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ソニー純正PSP用H.264レコーダ
ソニー 「MSVR-A10」
発売日:4月10日

標準価格:オープンプライス
店頭予想価格:25,000円前後


■ 「ソニー純正PSPレコーダ」登場

 「MSVR-A10」は、ハードウェアでのH.264(MPEG-4 AVC)リアルタイムエンコードに対応したビデオレコーダ。一言でまとめると、「ソニー純正のPSP用レコーダ」と言える製品だ。実売価格は25,000円程度。

 記録媒体はメモリースティックDuoで、HDDやDVDドライブなどは搭載していない。テレビチューナなどは備えておらず、ビデオ入力の映像信号を、PSPで視聴できるH.264の「メモリースティックビデオ形式」に変換するというシンプルな機能しかない。

 ただし、アナログ放送の外部出力信号や、ビデオ出力などに加え、デジタル放送のコピーワンスコンテンツも録画が可能。なお、コピーワンス番組の録画には著作権保護機能を搭載したメモリースティックPRO Duoが必要となる。また、通常サイズのメモリースティックには対応しない。


前面にメモリースティックDuoスロットを装備する

 外形寸法は約215×150.5×35.2mm(幅×奥行き×高さ)、約530gと小型。外観デザインはシンプルで落ち着いたもの。モデムやルータといった通信機器のような趣もあるが、「スゴ録」のイメージを踏襲しているようにも見える。

 本体前面中央にメモリースティックDuoスロット、左に電源ボタンを装備。メモリースティックスロット脇には、録画、停止、メニューと十字カーソル、決定ボタンなどを備え、前面の一番右にシンクロ録画ボタンを装備する。

 背面には、ビデオ/音声入出力を各2系統装備し、それぞれにS映像とコンポジット端子を備える。重量は約530g。電源はACアダプタを利用する。


本体前面にメモリースティックDuoスロットや録画関連ボタンを装備する 背面 側面


■ シンクロ録画が使いやすいが、デジタル放送での運用は難しい

記録モード映像サイズビットレートフレーム
レート
AVC QVGA 768k320×240ドット768kbps30fps
AVC QVGA 384k384kbps

 まず、シャープのハイビジョンレコーダ「DV-AR12」の外部出力と接続して利用してみた。録画モードはAVC 384kbps/768kbpsの2モードがある。リモコンのボタンでモード変更できるほか、録画予約時にもモードを選択できる。

 録画は本体の録画ボタンやリモコンから行なえ、手動予約のほか、時間指定の予約録画、シンクロ録画、クイックタイマー録画などが行なえる。手動予約では、クイックタイマーで終了時間を設定可能。シンクロ録画では映像信号を検知すると自動的に録画を開始、映像信号が途切れると録画も停止する。


リモコン 本体のみでもほぼ全ての操作が可能

 DVDレコーダでアナログ放送を録画する場合、一番使いやすいのはシンクロ録画だろう。レコーダ側で録画予約を行なった後、レコーダの電源を落とし、MSVR-A10本体、もしくはリモコンの「シンクロ録画」ボタンを押すと待機状態になる。その後、レコーダの録画予約実行時に映像が出力されると、自動的に録画を開始、録画を終了し、レコーダの電源が落ちると自動的に録画を終了する。


メインメニュー 録画モード設定 クイックタイマーで終了時刻設定
時間指定で録画予約 10番組までの録画予約に対応

 ただし、MSVR-A10側でシンクロ録画をONにしたまま、レコーダ内の録画番組を視聴すると、その番組の分までメモリースティックDuoに録画してしまう。そのため運用時には注意が必要だ。時間指定の録画予約も可能だが、テレビやレコーダで、あらかじめ視聴予約をしなければいけないので、二度手間となるのがやや面倒なところだ。

 番組を見ながらの手動録画も可能で、本体やリモコンの録画ボタンを押すだけで録画が行なえる。また、手動のクイックタイマー録画にも対応。手動録画時に終了時刻を設定できる。アナログ放送番組の場合は、VHSやDVDレコーダで録画した番組を再生しながら「MSVR-A10」でメモリースティックDuoに録画することも可能だ。

 運用に注意は必要なものの、アナログ録画時にはさほど戸惑うようなことはない。しかし、デジタル放送を中心に考えると、かなり運用には苦労しそうだ。というのも「MSVR-A10」では、コピーワンス信号を正しく認識するためだ。

 例えば、アナログ放送と同様にレコーダで録画した場合、その時点で1度目のコピーを行なっているため、外部出力からはコピー不可の信号が出力される。そのため、レコーダの外部出力映像はMSVR-A10では録画できない。

デジタル放送録画番組では番組名にCOPYNEVERの文字が入る

 デジタルチューナ搭載のレコーダの場合、予約画面で録画予約はできても視聴予約が出来る機種は少ないため、アナログ放送時のようにシンクロ録画を活用した録画はできない。

 デジタルチューナ搭載のテレビの外部出力や、外付けデジタルチューナであれば視聴予約できる機種が多いので、それらの機能を活用すればシンクロ録画は可能だ。ただし、テレビで視聴予約を行なう場合、当然ながら画面表示をしてしまう機種が普通なので、あまり使いやすいとは言えない。

 また、ハイビジョンレコーダと接続して、デジタル放送を録画予約する場合も、MSVR-A10側で時間指定予約をしながら、番組の放送時間まで電源を切らずに、チャンネルを固定しておく必要があり、使い勝手がよくない。放送時間にその場にいるのであれば、手動録画でクイックタイマーを使うのが一番わかりやすいだろう。

 ハイビジョンレコーダ利用時のデジタル放送録画予約に関しては、正直あまりいい運用方法は無いので、基本的にはアナログ放送を中心に利用したほうがいいだろう。あるいは古い世代のレコーダやVHSなどを「MSVR-A10」用チューナとして活用するのもいいかもしれない。


■ 高画質なデジタル録画もコピーワンスの処理が悩ましい

【容量/モードごとの記録時間】
AVC 768kAVC 384k
2GB4時間50分8時間30分
1GB2時間20分4時間10分
512MB1時間10分2時間
256MB30分55分
サンプルs768.mp4
(2MB)
s384.mp4
(1.17MB)

 PSPを利用した際の再生品質は良好で、H.264の実力はしっかり確認できる。384kbpsでも大きな破綻はないので、512MB程度のメモリースティックDuoであれば、384kbpsのほうが活用の幅は広がるだろう。384kbpsでもブロックノイズは少ないのだが、768kbpsにあげると、ノイズの低減に伴い解像感がぐっと向上する。映画など画質に拘るコンテンツであれば、768kbpsを選択したい。

 録画モード以外にも画質を左右する要因がある。それが、ソースがデジタル放送かアナログ放送かということだ。ゴーストのないデジタル放送をソースにした場合、より鮮鋭な映像が楽しめる。

 また、キャプチャ解像度は320×240ドットとアナログ放送と同じでも、メモリースティックにスクイーズ記録されるため、PSP側でフル画面表示にすると16:9のアスペクト比できちんと楽しめる。PSPの画面をフルに活用でき、なおかつ、デジタル放送向けに制作者の意図したアスペクトで再生できるのはデジタル放送録画番組ならではのメリット。

 なお、録画したデジタル放送番組はパソコンでは再生できない。アナログ放送の録画番組は、メモリースティックDuoのルートフォルダ以下の[\MP_ROOT\100MNV**]以下に、拡張子.MP4で収録されるが、デジタル放送番組録画の場合[\MPE_ROOT\100AEV01]フォルダに収録され、ファイル名[MAQ0000**(**は連番の数字)]、拡張子は.MGVとなる。

 PSP上の.MGVのデジタル放送番組を直接クリックしても再生できないほか、パソコンに移動しても再生できない。ソニーによれば「コピーワンス番組は、録画したメモリースティックPROデュオ以外に移動させると再生できなくなる」とのことで、デジタル放送録画の視聴は実質的にPSPに限定される。

録画したファイルは専用のフォルダに格納される デジタル放送を録画したMGVファイルはPC上で再生できない

 なお、録画した番組を「MSVR-A10」本体で再生する機能は備えていない。また、編集機能なども搭載していない。


■ 機能はシンプル。チューナを内蔵して欲しい

 機能としては、入力した信号をリアルタイムでH.264にエンコードするだけのシンプルなもの。そのため、入力ソースをきちんと用意できれば使いやすい製品だ。たとえば、撮影したDVカメラの映像をリアルタイムでエンコードしてPSPで見る、と言った用途であれば、わかりやすいし、戸惑うこともないだろう。

 ただ、テレビ番組を簡単にPSPで持ち運ぶという用途で使うのであれば、やはりレコーダにPSP用動画作成機能を内蔵していたほうが使いやすい。特にコピーワンス信号の入ったデジタル放送の場合は、うまく使いこなせるシーンがあまり思い浮かばない。

 ただ、古いVHSデッキやアナログ放送用のDVDレコーダを専用チューナとして使うなど、手持ちの機器を使い回せれば、PSP用動画作成機としてかなり重宝するだろう。

 MSVR-A10により、QVGA解像度でもデジタル放送のほうが高画質であることを確認できた、と言う意味では、改めてデジタル放送の魅力も感じられる。コピーワンスについては運用見直しも検討されているが、早期の運用変更などはなかなか難しそうだ。しかし、SD以下の解像度であれば、もう少し柔軟な出力を許可して欲しいと感じる。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/msrecorder/index.html
□関連記事
【3月13日】ソニー、H.264録画が可能なメモリースティックレコーダ
-PSPで再生可能。コピーワンスの録画もサポート
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060313/sony.htm
【2003年9月5日】ソニー、MPEG-4記録の据置型「メモリースティックビデオレコーダー」
-クリエで視聴や録画設定が可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030905/sony.htm

(2006年3月30日)

[AV Watch編集部/usudak@impress.co.jp]


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