■ HDD搭載ながら4GBという容量の微妙さ 東芝が世界最小となる0.85インチHDDを開発と発表したのは、2003年の暮れのことである。当初から携帯電話への搭載を見込んでおり、実際に今年の春、auの端末「W41T」に組み込んで発売した。確かに2003年の時点では、4GBという容量はまさにHDDでしか実現できないと思われていた。だがiPod nanoがフラッシュメモリで4GBを実現して以来、このサイズは微妙なポジションとなってしまった感がある。 さてCOWONの「iAUDIO 6」は、オーディオプレーヤーとしては0.85インチHDDを搭載した初のモデルとなる。4月8日発売で、店頭予想価格は29,980円前後。実際に扱っている店舗は、まだ多くないようだ。 iAUDIOと言えば、昨年までは国内総代理店としてバーテックスリンクの扱いであったが、現在は開発元である韓国コウォン社の日本法人の扱いとなっている。 有機ELディスプレイ採用で動画再生も可能というiAUDIO 6を、早速試してみよう。
■ 意外に納得のサイズと重さ
確かに厚みはあるが、iPod nanoが薄型という付加価値を付けるまでは、大抵のメモリ型プレーヤーでもこの程度の厚みがあったわけで、十分ノーマルだと言える。また重量もその外観から想像するより軽く、約60g。首から下げられる重さだろう。
操作部は画面右側で、本体は横向きにして使用する。%記号のように配置されたタッチパネル式のボタンがユニークだ。ここにもバックライトが仕込まれており、赤と青で綺麗に光る。 本体上部には電源ボタン、メニューボタン、ボリュームがある。ボイスレコーディング用のマイクもここだ。本体左サイドには、ヘッドホン端子と外部入力端子、右サイドにはUSB端子とリセットボタンがある。USBは特殊形状ではなく、一般的なMiniB端子だ。
ただこのイヤフォン、L-Rの表示がスピーカー開口部に表示してあり、付属のスポンジを装着すると、どっちがLかRかわからなくなってしまう。左側のケーブルが短いので、それを頼りに判断するしかない。 また本機では、USB OTGにも対応しており、デジカメを直接接続して写真の取り込みが可能になっている。そのためのUSB変換ケーブルも付属している。そのほか、ライン録音用のステレオミニプラグ、PC接続用のUSBケーブルが付属している。
■ 多彩な音作りが可能な音楽再生 動画再生、写真表示、テキスト表示、FMラジオ、ボイス録音などいろいろな機能を持つiAUDIO 6だが、基本的にはオーディオプレーヤーなので、まずそのあたりを中心に操作性などを見ていこう。
音楽フォーマットは、MP3/WMA/OGG/WAV/FLACに対応。転送はそのままエクスプローラ上でドラッグ&ドロップでもいいが、JetShellという転送用ソフトが付属している。 再生ファイルの選択は、いったんMenuボタンを押してディレクトリを表示させたあとは、タッチパネルでの操作となる。RECボタンが上位階層に戻るBack、PlayボタンがEnterの役割を果たしている。選択の移動など量的な動作は、斜めバーの「スイングタッチ」で操作する。
再生を開始するときも、Wait表示が出て3~4秒待たされる。メニュー操作などにはストレスを感じないが、コンテンツ開始時に若干待たされる感じだ。また曲間の空きも、それなりにある。 一方曲を早送りなどして特定の場所に移動するような操作は、スイングタッチ部分を端から端まで使って、ダイナミックに操作することができる。このあたりの操作性が、iAUDIO 6の醍醐味だろう。 音質としては、BBEやMachBass、MP Enhanceと言った機能を搭載しており、単にEQだけではない積極的な音作りが可能だ。特に低域を重視したい人には、いいプレーヤーだろう。ただ複数のエフェクトを重ねていくと、音が歪んでしまうので、使いどころを押さえる必要がある。
■ 精細感の高い動画表示 では気になる動画再生機能を見てみよう。対応動画コーデックは、XviDのみだが、もちろんコンバータが付属している。この環境は以前のiAUDIO X5と同じで、「JetAudio VX」という付属プレーヤーから、「Convert Video」を起動するというスタイルだ。
参考までにサンプルファイルを掲載するが、DivXやXviD再生環境があるPCなら再生できるだろう。ただ画像サイズが小さいので、ここで画質云々を言いだしても始まらない状況ではある。
試しに30分のアニメ番組を「自動 高画質」でエンコードしたところ約150MB、1時間の実写番組では約280MBとなった。ちなみに同じ番組を「携帯動画変換君」を使ってPSP用にAVC 384kbpsでエンコードした場合、30分番組は約115MB、1時間番組では205MBとなった。 画質的にはどちらも大差ないが、画面サイズの割には「Convert Video」での変換は少しサイズが大きい。AVCのほうが新しいだけあって、若干圧縮効率がいいようだ。
カットによっては残像を感じる部分もあるが、これはエンコーダのクセだろう。字幕のようなスーパーも、表示に精細感があるため、ちゃんと読める。ただし実写の番組に関しては、若干音に対して映像が遅れるクセがあるようで、テンポのいいトーク番組などでは気になる。 映像の早送りなどに関しては、音楽と同じ操作性で、やはり「スイングタッチ」ボタンをスライドして行なう。ゆっくりした早送りでは映像もところどころ付いてくるが、早送りボタンを押しっぱなしにして全速で早送りを行なうような場合は、音声のみ早送り音が聞こえ、映像は早送り開始直前の画面で静止したままとなる。再生時に絵と音が同時に動く、といったスタイルだ。 また音楽の場合はレジューム再生可能なのだが、動画ではレジューム機能がないのはイタイ。例えば1時間番組などは、半分まで見て電車乗り換えしたのち、続きを見るというケースもあるだろう。だがいったん電源がOFFになったり、ファイルを選び直したりすると、最初からの再生となってしまう。
■ 総論 今回は若干長めの総論となるが、昨今のデジタルオーディオプレーヤーは、付加価値として動画再生機能を重視し始めている。その中でも韓国製オーディオプレーヤーは、さらにボイスレコーディング機能やテキスト表示機能、フォトストレージ機能なども追加して、多機能さにかけてはトップクラスだろう。それぞれの機能も、可もなく不可もなくといった感じで、実用性はともかく、ちゃんと動く。以前に比べれば、確実に信頼性は高くなっている。 iAUDIO 6が微妙なのが、やはり0.85インチHDD搭載の意味だろう。容量だけなら、1インチオーバーのHDD搭載オーディオプレーヤーで、6GBクラスが2万2千円程度で手に入る。一方メモリで4GBを実現したiPod nanoも、2万5千円弱だ。 そこに来て、0.85インチHDD搭載は珍しいとは言え、容量的にはそれほど新しさがなく、価格も3万円弱と、容量単価では若干高めだ。今後価格が下がってくる可能性は十分あるにしても、現状この値段なら、20GBクラスのオーディオプレーヤーが買える価格である。そこを小型化と動画再生機能でフォローできるか。 動画再生では、やはり画面サイズがキーとなる。すでにPSPやNintendo DSといった画面サイズで動画が再生できる環境が存在すると、これだけ小さいディスプレイでの動画再生は、確かに技術的には見るべきものがあるかもしれないが、「だから何だ?」的な疑問を感じてしまう。 もう一つの疑問は、すでに韓国製オーディオプレーヤーは、普通に量販店で売られるようなものになったというのに、ソフトウェアは英語のまま、PDFのマニュアルにも大した説明がないという製品のあり方でいいのか、というところだ。 昔のMP3プレーヤーならば、アキバのPCショップでわかる人だけが買っていたから、大した説明がなくても問題はなかった。だが今はそういうニッチデバイスではなくなっている。今やMP3プレーヤーの購買者は、バッチリ下調べして名指しで買う「指名層」か、よくわからないからデザインや色、値段で選ぶ「雰囲気層」に二分されているのである。 機能を全部把握した上で買う層は、そもそも人数があまり多くない。特に韓国製品は音質などもかなり凝ったカスタマイズができるわけだが、そういう製品のクオリティと、それを買っていく大半の層がズレ始めているのではないかという気がする。 ユーザー層に合わせて製品の質を下げる必要はないが、本体マニュアルやソフトウェアの解説などはもう少し踏み込んだものがないと、デフォルト設定のまま使うのがせいぜいで、せっかくの機能が大して生かされないままなのではないかという気がする。 モノとしての品質は決して悪くない。ただ価格、容量、売り方という点で、iAUDIO 6はいわゆる「貰ったらうれしいが自分では買わない」という、微妙な位置に存在するのではないかという気がする。
□COWONのホームページ
(2006年4月12日)
[Reported by 小寺信良]
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