■ 番組表の未来 CES 2008は、本日から一般公開がスタートした。注目の製品は数多くあるのだが、それらは追々取材していくとして、今日は少し目線を変えて、これから必要になってくる技術にスポットを当ててみる。 普段テレビやレコーダでお世話になっているのが、EPGなどの番組表である。アナログ放送が中心の頃は、TBS系列で送信しているG-Guideか、テレビ朝日系列のADAMSぐらいしかなかったが、デジタル放送になってからは各放送局が独自にEPGを配信するようになった。またソニー系列や東芝などでは、ネットを使った独自のiEPGサービスを展開しているのは、ご存じの方も多いだろう。 米国における番組情報サービスというのは、日本とは違った道を歩んできた。米国の新聞には、いわゆるラジオ・テレビ欄というものはない。そもそも、それほど番組表というものに依存しない文化であったわけだ。そこに登場したのが、いわゆるテレビガイド雑誌である。 中でも大手は、「TV GUIDE」という番組情報誌である。日本でも「テレビガイド」という番組情報誌があるので、内容はイメージできるだろう。米国の番組情報データベースは、これらの番組情報誌出版社が握っている。それらを電子化した形で、電子番組表の情報サービスが存在するわけである。 米TV GUIDE社は、2009年に「My TV Guide」というサービスをスタートさせる。米国では放送波以外にも、CATVや衛星放送、IPTV、VODといったインフラが数多くあり、一般ユーザーがアクセス可能な番組数は膨大な数に上る。
My TV Guideは、テレビ上やPC、携帯電話などからアクセスできる番組情報サービスで、自分の好きなチャンネルや番組を登録することで、自分流にカスタマイズできるのが特徴だ。単に番組情報だけでなく、出演者のプロフィールやストリーミングビデオといったリッチデータを、インターネット経由で配信する。 番組情報サービスとしてはTiVoが先行しているが、My TV Guideは専用のマシンではなく、テレビメーカーやレコーダメーカーがこの機能を組み込むことで、数多くの機器が対応することになる。
一方、日本でもG-GUIDEでお馴染みのジェムスターマルチメディア社が、新しい番組情報サービスを開発している。まだ試作デモの段階ではあるが、その一部を見ることができた。
日本では各放送局が独自に番組情報を配信しているが、内容量には限界がある。そこでジェムスターでは、各局から放送波で送られてくる番組情報を一元管理して、そこに独自の詳細な関連情報、例えば出演者プロフィールや前回までのあらすじ、プロモーション用トレーラー、関連番組のVODへのリンクといった情報を付加。インターネット経由でテレビやレコーダに送り直す、というサービスを考えている。 表示やGUIには、最近テレビなどに搭載が始まっているHTMLブラウザを利用するのが特徴で、ブラウザをアップデートするだけで、新しいサービスに次々に対応できるという。また送られてくる情報だけでなく、再生履歴や検索など、ユーザー側で生成する情報も処理できるようになる。 米国のビジネスモデルとの違いは、メーカーに直接インクリメントして貰うのではなく、家電用ブラウザを提供しているACCESSといった会社とパートナーシップを組んで、実装していくことになるという点だ。ユーザーは手持ちの機器で、ある日突然すごいサービスが提供されることになるかもしれないわけだ。
まだ具体的にサービスインの予定は明らかになっていないが、将来が楽しみな技術である。
■ シンプルで新しいGUI
日本でも放送と通信の融合が進み、米国並みにIPTVがスタートすると、現在のスカパー! どころではないチャンネル数となることが予想される。その中でどれを見るかという選択行為の指針が、いつまでもテキストベースの「番組表」でいいのかという問題は、当然浮上してくるだろう。 その時に、テレビやレコーダ、STBのインターフェイスはどうあるべきか。それを研究しているのが、日立である。参考出展されたITPV用のインターフェイスは、トラックボールを使ってコンテンツを選択するというスタイル。
サムネイル化されたコンテンツを、ハンディなトラックボールを使って選択していく。上下左右の動きになるわけだが、インフラソースの選択などは、左側に縦一列に表示される。このような一方向のみのスクロールとなった場合は、トラックボールの回転軸を固定して、縦にしか回らないといった制御も行なう。
サムネイル化されたコンテンツは、ズームによって拡大、縮小が可能。どんなコンテンツがあるのかを俯瞰したい場合はズームアウトするわけだ。このGUIの特徴は、「選択決定」といった概念がないこと。どうするかというと、見たいコンテンツにズームしていき、ある程度のサイズになると、それが決定と見なされるわけである。 プロトタイプのリモコンに「戻る」ボタンはあるが「決定」ボタンがないのは、そういうわけである。非常にシンプルで、プリミティブなところまで戻りきったインターフェイスは、多くの人が使い方を学習する必要がない。 現在の課題は、ズームしていったときに、ユーザーがどのコンテンツを目指しているかをどうやって検知するか、である。今稼働しているインターフェイスは、ズームインしていくと、画面内にサムネイルがすべて入るように再ソートされていくので、並び順が変わる。そうなるとユーザーは、目指していたコンテンツがたまたま「改行」されたときに、位置を見失ってしまう可能性が出てくる。
しかし、人間の感覚と合致した直感的なインターフェイスは、これからのリッチコンテンツ時代のもっとも重要な課題である。そしてGUI設計は、特に日本が弱い分野でもある。センシングの技術とハイスピードな画像処理、そして無線技術との組み合わせで、次世代のAV機器操作の標準インターフェイスが、日本から産まれてくることを期待したい。
■ リッチコンテンツ、もう一つの課題 本日行なわれたインテルの基調講演でCEOのポール・オッテリーニ氏は、外出先でも常にネットワークと接続し、すべてのコンテンツにアクセスできる「ウルトラ・モバイルへの潮流」を示唆した。日本でもすでにケータイでその傾向が高まっているのはご承知の通りだ。 昔の携帯電話は、待機電力を減らすことで、充電までのサイクルを伸ばしてきた。だが今のケータイの使い方は、単純に「待ち受け」状態になっていることが少ない。常にネットワークに接続され、ディスプレイは全力で点灯し、プロセッシング処理を続けている。 このような状況になったときに、一番問題となるのが電源確保である。一晩充電を忘れて、翌日は乾電池アダプタでケータイを使い続ける羽目になった人も、少なくないことだろう。インテルなどのプロセッサベンダーが、低消費電力化に力を入れてくれることももちろん期待したいが、電力側をなんとかしないといけないという問題が、のど元に突きつけられている。 そこで注目されるのが、燃料電池である。PC系のショーでは以前から参考出展が続いてきたが、メディアリッチ時代にはモバイルAV/通信デバイスにこそ、燃料電池が必要とされてくるのではないだろうか。 東芝では、今年もメタノールを使った燃料電池の最新開発状況を展示している。昨年は機器に対して外部から電源を供給するユニットという形だったが、今年は標準バッテリ相当のサイズにまとめて、機器に直接組み込める形のものを展示していた。PMP型gigabeatに実装して実働デモしていたが、満タンで約12時間程度の連続使用が可能だという。
モバイルデバイスにおける燃料電池の最大のメリットは、充電時間が限りなくゼロであることだ。少なくなったら、メタノールをその場で継ぎ足せばいい。また使用残量もメタノールの残量という物理的な量で決まるというのも、メリットだ。現在のバッテリのように、さっきまでフル表示だったのに、加速度的に残量表示が減っていって電池切れになるということがない。 メタノールのような燃料の供給インフラも含めると、開発する電気機器メーカーだけでなく、社会全体の理解と努力がなければなかなか進まない仕組みではある。しかしエコロジーの面ではなく、単純な利便性のメリットも大きい。発電ユニットが十分実用レベルに小型化されるぐらいまでには、社会的インフラ構築も含めて考えていくべき問題の一つだろう。
□2008 International CESのホームページ(英文)
(2008年1月8日)
[Reported by 小寺信良]
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