■ 世界最大プラズマは松下が文句無しに獲得!
例年のInterntaional CESの大画面映像機器関連の話題といえば、やはり「仁義なき大画面サイズ競争」が熱い。以前は、大画面競争といえばサムスンやLGといった韓国勢のお家芸というイメージがあったのだが、2006年はパナソニックの103インチプラズマ、2007年はシャープの108インチ液晶と、2年連続で日本勢が世界最大画面の称号を獲得してから日本勢の勢いが増している。 その流れは衰えておらず、今年はパナソニックが世界最大150インチのプラズマを発表し、来場者の度肝を抜いた。
画面寸法は横3.3m×縦1.8m、対角3.8mという巨大サイズ。重量は非公開だが、発売済みの103型VIERA(TH-103PZ600)が約320kgなので、単純計算でも500kg近いことは想像に難くない。
画面解像度はフルHDを上回る4,096×2,160ドットの4K2K。1,920×1,080ドットの縦横2倍の3,840×2,160ではなく、4,096×2,160ドットとなっているのは、業務用シネマ向け映像機器の規格であるDCI(Digital Cinema Initiative)で規定された4K2K解像度に準拠させたためだ。 TH-103PZ600は、ドットピッチ的にはTH-37PXシリーズの720pモデルとほぼ同等だったが、今回の150インチではTH-50PXシリーズの720pモデルとほぼ同等であるという。50V型パネルを3×3=9枚とれるマザーガラスを1枚使って製造したという。
公称コントラスト比は10,000:1。輝度は非公開としてるが、「パネル世代的には第11世代相当だ」(関係者)とのことで、おそらく基本スペックはPZ750シリーズと同等だろう。
消費電力は非公開。ちなみに、TH-103PZ600が1,450W。ドライバブロックはパネルの上下左右に組み込まれているそうで、解像度からしても、消費電力は相当高いと予想される。 価格は未定。そもそもプラズマVIERAとして発売するかどうかも未定だという。パネル解像度が4K2Kであるということから考えると業務用ディスプレイとして利用される可能性が高いのではないだろうか。なお、現時点ではチューナは内蔵しておらず、ディスプレイ製品の試作機という位置づけだ。 もし民生向け製品として発売されるにしても、103インチのTH-103PZ600が実売価格で450万円前後もするので、これ以上は確実にするはずだ。発売時期も未定。しかし、パナソニック関係者によれば「量産するにしても、2009年の5月より稼働予定の尼崎第5工場稼働後になるはず」とのこと。最終的な製品では、後述の超薄型プラズマに採用されている新技術の転用がなされる見込みで、さらなる薄型化、発光の高効率化により、重量や消費電力についても改善されるはずだ。
■ 次世代VIERAは薄さ1インチ以下に? ソニーの有機ELテレビが登場して以来、薄型テレビの競争テーマとして「薄さ」がホットになりつつある。大画面競争で名を馳せたパナソニックは、この分野にも果敢に取り組んでおり、今回のCESでは、厚さ1インチ(2.54cm)のプラズマVIERA試作機を展示した。
画面サイズは50インチ。解像度は1,920×1,080ドットでありながら、重さは同型サイズの約半分、25kgを達成しているという。現行の「TH-50PZ750SK」が47kgだから本当に軽い。競合する52インチのシャープAQUOS「LC-52GX3W」でも33kgだから、プラズマでありながら同サイズの液晶テレビよりも軽いということになる。 これだけ薄くても、チューナは内蔵。競合メーカーがディスプレイ単体で薄さを競っている中で、一体型でこの薄さは凄い。実現にあたってはパネルの駆動ユニットのシンプル化を突き詰め、磁気部品、半導体部品のパーツに至るまでをコンパクト化したそうで、「何かの劇的な技術のブレークスルーがあったというよりは、地道な努力の積み重ねにより実現できたもの」(関係者)だという。 こちらも価格や発売時期は未定としているが、やはり現実的な線として、尼崎第5工場が稼働後の2009年の5月以降の見通しを立てているという。
■ パイオニア、iPhoneより薄い9mmは薄型プラズマの究極形?
プラズマといえば、他社に先駆けて実用/量産化した、名実ともに「プラズマ界のパイオニア」であるパイオニアを忘れてはならない。今回は競合を遙かにしのぐ、薄さ9mmの「超薄型KURO」を発表した。ブース担当者に言わせれば、キャッチコピーは「iPhoneの11mmより薄い!」なのだとか。
サイズは50インチ。解像度は1,920×1,080ドット。重さはパナソニックの25kgをさらに下回る21.7kg。ただし、超薄型KUROはチューナを内蔵していないので、純粋な比較にはならない。
担当者によれば、パイオニアのPDPは構造上、画素セルが表示面側のガラス基板に直接配され、このガラス基板自体がカラーフィルターと一体成形されているため、他社製品よりも薄型化に向いているという。 また、画素セル内に塗布する蛍光物質の改良、高純度クリスタル層の洗練化により発光効率が向上、画素セル構造の奥行き短縮化なども貢献しているとされる。「価格や発売時期は非公開であり、今回の展示は技術展示である」と説明するも、「実際の製品化をにらんだ技術展示である」ことも強調。2009年以降、KUROブランドのプラズマテレビとして、この超薄型技術を応用した量産製品の投入がほのめかされた。
■ パイオニア、コントラスト競争に終止符? コントラスト比∞:1 コントラスト比は、ある画素のピーク輝度値を、ゼロレベル(すなわち漆黒表示時の画素)の輝度値で割った比率で表される。わかりやすく漆黒時の輝度を“1”に正規化して表示するため、「1000:1」のような表記で表される。 パイオニアがブース内に設置した特設シアターにて公開した「超ハイコントラスト型KURO」は、このコントラスト比が測定不能なほど高いのだという。その理由は、完全黒表示画素輝度が全く発光しないためだ。つまり、コントラスト比計算の分母側が「ゼロ」であるため、計算結果が∞:1になってしまうというわけだ。 プラズマディスプレイの画素は、電子発生源から飛び出された電子が希ガスに衝突してプラズマ化し、このとき発生する紫外線を画素セル内の蛍光物質にぶつけて発光させる仕組み。通常のPDPでは、どの画素も次の画素状態の放電に備えて電子発生源にて予備放電を行なっており、これが完全黒画素表示時の「薄明かり」になってしまっている。 超ハイコントラスト型KUROでは、なんとこの予備放電を完全にやめることに成功し、本当に黒が発光しないのだ。デモではシアター内を完全暗室化し、現行製品のPDP-5010HDと黒表現を比較。PDP-5010HDではディスプレイ表示部が薄く見えるのに対し、超ハイコントラスト型KUROでは、部屋の漆黒にディスプレイ表示部が完全に沈み込んでしまい、ディスプレイがどこにあるかも分からないほど。ただ、表示される映像の明部だけが、真っ暗な部屋に浮かび上がるといった感じで、予想は出来ていても、実際に目にすると驚かされてしまった。
だが、予備放電をしないと問題になるのが、画素の発光応答速度だ。これが遅れると残像が起きたり、色割れが発生し画質が劣化する。しかし、担当者は「予備放電キャンセルに起因する応答速度遅延問題については克服した」と自信を持っていた。
パイオニアの近年のプラズマテレビの高画質化は、「高純度クリスタル層」(クリスタルエミッシブレイヤー)によって支えられてきた。これはパネル表示面内側のもっとも画素セルに近い層に組み込まれた薄膜層で、画素セル内の放電速度を通常の3倍に高める効果をもたらすが、この効果を、画素駆動技術の最適化によってさらに高め、予備放電の完全キャンセルと、そこからの高輝度への高速レスポンスを両立したというのだ。
発売時期や価格は前出の超薄型KUROと同様に未定としているが、こちらもやはり、2009年頃にはこの技術を採用した製品を投入していきたいとのことであった。
■ シャープ、世界最大の108インチ液晶AQUOSは2008年内に製品化予定
昨年発表された108V型液晶AQUOSは、今年のCESでも展示された。液晶テレビとしては未だ世界最大サイズであり、これが今度こそ、2008年内に製品として発売されるというのだ。
画面サイズは2,386×1,344mmで、重さは900kg。パネル解像度は1,920×1,080ドットのフルHD。基本スペックは昨年の発表時から変更はない。
この108V型パネルは亀山第2工場で、第8世代の2,160×2,460mmのマザーガラスから製造される。このマザーガラスからは52V型が6枚、46V型が9枚、32V型は15枚取ることが可能だが、108V型は製造上の制約で1枚しかとることが出来ない。それだけにプレミアムなものになるのだという。 発売時期と価格は未だ未定だが、チューナを内蔵した液晶AQUOSのラインナップで発売されることはほぼ間違いない。かつて65インチAQUOSを登場させた際に、同時期に登場したパナソニックの65インチプラズマVIERAと価格が拮抗したことがあり、それをふまえると103V型プラズマVIERAの450万円というのが一つの目安になりそうだ。
■ シャープ、薄さ2cmの超薄型液晶AQUOSに65インチモデルが登場 薄さ競争は液晶テレビにも波及している。日本で開催されたCEATEC 2007などで、シャープは薄さ20mmの52インチAQUOS試作機を展示したが、今回CESでは、同じく薄さ20mmで65インチの試作機を公開した。
現行の65V型AQUOS「LC-65RX1W」と比較すると、重量は「LC-65RX1W」の66kgに対して40kgを実現。薄さは96mmに対して20mm。52V型から65V型に画面サイズが大型化されたわけだが、厚さは20mmを維持している。ただし、最厚部は52V型の29mmから65V型では35mmとなった。 消費電力は「LC-65RX1W」の約500Wに対して約半分の250W程度に抑えられているとのこと。画質面でも妥協点はなく、解像度は1,920×1,080ドット。コントラスト比は10万:1(ただしダイナミックコントラスト)。色再現性はNTSC比150%を達成している。
価格や発売時期は未定としているが、このパネルは第10世代液晶パネルとして製品化される見込みであり、2010年3月より稼働予定の大阪府堺市の新工場で製造される予定となっている。量産製品化されるのは2010年になると思われる。 また、現在の薄さ20mmはディスプレイ部だけで実践されているスペックであり、チューナを一体化した場合は厚みが増す可能性がある。これを指摘したところ、「現在研究開発中の無線HDMI技術などを採用し、チューナ分離型デザインを実現することで薄さ20mmを維持することが可能」との返答があり、「薄さ20mmはなんとしてでも維持したい」という意気込みが感じられた。
□2008 International CESのホームページ(英文) (2008年1月8日) [Reported by トライゼット西川善司]
AV Watch編集部 |
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