■ LED搭載プロジェクタ登場 液晶やDLPなどの固定画素デバイスの登場以来、小型化、カジュアル化、低価格化を続けるフロントプロジェクタ。プレゼンテーションや業務、広告向けのデータプロジェクタと、民生向けのホームシアター製品と大きく2つの市場に分けられるが、いずれの市場でも注目を集めている技術がLEDだろう。 LEDの特性を活かした起動時間の高速化のほか、従来のプロジェクタでは2,000時間程度で必要となったランプ交換の排除が期待される。画質面でもDLPプロジェクタではカラーホイールを省略できるためカラーブレーキング現象の低減も見込める。メーカーの視点からは環境規制対応という面でも、ランプの不要なLEDが注目されているという。 CEATECやCESでも各社がフロント/リアプロジェクタでの対応製品を出展していたが、東芝が国内初のLEDフロントプロジェクタ「TDP-FF1A」を発売した。基本的にはプレゼンテーションなどの用途を中心としたモバイルデータプロジェクタだが、LEDという注目のテクノロジを初搭載した製品。LEDの実力に注目し、検証した。 ■ 世界最小/最軽量のモバイルプロジェクタ 外形寸法140×102×57mm(幅×奥行き×高さ)、重量565g(本体のみ)と小型/軽量。底面積は“ほぼ葉書相当”とのことで、他の小型プロジェクタと比較しても群を抜く小ささだ。
背面にバッテリ接続用の端子を装備。付属のバッテリ「TLPBP1(250g)」を装着すると、140×123×57mm/815gとなり、手に持つとずっしりと重い。しかし、充分片手で持ち運びできる重量だ。 正面から向かって左面に映像入力をまとめており、入力端子はD-Sub 15ピン(アナログRGB/コンポーネント)、コンポジットを各1系統用意。ステレオミニのアナログ音声入力とヘッドフォン出力、USBを1系統備えている。また、0.5W出力のモノラルスピーカーも搭載する。 本体上面には電源ON/OFFや入力切替などのボタンを用意。底面には三脚用の穴も備えており、三脚を利用した投射も可能となっている。 また、付属品として23型のスクリーンと、ACアダプタ、リモコン、A4サイズのキャリングバックなどが付属。キャリングバックにプロジェクタ本体とスクリーンなどに加え、ノートPCも収納可能となっており、これだけで出先でのプレゼンテーションが行なえる。
■ 従来製品とは全く違う操作感。実用サイズは50型以下? 映像素子には解像度800×600ドット0.55型のDMDチップを採用。アスペクト比は4:3。輝度は400ルクス。コントラスト比は1,500:1。レンズシフトは備えていないが、台形補正機能を装備している。
本体脇のスイッチをスライドさせて電源を入れると、瞬時に出画される。0.5秒とかからず画が出てくるというのは、従来のプロジェクタではまず不可能だったこと。LED採用の大きなメリットを起動時に体験できた。プレゼンテーション用途では、相手を待たせないなど、使い勝手の大幅な向上が図れそうだ。 ただし、出画した映像はかなり暗く、明るい環境ではほとんど画が確認できない。現在のLEDの欠点として、指摘される部分だが、従来のランプ搭載機と同等の輝度性能を求めるのにはまだ厳しいレベルだ。 暗い部屋でも、スクリーンまで約2.5mの距離から投射(投射サイズは65インチ程度)したところ、ぼんやりと暗く、特に暗部はすっかり沈んで確認できない。1.5m(40インチ強)まで近づくと大分明るくなり、暗部階調もきちんと表現されはじめる。3mの距離から投射した松下電器製の2代前の720pプロジェクタ「TH-AE500」の80インチ映像にかなり近い輝度も出ており、40型程度であれば、まずまず実用的と言えそうだ。 一応カタログ値では投射サイズ68型、投射距離は2.5mまでとなっているが、暗室でも2m/50型以上での利用は避けた方が良さそうだ。最近のデータプロジェクタの場合、ほとんど2,000ANSIルーメン以上の輝度性能があるので、ある程度明るい部屋であっても充分内容を確認でき、昼間でも電気を落とした部屋であれば、大抵問題なくプレゼンテーションできる。 しかし、TDP-FF1Aをそうした前提で利用するのはまず不可能で、きちんと遮光した上で、室内の明かりを落として50型以内で投射する必要がある。そうした意味では、持ち運びこそ便利なものの、利用シーンをかなり選ぶプロジェクタと言えるだろう。
■ 画質は充分だが、輝度が不足 画質設定は、輝度やコントラスト、色合いなどがリモコンで調整可能だが、設定したモードをメモリする機能は備えていない。画質は、DVD出力時でもデータプロジェクタ的な色かぶりも無く、輝度さえ確保できれば充分DVDビデオを楽しめる。
ただし、輝度を求めると50型以下、できれば40型程度に抑えないと、満足なレベルにならない。例えば32~37型の液晶テレビを所有している人であれば、このサイズで部屋の明かりを落としてまで、プロジェクタで映画を見るというのもあまり現実的ではない。そういった意味では、ホームシアター用途にはまだLEDが輝度不足なことは間違いない。 なお、TDP-FF1AのLEDはRGB方式で、回転するカラーフィルターからRGBの各色を作り出すのではなく、LED発光のオン/オフから作り出している。そのため、カラーホイールに起因し、虹色上のノイズが見えてしまう“カラーブレーキング現象”も、実際にDVDを見た限りでは全く感じられなかった。 また、LEDのメリットとしては、電源OFF後の冷却も必要ないことも挙げられる。通常のランプを利用したプロジェクタの場合、数十秒から数分程度のランプのクーリングが必要で、その後に電源が落ちる。しかし、TDP-FF1Aでは一瞬で電源OFFとなる。 最近では電源切ったあともクーリングを続ける製品もあるが、基本的にプロジェクタにおいて、電源ケーブルを抜いていきなり電源を落とすといったことは、ランプの保護という観点からも厳禁事項だ。 しかし、TDP-FF1Aではボタンをスライドさせるだけで、一瞬で電源が落ちるので、従来のプロジェクタを使っている人は、まず間違いなく「電源を誤った方法で落としてしまったのか?」と焦ってしまうだろう。しかし、LEDの場合これが正常な電源の切れ方だ。特にモバイル用途では大幅に使い勝手の向上に寄与することは間違いないだろう。 また、LEDの採用により消費電力も約18Wに低減。付属のバッテリで約2時間駆動を可能にした。1時間程度のデモやプレゼンテーションであればACアダプタを持ち歩かなくてもよくなる訳で、これも大きなメリットと言えるだろう。 ■ LEDのメリットを実感できるモバイルプロジェクタ 国内初のLEDプロジェクタとなる「TDP-FF1A」だが、小型/軽量、電源ON/OFFのスムーズさ、バッテリ駆動など、あらゆる面で従来のプロジェクタの考え方を一新する可能性を感じさせてくれる。 輝度についてはまだ充分でなく、ビジネス用にもホームシアター用途にも、利用シーンを選ぶのは間違いない。そのため実際の導入に関しては慎重な検討が必要だが、プロジェクタの将来像を提示しているユニークな製品と言えそうだ。 また、リアプロジェクションテレビにおいても、LED化により、ランプ交換という大きな障害が取り除かれ、起動時間の高速化などのさまざまな機能向上が見込める。実際にSamsungが今春にLED採用DLPリアプロテレビ製品化を予告しているなど、LED化の波は徐々に押し寄せている。 □東芝のホームページ (2006年3月17日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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