【バックナンバーインデックス】



“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第307回:21世紀のゲームウォッチ? 「SC-VP200SD」
~ メモリ型低価格ポータブルメディアプレーヤー ~



■ PMP再び

 そこそこ長い間ガジェットを見続けていると、時に「失われた未来」みたいな製品に出くわしてしまい、「あーあったねそういえばそういうの」と膝を打つことも少なくない。そんな製品群の一つがPMPこと、ポータブルメディアプレーヤーである。

 Zooma! のバックナンバーで見ると、PMPというソリューションは2002年ぐらいからMP3プレーヤーの映像版といった形でスタートして、2004年あたりから「Windows PMC」搭載モデルが登場したが、なぜかその後急速に収束に向かったように思う。

 その理由をいろいろ考えてみたのだが、どうも日本ではPSPやGBA用「プレイやん」の登場、そしてiPodなど音楽プレーヤーが動画再生機能を搭載していったことが原因のようだ。

 ポータブルで動画を見るというソリューション自体はその後、ワンセグブームとして開花していきそうだが、今後はさらに無線LANや携帯通信網を使った動画ダウンロード、あるいはストリーミングといった方向に延びていくのかもしれない。

 さてそんなPMPだが、今どきの製品はどうなっているのだろうか。以前は韓国のMP3プレーヤーメーカーが非常に力を入れていた分野だが、現在製造の中心は台湾や中国に移ったようだ。

 サンコネクション「SC-VP200SD」(以下VP200SD)は、PMPとしては破格?の12,800円という低価格商品である。その理由はHDDを内蔵せず、内部メモリとして128MB、そして外部ストレージ用にSDカードスロットを設けたところにある。ビデオカメラの世界ではメモリ記録も現実的になってきたこともあって、着眼点としてはなかなか面白い。さっそく試してみた。


■ しっかりした作りのボディ


どこかで見たような見ないようなカタチ

 まずはデザインから見ていこう。本体は白と黒の2色があるが、今回は白モデルを取り上げてみる。全体的に見た感じは、平べったい携帯電話といったサイズだが、もちろん10キーなどない。左右シンメトリックにボタンが配置されており、ゲーム機っぽいルックスである。

 まず正面左側は、上下がボリューム、左右がファイルスキップボタンで、MENUボタンもある。右側は上が再生、左がキャンセルとなっている。右がAボタン、下がBボタンになっているあたりがゲーム機っぽいが、実際に裏面にはGame Playerという表記も見られ、内蔵のゲームもいくつか入っている。

 液晶画面は2.7インチTFTで、480×320ピクセル。視野角はやや狭いが、正面から見ればコントラストも高く、輝度もそこそこある。1万円ちょっとのデバイスだが、全体的に作りはしっかりしており、見た感じもなかなか侮れない。

 上部には撮影用シャッターボタンと電源ボタンがある。左にある小穴は、ボイスレコーダとして使うときのマイクだ。左サイドにはアナログAVの入力があり、外部入力の映像と音声が記録できる。またSDカードスロットも、ここにある。底部はイヤホンとアナログAV出力兼用端子、USB端子がある。Openというボタンは、バッテリのフタの開閉ボタンだ。

上部にシャッターと電源ボタン AV入力とSDカードスロットは左側 底部は出力とUSB端子

 裏を返せばケータイライクなCMOSカメラがあり、2.0メガピクセルの静止画が撮影できるほか、QVGA/30fpsの動画撮影も可能だ。レンズ横にあるのはLEDライトで、ビデオ撮影時だけでなく、静止画撮影時にも使える。フラッシュを搭載しない代わりだろうか。

背面にはCMOSのカメラが LEDライトまで搭載 バッテリはケータイによくある薄型のもの


付属のACアダプタ

 ACアダプタは先端がUSBタイプのもので、通電中は赤いLED、さらに充電中は緑のLEDが点灯する。表示LEDが過度な感じがするが、このあたりはお国柄なのかもしれない。そのほか付属品としてはイヤホン、USBケーブル、AVケーブル、動画変換ソフトのCD-ROM、キャリング用布袋など、買ってすぐに使えるようになっている。


■ 実はゲーム機なの?


モードセレクト画面。残念ながら日本語には非対応

 起動してみると、最初にロゴマークが表示されたのち、モードセレクトの画面になる。左側のキーが上下左右の方向キー、右の再生ボタンが決定となる。言語設定メニューには日本語はなく、英語と中国語2種、あとはヨーロッパ圏の言語が並ぶ。この手の機器ではお約束となった変な日本語が楽しめないのは残念でもある。

 本機はPMPというだけあって非常に多機能だ。できることを一覧にしてみた。


機能 スペック
静止画撮影 最大1,600×1,200ドット
動画撮影 320×240ドット/30fps
音楽再生 MP3/WMA
動画再生 ASFのみ
写真表示 JPEGのみ
テキスト表示 日本語非対応
ゲーム 16種類48タイプ内蔵
録音・録画 WAV・ASF


 中でも異彩を放つのは、ゲームの充実っぷりである。iPodなどにもショートゲームは搭載されているが、本機に搭載されているのは、アクションやシューティングゲームが中心。「数独」のようなパズルゲームも少し入っている。


ゲームがやけに充実している

 ゲームはROM内に書かれているのか、ローディングには30秒ほどかかる。あまりゲームには詳しくないのだが、いくつかトライしてみたところ、キャラの小ささとレスポンスの悪さに、数秒で退場となった。上手い人がやればそれなりに勝負になるのかもしれないが、今どきマリオやゼビウスの劣化コピーのようなゲームが、みんな楽しめるのだろうか。

 マニュアルによれば、自分でプログラムしたゲームをロードしてプレイできるようだ。ただゲーム機能に関しては、輸入販売元のサンコネクションではサポート外ということであった。もし本機用のゲームなどを公開しているサイトでもあれば面白そうなのだが、今のところないようだ。


■ 動画再生は及第点

 さて、ゲームは本体のみで遊べるが、音楽や映像の再生は内部メモリの128MBだけではどうしようもないので、SDカードを使ってメモリ領域を拡大する必要がある。対応容量は2GBまでで、SDHCには対応していない。また内部メモリとSDカードは、同時には使えない。SDカードがないときは内部メモリ、ある時はSDカードに切り替わるようだ。

 SDカードを本機に挿すと、MP3、VIDEOといったフォルダが作られる。このフォルダに、再生したいコンテンツをコピーするだけで、再生可能だ。本機をUSB接続すると、内部メモリとSDカード両方をマウントする。ただ本機のUSBポートは1.1なので、大量のコンテンツを転送するのであれば、別途USB2.0対応カードリーダーなどを使ってコピーしたほうが、断然速い。

 まずはMP3の再生を試してみよう。本機はサブフォルダを認識しないので、MP3ファイルはMP3フォルダ内に直接放り込むことになる。複数のアルバムを入れようとしたら、なかなかやっかいだ。また本機で表示される曲順は、ソートなどの機能がなく、基本的に転送された順で並ぶだけである。またWMAの再生もサポートするが、DRMには非対応なので、音楽ダウンロードサービスなどを利用することはできない。

曲の順番は転送した順になってしまう 音楽再生中。低域過多で、ローファイな感じ

 プレイリストもないので、再生順はかなり成り行きだ。リピート再生ぐらいはできるが、EQもない。先に述べたように、イヤホンも付属しているが、音質的にはあまり期待するほどのものはない。もう少し程度のいいイヤホンとして、久しぶりにゼンハイザーMX500を引っ張り出して聴いてみたところ、高域の不足は目立つが、低域がよく出ている。中域は若干歪みっぽい感じで、解像感は不足気味だ。昔はやったローファイのようなサウンドである。

 ではおそらく本機のメインフィーチャーであるビデオ再生を試してみよう。再生可能なフォーマットはASFのみだが、変換用ソフトとしてArcsoftの「Media Converter」が付属する。インストールした段階でVP200SD用のプリセットになっているので、特に設定の必要はない。

付属の変換ソフト「Media Converter」 設定はすでにプリセットしてある

 変換したいファイルをドラッグ&ドロップで登録し、変換ボタンをクリックするだけである。パラメータを見ると、352×288ピクセル、映像ビットレート512kbps、音声128kbps、24fpsで固定となっているようだ。MPEG-2で録画した30分のテレビ番組を変換するのに、Pentium 4 2.8GHzという今となっては低速のマシンで、15分ほどかかる。今どきのマシンならば、そう待たずに変換できることだろう。変換後のファイルは、30分番組で255MB程度になる。


ファイル名は化けるが、サムネイルが表示される

 SDカードを本機に戻して再生してみた。あいにくと日本語のファイル名は表示できないが、選択すると最初の画面がサムネイルで表示されるため、なんとなく区別はできるだろう。ただ同じ番組を何話分も大量に入れた場合は、困ることになるかもしれない。

 再生品質はかなり良好で、再生時のひっかかりもない。シーンの早送り、巻き戻しは左の左右ボタンを押しっぱなしにする。早送り速度は可変できないが、指を離せばすぐに再生される。またビデオファイルに関してはレジューム機能を備えており、他の機能を使ったり電源をOFFにしたあとでも、直前の視聴ポイントから再生が可能だ。このあたりは、意外と言っては失礼だが、ちゃんとしている。

 最後に撮影機能も試してみた。撮像素子は1.3MピクセルのCMOSで、レンズはF2.8とある。昨今のビデオカメラで搭載されているCMOSとはレベルが違うのは百も承知であまり期待していなかったのだが、まずまずちゃんと写る。レベルとしては、2年前のケータイぐらいだろうか。周辺の収差と白飛びはご愛敬だが、色調もまともで、縮小して使う分には解像感も出る。十分とは言わないまでも、そう捨てたものでもない。

 動画撮影も各モードで試してみた。QVGAなので何に使うということもないが、ちょっとしたケータイ動画程度のクオリティはある。

静止画サンプル 動画サンプル

ezsm01.asf (736KB)
静止画は最高画質、ホワイトバランス「昼光」で撮影 最高画質で撮影した動画
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。



■ 総論

 この製品を取り上げたのは、案外SDカードの再利用としてアリなのではないかと思ったからである。例えば今、SDカードの価格下落はスゴいことになっている。カカクコムで見ると、ノーブランド品ではあるが1GBなんて880円とかいう値が付いているのである。2GBもとっくに2,000円を割っており、デジカメ用として大容量に買い換えた人も多いだろう。

 そうなると、256MBとか512MB程度のSDカードが、引き出しを漁るとぽろぽろ出てくるという状況もあり得る。そういうものの利用法として、こういったデバイスというのは、あっていいんじゃないかと思うのだ。

 VP200SDは、PMPとしては久しぶりに取り上げた製品だが、できることは昔とあまり変わっていない。ただ時代に合わせて少しずつ、クオリティがアップしているのが確認できた。値段的にもリーズナブルで、音楽だけのプレーヤーでもそれぐらいしてしまうことを考えたら、動画再生を主体にしたいという人にとっては、実は現実的な選択肢かもしれない。

 もし日本の市場に合わせて企画したなら、ケータイとダブる撮影機能などは取ってしまって、デジタルラジオやワンセグなどを入れ込んでいくことになったかもしれない。だがそれでは価格面で、本体価格を毎月の使用料に入れ込めるケータイに勝てないだろう。

 そういう意味では、今の日本のレベルでは物足りない機能が多いのは事実だが、コストパフォーマンスで魅力のある商品と言えるのではないだろうか。


□サンコネクションのホームページ
http://www.sunconnection.jp/
□ニュースリリース
http://www.sunconnection.jp/product/direct/index.html#vp200sd
□関連記事
【3月26日】サンコネクション、SDカード対応のポータブルメディアプレーヤー
-2.4型液晶搭載。MP3/MPEG-4再生や録画も可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070326/suncon.htm

(2007年5月23日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



00
00  AV Watchホームページ  00
00

AV Watch編集部av-watch@impress.co.jp
Copyright (c)2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.