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第293回:アップルの音楽編集ソフト「GarageBand '08」を試す
~ 「Magic GarageBand」で楽曲作成がさらに簡単に ~




iLife '08

 先日、音楽・映像を楽しむためのMac用統合ソフトウェアパッケージ「iLife '08」が発売された。

 従来と同様、「iPhoto」、「iMovie」、「iWeb」、「iDVD」そして、音楽編集ソフトの「GarageBand」が入っているが、今回は「Magic GarageBand」という機能を新たに追加するなど、さらに強力に、そして初心者でもわかりやすくという点を徹底している。新GarageBandのバージョンアップ点を中心に紹介する。



■ アイコン操作だけで簡単に楽曲作成が可能


バージョン情報は4.0.0

 先日紹介したSteinbergの「SEQUEL」や、インターネットの「MIXTURE」など、GarageBandを意識したと思えるソフトが次々と登場している中、本家GaregeBandも第4世代へとバージョンアップした。iLife '07にバンドルされていたときの名称は「GaregeBand 3」だったが、今回は「GarageBand '08」に、正式には「GaregeBand '08 バージョン4.0.0」となっているようだ。

 インストールしてみるとわかるが、1GB程度ある付属のAppleLoopsのライブラリは用意されているものの、その中身は従来とは何も変わっていないため、従来版のユーザーにはインストールされずにスキップするようになっている。

 さっそくGarageBandを起動させると、これまで見かけなかった項目がひとつ増えている。Magic GarageBandというもので、これがGarageBand '08の最大の目玉機能であり、これまでも簡単で入門しやすかったGarageBandによるオリジナルの曲作りを、簡単にしてくれるユニークな機能なのだ。

 Magic GarageBandを選択すると幕が閉じた状態のステージのような画面が表示される。幕の下には、「BLUES」、「ROCK」、「JAZZ」、「COUNTRY」、「REGGAE」、「FUNK」、「LATIN」、「ROOTS ROCK」、「SLOW BLUES」と、計9つのジャンルのアイコンが表示されている。これらの中から1つを選択して、再生をすると、まさにという感じの曲が聴こえてくる。再生方法として曲の一部と曲全体とあり、曲の一部を選択すると、サビ部分がループ再生される形となる。


前バージョンがインストールされている場合、AppleLoopsライブラリのインストールはスキップされる 新機能「Magic GarageBand」が追加 ステージのような画面上で、ジャンルを選択する

 その雰囲気から作りたい曲のジャンルを決めたら「オーディション」ボタンをクリックする。すると、ステージの幕が開き、ギター、ベース、ドラム、キーボードといったものが表示される。再度、再生ボタンをクリックすると今聞いた曲が流れてくるのだが、ここで楽器のうちのひとつにマウスカーソルを持っていくと、そこにスポットライトが当たり、さらにクリックすると画面下にはいくつかの楽器が並ぶ。このうちのいずれかを選択すると、ステージ上の楽器が変更されるとともに、流れてくる曲のうちの変更したパートが変わる。


演奏を行なう楽器が並べられ、自動作成された楽曲の再生がスタート 変更したい楽器を選択するとスポットライトが当たる ステージ上の楽器の変更に合わせて、曲のパートも指定した楽器の音色に切り替わる


「なし」を選択すると、そのパートはミュートとなる

 単に音色が変わるというのではなく、弾くフレーズ自体も大きく変わるので、曲の雰囲気も変わってくる。また、楽器選択の際、「なし」を選ぶとその楽器がミュートされる。ここでは、それぞれのパートの音量の調整などはできないため、ハッキリと音を確認するには、別のパートをミュートするといいかもしれない。

 このようにして、楽器をすべて変更していくと、ジャズならジャズ、ロックならロックと同じジャンルであっても、かなり雰囲気の異なる曲に変わってくる。

 5つのパートがあり、それぞれで4~8個程度の選択肢があるので、さすがに無限とまではいかないまでも、1つのジャンルで3,000種類程度の曲が作れるという計算になる。さらに、もうひとつ用意されているのがステージ中央のパート。ここにマウスカーソルを移動してクリックするとMy Insturmentということで、自分が演奏するパートの楽器が表示され、ボーカルを入れたり、ギターを弾いたり、キーボードを弾くことができるのだ。

 たとえばボーカルの場合、オーディオインターフェイスにマイクを接続するとと、先ほど作った曲をBGMにして歌うことができるし、ギターなども同様にオーディオインターフェイスに接続すると、エフェクトがかかった状態で弾くことができる。さらにキーボードなどは、MIDI接続されたキーボードを弾くと演奏することができるのだ。

 ここでMy Insturmentをレコーディングするのではなく、あくまでもモニターして確認するだけなのだが、この初期バージョンにはちょっとバグがあるようだ。本来ならマイクやギターなどの入力をモニターできるはずだと思うが、それがうまくいかず、GarageBand本体に用意されているモニターをオンにするスイッチなどが見当たらない。またMIDI入力も同様であり、うまくMIDI入力すると音が鳴らせるパートと、鳴らせないパートが存在する。単純なバグのようなので、きっと近いうち修正されるだろう。


自分用パート「My Instrument」も用意 MIDIやマイクなど入力用のモニターが見当たらない

 このようにして、とりあえず気に入った雰囲気の曲になったら、「プロジェクトを作成」というボタンをクリックする。すると、通常のGarageBandの画面になるとともに、Magic GarageBandで作成されたデータがトラックに貼り付けられている。My Instrumentのトラックは空の状態なので、ここからレコーディングしていく。もちろん、ほかのトラックを作成して音を重ねていくこともできるし、先ほど作られたデータをここでエディットしていくこともできる。


曲が出来たらプロジェクトを保存 プロジェクトを保存すると、GarageBand上に作成した曲のデータが貼り付けられる



■ マルチテイクレコーディングなど既存機能も大幅強化

 出来上がった曲を聴くと、イントロもあり、Aメロ、サビ、エンディングも存在している。従来のGarageBandではなかなかできない展開であり、現状のGarageBand本体でもそれは同様。

 Magic GarageBandだからこそなし得たワザともいえるのだが、よく見てみるとトラックの一番上には、「Intro」、「Verse 1」、「Bridge」、「Verse 2」、「Ending」といった表記がある。たとえばVerse 1の部分をクリックすると、全トラックのVerse 1に相当する部分を選択することができ、これを別の場所に入れ替えてしまうことも可能だ。

 このトラックをアレンジトラックと呼ぶのだが、これもGarageBand '08の新機能。もちろん、Magic GarageBand経由のデータでなくとも、アレンジトラックを表示させ、ここを区切って名前をつけていくことは可能だ。


イントロやAメロなどのアレンジトラック単位での入替えも可能

 さらにオートメーション関連でも新機能が追加されている。まずオートメーション用としてトラック内にEQおよびエコー、リバーブのパラメータをセットできる。そして、セットしたパラメータに対して、編集ポイントを設定するとともに、EQやエコー、リバーブのかかり具合などを自在に変化させることもできる。


トラック内にEQやエコー、リバーブなどのオートメーションパラメータをセット可能で、このトラック内の編集ポイントごとにEQなどのかかり具合などを調整できる

 これに関連してもうひとつ新機能が追加されている。それが、EQ自体なのだがビジュアルEQというパラメトリックEQで、画面でグラフィカルに表示させながら設定ができる。さらに、スペクトラムアナライザ機能もついているので、これをオンにすると、現在の音の成分表示が可能になる。かなりDAWに近づいてきたといえるだろう。


EQは、画面上にグラフィカルに表示させながら設定できる スペクトラムアナライザ機能も備え、音の成分表示が可能

 DAWという面では、レコーディング機能にも強力な機能が追加された。それはループ録音がされるように設定した上で、複数回録音を繰り返すと上書きされず、すべてのテイクが保存され、後でベストテイクに差し替えることが可能というものだ。このマルチテイクレコーディング機能は、オーディオトラックに対しても、MIDIトラックに対しても有効。これは、かなり便利に活用できるはずだ。


繰り返し録音した際に全てのテイクを保存。ベストテイクを選択できる「マルチテイクレコーディング」機能を搭載

 GarageBand '08では、機能が追加されたが、それは複雑で難しいという方向にいかず、より初心者が使いやすくなり、既存のユーザーにとっても便利になったのは、見事と言える。

 これが刺激になって、SEQUELやMIXTUREもより改善されたり、この手のソフトがいろいろと登場してくれると面白い。今後、競合製品がどういった展開するのか楽しみだ。


□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□ニュースリリース
http://www.apple.com/jp/news/2007/aug/07ilife08.html
□製品情報
http://www.apple.com/jp/ilife/garageband/
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-新GUIで動画をライブラリ表示。YouTube連携も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070808/apple.htm
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(2007年8月20日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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