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第329回:リムーバブルHDD搭載レコーダ「日立 IV-R1000」
~ iVDR-Secure応用製品第二弾登場 ~



■ いよいよか? iVDR

 iVDRというリムーバブル製品は、ずいぶん昔から存在する。最初は、アイ・オー・データ機器のUSBアダプタとのセットだったように思う。2004年のことだ。

 筆者も新しもの好きなので、もちろん2台も持っている。手軽な外付けHDDとして、海外出張の時などに活用しているが、いっこうに一般に広がる気配はなかった。その後 '05年には、著作権保護規格「SAFIA」を実装することで、デジタル家電への展開を図ることになっていたが、いっこうに製品が出てこなかった。

 iVDRというのは、一般にはリムーバブルHDDの規格として紹介されることが多いが、実はインターフェイスの規格である。だからカートリッジの口径などは決まっているが、中身は別にHDDでなくてもいいし、ましてや記録メディアでなくても構わないわけだ。だがそんな柔軟性が逆に、手が付けられない広がりを見せていたようにも思える。

 そんな中、今年4月にようやくSAFIAを実装したiVDR-Secureの応用製品として、日立のテレビ「HR01」シリーズが登場。テレビにiDVRスロットを設けて、そこに録画できた。

 そしてその第二弾となるのが、「IV-R1000」である。地上/BS/110度CSデジタルチューナを搭載し、iVDRスロットを2つ持ったデジタルチューナ/レコーダだ。11月15日発売予定で、店頭予想価格は6万円前後。ただしメディアは別である。

 iVDR-Secureのメディアは、80GBで2万円弱、160GBで3万5千円弱のようだ。フルに活用するとなるとこれが2ついるので、トータルでは10万円前後となる。

 ダブルのiVDRは、新しい活路を見いだすのだろうか。さっそくテストしてみよう。なお今回お借りしているのは試作機であるため、製品版とは仕様が異なる場合もあることをお断わりしておく。


■ デジタルチューナライクな外観

 まず外観だが、レコーダというよりは、デジタルチューナといった方がいい程度のサイズだ。デジタルチューナもそれほど一般的な製品ではないが、いわゆるケーブルテレビやCSのSTB程度と言えばいいだろうか。


レコーダにしてはかなりコンパクトだ 両側に出っ張りがある。排気ファンは右側のみ

 正面にはiVDRスロットが2つある。録画にはSAFIA対応のiVDR-Secureというタイプしか使えないので、要注意だ。サイズは通常のiVDR、iVDR Mini、iVDR Microの3タイプがあるが、コネクタ部のサイズで使えるのは、iVDRとiVDR Miniの2種類である。現在のところiVDR-Secureとして売られているメディアは、一番大きなiVDRタイプしかないようだ。

 iVDR-Miniの挿入を意識してのことなのか、フルサイズのiVDRを入れると、半分ぐらい手前に出っ張ってしまうのがいささかかっこ悪い。iVDR自体は、イジェクトロック機構のようなものはなく、突っ込めばセットされ、引っこ抜けばそのまま抜ける。


80GBのiVDR-Secureメディア iVDRを装着すると、かなり出っ張る

 さらに真ん中にB-CASスロットもあるが、これも少し頭が出っ張る。将来的にはこれを取り出して、別の機器に差しかえるということを想定しているのだろうか。そうでないならば、子供が興味本位で抜いてどっかやっちゃったりする可能性もあるので、ここはカバーが欲しいところだ。

右下にSDカードスロットがある

 またSDカードスロットもあり、デジカメで撮影した写真をテレビに映すことができる。ただiVDRを装着すると、ほとんどアクセスできない位置にあるのは考え物。中央にはメインの電源ボタンほか、ステータスを示すLEDがあるだけと、全体的にシンプルだ。

 背面に回ってみよう。アンテナ入力は地上波のVHF/UHF兼用が1つ、BS/CSデジ用が1つあるのみで、入力系はこれだけである。出力はHDMI、D4端子、音声光、S端子、アナログAVが各1つずつ。LANとモデム端子があるのは、LANを使ってどうこうというのではなく、デジタル放送対応用である。電源はACアダプタだ。

 リモコンも見ておこう。上から2/3ぐらいまでは、テレビのリモコンのように見える。レコーダらしい部分は、下にある再生などの動画操作ボタンぐらいだ。本体のサイズの割には、結構大柄のリモコンが付いている感じである。


出力は各1系統ずつとシンプル リモコンのレコーダに関するボタンは下部分に集められている



■ オーソドックスな予約システム

 では予約システムなどを見ていこう。番組表は最大5チャンネル表示で、設定メニューの「番組表マルチ表示」を「しない」にしておけば、1放送局につき1列で表示できる。

 録画予約と番組説明は、1つの画面にまとめられている。番組表から予約のつもりで選択しても、リモコンの「番組説明」ボタンを押しても、同じ画面に飛ばされる。


番組表は最大5チャンネル表示 録画予約画面。番組説明画面と共用になっている

 番組の予約は、画面左側の列を上から順に設定していくことで完了する。録画先はiVDRの1か2が選択できる。ただ1と2の番号がアイコン化されているので、若干視認性が悪い感じがする。

 録画モードは、HD画質が2段階、SD画質が5段階プリセットされている。マニュアルでのビットレート設定などはない。録画時間に関しては、以下の表組みのようになっている。

【記録モードと録画時間】
録画モード 録画時間
160GB 80GB
TS(HD) BS/CSデジタル 約15時間 約7時間
地上デジタル 約20時間 約10時間
TSE 約32時間 約16時間
TS(SD) 約46時間 約23時間
XP 約32時間 約16時間
SP 約63時間 約31時間
LP 約123時間 約61時間
EP 約200時間 約100時間

 TSモードは、他のレコーダで言うところのDRモードだが、TSEモードはViXSのエンコーダチップを使ってトランスコードすることで、ビットレートを削減できるモードだ。以前から日立では、プラズマのWoooなどに搭載してきた。

 フォルダ指定は、おそらくiVDR内にフォルダを作成して、そこに番組を集めることができる機能であろう。今回お借りした実機では、動作しないようだった。もっとも、まだマニュアルが出来上がっていなかったので、やり方がわからないだけかもしれないが。

時間延長などは、「詳細録画予約」で対応する

 「毎回予約」に関しては、毎週や月~金といった指定ができるのみだ。番組名を追従していくような機能はない。「更新」は毎週録画する番組に対して、上書きしていくかどうかの設定である。

 延長などで放送時間がずれる可能性があるものに関しては、「詳細録画予約」で時間の調整ができる。イマドキのレコーダにしては不親切だが、感覚としてはテレビ本体のレコーダ機能を取り出したというイメージなのかもしれない。

 また、番組検索機能も備えている。デフォルトでは映画、ドラマ、スポーツ、音楽、マイ番組1、マイ番組2となっているが、名称やジャンル、キーワードは自由に変更できる。特にグループ名に関しては、パパ、ママ、ぼく、お姉ちゃんなど、家族構成を名称として設定できる。また検索範囲として、どの放送波を含めるかといった設定も可能だ。番組の検索結果表示はそれほど早くはないが、待たされて困る程度ではない。


番組検索の設定画面。機能的にはテレビとレコーダの中間ぐらいか 番組検索画面。表示はかなりシンプル



■ 2つのドライブの使い分けがキモ?

 この製品では、2つあるiVDRをどういう風に運用すればいいかを考えていくことになる。録画先はiVDRの1か2に割り振っているわけだが、チューナは1つしかないので、同放送波の重複した時間予約はできない。iVDRが録画中のときは、同じiVDR内に入っている番組の再生はできない。

録画番組一覧。リスト表示にもできる

 逆に言えば、今録画中でないiVDRに入っている番組は再生できるということである。このあたりも、番組予約時のテクニックになるだろう。

 録画番組の再生は、サムネイル表示から選択する。サムネイルは選択状態になると、小画面内で音声付きで再生が始まる。このあたりは、最近のレコーダと同じ感覚だ。iVDRの切り替えは、リモコンの切り替えボタンでもいいし、一覧メニューを左に移動していくと、iVDRの1と2が切り替えられる。

 最大の関心は、TSEモードの画質がどれぐらいかという事だろう。一昨年だったか、ViXSがカナダ大使館で開いた発表会で初めてトランスコードのデモンストレーション映像を見たが、そのときはGOP単位での画質変動がかなり気になった。

 だが今回実装されたTSEモードは、GOP単位の画質変動がなく、画質もTSモードと遜色ない。よほど画質にこだわって録りたいものでなければ、デフォルトはTSEモードで十分だろう。またViXSのエンコーダは、低ビットレートでも画質が落ちないのが特徴である。SD放送の場合は、SP程度でも十分な画質だ。

 再生時には、1.5倍の早見機能が付いている。TSやTSEで録画した番組では、映像は問題ないレベルだが、音声はギリギリ許容できるという程度だ。一方SDサイズのモードで録画した映像では、ジャギーがかなり目立ち、鑑賞にはやや厳しい。早見するなら、HDのままのほうがいいだろう。

 映像の早送りは、早見の1.5倍に加え、2、10、30、60倍速が可能。早送りまでの動作は、数値が大きくなるほど待たされる。


■ 画質を変えて整理できるダビング機能

 録画番組一覧表示でリモコンの「べんり」ボタンを押すと、ダビングをはじめとする様々な機能にアクセスできる。ここで注目は、「ダビング」の機能だ。当然iVDR1と2の間でダビングが可能なわけだが、実際にはムーブである。また同メディア内でも、編集した場合はムーブ扱いとなる。

「ダビング」には多くの機能がまとめられている

 メディアの整理という意味では、それぞれのiVDR同士で番組を移動できるところが、今回の製品のポイントだろう。単純なムーブであれば、実時間の約9倍程度で移動可能だ。

 また画質モードを変更してのムーブも可能である。例えばTSEモードで録画した番組でも、SPモードといったSDサイズの画質にエンコードしながらムーブすることができる。

 試しにTSEモードで録画したアニメ番組を、SPダウンコンバートしながらムーブしてみた。単調な色調部分には階調の荒れがわかるが、動きにはよく追従している。とりあえず貯めといてあとでまとめて見るような用途では、十分使えるだろう。

 編集機能では、チャプタ設定と分割が使える。だが不要部分を選択削除するような機能は、「ダビング」機能に含まれている。「不要部分の指定」がそれだ。


「編集」からたどれる機能では、部分消去などはできない 「不要部分の指定」でチャプタを設定しながらの不要部分指定ができる

 ただコピーワンスのコンテンツに関しては、画質変更と編集機能で排他的制限がある。画質を変更したいものは不要部分の削除ができず、逆に不要部分を削除したものは、画質を変更してのムーブができない。

 このあたりは、技術的な制限というよりも、コピーワンスの運用規定に引っかかってできないということだろう。なんとももどかしい制限だが、このあたりは「ダビング10」で解決できるのだろうか。


■ 総論

 これまでデジタル放送を低価格でTS録画できる機器には、アイ・オー・データのRec-POTがあった。i.LINK端子で接続する、固定型HDDである。最近はDVDレコーダも次第に陰が薄くなりつつあるが、そんな中登場したiVDRのレコーダは、光メディアに残す必要はないと考える人にとっては、いい選択肢かもしれない。iVDRを保存メディアと考えるのではなく、交換によって増設できるHDDと考えた方が、精神衛生上いいだろう。

 もちろんメディアの価格が下がれば、保存用としての道も考えられなくはないが、そういう世界よりも、自分のコンテンツを持ち歩いて別の部屋や別のテレビで見るといった用途が考えられる。

 もう一つの見方としては、デジタル放送に非対応のテレビに付けるデジタルチューナとしての価値である。とりあえずメディアなしでチューナとして買っておき、メディアの価格が下がることがあれば購入するという考え方もできるかもしれない。

 ただ6万円という価格を考えると、次世代DVDは非搭載だがデジタル放送対応というレコーダも、量販店に行けばそれぐらいで手に入る。囲い込んだメディア商売を想定しているのでは、今はもう立ちゆかない時代だろう。

 今のところ日立製品で完結してしまっている感があるiVDR-Secureのサイクルだが、PCメーカーが別の観点から対応機器を出してくれば、これまでのレコーダの世界にはない新しい価値観が想像できるかもしれない。例えば、Rec-POTのiVDRタイプなどは過去の経緯から考えてもあり得る話だ。iVDR協賛各社のがんばりに期待したい。

□日立製作所のホームページ
http://www.hitachi.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2007/09/0920a.html
□製品情報
http://av.hitachi.co.jp/tv/dgtuner/index.html
□関連記事
【9月20日】日立、iVDR録画対応の地上/BS/110度デジタルチューナ
-「iVポケット」を2基装備し、実売6万円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070920/hitachi1.htm
【10月2日】CEATEC JAPAN 2007【日立/iVDR編】
-薄さ1.9cmの液晶TV。iVDRプレーヤー/レコーダ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071002/ceatec07.htm
【3月20日】日立、「iVDR」でHDD拡張できる録画対応テレビ「Wooo」
-50型フルHD PDPや37型IPSαフルHD液晶など
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070320/hitachi1.htm

(2007年11月7日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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