■ ファンタジー名作をティム・バートンらがリニューアル
「チャーリーとチョコレート工場」は全世界で1,300万部を売り上げたロアルド・ダールのベストセラー「チョコレート工場の秘密」を、監督ティム・バートン、主演ジョニー・デップのコンビが映像化した作品。 公開時にはかなり話題を呼んだ……らしいが、個人的には全くノーチェック。正直、原作も読んだこともなければ、DVD化が決定するまでは公開していることも全く知らなかった。しかし、発売が近づくにつれ、プロモーションにも熱が入ってきたようで、DVD売場でも「発売までXX日」的なポップも目立ったので、なんとなく購入欲も高まってきた。 DVDは特別版と通常版が用意され、価格は特別版が3,980円、通常版が2,980円。本編ディスクは共通で、特別版の特典ディスクは74分の特典を収録。「リスの襲撃」(9分)、「ダール氏のステキな世界」(17分)、「ウンパ・ルンパになる」(7分)などの映像コンテンツや、ゲームなどを収めている。
■ チョコ好き少年が憧れの工場に
両親と2組の祖父母と暮らす少年チャーリー・バケット(フレディー・ハイモア)は、チョコレートが大好き。しかし、家は貧しく、夕食といえば限りなく水に近いキャベツスープだけ。そんな彼の家の近くには、世界的ヒット商品を毎日出荷し続けるウィリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)のチョコレート工場があった。 チャーリーの最高の喜びは、年1枚しか買えないウォンカのチョコレート。このチョコレートを生み出したウィリー・ウォンカに尊敬の念すら抱いている。そんなチョコレート大好きなチャーリーに、おじいさんはかつて勤務したウォンカの工場の素晴らしい思い出を語り、チャーリーのウォンカのチョコレートへの憧れは膨らむばかり。 しかし、そのウォンカの工場は、同時に謎多き場所としても知られていた。なぜなら、その工場は、ある事件をきっかけに15年間閉ざされ、中に入った人も出てきた人もいない。だが、その工場では日々新たな素晴らしいチョコレートが作られ続けている。誰もがその謎を知りたいと思い、また、その味の秘密を知りたいと感じていた。 そんなある日、工場から驚くべきニュースが発表された。チケットを当てた5人の子供とその保護者に、特別に工場見学を許可するというのだ。しかし、入場するためには、大量に出荷されるウォンカのチョコレートの中で、たった5枚にのみ封入された黄金のチケットが必要となる。皆が血眼になって、ウォンカのチョコレートを買いあさった。 食い意地の張った肥満少年や、大金持ちのわがまま娘などが、手段を選ばずチケットを手に入れ、次々と発表される当選者。年1枚購入しか購入できないチャーリーには縁の無い話に思えたが、道端で拾ったお金が幸運を運び、最後の1枚が転がり込んで来る。そして、世界一奇妙な工場の扉が開かれた。 原作がファンタジーということもあり、「ファミリーが安心して見られる作品」と思っていたが、思いのほか、グロテスクでシニカルなユーモアが飛び交うので、少し面食らった。そうした意味では、シザー・ハンズなどのティム・バートンとジョニー・デップのコンビ作品のテイストをしっかりと残しているとも言える。 ともあれ、ウォンカの工場内はファンタジーそのもの。チョコレートの川やミントの草原、ユニークなナッツ工場など、どれもこれも子供ならずとも、わくわくする。まさに夢のようなおやつ工場だ。ポップで濃厚な色彩と相まって、ファンタジックな空間を楽しめる。 ジョニー・デップ演じるウォンカのユーモラスながらも薄気味悪さを併せ持った独特のキャラクターが、工場内の至る所に反映されており、ウンパ・ルンパと呼ばれる小人達のショーも見所の一つだ。強欲な子供達をあざ笑うかのようなシニカルな歌詞と、見事なダンスがチョコレート工場のポップな色彩の中で繰り広げられる。 この薄気味悪さを、肯定的に感じられれば素直にチョコレート工場の世界を楽しめそう。ただし、ここで引いてしまうとなんとなく気持ち悪さを残したまま作品を見続けることになるかもしれない。「子供達と楽しく見よう」と考えていると、ちょっと大人は引いてしまうようなシーンもあるのだが、この薄気味悪さは、案外子供の方が気にせず楽しめるのかもしれない。
■ 彩度の高い色調。特典は普通
DVD Bit Rate Viewerで見た平均ビットレートは6.58Mbps。標準的なビットレートながら、画質良好で、時折暗部ノイズが見えることもあるが、彩度が高く、鮮やかなチョコレート工場の世界が印象的。目を見張るような解像感はないものの、暗いシーンでも陰影をしっかり見せ、落ち着いて鑑賞できる。 音声は英語/日本語ともにドルビーデジタル5.1ch。ビットレートは英語が448kbps、日本語が384kbps。チョコレートの川下りなどの見せ場では、リアチャンネルも使われるが、基本的には包囲感を出す程度で、あまり積極的なマルチチャンネル利用は感じない。 聞き所としては、ダニー・エルフマンによる音楽。特に、子供が悲惨な目にあった時に始まるウンパ・ルンパのショーだろう。しっかりとした包囲感を得ながらも、ダンスと歌のショーが楽しめる。また、日本語吹き替えでもこのショーの部分の歌詞をうまく翻訳して反映しているので、子供と日本語音声で見ても充分楽しめそうだ。
特別版の特典ディスクには74分の特典を収録。「リスの襲撃」、「ダール氏のステキな世界」、「ウンパ・ルンパになる」、「混ぜ合わせてみたら……」などの映像コンテンツや、ゲームなどを収めている。 「リスの襲撃」は、本作の中盤のナッツ割りのシーンで活躍するリスの訓練模様のドキュメンタリー。半年近い期間をかけて、映画のシーン撮影用にリスを訓練するのだが、ナッツをつかんでボウルに入れるという動作を覚えるために2,000回もの反復トレーニングをするという。模型と実物、CGリスの合成などの苦労などが伝わってくるコンテンツだ。 「混ぜ合わせてみたら……」は、メイキング的な内容で、監督らにより原作との違いなどが説明される。「ダール氏のステキな世界」は原作のロアルド・ダール氏の解説コンテンツ。彼の孫などが中心となり、ダール氏のひととなりを説明するのだが、やたらと滑舌良くしゃべる孫娘が印象的。 また、「ウンバ・ルンバになる」は、ウォンカの工場の小さな従業員ウンパ・ルンパについてのコンテンツ。劇中では沢山いるように見えるウンパ・ルンパだが、実はディープ・ロイが一人で演じているというのに驚く。ある意味主役より登場時間の長いキャラクターで、初めてのダンス体験などの苦労が語られる。 ゲームはリモコンでウンパ・ルンパを踊らせ続ける「ウンパ・ルンパダンス」や落ちてくるクルミを振り分ける「悪いクルミを選別せよ!」などのシンプルなもの。あまり大人が楽しめるようなモノでもない。
■ 毒はあるが楽しめる作品
間口が広く誰にでも楽しめる作品だが、大人にとっては少しぎょっとするようなウォンカのドライな残酷さも描かれる。しかし、罰を受けるのは、目に余るわがままな子や、強欲や自信家などだし、彼らが死ぬわけでもない。 それよりは、楽しげな工場のアトラクションや色彩に目を奪われるだろうし、ウォンカの思いとチャーリーの思いも最後にはきちんと描かれる。映像のクオリティも充分で、豊かな色彩で描かれる独特の世界は大人にも非常に魅力的だ。 特典ディスクについてはファン向けという印象も残るが、価格設定もリーズナブルなので、誰にでも手にとって楽しんで欲しい作品だ。
□ワーナー・ホーム・ビデオのホームページ (2006年2月7日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
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