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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第322回:AVCHD初の縦型、Panasonic「HDC-SD7」
~ 常時携帯に最適なコンパクト機 ~



■ 秋商戦第2部スタート

 夏休みが開けると、すぐに運動会シーズンである。小学校はすでに終わったところもあるかもしれないが、幼稚園はだいたい体育の日の前後であろう。9月末というのは、秋のカメラ商戦も第2部のスタートと言える時期なのである。

 今から買うならハイビジョンだと思うが、さてどれを選ぶのかが難しい。メディアも沢山あるし、画質や保存といったことまで考えると、なかなか選びきれないことだろう。そんな中で、SD時代のカメラと同じぐらいのサイズというのは、一つのポイントになるかもしれない。

 Panasonicの「HDC-SD7」(以下SD7)は、AVCHD規格のハイビジョンカメラでありながらも、DVカメラと同等サイズで縦型を実現した意欲作である。最初に買ったカメラが縦型だったという人は、これでハイビジョンカメラも買いやすくなることだろう。

 9月上旬から発売されているが、店頭予想価格14万円前後のところ、すでにネットでは9万円台まで下がってきている。PanasonicのAVCHD機は4GBのメモリが同梱なので、値頃感も高い。

 運動会ばかりでなく、日常的にビデオカメラを利用したいという人も注目するSD7、その実力を早速テストしてみよう。


■ コスメティックなボディ


パールホワイトでコスメティックな筐体

 SD7にはブラック、ホワイトの2色があるが、今回はホワイトモデルをお借りしている。通常バッテリが黒なので、白だと違和感が出るところだが、SD7は本体内にバッテリを完全に格納するので、デザイン的な違和感は生じない。

 サイズ感としては、従来の縦型DVカメラとほぼ同等。持った感じも従来のビデオカメラよりはやや軽く、バッテリ込みで350g。1080iのハイビジョンカメラとしては世界最小・最軽量なのだが、白だと見た目が軽く感じるぶん、実際に持ったときに予想外に重く感じるかもしれない。


レンズカバーは自動で開閉する

 では光学部から見ていこう。レンズはいつものライカ・ディコマーで、42.9~429mm(35mm換算)の光学10倍ズーム、F1.8~2.8。フィルタ径は37mmで、フィルタ装着の際はレンズカバーを外す必要がある。レンズ下にあるのはリモコン受光部だ。ホールドすると指で隠れてしまうが、実用上問題ない。

 動画と静止画で画角は変わらず、静止画でも16:9で、4:3撮影モードはない。ビデオカメラの静止画は、もう16:9がデフォルトになりつつあるのかもしれない。

撮影モードと画角サンプル(35mm判換算)
撮影モード ワイド端 テレ端
動画
42.9mm

429mm
静止画
42.9mm

429mm

 撮像素子は1/6型3CCDで、総画素数56万画素×3。有効画素数は動画・静止画ともに52万×3となっている。手ぶれ補正は光学式だ。従来機SD1SD3は1/4型だったが、一段と小さくなっている。PanasonicはSD時代から1/6型3CCDでそのサイズ感を売りにしていたので、これ以上小さくなることはないだろう。

 液晶モニタは2.7型30万画素で、周囲にボタン類はない。また液晶内側のボタンで輝度が3段階に変更できる。ただ一番明るくすると表示内容も白飛びするので、そのあたりは使用環境との兼ね合いで使い分けるべきだろう。


液晶モニタとその内部は比較的シンプル 後部から吸気し、本体脇のスリットへ排気する

 液晶の上部にあるスリットは、ファンの排気口のようだ。後部録画ボタン付近から吸気して、ここと液晶内側のスリットから排気する。PanasonicではAVCHD機の初代機SD1からファンを搭載し続けているが、そのあたりの電力効率は今回も変わってないようだ。


アナログ端子は液晶内部 底部には電源コード引き出し用の穴 バッテリとメモリは底部から挿入

 ボタン類は背面に集中している。以前からモードダイヤルと背面ジョイスティックはおなじみだが、今回は動画と静止画記録ボタンを並べて、その間にズームレバーを配置するという、三洋Xactiに似た操作性になっている。


操作ボタンはすべて背面に集中 デジタル系端子は背面

 従来縦型ビデオカメラのズームレバーは、人差し指で操作するよう前方に付けられていたが、多くの人は使いにくいと感じていただろう。人差し指でレバーを引っ張るのは楽だが、向こう側に押すという動作はキツい。一方近年はケータイの普及により、親指で細かい動作ができる人が増えている。その点で、親指の位置に多くの機能を割り当てるというのは、時代の流れなのかもしれない。

 また、この配置により、メーカー側では左手でも操作可能としているが、左手で持つと液晶画面の角度が自由に付けられない。そのアピールにはちょっと無理があるだろう。

 一方グリップ側は、表面にこれもシボ加工というのか、あるいは逆ディンプルと言えばいいのか、細かい突起が付けられている。このカメラにはグリップベルトがないので、滑り止めという意味もあるだろうし、持ったときのさらさら感が違ってくる。


グリップ部には滑り止めの細かい突起が 革製のリストバンドが付属


マイクはステレオマイクになった

 横にある黒い丸は、ホワイトバランスセンサー。フラッシュ脇にある穴が、スピーカーである。メディアとバッテリは、底部から挿入する。バッテリは従来機と同型だ。

 上部にはステレオマイクがあるが、これまでPanasonicのAVCHD機はサラウンドマイクであった。このあたりは機能よりも、手軽さを優先させた結果かもしれない。

 また本機には、ACアダプタを差す端子がない。PCとUSB接続する場合は、一端バッテリを外してAC駆動用の変換アダプタを装着し、ケーブル穴からケーブルを引き出して、ACアダプタと接続しなければならない。大容量バッテリとの接続もこの方法で行なう。


■ 解像感には欠けるが発色は十分

 では早速撮影してみよう。画素ずらしの3CCD機、そして撮像素子が小型化されたことで暗部のS/Nが気になるところだ。確かに光量が少ないところでは、せっかくの3CCDの発色の良さが落ちるのは残念だが、ノイズリダクションが上手く、動画特有のざらつきは気にならない。スペックから想像するよりも、悪くない印象だ。

動画サンプル
モード 解像度 ビットレート 記録時間 サンプル
HG 1,920×1,080ドット 13Mbps/CBR 約40分
ezsm_hg.m2ts (15.5MB)
HN 1,440×1,080ドット 9Mbps/VBR 約60分
ezsm_hn.m2ts (11.1MB)
HE 1,440×1,080ドット 6Mbps/VBR 約90分
ezsm_he.m2ts (7.3MB)
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


暗部では色味、コントラストともに浅いが、S/Nは悪くない

 従来機から気になっていたのが、カラーバランスである。3CCDのメリットは正確な発色にあるわけだが、本機はどうも液晶モニタが若干黄色く見えるため、正確な発色がわからないのが困った。実際に撮影したものをテレビモニタで見れば、ホワイトバランスがオートでも正常だったので安心だが、撮影時にあまり楽しくないのが難点である。

 光量が十分なところでは、3CCDの強みが出て、鮮烈な発色が楽しめる。花の色など濃い色も、液晶モニタ上ではクロマが潰れてしまっていたが、テレビで確認したところきちんと撮影できていた。

 全体のトーンとしては、やや緑が強い。緑は解像感に大きな影響を与えるため、若干緑の発色を強くしているのかもしれない。画質モードとしては1,920×1,080ドットを含む3段階だが、どうも解像感は構図に左右されるようだ。


強い彩度でも綺麗に撮れる まだ若干緑が強い印象 安定した絵柄のほうがざわついた感じがする

 例えば深度を深くとった平坦な絵柄では問題ないが、深度を浅く立体的な構図で撮った場合、ビットレートがボケの部分に取られるのか、全体的にざわついた感じになる。また手持ち撮影など、ある程度絵に動きがある場合は良好だが、逆にFIXで動きの少ないものを撮ったときに、解像感の低さが気になる。

 このあたりは圧縮アルゴリズムのチューニングが、動きの多いものに対して最適化されているようだ。一方で三脚を使ってじっくり花鳥風月を撮るような用途には、あまり向いていない。そういう意味では、そのスタイルからユーザー層をきちんと割り出したチューニングになっているということだろう。

 今回のモデルから追加された機能として、「コントラスト視覚補正」がある。高コントラストのシーンを撮影するときは、これまで明るいところが飛ぶことを承知で逆光補正を使うしかなかったわけだが、コントラスト視覚補正では敢えてコントラストを下げることで、視覚として捉えているバランスで撮影することができる。


コントラスト視覚補正 OFF コントラスト視覚補正 ON

 特に風景を入れ込んだ人物撮影などでは、全体がナチュラルなコントラストで撮れるので、観光地などでの撮影で便利だろう。ただ元々ライカ・ディコマーというのは、高コントラストが売りで採用されたレンズだったわけで、なんだか機能を相殺しているような感じもしないでもない。

 もう一つの新機能、「プリREC機能」は、常時バッファに3秒間ループ録画させておき、録画ボタンを押したときにその3秒間も含めて記録するという機能だ。つまり、録画ボタンを押した瞬間の3秒前から録画が開始されることで、撮り逃しを防ぐ機能である。

 録画開始点よりも前が撮れるという機能は、ソニーのデジタルカメラ「DSC-M1」にも同様の機能があった。またソニーの現行機種では「なめらかスロー録画」の時にのみ、同様の機能がある。プロ機では、IkegamiのHDDカメラがいち早く報道用として実践投入していた機能だ。コンシューマのビデオカメラでこれだけ真正面に機能を入れ込んだのは、初めてだろう。

 これは運動会用の機能として便利。競技の入場など、アナウンスや音楽が始まって回し始めたら音の頭が切れてしまうわけだが、3秒余裕があれば、助かることも多い。ただ、事前にこの機能をセットして構えておかなければならないので、用意の周到さが要求される。元々うっかりな人を助けてくれる機能ではないところは、要注意だ。

動画サンプル

ez_samp.m2t (209MB)

ez_room.m2t (32.4MB)
屋外での動画サンプル 室内サンプル
編集部注:動画サンプルは、Canopus HQ Codecに変換後、EDIUS Neoで編集し、HDV形式(.m2t)で出力したファイルです。再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。



■ 弱点となった静止画

 これまでも3CCD画素ずらしの静止画は、単板式に比べると苦戦してきたわけだが、今回のSD7ではよりそこが弱点になってしまった感じがある。動画ならば動いて過ぎ去ってしまうが、静止画はじっくり見られてしまうので、解像感やS/Nまで含め、絵作りに対してシビアなものが要求される。この画質では、その点での不満を感じる人も多いだろう。


ディテールのキレが悪い静止画 光量は十分なはずだが、ざらついた感じが残る

 以前から動画撮影に比べて静止画では、少し飛ばし気味に撮れるクセがあったが、その傾向はそのままだ。ただ新機能の「コントラスト視覚補正」は静止画でも使えるので、これを使うことで多少は無理な感じが軽減される。


コントラスト視覚補正 OFF コントラスト視覚補正 ON

 動画撮影と同時に同解像度の静止画がいくらでも撮れるのだが、静止画の記録に8秒弱かかる。その間動画撮影が停止できない点は、以前と同じだ。一方静止画のみの撮影では保存も早く、軽快に撮れるのだが、いかんせん画質が付いてこないのが残念だ。

 オートフォーカスに関しては、背景の明るい部分に引っ張られて手前の被写体に合わないことも多い。マニュアルフォーカスも可能で、拡大表示によるフォーカスアシストもあるのだが、あまり使いやすくはない。同程度の機能でも、Everioのような輪郭を強調するタイプのアシスト機能のほうが使いやすかった。

 マニュアル撮影はシャッター優先と、シャッタースピードを固定した上で絞りを調整するフルマニュアル撮影が可能だ。フルマニュアルからシャッター優先には戻ることができるが、シャッター優先から露出オートに戻すには、一端フルオートにするしかないのは、本気でなんとかならないだろうか。基本はフルオートで撮るカメラと言えばそれまでかもしれないが、フルオートにするとホワイトバランスまでオートに戻ってしまうので、いちいちまた設定し直すのが面倒なのである。


■ 揃ってきた保存・再生ソリューション

 ちょっと前までは、SDカードに撮った動画をどうやって保存したり再生するかというのがネックになっていたが、総合家電メーカーの強みを生かしてそのあたりはあっという間にクリアしてきたところはさすがだ。

 まずテレビでは、一部のVIERAにSDカードスロットを付けて動画再生に対応したほか、HDMIケーブルを繋いでVIERA Linkでコントロールできる。いちいちカメラ操作をしなくていいのは楽だ。また昨年から発売されているBlu-ray DIGAでも、すでにAVCHD対応となっている。

 手軽にメディアに記録という点では、DVDマルチドライブ「LF-P968C」とカメラを直結して、AVCHDフォーマットのまま書き出せるようになった。本体には専用のボタンも付いている。

 ビクターのDVDライター「CU-VD40」と似たような発想だが、ノンPCでメディアへのバックアップができるようになった点は評価したい。また価格もLF-P968Cは実売1万8千円程度と、かなり安価だ。

 LF-P968Cは単なる外付けDVDドライブではあるのだが、再生時にはSD7を経由して、HDMIでテレビ出力できるといった機能も備えている。再生時もばらばらと機材やらケーブルやらが散らかる感じがあるが、それでも既存機材に少しプラスするだけで保存・再生の環境が確保できる点は評価できる。


バージョンが上がったHD Writer。だが編集機能は相変わらず簡易編集にとどまっている

 PC用ソフトは以前から付属するHD Writerも、バージョン2.0になった。すでにアップデートプログラムも出ており、MPEG-2への変換周りが改善されているようだ。

 ただ編集機能としては元々あまり高くないので、きちんと編集したい人は別途何らかのソフトウェアを購入する必要がある。Macへの対応は現時点ではされておらず、iMovieもAVCHDの1,920×1,080サイズには正式に対応していないので、Macユーザーにはしばらく厳しい状況が続きそうだ。


■ 総論

 52万画素の画素ずらしということで、元々解像感にはあまり期待していなかったが、動画に関してはCCDが小型化された影響は軽微なようだ。3CCDならではの確かな発色が楽しめるほか、ホワイトバランスの悪さに関しても、以前よりは強烈な緑っぽさがなくなり、若干影響が残っている程度にまで軽減された。このあたりが、別途ホワイトバランスセンサーを搭載した成果かもしれない。

 残念なのは静止画だ。以前のSD1、SD3もそれほど良くはなかったが、今回は解像感とS/Nの面で大幅に後退している感じがある。メモやWeb掲載用と割り切るならともかく、子供の成長記録用途としては、ちょっと満足できない画質だろう。世界最小・最軽量というハンドリングの良さに、静止画機能までプラスしたのは良いのだが、小型化による影響が静止画に出てしまった印象が残る。

 SD時代には、3CCDと言えば高級機の代名詞であったが、それは各CCDがSDサイズに対して十分な画素数を持っていたからである。ハイビジョン時代になってからは、3CCDでも画素ずらしでは、もはやテクノロジー的に行き詰まっているような気がする。もちろんフルHD画素で3板式なら言うことはないが、コンシューマ機ではまだまだ先の話だろう。

 もっともきっちり高画質で撮るよりも、日常が沢山残ることのほうが重要だと考える人もいるだろう。手ぶれ補正も光学式だし、設定も少ない。さっとポーチから取り出して撮るという、日常の子供撮りなどの用途には十分楽しめるカメラに仕上がっている。

 ケータイの動画で十分だと考えるお母さん層も多いのだが、そういう人たちにこそぜひ使って貰って、まずはハイビジョンの第一歩を踏み出す。そういう用途にマッチするカメラだ。


□松下電器のホームページ
http://panasonic.co.jp/
□ニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn070801-1/jn070801-1.html?ref=news
□製品情報
http://panasonic.jp/dvc/sd7/index.html
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~ 逆に言えば、それだけなの? ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070509/zooma305.htm

(2007年9月19日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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