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第299回:FM音源も追加。統合型ソフトシンセ「Reason 4.0」
~ 新音源「Thor」を搭載。シーケンサの機能拡充向上など ~



Reason 4.0

 PropellerheadのReasonの新バージョン「Reason 4.0」が、10月10日にMI7 Japanより発売された。日本での出荷本数がかなり多いためか、ついに日本語化されたほか、新音源が追加されたり、MIDIシーケンス機能が大幅に向上するなど、3.0から4.0への変化は、2.5から3.0への変化よりもかなり大きくなっている。

 実際どんな音源へと進化したのか、主なバージョンアップ・ポイントを中心に見ていこう。



■ 日本語表示やVistaに対応

 約2年に一度のバージョンアップを繰り返しながら、PropellerheadのReasonは4.0へと進化した。2001年に最初のReasonが登場したときは、その斬新なアイディアに驚いたものだが、最新バージョンでもルック&フィールは初期バージョンと変わらない。


バージョンアップしても、基本的なインターフェイスに変更はない

 実際、2.0、2.5、3.0という進化過程においてReasonはユーザーインターフェイスはまったく変えず、音源モジュールやエフェクト、またそれを統合するためのCombinatorを追加するという形で進化してきたが、それは4.0への進化でも同様だ。もちろん、これまで単純にモジュールを増やしてきただけでなく、内部的な改良やシーケンサ部分での改良はいろいろと行なわれてきたわけではあるが……。

 対応OSはReason 3.0が対応していたWindows 2000/XP、Mac OS X 10.4(PowerPC/Intel)に加え、Windows Vistaにも対応。実際Vistaで動かしてみたが、まったく問題なくスムーズに動作する。

 また日本語対応ということで、Reasonのカッコイイ画面デザインが崩れるのでは……と心配したが、日本語化されたのは、メニュー部分とシーケンサの一部だけなので、デザイン面ではほとんど気にならない。また、必要あれば従来のような英語画面にすることもできるので、心配することはないだろう。


新たに日本語インターフェイスに対応。設定変更で英語に戻すこともできる



■ FM対応の新音源「Thor」を追加

新音源「Thor」を搭載

 さて、今回のバージョンアップでは4つの大きな新機能があるが、一番の目玉機能は新音源「Thor(トール)」だ。これまであったSubTractorをはじめ、ReDrum、NN-XT、Malstromなどの音源はいずれも基本的に1つの方式に則ったシンセサイザであったが、このThorは6つの方式のシンセサイザを組み合わせ、統合させたなんとも複雑な音源だ。

 とりあえずは、膨大なパッチライブラリがあるので、それを使ってみるといいが、やはりシンセ好きなら使いこなしてみたいところだ。かなり複雑な組み合わせが可能だが、信号の流れを構造的に見てみると、それほど難しくはない。


3セクションそれぞれに6種類のオシレータを組み込む

 まず、一番左側にオシレータのセクションが3つあり、Osc1~Osc3の3つのそれぞれに、「アナログ」、「ウェーブテーブル」、「フェーズモジュレーション」、「FMペア」、「マルチオシレータ」、「ノイズ」の6つからひとつを選択して組み込んでいく。いずれもとってもシンプルなオシレータなので、それほど説明するまでもないが、個人的に待っていたのはFM音源。

 「Malstromのような特殊なシンセサイザを備えながら、どうしてFM音源がないんだ」とずっと思っていたが、ようやくこのThorによってFM音源が利用可能になった。ここで組み込むオシレータとしてのFM音源はFMペアという名前からも分かるとおり、オペレータが2つ、つまりキャリアとモジュレータという2つの組み合わせとなっている比較的単純なもの。ちなみに、パラメータとしてはキャリア、モジュレータそれぞれ1~32までの32段階で出力を調整でき、FM変調の割合は0~127の128段階での調整となっている。

 しかしFM音源の代表シンセである往年の名機、YAMAHAのDX7は6オペレータあったので、このままではそこに至らない。やはりユーザーとしてはDX7を再現したいところだが、実は後述するモジュレーションバスルーティングセクション機能によって、FMペアを2つ直列に繋ぎFM変調することが可能となっていて、これにより直列4つ、さらにはDX7にもなかった直列6つの組み合わせも可能だ。また、このモジュレーションバスルーティングセクションにより、ウェーブテーブルをキャリア、フェーズモジュレーションをモジュレータにしたFM音源を構成できるなど、その可能性は大きく広がる。

 次にフィルターセクションでは「ローパスフィルター」、「タイプ可変フィルター」、「コムフィルター」、「フォルマント」の4タイプから選択可能で、オシレータから流れる形で2つセットできるほか、最終段にも1つセットできるようになっている。そのほかはLFOやエンベロープといったものが並んでいるのでシンセサイザを理解している方であれば、だいたいの使い方は理解できるはずだ。ただし、設定要素がかなり多いだけに、その音作りはかなり偶発的といえるかもしれない。まずはプリセット音色を呼び出してそれをエディットしていくというのが現実的な使い方かもしれない。

 さらに、先ほどのモジュレーションバスルーティングセクションはFM変調のためだけでなく、ピッチが変更されるとレゾナンスが変わる、EGをいじるとLFOが変わるなどモジュレーションのパッチングが可能となるのだ。何をどう組み合わせるかによって、かなり音作りの範囲は広がる。

 さらに一番下にはステップシーケンサも搭載されている。これによりThor単独で16ステップのシーケンスパターンまで作ることができる。


フィルターは4タイプから選択 モジュレーションのパッチングが可能な「モジュレーションバスルーティングセクション」も用意 ステップシーケンサも搭載



■ グルーブ感を演出するユニークな「ReGroove Mixer」も搭載

 Reason 4.0に追加された、2つ目の大きな新機能としてあげられるのが「RPG-8 モノフォニックアルペジエーター」というアルペジエータだ。いわゆるアルペジエータにプログラミングできる機能を追加したといった感じのもので、音源の前にRPG-8を接続してMIDIキーボードで和音を弾くとアルペジオになって演奏される。もちろん、シーケンサからの信号に対して掛けることも可能だ。

 そのプログラミングできる機能というのは、PATTERNボタンを押すと、ちょうどステップシーケンサのように16のボタンが赤く点灯する。これを使って16ステップのどこを鳴らすのかアルペジオパターンを作ることができるのだ。このステップはテンポ同期させることも、独立してスピードを設定することも可能で、テンポ同期させた場合、16分なのか8分なのかといった設定も可能になっている。

 なおこの状態で録音すると、当然シーケンサ上にはアルペジエータを掛ける手前の状態のものが録音されることになる。


アルペジエータも追加 アルペジオパターンのプログラミングが可能


グルーブ感を演出するというユニークなミキサー「ReGroove Mixer」

 3つ目の大きな新機能は、「ReGroove Mixer」というものだ。名称も画面もいわゆるミキサーぽいが、実はこれ音量をいじるミキサーではなく、リアルタイムにグルーブ感を演出するという非常にユニークなもの。要は、シーケンサに記録されている演奏データに対してリアルタイムにグルーブクォンタイズをかけるといった感じのものだ。

 しかも、このグルーブクォンタイズ、単純にノートのタイミングに対してだけでなく、ベロシティーやノートの長さも同時にかけることで、異なるグルーヴ感もった演奏データに簡単に仕立て上げることができる。細かな設定については、ツールウィンドウのグルーブ設定で行なう。

 設定の方法は簡単。シーケンサ上のトラックにおいて、ReGroove Mixerのチャンネルを指定し、ReGroove Mixer側では、グルーブの度合いをミキサーのボリュームを動かす感覚で設定するだけだ。このReGroove MixerにはA1~A8、B1~B8、C1~C8、D1~D8という計32のチャンネルがあり、それぞれ別のグルーブ設定ができるため、かなりのバリエーションを持つことができる。

 またライブラリとしてすぐに使えるReGrooveパッチも複数用意されているので、これらを使うことでより効率的に活用ができる。なお記録したノートクリップやREXファイルから簡単にグルーヴを抽出し、オリジナルのReGrooveパッチを保存することもできる。


ツールウィンドウで細部の調整が可能 シーケンサ上のトラックにおいて、ReGroove Mixerのチャンネルを指定



■ シーケンサ機能も大幅に改善

 そして4つ目は、これまでも何度か登場したシーケンサ部分だ。Reasonのシーケンサ機能は非常に単純なもので、CubaseやLogic、SONARといったDAWのMIDI機能と比較するとかなり見劣りする簡易的なMIDIシーケンサと呼ばざるを得ないものだった。しかし、今回のReason 4.0になり、その点が大きく改善され、DAW並みとまではいかないものの、とりあえずこれだけあれば十分というものに仕上がった。

 まず注目したいのがトラック内のレーン表示が可能になったことだ。このレーンは複数のテイクを保存するのにも利用できるほか、ボリュームやコントロールチェンジなどオートメーションデータなどを個別に表示させることも可能だ。また、このレーンのコントロールチェンジ情報などはマウスで細かくエディットしていくことも可能。ここまでできるようになれば、かなりのMIDIシーケンス機能といっていいだろう。

 さらに、Transportトラックというものが一番上に追加されたのも大きなポイントだ。そう、ここでは、テンポ情報や拍子情報などを設定することが可能だ。つまり、これでようやく途中でテンポや拍子が変わる曲も扱えるようになったわけだ。


シーケンサ機能では、トラック内のレーン表示に対応 ボリューム、コントロールチェンジなどのオートメーションデータを個別に表示できる


音源やエフェクトの追加などが容易に行なえるツールウィンドウを追加

 そのほかにもReason 4.0になって強化された点はいろいろある。たとえば、起動させてすぐに目につくのが、ReGroove Mixerのところでもちょっと登場したツールウィンドウだ。

 Reasonのメインウィンドウとは別に、このツールウィンドウが単独で表示されるのだが(消すことも可能)、結構便利に使える。たとえば、シンセやエフェクトを組み込む場合、通常はメニューで選択するが、音源やエフェクトが増えてきただけに見にくいのも事実。

 しかし、このツールウィンドウを使えば、アイコン表示されているだけに、すぐに見つかって組み込むことができる。またシーケンサのデータに対して、クォンタイズをかけたり、ピッチ変更をするといったことも、このツールウィンドウで行なえるのだ。

 このように、いろいろと強化された今回のReason 4.0。ぜひ、これからじっくりと使い込んでみたいと思っている。

□Propellerheadのホームページ
http://www.propellerheads.jp/
□製品情報
http://www.propellerheads.jp/products/reason4/
□関連記事
【2005年2月28日】【DAL】統合型ソフトシンセ「Reason 3.0」を試す
~ 2年半ぶりのバージョンアップで完成度が向上 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050228/dal181.htm

(2007年10月15日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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