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第78回:2007 International CES特別編
世界最大108V型AQUOSから
世界最小42V型フルHDプラズマまで


■シャープ、108V型液晶AQUOSやゲーマー向け液晶を展示

●世界最大の108V型液晶AQUOS。2007年夏発売

 シャープがInternational CESで意表を突いた発表を行なった。

 なんと、フルHD対応の108V型液晶テレビを発表したのだ。業務用ディスプレイパネルのラインナップも設定されるが、チューナを内蔵した液晶AQUOSシリーズの最上位機種として発表/展示されたことが、驚きだ。

 表示領域は横238cm×縦134cmという大きさ。重さは約900kg。価格は未定としながらも、2007年夏には民生向けの発売を予定しているという。

右が第8世代マザーガラス。108V型はここから1面分しか取れない

 コントラスト性能やバックライト方式、映像エンジンやパネルの駆動ロジックの詳細については公開されなかったが、現行のAQUOSシリーズに準じたものになり、著しくこれを上回ったり、下回ったりすることはないとのこと。

 パネル自体は亀山第2工場で生産され、マザーガラスには2,160×2,460mm(縦×横)の第8世代のものを使用する。この第8世代ガラスは52V型が6枚、46V型が9枚、32V型は15枚取ることが出来る。108V型を1枚取ると、さらに52V型が2枚取れそうに思えるが、実際には108V型を取ると、その1枚しか取れないのだという。それだけ108V型モデルはプレミアムモデルということになる。

 展示されていた試作モデルの画質自体は良好で、大きさ故の不都合などは感じられない。純粋にこれまでのAQUOS画質が維持されると思って良さそうだ。これまで「大画面サイズ競争には関心がない」と言い続けてきた日本勢だが、昨年は松下電器が103型フルHDプラズマを出し、今年はシャープ。来年以降は韓国勢がまた巻き返しに来るのだろうか。


108V型AQUOSは、画面の大きさもさることながら画質も優秀

●北米限定のゲーマー向けスペシャルモデル

 最近の高機能/多機能な映像エンジンを搭載した薄型テレビは、映像エンジンの処理系を多段パイプライン構造で組み立てているため、入力された映像が表示されるまで遅延がある場合がある。

 DVDビデオ再生などでは全く問題にならないが、ゲームの場合、表示されている映像を見ながらゲームコントローラを操作するので、厄介なことになる。もし、大きな遅延が発生している場合、ゲーム画面の展開に反応してコントローラを操作していても、すでにゲーム機側のリアルタイム処理では間に合っていない場合も想定される。

 格闘ゲームや3Dシューティングゲームなどの場合、毎秒60コマの流れの中で、1コマ単位の入力を競うものも少なくない。そこで、そうした上級ゲームプレイヤー向けに米シャープはスペシャルカスタマイズなAQUOS「LC-32GP1U/LC-37GP1U」をリリースする。

 同モデルには、遅延を短縮した「Vyper Drive」ゲームモードが用意されている。映像エンジンの各ステップを省略するなどして遅延を解消するものだ。もともとゲーム機からのリアルタイム3D映像はMPEG圧縮されないベースバンド映像なので、映像エンジン側のノイズ低減処理やエンハンス処理は不要なので理にはかなっている。

 LC-32/37GP1UはVyper Driveが搭載されている以外は普通のフルHD対応AQUOSだ。ゲーム向きAQUOSなのになぜか、パネル応答速度は最速タイプの4msパネルではなく6msパネルを採用しているのがなんとなくミスマッチな感じもするが、非常にユニークなので、日本での発売も期待したい。

 北米では2007年3月発売予定。価格はLC-32GP1Uが1,699.99ドル、LC-37GP1Uが1,999.99ドル。


パネル解像度は1,920×1,080ドット。ダイナミックコントラスト1,000:1(32V)、8,500:1(37V)、ネイティブコントラスト2,000:1。4波長バックライト搭載。HDMI端子×3装備



■松下、フルHD解像度の42V型プラズマを初公開

実際に表示映像を接写してみた。液晶に迫る画素微細度。発光効率の関係で同画面サイズ液晶と比較するとやや暗い印象もあるが、自発光の強みにより、コントラスト感はある

 その構造的制約から50V型未満でフルHDが極めて難しかったプラズマテレビ。「フルHD/1,920×1,080ドット」が必須となった現在、40V型台でのフルHDプラズマの登場が待ち望まれていた。液晶に大分遅れるが、やっと今年製品投入が行なわれそうだ。

 試作品とはいえ、量産型に近い完成度の高いモデルを展示していたのは松下と日立。松下のものは一般向けとしては今回が初披露。スペックは一切を非公開としているが、パネル世代的には現行の50V型フルHDプラズマと同等。開口率は50V型パネル以下となってしまっているものの、発光効率の改善で輝度性能やコントラスト性能は現行の50V型フルHDモデルの「TH-50PZ600」に見劣りしないレベルにはなっているという。

 価格は未定としながらも、液晶VIERAの37V型とフルHD 50V型プラズマの「TH-50PZ600」との間を埋める“適正”な価格帯になるとのこと。発売は2007年夏を予定している。


プラズマファンには望まれていた40V型台のフルHDプラズマ ピーク輝度はやはり大画面フルHDプラズマや同サイズフルHD液晶にやや及ばないが、パリっとした鮮烈なハイコントラスト感とフルHD解像度が組み合わさったフルHDプラズマ画質が42V型で楽しめるのは感慨深い



■日立はフルHDプラズマを42/50/60V型で投入
~注目は高輝度ALISパネル採用の42/50V型?

 日立のプラズマパネルには、プログレッシブタイプのe-ALISパネルとインタレースタイプのALISパネルの2タイプがある。

 e-ALISパネルは他社と同系の構造を採用するプログレッシブなパネル。一方、ALISパネルは偶数ラスターと奇数ラスターの放電電極を交互に点灯させる日立独自方式のパネルだ。表示はインタレース方式になるが、開口率を液晶並みの60%の高さで取れるため、ピーク輝度を明るくできるメリットがある。

 フルHDプラズマとしては60V型がe-ALISパネル、50V型と42V型がALISパネルを採用する。要するにプログレッシブでは開口率的に不利な画面サイズではALIS方式を、そうでないサイズではプログレッシブなe-ALISパネルを採用する、というのが日立の方針のようだ。

 42V型に着目すると、松下のものよりも確かにピーク輝度は高く見え、ここが競合に対するアピールポイントになりそうだ。

 現在の日本国内におけるハイビジョン放送の主流が1080iであることを考えれば、ALISパネルの特異性も優位に作用する。ただし、BDやHD DVDといった1080p記録のハイビジョンソフトの再生に関してはe-ALISパネルの方が相性がよい。このあたりは製品選びの際には留意したいところ。

 42V型、50V型、60V型のいずれも発売時期は未定としているが、北米では5月に正式な発表会を予定しており、この時に具体的な発売時期や価格もアナウンスするとのこと。日本ではこれよりも早く発表が行なわれるはずだ。


42V型。ALIS方式のフルHDプラズマ。42V型だが明るい 50V型。こちらもALIS方式 60V型はe-ALIS方式。2006年内発売予定だったが、2007年に延期された



■変わり種
~ViewSonicがiPodプロジェクタを発表

 日本ではPC用ディスプレイ機器メーカーとしての知名度が高いViewSonicから、ユニークなiPodプロジェクタ「PJ258D ViewDock」が発表された。

 PJ258Dはいわゆるマルチメディアプロジェクタにカテゴライズされる製品。特徴的なのは本体上面に備え付けられたiPod Dock。ここにiPodをセットすれば、iPod内のビデオファイルを投射することが出来る。

 コントラスト性能は2,000:1。輝度性能は2,000ルーメンという高輝度ぶりで、パネル解像度も1,024×768ドットであるため、どちらかといえばデータプロジェクタの系統だ。

 重量は2kg程度で、設置や移動が楽であることを強調しており、ビジネスモバイルプロジェクタやゲームユーザのためのカジュアルプロジェクタとしても訴求したいとのこと。


「PJ258D」の価格は1,000ドル以下を予定 iPodとドッキングさせればiPod側の映像を投射可能。iPodを使ったPCレスプレゼンテーションも可能!?

入力端子はコンポジット、S映像、D-Sub 15ピンの3タイプ。コンポーネント入力はD-Sub15ピンに変換して入力させる方式と思われる 画質は色再現性よりも表示輝度に振ったチューニング

□2007 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【2007 International CESレポートリンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/2007ces.htm
【2006年1月6日】【大マ】International CES特別編
~ 2006年「大画面世界一選手権」の勝者は? ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060106/dg59.htm

(2007年1月9日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1000を超える。

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AV Watch編集部

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