【バックナンバーインデックス】



第302回: 「2007楽器フェア」レポート
~ 各社の最新機器/ソフト情報をチェック ~



 11月1日~4日、パシフィコ横浜で2年に1回の楽器の祭典「2007楽器フェア」が開催された。

 これが目玉、というような驚くものは無かったのが、この楽器フェアに合わせて各楽器メーカーとも、新製品を数多く発表した。会場で見つけた新製品を紹介していこう。

2007楽器フェア



■ SONAR 7を中心に展開する「Roland」ブース

 今回、楽器フェアの会場を見回して、デジタル系で最も精力的に新製品を出してきていたのはRolandだった。ブースの前面に打ち出してきていたのが、楽器フェアが初お披露目となる「SONAR 7」。発売は12月になるとのことだが、従来どおり上位バージョンの「SONAR 7 Producer Edition」、下位バージョンの「SONAR 7 Studio Edition」の2製品という展開で、UA-101、FA-66、UA-25とセットとなったPOWER STUDIO製品もリリースされる。

Rolandブース 初お披露目の「SONAR 7」

 SONAR 7 Producer Editionの主な新機能としては、ステップシーケンサの搭載、エフェクトのサイド・チェイン対応、V-Vocalの機能強化、MIDIエディット機能の強化など……。またマスタリング用の強力なエフェクト類も追加されている。ほかのDAWと同様、ある意味、成熟期に入っているだけに、それほど斬新な機能が追加されたという感じではないが、やはり充実した機能になっていることは確か。このSONAR 7については製品版がリリースされ次第レポートする予定だ。

 Cakewalk製品ではエントリー版となる「MUSIC CREATOR 4」も11月9日に発売される。こちらは実売価格が7,000円前後と非常に安価ながら、SONARとしての一通りの機能を装備し、最大の特徴は3,000種類以上のループ素材集がバンドルされている。SONAR本体にもついていないループ素材がバンドルされているというのは、かなりのお得感。先日フックアップからリリースされたSony Creative Softwareの「ACID Music Studio 7」とバッティングしていきそうだ。

 さらに参考出品となっていたのは、海外で「Pyro Audio Creator」という名前でリリースされている波形編集ソフト。SONARのオーディオエンジンを使い24bit/192kHzまでの編集ができ、CDを焼いたり、フォーマット変換ができるという単機能ソフトだ。まだ国内での製品名、価格などは決まっていないが3月ごろをメドにリリースしたいとのことだ。

「MUSIC CREATOR 4」 「Pyro Audio Creator」は2008年3月頃発売予定

 業務用のシステムとしては、カテゴリー5のEthernetケーブルを用いてデジタルオーディオ信号を伝送する「Digital Snake」の新製品として「V-Mixer M-400」が発表された。12月発売で101万2,200円というミキサーコンソール。従来からあるステージ・ユニット「S-1608」を2台と100mのカテゴリー5ケーブル2本をセットにしたV-Mixingのスタンダード・システム(144万9,000円)などとともに発売される。

業務用デジタルオーディオ伝送システム「V-Mixer M-400」 既存モデル「S-1608」

 この伝送システムのことを「REAC」(Roland Ethernet Audio Communication)と呼んでおり、24bit/96kHzのデジタルオーディオを1本のケーブルで40ch分伝送できる。M-400の場合、2系統のREACを接続できるが、最大で58チャンネル分の入力に対応するという。またスタンダード・システムの場合は42chの入力となる。

 さらにREACは近々公開されるPC用のドライバを用いれば、PCとの連携も可能になる。具体的にはSONARでサポートされ、SONARからは40ch分の入力ポートが見える形となる。ちなみに、接続はPCのLANコネクタをつなぐが、通常のLANとの共有はできず、このドライバを組み込んだ際は、あくまでもREAC専用となる。

 そのほか簡単デジタルレコーダ「CD-2」の後継、「CD-2e」も発表された。これはR-09にCDライティング機能、ステレオスピーカー、リモコン機能を搭載し、より手軽に使えるようにした、といった製品。主にピアノやギターの練習の録音などでの利用を想定し、11月中旬に実売60,000円前後での発売する。

 さらに先日発売されたMac OS X 10.5 Leopard用のオーディオインターフェイスのドライバもいち早く公開されていた。相変わらずドライバの対応が非常に早いことに感心する。

デジタルレコーダの新モデル「CD-2e」 Mac OS X 10.5用ドライバも公開された



■ YAMAHAは「Cubase 4.1」を紹介。KORGはコンパクトシンセなどを展示

Cubase 4.1

 さて、楽器フェアで最大のブース面積を誇るYAMAHAはというと、デジタル関連ではとくに新しいものは出ていなかった。ただ新製品ではないものの、先日Web上で公開されたCubase 4のアップデート版、「Cubase 4.1」が大きく展示されていた。

 Cubase 4.1は、マイナーバージョンアップではあるが、結構大きく機能強化されている。まずWindows Vistaにようやく正式対応したのとともに、プリリリースとしながらもWindows Vista 64bit版にネイティブ対応した。VST Bridge for Intel Mac & Windows Vista(64bit)という新機能により、MacではPowerPCでのみ動作していたプラグインをIntel Macでも動作させることができるようになった。一方Windowsでは32bitでのみ動作するプラグインをWindows 64bitシステム上で動作させることができるなど、使用環境に柔軟性が出た。

 またSONAR 7と同様のエフェクトのサイド・チェイン機能にも対応したり、ミキサーのルーティングの自由度が増したほか、エフェクトが追加されたりQuickTime 7に対応するなど、さまざまな機能が追加された。見た目こそ変化はないものの、無料バージョンアップながらかなりの機能強化となっている。

 その隣のKORGでは、間もなく発売となる「KAOSS Pad -mini-KP」の姉妹製品となる「KAOSSILATOR」(24,780円)が目をひく。これはKAOSS Pad -mini-KPと同様、単3電池4本で駆動する手のひらサイズ、106×129×29mm(幅×奥行き×高さ)、重量154gというコンパクトな機材。

 KAOSS Padがエフェクタであるのに対し、こちらはシンセサイザとなっており、指でパッドを触るだけでさまざまなフレーズが演奏できるというユニークなものだ。アルペジエーター機能やループレコーディング機能なども備わっており、楽器が弾けない人でも手軽に演奏できるというツールである。

 KORG製品ではないが、KORGが輸入しているLine6製品としてはUSBオーディオインターフェイスの「TONEPORT UX8」および、「TONRPORT GX」が発表された。TONEPORT UX8は24bit/96kHzに対応したオーディオインターフェイスで、ギター/ベースの入力が2つのほか、マイク入力が8つ、アンバランスのライン入力が8つ備わっているほか、バランスのライン出力が8つ、そしてS/PIDIFの入出力も備えたというもの。価格的にはちょっと高めの78,750円。アンプシミュレータ機能などを備えた「GEAR BOX Silver」がバンドルされる。

 一方のTONEPORG GXは10,500円のコンパクトなオーディオインターフェイス。ギター、ベース、マイクなどが接続できる標準ジャックの入力が1つとステレオミニジャックのヘッドホン出力が搭載されている。

KORGの「KAOSSILATOR」 TONEPORT UX8 TONEPORT GX



■ TASCAMのUSBオーディオ「US-1641」にCubase LE 4がバンドル

 今回の会場で個人的にもっとも驚いた製品が、TASCAMのUSB 2.0対応のオーディオインターフェイス「US-1641」だ。1Uのラックマウントタイプで、16in/4outというスペック。

 先日プレスリリースを見ていたので、発売されたことは知っていた。イメージ的には3年遅れで登場したEDIROLの「UA-1000」の対抗製品といった程度で捉えていたのだが、実際に話を聞くとちょっと違う。

 価格はオープンプライスとなっていたが、実売39,800円前後とこのクラスとしてはかなり安い設定。しかもビックリだったのはそのバンドルソフトだ。Steinbergの「Cubase LE 4」がバンドルされているのだ。

 SteinbergはYAMAHA傘下となったことから、バンドル版としてはYAMAHA製品専用の「Cubase AI4」がリリースされ、その他のメーカーへOEM供給されていたCubase LEは「Cubase SX1」ベースの古いアーキテクチャのままとなっていた。そしてこのLEのまま消え行く運命なのだろう……と思っていたのだが、Cubase 4ベースのCubase LE 4が登場したのだ。

TASCAMの「US-1641」 Cubase 4ベースの「Cubase LE 4」がバンドル

 YAMAHAに確認をしたところ、Cubase LE 4が市場に出たのはUS-1641が初とのこと。ただ、OEM版としてSteinbergからは夏に出荷されているため、今後、他メーカーからも順次Cubase LE 4がリリースされるだろう、とのこと。ちなみに、YAMAHA製品にもCubase LEがバンドルされているものもあるが、こちらは在庫が無くなり次第、Cubase AI4に切り替えられる模様だ。

 一方、TASCAMブースで、楽器フェア開催日の11月1日に発表されたのがポータブルMTRの「DP-02」と「DP-02CF」だ。

 DP-02は2ch同時録音、8ch同時再生可能なHDD内蔵のMTRで、各チャンネルにフェーダー、パン、エフェクトセンド、EQのツマミが独立して装備されたアナログ感覚のMTR。スロットローディング式のCD-RWドライブが標準されており、レコーディングからマスタリング、CD作成までこれ1台で行なえる。

 またPCとUSB接続することで、データのバックアップやインポート、エクスポートも可能となる。オープンプライスで店頭予想価格は60,000円前後だ。

 もうひとつのDP-02CFは、DP-02よりやや小型で実売40,000円前後というものだが、こちらはHDD、CD-RWドライブがなく、その代わりにコンパクトフラッシュを利用する。スペック的にはほぼ同様となっている。

ポータブルMTR「DP-02」 CFを利用する「DP-02CF」



■ marantzが業務用ポータブルレコーダを参考展示

 次に紹介するのはAKAIALESISNumarkIONの4ブランドを扱うプロ・オーディオ・ジャパンのブース。

 各メーカーともいろいろな新製品を発表していたが、まずAKAIが出していたのはUSB/MIDIコントローラ機能搭載のキーボード「MPK49」。

 KORGの「KONTROL49」にかなり近い感じの製品だが、12個のパッド、8つのアサイナブルフェーダー・8つのアサイナブルノブ、8つのスイッチ、さらにLCDなども備えている。年内発売の予定でオープンプライスながら実売が45,000円前後となる。

 ALESIS製品として目をひいたのが「iMULTIMIX 8 USB」というUSBミキサー。最大の特徴はiPodドックを装備しているということ。基本的には8chのミキサーで、マルチエフェクターなどを装備しており、PCと接続すると8in/2outのオーディオインターフェイスとして機能する。

 そして録音機能を備えたiPodの場合、このミキサーでミキシングした2chのサウンドをiPodでレコーディングすることができる。またレコーディング時のクリッピングを回避するリミッターも内蔵されている。10月末に発売されたもので、49,800円となっている。

AKAIの「MPK49」 ALESIS製のiPodドックを備えるUSBミキサー「iMULTIMIX 8USB」

 さらにNumarkもiPod対応のDJミキサー「iDJ2」をリリース。2つのジョグホイールと大型の液晶画面を使ってミキシングするというもの。発売は11月末から12月ごろを予定しており、99,540円となる。

 IONからは、USB接続してPCで古い素材を録音しようというレコードプレーヤー「iPTUSB」と倍速ダビング可能なダブルデッキ、「TAPE2PC」のそれぞれが登場。価格は17,800円、19,800円となっている。

Numarkの「iDJ2」 IONの「iPTUSB」 TAPE2PC

marantzの業務用ポータブルレコーダ「PMD620」

 D&Mの1ブランドとなったmarantzは、参考出品という形ながら、ポータブルレコーダの「PMD620」を発表した。

 見た感じでは、かなりEDIROLの「R-09」を意識した作りで、R-09と同様に単3電池2本でSD/SDHCに最高で24bit/48kHzで録音するというスペック。またMP3も最高192kbpsでの録音が可能となっている。表示部に有機ELディスプレイを搭載しているというのもR-09と同様で、連続5時間の録音ができるという。

 Marantzとしては業務用であり、民生用のR-09などとは次元が違うと主張しており、電源オン後にすぐ録音でき、音質的にもかなり上であるという。可能であれば、製品リリース後、実際どの程度の性能なのかチェックしてみたい。

 なお、このPMD620、すでに海外では発表されており、400ドル前後の価格で出荷される模様だが、国内では参考出品の段階で発売日程も価格も決まっていない。少なくても年内に発売されることはないようだ。



■ HookUpでは、USB接続の真空管アンプを展示

 HookUpブースはギター関連製品が中心となっていたが、目をひいたのが到着したばかりというエレクトリックピアノの「Zarenbourg」。またその上には新音源の「Blofeld」も置かれており、近々発売になるという。

HookUpに展示されたエレピ「Zarenbourg」 近日発売の新音源「Blofeld」

 しかし、それらよりもユニークだったのが、USB接続の真空管アンプだ。これは長野県のメーカーに依頼して作ったHookUpオリジナル製品。VitalAudioのロゴをあしらっているが、まだ名称は未定で、11月末をメドに60,000円前後で売り出すという。

 見た目どおり、3本の真空管で駆動するアンプで、USBからのオーディオ出力を鳴らすとともにステレオミニジャック、さらにはRCAピンでのライン入力も備わっているので、iPodなどで利用するアンプとしても使える。フロントにあるスイッチで入力を切り替え、3つのノブでボリュームとEQを操作する仕様となっている。

USB接続の真空管アンプ。11月末に60,000円前後で発売予定

 KAWAIブースでは、楽譜作成ソフト「スコアメーカーFX2」の新バージョンが発表された。ラインナップは3種類で上からスコアメーカーFX2 Pro(63,000円)、スコアメーカーFX2(39,900円)、スコアメーカーFX2 Lite(15,750円)。12年の歴史を持つソフトだけにかなりの認識精度であるが、今回のバージョンアップで、さらに認識エンジンを強化している。また歌詞入力機能も強化されているとのことだ。

 以前紹介したバンドプロデューサーは製品としてのバージョンアップはされていないが、これまで2回のアップデートをしており、耳コピ機能はより強化されているという。

スコアメーカーFX2の新バージョンが登場



■ 演奏家権利処理合同機構が遠隔地セッションを開催

 メーカーのブース以外で、かなり目立っていたのが演奏家権利処理合同機構(Music People's Nest:MPN)のブースだ。ここでdigitalmusician.netのフリーウェアのレコーダを使ってのデモが行なわれていたのだが、これがかなり面白い。

 以前からVSTプラグインタイプの「digital musician link」というものがあり、これを利用することで遠隔地とリアルタイムでのセッションができた。先日そのdigital musician linkのスタンドアロン版が登場し、それ自体がレコーディング機能も持ったことで、より手軽に遠隔地とのセッション、そしてそのレコーディングが可能となった。

 Music People's Nestでは、会場である横浜と沖縄をネットで接続し、そのセッションが行なわれた。しかも、会場で演奏、オペレーションしたのはYMOのプログラマであったことで知られるMPNの副代表幹事で日本シンセサイザープログラマー協会(JSPA)の会長でもある松武秀樹氏と、同じくJSPAの副理事長である氏家克典氏。

 沖縄と非常に高音質でのセッションができているのは面白かった。このdigital musician linkはReWire機能も備えているのでDAWやReasonなどとも連携可能になっているが、レイテンシーはどうなっているのか、また音質的には実際どうなのかについては、近いうちに詳しく紹介する予定だ。

JSPAの松武秀樹会長 JSPA副理事長の氏家克典氏

 今回の楽器フェアでは、会場で会った複数の知人が口にしていたのは、「今回はあまり目立ったものがなかったけれど、最高だったのはカエル」。やや番外編的ではあるが、最後にそのカエルについて紹介しておこう。

 これは有限会社トゥロッシュという埼玉県の会社が開発した1号製品、「ケロミン」。

 カエルのパペッドの形をした楽器で、手でカエルの口の開き方を変えることで、音程が変わる楽器。カエルの腕にある赤いボタンを押すと鳴り、その強さによってベロシティーが変換する。また、そのボタンの横にはDIPスイッチが並んでおり、シンセサイザ音と変えるの声など計12種類が選択できるようになっている。また、このDIPスイッチの切り替えで音域を変化させることもできる。

 音はカエルのお腹のスピーカーから鳴るが、腕部分にDIN端子があり、これに専用ケーブルを使うことで、オーディオ出力させたり、MIDI出力させることも可能とのことだ。価格は49,875円で基本的にネット販売になるとのことだ。

カエルの「ケロミン」 パペッド型の楽器で、口の開き具合で音程が変わる DIPスイッチを備え、音域の調整も可能


□2007楽器フェアのホームページ
http://musicfair.jp/
□関連記事
【2005年11月7日】楽器の国内最大イベント「楽器フェア」レポート
~ MIDI機能を強化したProTools7などが登場 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051107/dal211.htm

(2007年11月5日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

AV Watch編集部av-watch@impress.co.jp
Copyright (c) 2007 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.