【バックナンバーインデックス】



第220回:より初心者向けになった? 「iLife '06」
~ GarageBandの進化は少ないが、Podcast作成には便利~



iLife '06

 IntelのCore Duoを搭載したiMacおよびMacBookが、この1月に本当に発表/発売されたのには正直ちょっと驚いた。ハードウェアについてはPC Watchで詳しく紹介されているが、起動してOS X Tigerが動いている状況で見る限りPowerPCのものとまったく違いが感じられない。

 その新Mac登場とともにリリースされたのがiLife '06であり、その中に入っているGarageBand 3だ。今回はそのGarageBand 3に焦点を当てて紹介してみよう。



■ PowerPCでも利用可能

 WindowsはLonghorn=Vistaがかなり以前に発表されているものの、なかなか一般ユーザーの前に現れてこない。それに対してMacは次々と新バージョンのOSを発表してくれ、記事を書く人間の立場からすると話題豊富で面白い。まあ、そんなにたびたびバージョンアップされても困る、という声もあるとは思うが、やはり動きがあるのは楽しい。

Intel Core Duo搭載のiMac

 そんな中、いよいよ登場したのがIntelのCore Duo搭載のマシン。ハードウェアの大幅なアーキテクチャ変更はMotroraの68系からPowerPCに変わって以来であるが、今回の変更は以前のときよりも、かなりスムーズに見える。なんといってもOSが同じTigerであることが大きい。iMacにおいてはハードウェアの見た目も変わらないし、画面を見る限り、どこが違うのかまったくわからないほどだ。

 まだ、展示されているものを触った程度なのでよくわからないが、多くのアプリケーションはPowerPCマシンでもIntelマシンでも同じように動いてしまうというのも驚きだ。もちろん、ドライバはIntel版がないと基本的には動かないはずだが、すでにRolandはUSBのオーディオインターフェイスやMIDIインターフェイス、またMIDIキーボードなどのβ版ドライバを発表するなど、周辺機器メーカーの対応も早い。

 Appleの規定するハードウェア仕様にのっとったRolandのFireWireオーディオインターフェイス「FA-101」や、「FA-66」などは、そもそもOS側が対応しているから、ドライバ不要ですぐに動作してしまうというのもすごいところだ。

iLife '06製品説明会の様子

 新Macと同時にリリースされたのがiLifeの新バージョン「iLife '06」だ。iLife '05から約1年で登場したこのiLife '06は従来同様、音楽制作ソフトのGarageBand、写真管理ソフトのiPhoto、ムービー制作ソフトのiMovie、DVD制作ソフトのiDVDに加え、Web制作ソフトのiWebの大きく5つのソフトから構成されている。

 各ソフトとも機能強化されているが、ここで取り上げるのはもちろんGarageBand。プレスリリースなどを見ると、この新しいGarageBand 3の特徴はPodcast対応したということだが、文書を読むだけではイマイチどのように変わったのかがわからない。GarageBand 3が入ったiLife '06はすでにIntel Core Duo搭載のiMacにバンドルされる形で出荷されているが、ソフト単体での発売は2月からとのことだが、20日に都内のApple Japan社内でiLife '06の製品説明会が開催された。

インターナショナル版のパッケージ

 iLife '06の発売は2月だが、すでにApple Storeではインターナショナル版が日本版と同じ価格(8,800円)で発売されており、パッケージこそ英語だが、ソフトは日本語で普通に使えるとのこと。説明会に行った帰りにApple Storeに寄って購入した。このパッケージには、Universalマークは見当たらなかったが、PowerPCとIntel Coreのどちらでも動作するソフトになっているようだ。

 G5のマシンにこのDVD-ROMをセットしてインストールすると、確かに日本語の画面で何も問題なくインストールできる。ただし、OSはOS X 10.4.4にアップデートされていないとインストールできないようだ。また、インストールには30分強の時間を要した。


G5でも問題なくインストールできた



■ 音楽製作は2とほぼ同じ。パラメータは視覚的になって数は減少

 さっそくGarageBand 3を起動してみると、これまでにはなかった初期選択画面が現れる。ここで音楽制作をしたいのか、Podcastの番組を作りたいのか、もしくは音声入りのビデオを編集したいのかなどを選択する。ここでは、まず音楽制作をするために、新規ミュージックプロジェクトを選択したところ、いつも見覚えのある画面が出てきた。とりあえず見た感じではどこがアップグレードされたのか、わからない。

起動時に現れる選択画面 「新規ミュージックプロジェクト」を選択すると見慣れた画面が

 試しにループブラウザを開いて、ループを貼り付けてみても、MIDIやオーディオのエディタを開いても、とくにGarageBand 2と変わった感じはしない。ここで、トラック名のところをダブルクリックしてみると、画面右側に見慣れないものが現れた。が、よく見てみるとこれはGarageBand 2では別ウィンドウとして表示されていたトラック情報だ。

ループブラウザやMIDI、オーディオエディタ利用時も2と変わらない模様 トラック情報は同じウィンドウ内に表示された

 そのトラックについて表示できるほか、マスタートラックのエフェクト設定なども可能。さらに詳細ボタンを押すと、どんなエフェクトが設定されているのかなどの詳細情報が表示される。この辺も基本的には大きく変わらない。

マスタートラックのエフェクト設定も可能 エフェクト設定の詳細情報

 ただし、それぞれのエフェクトの設定画面を開くと、またデザインがちょっと変化していることがわかる。名称を見る限り、エフェクト自体は変わっていないのだが、これまでの簡素なパラメータからグラフィカルなものに変わっている。ただ、グラフィカルにはなったものの、ものによっては動かせるパラメータの数が大きく減っている。これは、ソフトシンセのほうもまったく同様だ。

各エフェクト設定画面はグラフィカルになったが、動かせるパラメータは減った

ソフトシンセでも同様の変更が行なわれている

 GarageBandは初心者用ということなので、そのほうがいいのかもしれないが、拡張メニューなどでほかのパラメータもいじれるようにしておいてくれるとよかったのだが……。

 MIDIでのレコーディングもオーディオのレコーディングも簡単にでき、エフェクトやソフトシンセの利用ができるのもこれまで通り。基本的に音楽制作機能については、GarageBand 2からあまり進化はないようだ。


■ Podcast作成ツールとしては便利

 では、Podcast対応というのが何を意味しているのだろうか? さっそく最初の画面で「新規Podcastエピソード」を開くと、今までとはちょっと変わった画面が出てくる。そう、ここでPodcastエピソード、つまりPodcastで流す番組を作るというのだ。

チャプタタイトルや、全体のアートワークも設定可能

 このトラック名を見てみると、上からPodcast Track、Male Voice、Female Voice、Jingle、Radio Soundとある。このPodcast Trackというのは、進行時間ごとに表示される画像=アートワークを設定するためのトラック、Male Voiceは男性のしゃべり、Female Voiceは女性のしゃべりを入れるトラック。そしてJingleはジングルを入れるためのもの、最後のRadio Soundはその他効果音などを入れるためのトラックとしてデフォルトで用意されるものだ。

 このPodcastトラックは使ってみるといたって簡単。JPEGファイルなどの画像ファイルをトラック上の表示させたいあたりへドラッグ&ドロップすればいいだけだ。必要があれば、それぞれの位置でチャプタタイトルを入力することもできるし、エピソード全体のアートワークも設定することが可能になっている。

 これによって、最後にPodcastエピソードとして書き出したときに、それらが反映される。ちなみに、エピソード全体のアートワークを指定しないと、Podcast Trackで最初に指定した画像が代用されるようだ。

 一方、それ以下の4つのトラックについては、基本的には、音楽制作で用いたのと同様のオーディオトラック、もしくはMIDIトラックだ。単純にMale Voiceには男性用の、Female Voiceには女性用のエフェクトが用意されているだけ。そのエフェクトというのは、Speach Enhancerというもので、マイクに対するノイズリダクション機能と、マイクタイプとボイスタイプを設定する。

 詳細がどうなっているのかは分からないが、確かにこれを使うと、ラジオの声っぽいものに変わるようだ。今回のGarageBand 3ではとくに新しいエフェクトやソフトシンセは追加されていないものの、このSpeach Enhancerというエフェクトのみが新たに追加されている。

 そして、JingleおよびRadio Soundの両トラックは、通常のオーディオ、MIDIトラックでしかない。ただ、ループブラウザを開いたとき、これまでとは異なる、Podcast用の画面が開く。ここでジングルや効果音などを選択できる。このGarageBand 3ではフリーで利用可能なジングル、効果音が数多く入っているので、これらを活用することで、Podcast番組を上手に作ることができるというわけだ。

マイクのノイズリダクション機能と、マイク/ボイスタイプ設定が利用できる ジングルや効果音などを選択できるPodcast用の画面

 なお、完成したPodcastエピソードはiWebへエクスポートできるほか、HDDにもAACファイルで書き出すことができる。また、この書き出すAACの音質クオリティーも環境設定で指定できるようになっている。

 もうひとつ、GarageBand 3にはビデオのBGMを構成していくためのものがある。初期画面で「新規ムービースコア」を選ぶと、Viodeo Trackというものが現れ、ここにビデオを貼り込むことができるようになっている。あとは、これにあわせてオーディオデータを作成していけばOKというわけだ。できあがった結果をiMovieに受け渡すことで、後の細かな編集はそちらに任せられる。

iWebへエクスポートできるほか、HDDにもAACで書き出し可能。AACの音質も指定できる ビデオのBGM構成用のViodeo Track

 以上が、新GarageBandの概要だ。音楽機能がどう向上するのかちょっと期待していたが、その点についてはちょっと期待はずれ。まあ、音楽機能のほうはLogicを使え、ということなのかもしれないが。しかし、これまであまりなかったPodcast作成ツールとしては、なかなか便利でよくできている。自分でラジオ番組のようなものを作りたい人がどのくらいいるのかは分からないが、興味がある人は試してみてもよさそうだ。


□Appleのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□ニュースリリース(iLife '06)
http://www.apple.com/jp/news/2006/jan/10ilife.html
□製品情報
http://www.apple.com/jp/ilife/garageband/
□関連記事
【1月11日】アップル、Web共有を強化した統合ソフト「iLife '06」
-ラジオ風ジングルなどPodcast対応を強化
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060111/apple2.htm
【1月11日】アップル、MacworldでiPod用リモコンなどを発表
-iTMSでのダウンロード購入数は8億5,000万曲に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060111/apple3.htm
【1月12日】アップル、HDVの編集にも対応した「iLife '05」
-GarageBand 2はマルチトラック対応に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050112/apple2.htm
【2005年1月31日】【DAL】お手軽・高機能な「GarageBand」がパワーアップ
~ DTM初心者からプロまで使えるお得なソフト ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050131/dal177.htm
【2004年11月8日】【DAL】3大DAWのメジャーバージョンアップを検証
~ 「Logic Pro 7」にGarageBandからステップアップ ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041108/dal167.htm

(2006年1月23日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

AV Watch編集部av-watch@impress.co.jp
Copyright (c) 2006 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.