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第252回:バスパワー駆動に対応したUSBオーディオ
~ 実売23,000円でCubase付属のTASCAM「US-144」 ~



 前回、E-MUのUSB 2.0対応オーディオインターフェイス、「E-MU 0404 USB」を紹介したが、今回もよく似たコンセプトの製品を取り上げる。TASCAMからリリースされた「US-144」はE-MU 0404 USBと同様にUSB 2.0対応で、4IN/4OUTというスペックのオーディオインターフェイス。最大24bit/96kHz対応で、アナログ2ch+デジタル2chという構成になっている。


■ USBバスパワー駆動に対応

 TASCAMが10月1日に発売したのは、USB 2.0対応のオーディオインターフェイス、2機種。アナログの2IN/2OUTという仕様のUS-122Lと、そこにデジタル入出力を加えて4IN/4OUTにしたUS-144の2機種。ともにオープン価格だが、店頭予想価格はUS-122Lが17,000円前後、US-144が23,000円前後とコンシューマ向けの価格設定となっている。

US-122L US-144

 今回使ってみたのはUS-144。先週取り上げたE-MU 0404 USBと非常によく似たスペックではあるが、実際に触ってみると、かなり違う性格の製品であった。とはいえ、FireWire製品に押されてなかなか出てこなかったUSB 2.0対応のオーディオインターフェイスがようやく各社から登場し始めた。

 最初にUSB 2.0対応のオーディオインターフェイスが登場したのは2003年のEDIROLの「UA-1000」だった。開発者にインタビューした際、たぶん他社から出てくるのは最低でも1年以上後だろうというような話をしていたが、結局3年たって、いろいろ出はじめたということのようだ。

 今回のUS-144の非常に大きな特徴は、ACアダプタ等の電源が不要で、USBバス電源供給で動作するということだろう。2IN/2OUTのUSB 1.1対応のオーディオインターフェイスでは、USBバス電源供給が普通だが、EDIROLのUA-1000、UA-101、またE-MU 0404 USB、0202 USBも電源が必要だった。やはりFireWireと異なり、USBの場合、あまり大きな電力を供給できないのが原因であるが、US-144もUS-122Lも電源が不要というのはやはり便利だ。

 一方、形状はE-MU 0404 USBと非常によく似た考え方になっている。サイズは147×192×48mm(幅×奥行き×高さ)、重量1kgだが、ラックマウントタイプ、ハーフラック対応ではなく、上面パネルにツマミやスイッチ類がいろいろ搭載されている。確かに、ノートPCなどと持ち運ぶことを考えると非常に使いやすく、うまい設計だが、同時期に2社から登場したのはちょっと不思議なところだ。

 5つ並んだボリュームツマミはラバータイプで非常に薄くできている。多少好き嫌いは分かれそうだが、これならカバンなどにそのまま入れても壊れにくく、安心ではある。

 入出力はフロントにキャノン型のマイク入力が2つとアンバランスのフォン入力が2つ。中央にヘッドフォン端子が用意されている。マイクはともに+48Vのファンタム電源供給に対応しており、R側のフォン入力は通常のライン入力とハイインピーダンス対応のギター入力の切り替え方になっている。

 一方、リアパネルにはUSB接続端子とRCAでのラインアウトが2つ、同軸デジタル入出力が1つずつ、さらにMIDIの入出力が1系統用意されている。

フロントにキャノン型マイク入力とアンバランスのフォン入力を搭載。中央にはヘッドフォン端子 リアパネルにはUSB、RCAのラインアウト、同軸デジタル入出力、MIDI入出力を装備



■ MMEドライバではデジタル入出力に非対応


ドライバインストール画面

 このUS-144はWindowsとMacの両方のドライバが用意されているが、今回はWindowsで試してみた。付属のドライバをインストールするのだが、これが結構手こずった。英語表記のドライバで、CD-ROMをセットすると自動的にインストールできるようになっている。

 最初、普段一番よく使っているPentium D 820を搭載したShuttleのベアボーンマシンにインストールしたのだが、どうもうまくいかない。ドライバのインストール途中で止まってしまい、先に進むことができないのだ。すべてのアプリケーションが入っていない状態、サウンド系ドライバがまったくインストールされていない状態などでいろいろと試してみた。5、6時間かけてトライしたが、結局ダメで、これについては一旦あきらめた。

 一方、以前使っていたGIGABYTE製マザーボードにPentium 4 2.4GHzのCPUを搭載したマシンで試してみたところ、今度はあっさりうまくいった。原因はハッキリしないが、USBコントローラチップの相性だろうか。ただ、カタログやマニュアルなどには、コントローラチップに関する制限とかは記載されていない。マシン固有の問題なのかもしれないが……。


インストーラを見ると、PloytecのUSBオーディオドライバと似た印象

 なお、このドライバをインストールしていて感じたのは、PloytecのUSBオーディオドライバとよく似た特徴を持つインストーラであること。TASCAMから特に、共同開発などのコメントは出ていないが、BehringerのUSBギターをはじめ、PloytecのドライバをOEM供給受けているところは多いので、その可能性はありそうだ。

 インストールがうまくいくと、Windowsのコントロールパネルにアイコンが表示される。これを起動すると、コントローラ画面が表示されるが、調整できるのは3点のみ。まずはドライバのレイテンシーの設定、次にクロックをインターナルにするかオートにするか、そして、デジタル入出力をS/PDIFにするかAES/EBUにするかの設定だ。


インストールされると、コントロールパネルにアイコンが表示 ドライバのレイテンシー設定 デジタル入出力設定


Windowsのコントロールパネルには再生、録音ともに「TASCAM US-144」というドライバが

 Windowsでの場合、使えるドライバはASIO 2.0、WDM、GSIF2の3つ。さすがTASCAM製品だけあって、同社のGigaSampler/GigaStudio用のドライバが用意されているのだ。一方、MacではCoreAudio、CoreMIDIドライバに対応している。

 さっそく、Windowsのコントロールパネルでオーディオを開いてみると、再生、録音ともにTASCAM US-144というドライバが見つかる。まずは、これを選んで、Windows Media Playerで再生させたところ、しっかり音が出る。アナログ出力のラインアウトからも、モニタ用のヘッドフォン出力からも音を出すことができ、それぞれのレベルは上面パネルのボリュームツマミでそれぞれ独立して調整することができる。

 ただし、デジタル側から、この音を出すことはできなかった。MMEドライバとして見えるのはアナログ出力のみとなっているようなのだ。同様に録音もアナログのみ。標準のMMEドライバを使うアプリケーションではデジタルは利用できないようだ。


SONARでは2つのポートを確認できた

 なお、WDMと書かれていることから、SONARで確認してみたところ、こちらでは2つのポートをしっかり確認することができた。

 ところで、US-144にはMON MIXというボリュームツマミがある。これは左に絞るとINPUT、右最大にするとCOMPUTERとなっているのだが、これはマイクやライン入力と、再生音をミックスするつまみだ。ASIOなどによらないハード自らが持つダイレクト・モニタリング機能というわけだが、ギターの練習用などとして便利に使うことができる。

 つまり、Windows Media PlayerなどでCDを再生しながら、それに合わせてギターを弾く際などにいいのだ。なおMONOスイッチをONにすると、Rチャンネルにのみ入力された信号を、両チャンネルで再生することが可能となる。



■ Cubase LEやGigaStudioをバンドル

 このUS-144およびUS-122Lの大きな特徴のひとつはバンドルソフト。低価格なハードではあるが、かなり魅力的なソフトがバンドルされているのだ。具体的にはSteinbergのCubase LEとTASCAMのGigaStudio 3.0 LE。

Cubase LE GigaStudio 3.0 LE

 まずは、Cubase LEはWindowsとMacのハイブリッドになっているが、Windows版をインストールしてみたところ、ASIOドライバとしてUS-144を確認することができ、問題なく動作した。一方、GigaStudio 3.0 LEは非常に強力なソフトサンプラーとして著名なGigaStudioの機能制限版だ。同時発音数の制限などがあるが、製品版との最大の違いはサンプリングデータがあまりないことだろう。

 搭載されているのはMegaPianoというピアノデータのみだが、これでもかなり高品位なピアノ音源として楽しむことができる。さすがGSIF対応だけあって、レイテンシーもほとんどなく演奏することができる。他のライブラリーなどを購入すると結構な価格になってしまうが、AKAIデータのコンバートなども可能なので、手元にサンプリングデータがあれば、結構使えるはずだ。

ASIOドライバとしてUS-144が動作 GSIF対応のピアノ音源「MegaPiano」を搭載

 ここでお約束のRMAAを使った音質チェックを行なった。US-144の場合、入出力ともにアンバランスなので、どうしてもS/Nなどで厳しい面はあるが、44.1kHz、48kHz、96kHzのそれぞれで実験してみた。しかし、なぜか44.1kHzではRMAAがうまく動作しなかったため、48kHz、96kHzでの結果を見ていただきたい。

 周波数特性的にはしっかりしていたものの、ダイナミックレンジやTHDなどではあまりいい結果にはならなかった。もちろん、RMAAの結果がすべてではないが、もう少し改善の余地はあるような気がする。


48kHz 96kHz

 見た目にもカッコよく、堅牢なボディーとUSB電源供給は持ち歩きの上では非常に心強いが、ドライバなどを中心に、もう少し改善されると、よりよい製品になりそうだ。



□TASCAMのホームページ
http://www.tascam.jp/
□ニュースリリース(英文)
http://www.tascam.com/Press/Releases/07142006-122l_144.html
□製品情報(US-144/英文)
http://www.tascam.com/Products/US-144.html
□製品情報(US-122L/英文)
http://www.tascam.com/Products/US-122l.html
□関連記事
【9月25日】【DAL】初のUSBオーディオ対応「E-MU 0404 USB」
~ 設計は全面変更。価格以上の音質と付属ソフト ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060925/dal251.htm
【9月6日】クリエイティブ、「E-MU」初のUSBオーディオ
-DD/DTSパススルー出力対応など2製品
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060906/creat2.htm

(2006年10月2日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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