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第93回:International CES特別編
~ サムスンが世界最大級のフルHD有機ELテレビ~
  同社初の民生向けフルHD単板式DLPプロジェクタも


■ サムスン、14/31インチのフルHD有機ELテレビを発表

サムスンブースの有機ELテレビ展示コーナー

 ソニーが2007年末に発売したばかりの「XEL-1」は、いまや有機ELテレビの代表格だが、競合他社も虎視眈々と有機ELテレビの発売に向けて準備を進めてきている。ソニーのよきライバルであるサムスンもそんな一社の一つ。

 サムスンも次世代テレビ製品の本命として有機ELの研究開発に力を注いでおり、今回のInternational CESでは有機ELテレビ製品の試作機を2種類展示していた。画面サイズは14インチと31インチだ。

 ライバルのソニーは11インチと27インチなので、これを上回る大きさとなる。解像度は14インチ、31インチともに1,920×1,080ドットを達成したとしている。ソニーの11インチ「XEL-1」は960×540ドットであり、フルHDの1/4解像度。サムスンの14インチ試作機はフルHD解像度を実現しており、画素の高精細度(DPI値)はサムスンが上を行くことになる。

31インチ有機ELテレビ。一枚パネルのフルHD解像度対応の有機ELテレビ試作機としてはソニーをしのぎ世界最大級

 もう一つの31インチもフルHDであり、DPI値は異なる。よってサムスンでは、同一パネル製造ラインから異なる画面を切り出してきたのではなく、小型パネルと大型パネルの2タイプの試作を行なったようだ。

 「解像度以外の詳細スペックは非公開」(サムスン関係者)とのことだが、「消費電力は同サイズ液晶未満、コントラストは同サイズ液晶以上ということだけは言える」と強調していた。また、厚さは14インチ、31インチともに最薄部15mm~最厚部18mm。

有機ELパネルはディスプレイパネル開発供給メーカーのサムスンSDIが開発。サムスン製有機ELパネルを採用した社外有機ELテレビメーカーも出てくるのか?

 関係者によれば「ディスプレイではなくチューナを内蔵したテレビである」とのことで、チューナユニットは14インチでは台座のベースユニット部に、31インチでは背面部中央に内蔵しているという。「価格や発売時期は非公開」としつつも、「2009年頃の製品発売をにらんだ試作機である」とアナウンスされていた。

 実際の表示映像は、コントラスト感が有機ELらしい圧倒的な高さで素晴らしい。応答速度も文句ないレベルで動画もきびきび動いていた。ただ、階調表現にまだ難が見られ、色再現性もやや黄みがかったような印象を受けた。しかし、色ダイナミックレンジの広さは感じられる。

 特に31インチの試作機の方は、価格を現実的なレベルに落とし込めて、さらに画質チューニングを詰めていけば、32インチのフルHD液晶テレビのトップモデルを喰えるだけの魅力はあるように思う。

 薄型テレビの大型化競争から退散したサムスンだが、今後は、この有機ELテレビの大型競争で日本メーカー勢と戦いを挑むのかもしれない。

14インチの有機ELテレビ試作機。圧倒的なコントラスト感はこのサイズでも実感できる


■ 超薄型液晶テレビも発表

 超薄型テレビの技術トレンドには、もちろんサムスンも追従している。ブースでは52インチで薄さ1インチ(2.54cm)未満の新開発液晶テレビを発表していた。残念ながらスペックは非公開だが、画質的なスペックは現行の同サイズモデルとほぼ同等としている。

 厚さが25mm程度しかないにもかかわらず、デジタルチューナを背面に内蔵し、電源ユニットやスピーカーもビルトインされている。こちらも「ディスプレイではなくテレビである」ということをアピールしていた。価格は未定だが、この薄さの液晶テレビは2009年に量産/発売できると宣言している。

チューナ一体型の“非”有機ELテレビとしては世界最薄レベルであることを強調していた


■ 4Kならぬ“4x”
  フルHDの82インチ、ウルトラハイデフ液晶

 今年の大画面事情においてにわかにトレンドとなりつつあるのが超ハイビジョン解像度のディスプレイ技術。キーワードとしては約4,000×2,000ドットであることから「4K2K」というキーワードが用いられがちだが、映像業界的には4K2Kというと業務用シネマ規格であるDCIで規定された4,096×2,160ドットを指す。昨日紹介したパナソニックの150インチプラズマはこちらの4K2K解像度だった。

 だが、最近家電メーカーが超ハイビジョン/ウルトラハイデフというキーワードとともに発表しているのは、フルHDの1,920×1,080ドットの縦横2倍、画素数にして4倍の解像度である3,840×2,160ドットであることが多い。

 そこで、DCI規格の4K2Kと区別するために、家電メーカーではこの解像度を4K2Kと呼ばずに、「フルHDの4倍の解像度」という意味を込めて「"4x"FullHD」と呼んでいるようだ。ちなみにサムスンでは「ウルトラハイデフ」(Ultra High Definition)と呼んでいる。

 前置きが長くなったが、サムスンはこのウルトラハイデフ解像度の82インチサイズの液晶テレビを発表した。スペックは非公開だが、「ディスプレイではなくテレビである」ことは強調されており、デジタルチューナを内蔵している。展示は試作機だが、実際の民生向け製品として2009年に発売の計画があるとのこと。

 「ウルトラハイデフの放送や映像ソフトがないのではないか」という指摘に対しては、「それは理解している」と前置きしつつも、「高品位なアップスケーラーエンジンを組み合わせ、ブルーレイ映像ソフトやデジタル放送のフルHD映像をより高い次元で楽しむためのソリューションとして訴求したい」と説明。また、PC入力端子をサポートしていることもアピールされ、「超大画面の超高精細PCディスプレイとしても訴求したい」という。

サムスンは3,840×2,160ドットをハイエンドテレビ製品の主流としたい考え


■ 世界初の立体視プラズマテレビを年内に発売
  普通のDVDを立体視に自動変換

 サムスンブースで人気を集めていたのは立体視プラズマテレビの展示。裸眼立体視ではなく、ゴーグルをかけて見るタイプの立体視システム。技術的に珍しいところはなく、ただのコンセプト展示かと思って、話を聞いてみると、世界初の民生向けの立体視プラズマテレビとして実際に発売する製品なのだという。

 もともと応答速度が速いプラズマディスプレイを応用し、毎秒60コマの左目用の映像と、同じく毎秒60コマの右目用の映像を交互に表示する(ディスプレイ側としては120fpsのフレームレートで映像を表示することになる)。

 ユーザーがかけた立体視眼鏡には液晶シャッターが仕込まれており、プラズマテレビ側の左右のフレームの映像表示の切り換えに同期して、左右の目用の液晶シャッターを交互に制御する。眼鏡とディスプレイは赤外線で通信している。よくあるゴーグル型の液晶シャッター式の立体視システムだ。

 ユニークなのは、この立体視プラズマに組み合わされるDVD再生ソフトのテクノロジーで、一般的なDVD映像を立体視に変換して再生できるという。開発はTRIDEFが担当。Windows環境で動作するため、立体視にはPCを用意する必要がある。

 サムスンとしてはこの立体視プラズマテレビは「TRIDEF方式の立体視システムに対応したプラズマテレビ」として販売する。ユーザーは立体視で視聴しないときには通常のプラズマテレビとして利用可能。また、立体視システムは別売りで、TRIDEFの立体視セットを別途購入しなければならない。これは300ドル程度になるとのこと。

 42インチの「PN42A450P」と50インチの「PN50A450P」の2タイプが用意され、解像度は720pになる。発売は2008年中頃を予定しているが、価格は未定。ただし、価格は同サイズ、同スペックの従来プラズマテレビとほぼ同じになる見込みだという。また、現時点では720p解像度モデルのみだが、Series5と称される、50インチ(PN50A550P)、58インチ(PN58A550P)の1080p対応モデルも開発中としている。

 ブースでデモンストレーションされていたのは、もともと立体視をさせるために製作された3D映像だったため、通常のDVDを立体視変換するというTRIDEFのテクノロジーは体験できず。しかし、立体視そのものの品質は良好で、目立った画質の劣化もない。

 普段は通常のプラズマテレビとして利用でき、立体視したいときにだけ3Dプラズマテレビとして利用できるというコンセプトは、競合の同種技術にはあまり見られないため、おもしろい。

民生向け製品としては世界初の立体視対応プラズマテレビとなる。色物と扱われがちだった立体視文化をメインストリーム化できるか


■ 第二世代LED光源ベースのDLPリアプロ

 薄型テレビの台頭もあり、リアプロテレビの人気は低迷しつつある。だが、DLPリアプロのベストセラーメーカーであるサムスンは、未だ真剣にDLPリアプロの開発に取り組んでいる。

 昨今LEDバックライトは映像機器の技術トレンドとなってきたが、リアプロ向けのバックライト技術としてはまだ発展途上という感じが否めなかった。サムスンも昨年からLEDをリアプロの光源として採用してきてはいたが、絶対的な明るさは同サイズの液晶テレビなどと比較すると低いと言わざるを得なかった。

 今回、Series7として発表された61インチの「HL61A750」と67インチの「HL67A750」のDLPリアプロは、LED光源の光量不足を大幅に改善。従来のLED光源の光量から40%も向上したという。公称輝度スペックは非公開だが、同サイズの液晶テレビの明るさとほぼ同等に達しているようだ。実際、横に並べられていた超高圧水銀ランプを採用した従来のリアプロと見比べても輝度に関して言えば全く負けていない。

 DLPエンジン部はDMDパネルを一枚使用した単板式。単板式DLPということはフルカラー表現は時間積分式になるわけだが、カラーホイールはなく、RGBの三原色LEDの明滅によって行なわれる。LEDの発光応答速度は数十ナノ秒であり、カラーホイール換算で48倍速以上相当とされており、プラズマテレビのサブフィールド法に近い精度のフルカラー表現が行なえるとされている。RGBの各色の純色品質も高いことから色域も広く、今回発表されたSeries7のDLPリアプロではNTSC比120%の広色域を達成できているとのこと。解像度は61インチ、67インチのモデルともに1080pにリアル対応する。

 実際の投射映像の品質はすこぶる高く、非常に高い立体感を持って見える。なお、公称コントラストは10,000:1を達成しているとのこと。色味はLEDバックライト特有の赤の鋭いやや黄みがかった色合いなのが気になったが、全体のバランスとしてはまずまずだ。

 発売時期は61インチの「HL61A750」が3月頃で価格は2,399ドル。67インチの「HL67A750」は発売が5月頃で価格は2,899ドルになる見込み。なお、この春発売予定の72インチの超高圧水銀ランプを採用した「HL72A650」が2,999ドルなので、インチ単価的には若干LED光源モデルの方が割高になる。

消費電力は61インチ、67インチモデルともに230W。これは同サイズのプラズマテレビの消費電力の1/3以下。また液晶テレビの消費電力の約半分。LEDベースのリアプロは消費電力的にも有利だとする


■ JOE KANE監修の単板式DLPフルHDプロジェクタ

 サムスンのDLP技術というとリアプロがまず第一に連想されるが、フロントプロジェクタの開発も行なっている。今回発表されたのは、同社プロジェクタとしては久々のハイエンド・ホームシアター向け。型式番は「SP-A800」で、メカニズムとしては単板式DLPのフルHDプロジェクタとなる。

サムスン初の単板式DLPフルHDプロジェクタ「SP-A800」 HDMIは2系統。コンポーネントビデオ端子も2系統を装備

 SP-A800の開発は、AVマニアの調整ディスクとして有名な「VIDEO ESSENTIALS」のプロデュースで知られるJoseph J.Kane, Jr.氏が代表を務めるJoe Kaneプロダクションと共同で進めたという。

 映像パネルはDARKCHIP2世代の1,920×1,080ドット、0.95型DMD。カラーホイールは6セグメント方式だ。光源ランプは超高圧水銀系の250WのUHPランプで、最大輝度は1,000ルーメン。公称コントラストは10,000:1を達成している。騒音レベルは25dBで、静粛性能にも優れる。

 この他、1080p/24fpsに対応している点や、色再現はSMPTEC-C、sRGB、EBUといった色域規格に対応する点も特徴だ。

 デモンストレーションはJoe Kaneプロダクションスタッフによって行なわれ、「映画の製作現場で設定した色調がなるべく完全な形で再現できることを狙って色を作り込んだ」と共同開発について振り返っていた。

デモンストレーションの様子。ステージに立ち、SP-A800の解説にあたったのはJoe Kaneプロダクションのスタッフ

 実際に投射映像を暗室で見せてもらったが、色の派手さはなく、モニタライクな画調でとても見やすい。階調表現を重視したチューニングで、ピーク輝度やコントラスト感に訴えた映像ではなく、かなり玄人好みの画作りになっていると感じた。人肌にも不自然さは感じられない。発売時期は2008年第一四半期で、実勢価格は7,000ドルになる見込みだ。

実際の投射映像を撮影したもの。発色はナチュラル系。階調表現を重んじた画調の作り込みを感じる

□2008 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□2008 International CESレポートリンク集
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/2008ces.htm

(2008年1月9日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1,000を超える。

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AV Watch編集部

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