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第228回:あのPCゲーム「DOOM」が実写映画化!
結局「DOOM」視点は5分だけ。でも、完成度は高し

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ あの「DOOM」が実写映画化

DOOM/ドゥーム

価格:3,800円
発売日:2006年8月11日
品番:UNSD-43282
収録時間:約113分(本編)
画面サイズ:シネスコ(スクイーズ)
音声:英語(ドルビーデジタル 5.1ch)
   英語(DTS)
   日本語(ドルビーデジタル 5.1ch)
字幕:英語、日本語、韓国語
発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

 '93年12月10日にid SoftwareがDOS用シェアウェアソフトとして公開した、FPS(一人称視点シューティング)の草分け的PCゲーム「DOOM」。前年に発売された「Wolfenstein 3D」から、グラフィックとゲーム性が格段に進歩を遂げたことで、当時のPCユーザーに熱狂的に迎え入れられた。

 またDOOMは、「Knee-Deep in the Dead」、「Shores of Hell」、「Inferno」の3つのエピソードで構成され、それぞれ隠しステージとボスステージを含む9つのステージとなっていたが、シェアウェア版では第1エピソード「Knee-Deep in the Dead」を無料でプレイすることができた。このため、爆発的に世界中に広がり、シェアウェア版の利用者は1,500万~2000万人ともいわれる。3Dグラフィックスエンジン市場を開拓し、特に北米において圧倒的な支持を得て、1ジャンルを形成した、金字塔的ゲームだ。

 そのころ、パソコンショップに行くと、必ずといっていいほど、DOOMかWolfenstein 3Dがデモされていたことが記憶に残っている。その後も、中古のノートPCコーナーでは、DOOMやWolfenstein 3Dが動作していることが多かった。

 ただゲーム内容が、暴力描写や流血描写が数多く、悪魔的なイメージもあって、キリスト教系の団体から批判されたり、コロンバイン高校を筆頭に米国の学校内銃撃事件に関わった少年らが、DOOMに熱中していたことが報じられたりと、ゲーム業界を飛び出して世間を騒がせたりもした。

 そんな世界的に有名なゲーム「DOOM」の最新版として2004年に発売されたのが「DOOM 3」。さらに、ユニバーサル・ピクチャーズが、この「DOOM 3」モチーフに実写版映画化することが発表された。制作費は65億円で、ザ・ロックが主演、第20代ボンドガールのロザムンド・パイクも出演。大作といえる規模だろう。全米では2005年10月に公開され初登場1位を飾り、日本では2006年4月1日に公開された。

 ゲームが実写映画化されることは珍しくなくないが、今まで良い映画に仕上がったことはほとんどないように思う。正直なところ、DOOMも、ゲーム自体にそれほどストーリー性がないので、本当に映画として成立するのか心配だった。

 ただ、「映画の中でゲーム画面と同様の一人称視点を再現した」ということだったので、一度は観てみたいと思っていたら、8月11日にDVDがリリースされた。DVDはバリエーションもなく1種類のみで、DVDのタイトルも「特別版」や、「スペシャル・エディション」などもつかない、「DOOM/ドゥーム」とシンプルなもの。最近の大作映画のDVDでは珍しいだろう。

 しかし、仕様は本編ディスク1枚のみながら、音声はDTSも収録し、映像特典もそれなりに入っている。価格も3,800円と洋画のDVDとしては標準的で、特にためらうこともなく、購入できた。



■ 実は「DOOM」視点のシーンは5分だけでした……

 2026年、ネバダ砂漠を調査していた考古学者が、火星の古代都市遺跡への瞬間移動通路「アーク」を発見する。しかし、なぜそれが作られ、そして滅びたのか、その由来は謎に包まれていた。

 それから20年後のある日、火星遺跡に隣接するユニオン宇宙社の遺伝子研究施設内で、極秘研究中の被験体が脱出する事件が発生。非常事態時のSOS信号が発せられる。

 それ受けて、カリフォルニア海兵隊特殊作戦本部「RRTS」(緊急対応戦略部隊)の精鋭部隊、リーダーのサージ(ザ・ロック)率いる、リーパー(カール・アーバン)ら8名がネバダ州にあるアーク基地経由で、火星へ緊急出動する。

 火星に到着した部隊は、サージの命令で、アーク室を封鎖し誰も地球へは戻れないという厳戒態勢が敷かれる。隊員リーパーの姉であり、研究員のサマンサ(ロザムンド・パイク)の協力を得て、データの回収と研究員達の捜索を開始するが、そこは無残な死体だらけ。さらに、見たこともない、正体不明の巨大クリーチャーたちが襲い掛かってくる。

 RRTSチームからも犠牲者が出始める中、完全封鎖したはずのアーク室からクリーチャーたちの地球への進入が始まっていた……。

(C)2005 Universal Studios,All rights reserved.

 ゲームの「DOOM」のストーリーを理解している人はあまりいないだろうが、映画版のストーリーはゲームのストーリーをほぼ踏襲している。

 ゲームの時には特に意識しなかったのだが、映画になってみると、「閉鎖空間の中で、得体の知れない生物から逃げ、戦い、脱出する」という、SF映画の王道の1つともいえるストーリーになっている。つまり、映画としてのプロットは「エイリアン」や、「バイオハザード」とほとんど変わらない。こういった過去の作品のいいところどりをしているので、エンターティメント映画として飽きずに最後まで楽しめた。

 もちろん、つじつまの合わないところも散見され、伏線と思われる部分も解決されないままというのも、結構あった。クリーチャーの血液に何かが混じっているのだが、それが何を意味しているのか、最後までわからなかった。映画の中で、登場する用語もほとんど解説されない。良い意味でも、悪い意味でも、B級映画の雰囲気を色濃く感じた。

 また実際に本編を観て、自分が大きな勘違いをしていたことがわかった。それは、映画の紹介文を読んだときに、ゲームのDOOMのような1人称視点の映像ばかりで展開されると思い込んでいたことだ。「1人称視点の映像で、どうやってストーリーを進めるのだろう?」と不思議に思っていた。

 実際は、1人称視点の映像は、クライマックスに近い1シーケンスの約5分のみしかなかった。ただ、そのシーケンスは、武器の一部が見切れているお馴染みの画面が、かなり作りこまれているので、満足度は高い。それに、これ以上続くと、酔いそうだった。ゲームでは、DOOMも含めて、いわゆる3D酔いの経験がなかったのだが、ゲームと違ってアスペクト比がワイド(シネスコ)で、ワイド80型のスクリーンに投写していたからだろうか……。なお、エンドロールでも、DOOMの世界観がCGで再現されている。

 またDVDの映像特典の中で解説されているが、映画に登場するクリーチャーも「実際のゲームのイメージが気に入って“臓器”をコンセプトに怪物を作り上げた。オリジナルに忠実だが、進化もさせた」とのことで、「あっ、アレだ、アレだ!」と、懐かしさすら感じた。

 なお映画は「R-15」指定で、残酷描写というよりも、グロいシーンがかなりある。そういったものが苦手な人は観ない方がいいだろう。


■ ビットレートは高くなくても、画質は良好

 DVD Bit Rate Viewerでみた平均ビットレート6.65Mbpsと高くはないが、最近の実写映画としては平均的な値。画質の方は良好で、映画本編は非常に暗いシーンが多いのだが、暗いところも破綻せずに、クリアでノイズ感もほとんどない。全体的には寒色系で、未来的な硬質な質感がよく出ている。最近のDVDとしても高画質な部類に間違いなく入る。

 音声は英語がドルビーデジタル5.1chと、DTS、日本語がドルビーデジタル5.1ch。ビットレートは英語、日本語ともにドルビーデジタル5.1chは384kbps、DTSは768kbps。ただ残念なのは、音声が、DVDプレーヤーの「音声切り替え」ボタンで切り替えられないこと。必ず、メニューに戻って、音声を選択しなくてはならない。そのため、音声を切り替えながら視聴するというのが難しい。

 音質はDTSの方が、ドルビーデジタル5.1chより、鮮鋭度が高かったので、主にDTSで視聴した。音場は全体的に、リアを積極的に使っており、包囲感は高い。閉鎖区間の映画なので、うまく雰囲気がでている。ただ、LFEはあまり活用されず、その意味では迫力に欠けるのが残念だ。

DVD Bit Rate Viewerでみた平均ビットレート

 ディスクメニューは、デザインが映画の内容に合わせたこったデザインでカッコイイ。本編のチャプタ数は20。字幕は、英語、日本語のほか韓国語も収録し、映像特典にも韓国語字幕が入っている。なお、ユニバーサルのDVDなので、再生を開始すると、まず、自社作品の宣伝が始まってしまう。レンタルDVDならまだしも、セルDVDでこういった仕様にするのは、いい加減どうにかしてほしいところだ。

 本編ディスクに映像特典も収録。映像特典の内容は「基礎訓練」(約10分30秒)、「ザ・ロックの変身」(約5分30秒)、「モンスター(クリーチャー)制作の裏側」(約11分)、「一人称シューティング・シーン(約6分)」、「DOOM旋風(約14分30秒)」、「DOOM攻略法(約7分)」の約1時間弱となっている。ちなみに、他の作品の予告編が収録されているのだが、この映画自体の予告編は収録されていなかった。

 基礎訓練では、出演者がプラハで2週間行なった軍事訓練の様子が紹介される。「空砲でも人は死ぬ」と、銃口を絶対に人に向けないと何度も言われているのが、印象に残った。

 ザ・ロックの変身では、ザ・ロックがクライマックスで変身するときのメイク方法が、実際にメイクしている使って、詳細に説明される。

 モンスター(クリーチャー)制作の裏側では、実際の撮影風景も収録されており、クリーチャーがCGIではなく着ぐるみを使っていることが興味深い。そのため、撮影風景が、CGIを使っているときのようにグリーンバックの味気ないものでなく、セットの中を本当にクリーチャーが動いていて、迫力がある。

 一人称シューティング・シーンでは、「このシーケンスのために特別班を作り、3カ月かけて計画を練って、 14日間かけて撮り終えた」ことが明かされる。また、そもそもこのシーケンスが、5分半の予定だったことがわかる。また、ゲームが4:3、映画はワイドスクリーンの苦労も語られ、「情報を作り直して、新しい仕様を打ち立てた」と、勉強になる内容になっている。

 DOOM旋風では、id software CEOのTodd Hollenshead氏や、John Carmack氏らも登場して、DOOMの歴史が語られ、DOOM攻略法では「DOOM 3」の紹介と、簡単な攻略法が解説される。


■ DVD版の満足度は高いが、HD DVD版も出る…

HD DVD版「DOOM/ドゥ-ム」

 DVDを観るまでは、「どうせゲームの実写映画」と思っていたのだが、実際に観てみると、思いのほか普通の映画に仕上がっていた。ストーリー展開には弱いところもあり、完成度としては高くはないが、エンターティメントとして3,800円分は、十分に楽しめた。

 「DOOM」という単語に、胸が熱くなった人なら、「DOOM」視点を再現した5分のシーケンスと、映像特典だけでも、もとがとれるだろう。

 ただAV Watchの読者にお勧めするとなると、考えてしまうのは、ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンが、HD DVD版を9月29日に発売すると発表したこと。

 価格はHD DVD版が1,000円高い4,980円。DVD版でもかなりの高画質なので、おそらく高画質なHDマスターが作成されているのだろう。ハイビジョンのHD DVDの画質も、優れていると予測される。音声もドルビーデジタルプラス 5.1ch。画質や音質にこだわるなら、1カ月ちょっと待ってHD DVD版を購入すべきだろう。さすがに、DVD版とHD DVD版の両方をそろえるほど映画だとも思えないので、悩ましいところだ。

●このDVDについて
 購入済み
 買いたくなった
 買う気はない

前回の「男たちの大和/YAMATO 特別限定版」のアンケート結果
総投票数960票
購入済み
250票
26%
買いたくなった
507票
53%
買う気はない
203票
21%

□ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンのホームページ
http://www.universalpictures.jp/
□DVDのソフト情報
http://www.universalpictures.jp/sp/doom/
□映画の公式サイト
http://www.doom-movie.jp/
□関連記事
【5月15日】ユニバーサル、映画「DOOM」を8月にDVD化
-PCゲームを映画化。FPSの一人称視点も再現
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060515/upj2.htm
【3月27日】ゲームそのままの映画「DOOM/ドゥーム」(GAME Watch)
ジョン・カーマックも登場するプロモ映像を公開
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20060327/doom.htm
【8月21日】ユニバーサル、国内向けHD DVDソフト6本の発売日決定
-「ボーン・スプレマシー」、「アポロ13」など各4,980円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060821/upj.htm

(2006年8月22日)

[AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]


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