■ 今年も見所の多いソニーブース 米ソニーは現地時間の1月7日、CES 2007プレスカンファレンスで一気に16モデルという大量の新型ハンディカムを発表した。これだけの数の新モデルが一度に市場投入されるのは、もちろん初めてのことである。特徴的なのは、過去生産を続けていたHi-8、Digital Hi-8の新モデルはなく、すべてDVフォーマット以上でまとめたことだ。米国は非常に価格にうるさい国だが、DVでも十分な低コストを確保できるということだろう。それぞれのレンジ別に、特徴をまとめてみよう。
■ 上下に拡充するHDラインナップ 現在ビデオカメラではハイビジョン撮影が可能なフォーマットとして、DVテープを使用するHDVと、DVD・HDD・メモリを使用するAVCHDがある。日本ではAVCHDは注目度が高いが、米国ではまだ価格が高いため、市場では様子見の気配が強いという。
今回AVCHD規格のカメラとしては、DVD記録型のHDR-UX7とHDR-UX5がお目見えした。上位モデルのUX7は、新たに1/3インチ 3MピクセルのクリアビッドCMOSセンサーを搭載し、最高6Mピクセルまでの静止画記録に対応。ちなみにクリアビッドCMOSの初代機であるHDR-HC3、HDR-UX1、HDR-SR1は2MピクセルCMOSを採用し、最高4Mピクセルの静止画記録であった。
レンズはカールツァイス バリオゾナーで光学10倍ズーム。撮像素子をめいっぱい使用するため、手ぶれ補正は光学式となっている。動画と同時撮影の静止画は3枚までと変わらず、メモリースティックDuoに直接記録する。ただしこの場合は、解像度が最高で4.6Mピクセルとなる。一方なめらかスロー録画は従来どおり、最大240フレーム。
下位モデルとなるUX5は、初代機UX1とほぼ同機能で、価格を下げた廉価モデルという位置づけのようだ。撮像素子は2MピクセルCMOSで、最高4Mピクセルの静止画記録可能、手ぶれ補正も電子式となっている。
両モデルとも3月発売で、価格はUX7が1,300ドル、UX5が1,000ドルとなっている。特にUX5の1,000ドルというのは、米国の慣習では999ドルという「マジックブライス」で価格表示されることになる。ソニーではこのモデルでAVCHDの普及を図りたいと考えているようだ。 一方HDVカメラは、新たにHDR-HC7とHDR-HC5を投入する。上位モデルのHC7は、光学的な特徴はUX7と同じ。つまりHC7とUX7は記録フォーマットが異なるだけで、事実上の姉妹機となる。そして下位モデルのHC5も、光学特性はUX5と同じ。こちらも姉妹機である。HC7とHC5は2月発売で、価格はそれぞれ1,400ドルと1,100ドル。
これらハイビジョン記録4モデル共通の特徴は、新しい色空間定義であるxvYCCに対応した、世界初のビデオカメラであることだ。なおソニーではxvYCCを「x.v.Color」と名付けている。 これらのモデルでは、撮影時に「x.v.Color」撮影のOn/Offが切り替えられるようになっている。日本では現在のところ民生機のテレビとしては、「x.v.Color」対応機は同社のBRAVIA X2500シリーズとSXRD採用リアプロのAシリーズしかないが、非対応のテレビでも拡張された色域が表示できないだけで、「x.v.Color」撮影でも特に支障はないとしている。 なお、カメラ本体のHDMI出力は規格バージョンが1.2だが、「x.v.Color」の出力に対応しているという。
■ 売れ筋のSD記録HDD/DVDモデル 日本ではハイビジョンカメラの売れ行きに押されて、SDのカメラは徐々に売り上げが減少しているが、米国ではSDのビデオカメラも堅調だ。特に長時間記録可能なHDD記録型は、人気が高い。今回ソニーでは、HDD記録型を一気に5モデル投入する。
SD記録HDD型の最上位モデルとなるDCR-SR300は、3MピクセルのクリアビッドCMOSセンサーを搭載し、6Mピクセルの静止画記録可能なモデル。ん? と思われたことと思うが、そう、撮像素子のスペックはHD撮影可能なUX7・HC7と同じである。もちろん手ぶれ補正も光学式だ。ただ動画撮影がハイビジョンではなく、SD(スタンダードディフィニション)になっているわけだ。
40GBのHDDを内蔵し、長時間モードで28時間、標準14時間、最高画質で9時間の撮影が可能。価格は1,000ドルというマジックプライスである。
DCR-SR200は同じく40GBのHDDを搭載しながら、光学部は従来の撮像素子は2MピクセルCMOSで、最高4Mピクセルの静止画記録対応モデル。つまりUX5、HC5と同等の撮像部を備えながら、動画はSDということになる。価格は850ドル。 DCR-SR82は、60GBのHDDを搭載した長時間撮影対応モデル。最高画質で14時間、長時間モードで41時間の撮影が可能、ズームは光学25倍。なおこれ以下のモデルは、撮像素子がCMOSではなく1Mピクセルの単板CCDである。価格は750ドル。 DCR-SR62は、SR82のHDDが半分の30GBになったモデルで、撮影時間は7時間から最長20時間まで対応。価格は650ドル。
HDDタイプのローエンドDCR-SR42は、40倍の光学ズームレンズを備えたモデルで、搭載HDDは30GB。ただし撮像素子が68万ピクセルの単板CCDとなっている。価格は600ドル。なおHDDの全モデルは、現地時間の8日から米国ソニースタイルで予約開始と発表されている。
HDDタイプのカムコーダは、いずれ別のメディアへ書き出さなければならない。米国は比較的PCに対する敷居が低い国ではあるが、基本的にめんどくさいのを嫌う国でもある。そこで米国だけで発売されている面白いデバイスを見つけた。 「DVDirect」はUSBやi.LINK、アナログAV入力を備えたDVDドライブで、ビデオカメラとダイレクトに接続することでその内容をなんでもDVDに書き出すというもの。PCと接続すれば、普通のDVD/CDライターとしても使える。ドライブ上部に液晶モニタと簡単な操作ボタンがあり、とにかく繋いでボタンさえ押せばあとはなんとかしてくれるというデバイスである。
以前からビクターがEverioでやっているようなコンセプトだが、こちらはアナログ入力まで備えるため、VHSからDVDへのダビング用途としても使われているようである。カラー液晶と各種メモリーカードスロットまで装備した上位モデルが249ドル、モノクロ液晶でメモリーカードスロットなしのモデルが199ドル。
■ スタンダード化するDVD/DVモデル
一方DVD記録型も、新たに4モデルが追加され、全モデルがDVD+Rの2層メディアへの記録に対応した。最長で2時間記録できるというのがウリである。最上位のDCR-DVD508は、例によって3MピクセルのクリアビッドCMOSセンサーを搭載し、6Mピクセルの静止画記録可能なモデル。価格は900ドルで、3月発売予定。6Mピクセル静止画記録機では一番安い。 中堅モデルのDCR-DVD408はもうだいたい察しが付いていると思うが、撮像素子が2MピクセルCMOSで、最高4Mピクセルの静止画記録対応モデル。価格は700ドル。これも3月発売予定。 DCR-DVD308は、1Mピクセルの単板CCDを採用したエントリーモデルで、価格は500ドル。発売は2月。
最も安いDCR-DVD108は、64万ピクセル単板CCD採用機ではあるが、レンズが光学40倍ズームというスペックだ。35mm換算では16:9で39~1,560mmと、ものすごいことになってる。価格は400ドルで、これも発売は2月。
DVテープ型モデルは、2月に3モデルが投入される。一番上のDCR-HC48は実機が展示されていなかったが、光学25倍ズームレンズ搭載の1Mピクセル単板CCDモデルで、価格は400ドル。 DCR-HC38は、光学40倍ズームレンズ搭載の64万ピクセル単板CCD採用機で、価格は330ドル。最も安いDCR-HC28は、光学20倍ズームの64万ピクセル単板CCD採用機で、価格は280ドル。昨今インフレ傾向にある米国でこの値付けは、今の為替レートで日本円に換算するよりも感覚的にかなり安い。
■ ラインナップの幅が求められる米国 今回のラインナップを別の視点で分けると、新開発の3MクリアビッドCMOS搭載がUX7、HC7、SR300、DVD408。それぞれメディアと解像度が違うモデルへの派生した格好だ。次に従来型の2MクリアビッドCMOS搭載がUX5、HC5、SR200、DVD308。以下CCD機は光学スペック共通で、メディア違いラインナップがある。日本では当然これだけラインナップがあったらわけがわからなくなるところだが、そこは米国特有の事情がある。日本のカメラ系量販店では、上から下まで各メーカーのフルラインナップが買えるわけだが、米国では量販店によって顧客層が全く違うのである。 例えばBest Buyといった家電系量販店では比較的高級モデルを中心にラインナップするが、ウォールマートのようなディスカウント系量販店では、廉価モデルしか置かれないという現状がある。だからこれだけラインナップがあっても、流通で売り分けられるため、混乱しないのである。ある意味本物の格差社会の姿がそこにあるというのは、言い過ぎだろうか。
今回発表されたモデルのうち、どれが日本で発売されるのかはわからないが、HD記録のx.v.Color記録モデルはその実力が気になるところだ。日本での発売が待たれる。
□2007 International CESのホームページ(英文)
(2007年1月9日)
[Reported by 小寺信良]
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