■ 大幅ラインナップ拡充で攻めるキヤノン 2008 International CES、2日目の今日は、各社のビデオカメラの動きを追った。会期前日のプレスカンファレンスで、ソニーの春モデルを一通り見たわけだが、従来の記録メディアを存続させつつも、大枠としてはメモリへの移行のステップとも取れる。
別の考え方では、日立が道を開いたデュアルメディア記録という路線もまた、1つの方向だろう。しかしいずれにしても、メモリがキーになっていることは間違いない。 偶然にも各社ともに、メモリに対する記録を重視し始めている。大量の新製品投入で会場を沸かせているのは、ソニーだけではない。キヤノンもこの春米国市場に投入する新製品は、14モデルにも及ぶ。
その中でも新ラインナップとしてメモリ記録、しかも内蔵メモリとSDカードのデュアルという方向性を打ち出し、HD2モデル、SD3モデルを発表した。他社では特性の違うメディア2つを搭載してハイブリッドを謳うが、同系統メディアを2系統積むというのは珍しい。
「VIXIA HF10」は、SDスロット+内蔵メモリ16GBを搭載する、AVCHDフォーマットのハイビジョンカムコーダ。HS10などと同様、24Pや30Pモードを備えている。またこのモデルからは記録も1,920×1,080のフルHDとなった。キヤノンの場合は撮像素子も本当にフルHD画素のCMOSなので、コンシューマ機では日立のBD CAMに続く、撮像素子も記録系も本物のフルHD機ということになる。 ボディサイズはHDDモデルのHG10に比べ、横幅8mm、縦11mm小型化されている。レンズは光学12倍のキヤノンビデオレンズで、F1.8。撮像素子は新開発330万画素の1/3.2型CMOSで、従来機の1/2.7型から小型化した。フォーカスは得意の外測センサーを引き続き搭載している。
画質モードは、フルHD記録モードのFXPが増えて、合計4モードとなった。16GB内蔵メモリの記録時間は以下のようになっている。
なおAVCHDの規格上のビットレート上限は、24Mbpsである。小型化に伴ってグリップベルトが着脱式になり、リストストラップでも使用できるようになった。標準装備はグリップベルトだが、リストストラップも付属する。またバッテリは新規格となり、バッテリ残量が分単位でわかる「インテリジェントリチウムイオンバッテリ」を採用した。ソニーのインフォリチウムと同様、カメラの電源がOFFでも、ボタンを押すと残量を表示する。
スペックが同じHDモデルで、内蔵メモリを搭載しないのが「XIXIA HF100」だ。カラーリングが異なる以外、外観はほとんど変わらない。両方とも発売時期は3月で、価格はHF10が1099ドル、HF100が899ドルとなっている。
一方SDモデルは、内蔵メモリの容量と有無で3種類のバリエーションがある。記録フォーマットはMPEG-2のSD Video形式。上位モデルのFS11は、SDカード+内蔵メモリ16GBを搭載したモデル。外観はHDモデルよりも若干小型で、背面に大きなモードダイヤルを備える。 レンズは光学37倍キヤノンズームレンズ。撮像素子の読み出し面積を変えるAdvanced Zoomで、画質劣化なしで48倍までのズームが可能。撮像素子は107万画素の1/6インチCCD。バッテリは本体内蔵型だが、連続3時間撮影が可能。
16GB内蔵メモリの記録時間は以下のようになっている。
同スペックで内蔵メモリ8GBモデルがFS10、内蔵メモリなしモデルがFS100がある。発売時期はいずれも3月で、価格はFS11が599ドル、FS10が499ドル、FS100が399ドル。
HDカメラではHV20のマイナーアップデート版となる「VIXIA HV30」を発表。ボディデザインは同じで、色が黒になっている。搭載CMOSを高感度化し、ノイズリダクションを強化したことで、最低被写体照度3luxでも大幅なノイズ減となっている。 また液晶モニタが広視野角、高色彩になり、新たに30pモードも搭載した。そのほか、HV20で不評だったアクセサリーシューの上蓋を、完全取り外し式ではなく半固定にするなど、細かい改良点がある。こちらは2月発売予定で、価格は999ドル。 SDカメラでは、DVD記録モデルを3種類リリース。これまでキヤノンのDVDモデルは、バッテリが液晶モニタの内側に内蔵するタイプだったため、大容量バッテリが装着できなかった。今回の新シリーズでは、背面にバッテリを装着するスタイルとなり、長時間撮影に対応する。 またこちらもAdvanced Zoom対応だが、ズーム倍率や撮像素子サイズの違いで3モデルとなっている。発売時期は2月で、上位から順にDC 330が379ドル、DC 320が349ドル、DC 310が349ドル。
DVカメラのラインナップもAdvanced Zoom対応で、ズーム倍率や付属ソフトの有無といった違いで3種類となっている。今年1月発売予定で、上位から順にZR950が279ドル、ZR930が269ドル、ZR910が249ドルとなっている。
■ 薄型化を実現したEverio
Everioでお馴染みのビクターは、CES会場内にブースはなく、市内の高級ホテル「シーザーズパレス」内でプライベートショーを開催している。今回発表された米国向け製品はすべてSDモデルだが、HDDとMicroSDカードのハイブリッド記録となっている。全部で3種類5タイプ、さらにカラーバリエーション有りといった具合に、これまた大量のラインナップだ。
最上位モデルのGZ-MG730は、1.3インチ/30GB HDDを搭載することで小型化を実現した、高画素モデル。光学10倍ズームで、レンズはコニカミノルタ製となっている。撮像素子は1/2.5インチ 738万画素CCDで、撮影可能な最大静止画サイズは3,072×2,304ピクセル。
今回のラインナップでは、液晶脇にタッチセンサーのスクロールバーを配置することで、指をスライドさせるだけでメニューのスクロールができるなど、インターフェイスに工夫があって面白い。色はブラックのみで、発売予定は2月、価格は799ドルとなっている。
GZ-MG36xシリーズは、1.8インチ/60GBのHDDを搭載したモデル。クレードル有りがMG365、クレードルなしがMG360。レンズは光学35倍ズームレンズで、1/6インチ68万画素CCDを採用している。
今回はレンズユニットの設計を見直し、従来の横に出っ張る動作制御機構を縦方向に配置することで、ボディが薄型となり、体積比で前モデルより20%小型化している。以前からEverioは横幅が広いのがイマイチと考えていた人には、今回のモデルはいいだろう。MG365は1月発売で価格は599ドル、MG360は2月発売で、549ドルとなっている。
GZ-MG33xシリーズは、MG36xシリーズとスペックが共通で、HDDが30GBのラインナップ。同じくクレードル付きがMG335、クレードルなしがMG330となっている。MG330はすでに日本国内でも発表されているが、米国のカラーバリエーション名はダイヤモンドシルバー、ルビーレッド、サファイヤブルーの3色となっている。価格はMG335が499ドル、MG330が449ドルで、ともに1月発売。
画質モードは全モデル共通で、HDD容量に対する録画時間などは以下のようになっている。
好調のDVDライターは、薄型の新モデル「CU-VD3」を発表した。これも日本ですでに発表されたが、米国向けにはカラーが黒となっている。
ノートPC用外付けDVDドライブのようなサイズのDVDライターで、縦置き用スタンドも付属。ACアダプタも不要になったことで、旅行先でのバックアップも可能になった。書き込みはカメラ側のバックアップボタンで行なう。今回発表されたSDモデルのバックアップだけでなく、既に発売されているHDモデルのEverioからのバックアップも可能。
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■ 新機軸で攻めるPanasonic 日本でも既に発表されているが、PanasonicはAVCHD記録の2モデルを出展している。SDカードのみの「SD9」と、SDと60GB HDDのハイブリッド「HS9」である。次世代DVDはこのCESでなんとなく決着が付いた感じだが、ハイビジョンカメラのフォーマット戦争は、メモリ記録一押しだったPanasonicがHDDハイブリッドモデルを投入したことで、ますます混迷を極めた格好となってきた。
会場でもこの両モデルは大変な注目度だが、SDカメラで面白い製品が出ていた。「SW20」は、水深1.5mまでの防水、1.2mまでの落下耐性、防塵機能を搭載したモデル。レンズは光学10倍で、連続撮影時間は1時間10分。色はシルバーとレッドの2色で、四角くレトロチックなデザインが面白い。
水中撮影可能なムービーカメラとしては三洋Xactiの「DMX-CA65」があるが、耐水機能としてはほぼ同等ということになる。ただSW20は、3秒間のプリレコード機能を備え、水中撮影時の突然のチャンスを逃さない。また上からホールドしたときのために、本体脇にもRECボタンを設けるなど、時間をかけて練り込まれた跡が見られるモデルだ。 また米国では、縦型のビデオカメラはほとんど売れないというデータが出ている。水中撮影という特殊ジャンルにおいても、横型のSW20はかなりアドバンテージがあるだろう。2月発売予定で、399ドル。
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■ 日本メーカーも偵察に来るSAMSUNG ビデオカメラは今となってはほとんど日本企業の独壇場だが、韓国Samsungでもメモリベースのハイビジョンカメラを出展していた。「SC-HMX20C」は、内蔵8GBメモリ+SD/MMCカードに撮影可能な、フルHDカメラ。
レンズは光学10倍で、撮像素子は1/1.8インチ 640万画素CMOSで、フルHD解像度の動画と400万画素/2,304×1,728ドットの静止画が撮影可能。また画素補完により、800万画素相当の静止画撮影もできる。 動画撮影モードは1080/60iと1080/30pに切り替え可能。またSD解像度での撮影も可能なほか、300fpsで10秒間のハイスピード撮影機能も備えている。録画フォーマットはH.264で、AVCHDフォーマットではない。
画質モードは3段階で、8GB内蔵メモリへの記録時間は以下のようになっている。
グリップベルト部が回転するようになっており、ローアングル撮影時には便利そうだ。デザインもこなれており、日本のカメラをよく研究している。 価格は999ドルを目指して開発中で、発売時期はブースのパネルには3月、担当者の弁によれば4月、プレスリリースには5月と書いてあってよくわからない。
日本で発売されることはないと思うが、このスペックで画質が良ければ、北米やEU市場で強力なライバルとなるかもしれない。
□2008 International CESのホームページ(英文)
(2008年1月9日)
[Reported by 小寺信良]
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