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第237回:ウォークマン用新ソフト「SonicStage CP」を試す
~ SonicStageの安定性にCONNECT Playerの機能が融合 ~



SonicStage CP

 昨年11月に発売された「ウォークマンAシリーズ」。Digital Audio Laboratoryでのレポートのため、発売と同時に購入したが、付属ソフトの「CONNECT Player」のできがあまりにも悪かったため、ほとんど利用していなかった。

 ソニーのもう1つの音楽ソフト「SonicStage」を利用することで、使い勝手はよくなるが、これまでSonicStageはウォークマンAシリーズを正式サポートしていなかった。そのため、曲の転送などはできても、せっかくのアーティストリンク機能などを使うことができないなど、機能的に劣る点もあった。

 その後、CONNECT Playerは何度かのバージョンアップされたものの、根本的な性能の悪さは未解決のまま。今後、どうなるのだろうと思っていたところ、「SonicStage CP」が発表された。CONNECT Player機能を包含したSonicStageということで、この名前になったようだが、どんな機能が追加されているのかなどをチェックした。



■ ウォークマンAはAACに対応

 相変わらずiPodが圧倒的なシェアを握るポータブルオーディオの市場だが、さすがSONYのウォークマンブランドだけあって、ウォークマンAシリーズもそこそこのシェアを取るようにはなってきている。しかし、実際に使ってみて不満を持つ人も少なくなかったのではないだろうか?

 というのも、付属ソフトであるCONNECT Playerを利用することになるのだが、CONNECT Playerのデキが悪いため、操作がしづらいだけでなく、データのバックアップもできない。

 とにかくインストールするとPC全体の動作が重くなるのは最悪。何度かのバージョンアップで致命的なバグは直ったようだが、動作が重いという根本部分は現時点でも直っていない。

新たに登場したSonicStage CP。バージョンは4.0

 そんな中、SonicStage CPが登場した。バージョンを見るとSonicStage 4.0となっている。CONNECT Playerがなくなったわけではないようだが、事実上SonicStageに吸収統合されたと考えてよさそうだ。機能的にはCONNECT PlayerのほぼすべてがSonicStage CPに用意されており、もちろん従来のSonicStage 3.4の機能も包含されている。

 その上で新たに追加された機能がAACのサポート。iTunesなどでリッピングしたデータをSonicStage CPで再生することが可能になった。また、SonicStage CPと同時にリリースされたのが、ウォークマンA1000/A1200/A3000のファームウェアアップデータ。これにより、AACをATRACデータに変換するのではなく、オリジナルのまま転送し、再生することが可能になった。

 すでにウォークマンA1000/A1200/A3000の各機種はファームウェアアップデートでWMAには対応していたが、さらにAACをもサポートしたことになる。さすがにiTunes Music Storeで購入したDRMのかかったAACデータはSonicStage CPで再生することも、ウォークマンAへ転送することもできないが、iTunesでCDからリッピングしたデータがそのまま利用できるようになった意義は大きい。iPodからウォークマンAへの乗り換えが気軽にできるようになったのだ。

 さっそく、手持ちのNW-A1000を用いて、このファームウェアのアップデートから行なってみた。手順は簡単だ。アップデータをHDDにダウンロードした後、PCとUSBで接続。その後このアップデータを実行し、あとは指示にしたがっていくだけだ。ファームウェアを転送後、USBでの接続を解除すると、ウォークマンA側でファームウェアのアップデートが開始され、約1分半で終了。ウォークマンAを再起動するとATRAC/WMA/AACに対応した、まさにオールマイティーのポータブルプレーヤーへと変身する。

PCとウォークマンAを接続してから、ダウンロード済みのアップデータを実行する。指示に従って進めるだけなので、特に面倒なことなどはない。ファームウェアの転送が終わったら、接続を解除するとウォークマンA側のアップデートが開始する



■ AAC対応。負荷も少なく使い勝手も快適に

 続いて、SonicStage CPもインストールした。起動画面のイメージは従来のSonicStage 3.4などとほとんど変わらないが、いろいろな機能が追加されている。

 まずは、iTunesでリッピングしたAACのファイルが読み込め、ウォークマンAへ転送できるのか確かめてみた。とりあえず、iTunesでリッピングしたAACのフォルダをSonicStage CPで指定してファイル取り込みを実行すると、あっけないほど簡単に取り込めてしまった。

 一方、SonicStage CP側の「CD録音フォーマットの設定」の画面を見ると、確かにAACが存在する。これを選択して、リッピングを実行すると、拡張子3gpのファイルが生成される。

SonicStage CPの起動画面 ファイル取り込みでiTunesフォルダを選択 あっさり取り込みが完了。フォーマットはMPEG-4となっている

CD録音フォーマットにAACが追加。拡張子は.3gpとなる AACを使ってCDリッピングを実行 QuickTime PlayerやiTunes上での再生も確認できた


 ここまでいくつかの操作を行なってみたが、動作はスムーズで快適。ためしにSonicStage CPでCDからのリッピング中にWindowsのタスクマネージャを使って動作を確認してみたが、とくに大きな負荷はない。本来、当然の話ではあるが、これなら使っていても安心だ。

 とりあえずいくつかのCDをリッピングするとともに、手持ちのMP3データをインポートすると、ライブラリが構築されてくる。ためしにマイライブラリを見てみると、アーティスト名がズラリと並ぶ一方、画面左側にはアルファベット一覧というこれまでのSonicStageではちょっと見慣れない画面が表示される。これはアーティストの名前の頭文字をインデックスとして扱ったイニシャルサーチ機能。SonicStage上でも、転送したウォークマンA上でも、イニシャルを元に高速に検索できるようにしたものだ。また日本語名であっても、自動読み仮名変換機能により、自動的にイニシャルを割り出してくれるのもなかなか便利な機能だ。この辺はCONNECT Playerから引き継がれた機能である。

タスクマネージャ上で負荷を確認。CONNECT Player利用時にあったような極端に負荷の上がる動きは見られないので安心 新たに追加になったイニシャルサーチ機能。日本語名も自動読み仮名変換機能でイニシャルを容易に割り出せる



■ アーティストリンク機能も、使いやすく改善

 そしてやはり気になるのが、アーティストリンク機能だ。これはCONNECT PlayerとウォークマンAに搭載された目玉機能であり、関連するアーティストを結びつけ、いま聞いているアーティストの曲と関連するアーティストを簡単に見つけ出そうというものだ。

 CONNECT Playerを使っていたときはGracenoteのCDDBを利用していることまではわかったが、どうしてこうした結びつきになっているのか、ハッキリせず、その結果を見ても納得のいかない点が非常に多かった。しかし、このSonicStage CPではアーティストリンクの根拠が明確に示されたのと同時に自分で結びつきについて編集できるようになり、断然使いやすいものとなった。

 アーティストリンクの画面を見ると、アーティストとアーティストが直接結びついているのではなく、間にジャンル名があり、これを経由して結びついているのがわかる。

 このジャンル名は、各曲データに埋め込まれてるデータではなく、Gracenote側のデータベースに登録されているアーティストごとのジャンル名となっているようで、転送などの操作をしたタイミングにCDDBに接続する旨のメッセージが表示されることがある。ただし、曲データに登録されているジャンル名は反映されないようだ。まあ、このジャンル名はかなりいい加減なものが設定されていることが多いので、この方法が現実的な正解といえるだろう。

アーティストリンク機能 CDDBへの接続を確認するメッセージ 曲データのジャンル名は反映されない


アーティストリンク編集画面

 また、一人のアーティストに複数のジャンルが割り当てることができるようになっているのも便利なところ。確かに、あるアーティストを無理やりひとつのジャンルに割り当てるのには無理があるので、うまくできた設計といえるだろう。

 ここで結びつけられたアーティストを選択すれば、そのアーティストの曲を再生できるし、転送したウォークマン側でもアーティストリンクが有効になる。「アーティストリンク編集」というボタンを押すと、アーティストリンクの編集画面に入る。といっても、この結びつきの線を直接いじるのではなく、各ジャンルに含まれるアーティストを追加したり削除したりすることができるというものだ。

 ここではジャンル名ではなく、「アーティストグループ」という名称が使われているが、これは非常に多岐にわたるもので、かなり細かいジャンル名まで存在する。ただし、Gracenote側の問題だと思うが、登録情報自体は結構いい加減であるため、各ジャンルに当然登録されていてもいいアーティストが登録されていなかったりはする。そこで、この画面で自分で登録することができるのだ。操作は簡単で、左側に表示されているアーティスト一覧から右側のアーティストグループへ登録するだけだ。

新規にアーティストグループの作成も可能 アーティストリンク情報はXML形式で出力も行なえる

 さらに、新規にアーティストグループで作ることができ、そこに各アーティストを登録できてしまうのも大きなポイント。こうすれば、まさに自分で関係あると思うアーティストがアーティストリンクで確実にリンクするわけだ。試しにtestというアーティストグループを作って、いくつかのアーティストを登録したところ、うまく関連付けることができた。これなら、かなり納得のいく使い方ができそうだ。

 なお、こうして作ったアーティストリンク情報は画面右下の書き出しボタンで書き出すことができる。ファイル形式はXMLになっているので、中身を確認できるとともに、必要あれば手作業での編集もできそうではある。もちろん、このデータを読み込むこともできるから、作業した結果のバックアップとしても役立ちそう。



■ 仕上がりは問題なし。ソニーの巻き返しに期待

 新たに登場したSonicStage CPについて、Conect Playerから引き継いだ機能や新機能を中心に使ってみた。その限りでは結構いいソフトに仕上がっており、CONNECT Playerに見られた不安定さもない。このソフトをウォークマンA登場時に作ってくれていたら、だいぶ印象は違ったし、シェアもかなり違ったと思うのだが……。

 遅まきながらも、ソニー本来の機能、性能が実現できるようになったウォークマンA。WMAにAACにも対応したことで、他機種からの乗り換えもしやすくなったが、ポータブルプレイヤーの世界でどこまで復権していくのか楽しみなところだ。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ウォークマンホームページ
http://www.walkman.sony.co.jp/index.html
□SonicStage CP製品情報
http://www.walkman.sony.co.jp/sscp/index.html
□関連記事
【5月25日】ソニー、「ウォークマンA」HDDモデルをAACに対応
-最新ファームを公開。SonicStage CPをサポート
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【5月25日】ソニー、新オーディオソフト「SonicStage CP」を公開
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【5月9日】ソニー、AACに対応した「SonicStage CP」
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060509/sony.htm
【2005年11月25日】【デバ】ウォークマンの挑戦。第二章
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051125/dev137.htm
【2005年11月21日】【DAL】ウォークマンA用ソフト「CONNECT Player」をテスト
~ Losslessには対応せず。改良版に期待? ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051121/dal213.htm

(2006年5月29日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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