■ 今年も16モデルをリリース
ブース展示を明日に控えたCES。明日からは一般来場者でにぎわうことになるが、報道関係者向けのカンファレンスは今日が山場である。予定されていたHD DVDのカンファレンスが中止となったため、ソニーが本日最後のカンファレンスとなった。 毎年CESでは、あっと驚くようなものからそんなの出てましたっけと全然気がつかないものまで、数多くの新製品を発表するソニーだが、ビデオカメラ関連の新製品を中心に取材した。 ソニーの今年春の米国向けラインナップは、全部で16モデルである。昨年も16モデルで、うちHDカメラが4モデルであったが、今年は6モデルとなっている。米国でも徐々にハイビジョンへのシフトが始まっているようだ。 今回のラインナップの特徴は、ノンリニアメディア記録方式のカメラでは、メモリースティックへの動画記録を共通機能として、HDDかDVDメディアへの記録とハイブリッドにした点だ。さらに8GBの内蔵メモリも搭載した、ハイブリッド プラスというラインナップまである。記録系の違いを簡単にまとめると、次のようになる。
■ いいとこどりのHDモデル
では順に各モデル群の特徴を見ていこう。まずはハイビジョンのHDD記録型3モデル、HDR-SR12/11/10だが、ソニーとしては初の1,920×1,080ドット、いわゆるフルHD記録となった。思い起こせば昨年のCESでビクターのEverio 「GZ-HD7」がコンシューマ機で初のフルHD記録機を発表して以来、松下、日立らが追従し、ハイエンドモデルの機能としてはトレンドとなりつつある。ソニーも1年越しでそこに参入というわけだ。
HDR-SR12は、120GB HDDを搭載したハイエンドモデルで、フルHDモードで約15時間の撮影が可能。撮像素子は500万画素のクリアビッドCMOSで、1,000万画素の静止画撮影ができる。ただし動画と同時撮影時は760万画素となる。 また画像処理エンジンに、αなどで採用されている「BIONZ」を搭載した。これまでソニーのハンディカムは、動画同時撮影の静止画は3枚までという制限があったが、画像処理エンジンの能力がアップしたため、この制限はなくなって、無制限に静止画撮影が出来るようになった。したがって撮像素子がCMOSで画像処理エンジンがBIONZのモデルは、すべて無制限撮影が可能ということになる。 さらに同じくこれまでサイバーショットなどに搭載されていた顔検知機能が、動画対応となって搭載された。フォーカスや露出の追従など、動画でも可能性のある技術だと思っていたが、ついにビデオカメラにも搭載されたわけである。これも対応モデルが複数あるので、後述する表を見て欲しい。
ビューファインダも大きく改善されている。3.2インチワイドのタッチパネル式だが、業務用モデルのHVR-S270J/HVR-Z7Jに採用されている“XtraFine” LCDパネルを搭載し、解像度を大幅にアップさせた。確かにこれまでのハイビジョンカメラは、ファインダでその精細感を確認することができなかったわけだが、コンシューマ機でこれが搭載された意義は大きい。 3モデルとも今年3月発売予定で、価格は上位から順に1,400ドル、1,200ドル、1,000ドルとなっている。
続いてDVD記録型ハイビジョンの2モデル。こちらもフルHD記録となっており、AVCHDのDVDメディアでフルHD記録を実現したモデルは世界初。撮像素子は230万画素のクリアビッドCMOSで、両機種の違いは、内蔵メモリの有無だ。
だがそれによって、カメラの意味合いがまるで変わってくる。UX20の場合、通常の撮影は内蔵メモリで、保存時にDVDメディアを使うといった、日立のハイブリッドカムのようなアプローチになるだろう。これら2モデルも発売時期は3月で、価格は1,000ドルと800ドル。
HDVのHDR-HC9は、320万画素のクリアビッドCMOSを採用した高級機で、マニュアルコントローラにより、フォーカスやシャッタースピードなどがマニュアルで調整可能、フォーカスアシスト機能も備えている。こちらは2月発売予定で、価格は1,100ドルとなっている。
全体的にハイエンドモデルは、同じソニー内の別の事業部のおいしいところを全部入れ込んだ印象だ。クリアビッドCMOSも、HC9以外はExmorクラスである。単にフルHD記録だけではないアドバンテージで、他社を引き離すということだろう。
■ 流通に合わせたSDモデル
ではSDモデルも系統別に見ていこう。 HDD記録型は4モデルで、上位機種のDCR-SR220のみ撮像素子がクリアビッドCMOSで、以下のモデルはCCDとなっている。米国では量販店によって売れ筋の価格帯が全然違うこともあり、こういった低価格ラインナップも重要なのだという。日本で言えば、ヨドバシに置かれるカメラとドンキホーテに置かれるカメラは別、といったイメージだろうか。 SR220のみ3月で、他は2月発売。価格は順に、850ドル、700ドル、600ドル、500ドルとなっている。
DVDモデルも同じようなラインナップだ。上位モデルのDVD910のみクリアビッドCMOSで、あとはCCDである。こちらもDVD910のみ3月で、他は2月発売。価格は順に650ドル、480ドル、400ドル、350ドルとなっている。
DVテープ記録タイプは、どちらもCCDモデルだ。2月発売で、価格は300ドルと250ドル。
■ 大化けするか? 無線ファイル伝送技術
カンファレンスの中でも少し紹介された技術が、近距離ワイヤレス伝送技術の「Transfer Jet」である。これはFeliCaのようなタッチ型の無線情報伝送だが、375Mbpsという高速伝送が可能な技術である。 例えばこの伝送チップがデジカメとVAIOに搭載されると、VAIOにデジカメをタッチしただけで、画像の伝送を行なうことが出来る。またビデオカメラにも応用が可能で、動画ファイルの転送のほか、ストリーミングで撮影したハイビジョン映像の再生も可能。まだ参考出展の段階だが、実際にデモは稼働していた。
例えばレコーダにビデオカメラを乗せるとバックアップができたり、BRAVIAの足に乗せただけで映像が再生されるなど、様々な活用が考えられる。ケータイ写真のバックアップやメモリに転送するやり方がわからない一般ユーザーも沢山いるわけだが、お財布ケータイのように、特定の場所にタッチするだけで画像を吸い出してくれる機器が登場すれば、説明不要な便利さを提供することだろう。 またケータイやウォークマン、PSP同士をタッチするだけで、プレイリストや曲、映像、ゲームデータが転送できるといった、流通の用途も考えられる。FeliCaとは周波数帯域などがまったく違うため、併用することができる。つまり課金システムと同居していろんな応用が考えられるということになり、少額決済+タッチ式ファイル転送の面白さで、何かビジネスの種がありそうだ。 現在ある無線伝送技術は、電波の中に浸っていて、それを拾い上げる行為である。無線LANはだいぶ簡単になってきたが、それでもチャンネルや方式、電波強度などの問題を理解していないと、トラブルシューティングが難しい。だがこのような超短距離無線伝送技術は、特定のデバイスを決められた場所に置くという、間違いの要素が少ないインターフェースが構築できるメリットがある。 ワイヤレス充電はまだもうちょっとかかりそうだが、タッチ型データ伝送は、今年のCESの隠れたテーマかもしれない。
□2008 International CESのホームページ(英文)
(2008年1月7日)
[Reported by 小寺信良]
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