなモーションパッケージを切りかえて画面を好みのものに変化させられる。

対象外となっているウォークマンAシリーズの転送も可能だった RoomStyleプレイヤー

 またSkinは両ソフトともに対応しているので、ミニプレーヤーのデザインをさまざまなSkinに切りかえることができ、ジャストシステムのサイトからいろいろなSkinをダウンロードすることも可能だ。

同社サイトからダウンロード可能なSkin

 ここでは、主にBeatJam 2006 SEを使ってみたが、基本的にはSonicStageとほぼ同じことができる。もちろん、ユーザーインターフェイスはまったく異なるので、SonicStageは嫌いという人ならひとつの選択肢として考えてもいいだろう。実際のスペックとして気になるのは、CDからのエンコードで、どのフォーマットが選べるのか。エンコード可能なフォーマットは大きく、OpenMG、MP3、WMA、WAVの4つ。

 このうちOpenMGはATRAC3およびATRAC3 Plusでのエンコードが可能となっており、ATRAC3の場合は66kbps、105kbps、132kbpsの3種類、ATRAC3 Plusの場合は48~320kbpsの8種類となっている。

OpenMG、MP3、WMA、WAVのエンコードが可能 ATRAC3は66/105/132kbps、ATRAC3 Plusの場合は48~320kbpsの8種類

 なお、SonicStage 3.3でサポートされたATRAC Advanced Losslessはサポートされていない。また、SonicStageではOpenMGのDRMをはずした、ATRAC3/ATRAC3 Plus単独でのエンコードが可能だが、BeatJam 2006 SEでは、かならずOpenMGで保護されたセキュアなデータのみしか扱えないようになっている。

 ためしに、各モードごとのリッピング&エンコード時間を測定してみた。Digital Audio Laboratoryの第215回で、SonicStage 3.3において速度を測っていたのでそれと比較してみると微妙に違いがあり、SonicStageよりも若干速いが、そう極端に変わるわけではなかった。

【リッピング&エンコード時間】
フォーマット、ビットレート BeatJam 2006 SonicStage3.3
ATRAC3 Plus 64kbps 1分18秒 1分23秒
ATRAC3 Plus 128kbps 1分29秒 1分40秒
ATRAC3 132kbps 1分16秒 1分14秒
ATRAC3 Plus 256kbps 1分44秒 1分42秒

 ちなみにCDのTOC認識はGracenoteのCDDBが利用されており、たいていのCDなら自動で認識しアルバム名や曲名などを表示してくれる。

 一方、MusicStoreへのアクセス機能は、BeatJam 2006 SE、BeatJam 2006 LE for ORICONともにあるが、若干の違いがある。BeatJam 2006 SEのほうは、ジャストシステムのサイトであるMusic@Lifeにアクセスするのに対し、BeatJam 2006 LE for ORICONは当然ORICON STYLEへのアクセスする。

 ユーザーインターフェイスも異なり、曲の探し方なども違うが、実は基本的には大きな差ではない。というのも、どちらもMoraへのポータルという位置づけであり、掲載されている曲はほぼ同じだからだ。もちろん、ダウンロードできる楽曲のファイル形式はOpenMGのDRMがかかったATRAC3。価格も同じだ。

BeatJam 2006 SEは、ジャストシステムの「Music@Life」にアクセス BeatJam 2006 LE for ORICONは「ORICON STYLE」に


■ バックアップ可能だが、SonicStageと互換性はなし

 ところで、こうしてダウンロードした曲をウォークマンなどのデジタルオーディオ・プレイヤーへ転送できたり、オーディオCDを焼くことができるのは当然だが、ユーザーとして気になるのは、データのバックアップ機能だ。現状においては、CONNECT Playerそのものにはバックアップ機能がなく、SonicStageを利用してバックアップをとるという形になっている。

 またSonicStageもソフト本体ではなく、いっしょにインストールされるバックアップツールを用いてバックアップをしたりリストアする形になっている。それに対し、BeatJam 2006 SEおよびBeatJam 2006 LE for ORICONともに、ソフト本体にはバックアップ機能はなく、別にバックアップツールをインストールすることで、利用可能となる。

 これは、Webからダウンロードする形態をとっており、BeatJam 2006 SEの場合はユーザー登録するとダウンロードすることができ、BeatJam 2006 LE for ORICONの場合は、なぜかMusic@Lifeに登録するとダウンロードできるようになっている。いずれの方法でダウンロードしても入手できるバックアップツール自体は同じもののようだ。

バックアップでは曲の権利情報のみ、または音楽データを含むすべてから選べる

 このバックアップツールは曲の権利情報のみバックアップするか、音楽データまで含めたすべてをバックアップするかの選択ができるようになっており、扱い方はいたって簡単だ。もしかすると、SonicStageともバックアップデータに互換性があるのでは、と期待して試してみたが、残念ながらうまくはいかなかった。とはいえ、ダウンロード購入したデータがしっかりバックアップできるというのは大きな安心材料といえるだろう。

 以上、ジャストシステムのATRACデータのジュークボックスソフト、BeatJam 2006について見てきたが、機能的にはSonicStageとあまり変わらないが、CONNECT Playerよりも圧倒的に動作が軽く、SonicStageと比較しても動作が機敏だ。ユーザーインターフェイスなどが気に入れば、BeatJamに乗り換えてみるというのもひとつの手だろう。


□ジャストシステムのホームページ
http://www.justsystem.co.jp/
□ORICON STYLEのホームページ
http://www.oricon.co.jp/
□製品情報(BeatJam 2006 SE)
http://www.justsystem.co.jp/beatjam/2006up/
□製品情報(BeatJam 2006 LE for ORICON)
http://www.oricondd.com/atrac/player/
□関連記事
【2005年12月14日】ジャスト、ダウンロード配信向け「BeatJam」を無償提供
-「ORICON STYLE」での購入やプレーヤーへの転送が可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051214/just.htm
【2005年12月7日】ジャスト、BeatJam新バージョンをユーザーに無償提供
-ATRAC AD対応。インターフェイスも一新
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051207/just.htm
【2005年12月5日】【DAL】ソニーのロスレス「ATRAC Advanced Lossless」
~ 特徴的な「ベース+差分」構成を検証 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051205/dal215.htm
【2005年4月5日】ジャストシステム、PSPへの転送が可能な「BeatJam2005」
-ミュージックサーバー対応の上位モデルも用意
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050405/just.htm
【2001年2月14日】ジャストシステム、ATRAC3に対応した「BeatJam XX-TREME」発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010214/just.htm

(2006年1月16日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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