LCOSパネル「SXRD」と「キセノンランプ光源」という「QUALIA Q004-R1の遺伝子」ともいえる2大ハイエンド要素を受け継いで2005年末に登場したのが「VPL-VW100」だった。2006年には、超高圧水銀ランプを採用した弟分の「VPL-VW50」が発売され大好評を博し、2007年にはそのリファイン版の「VPL-VW60」までもが登場した。 SXRDがメインストリーム展開されたことは素直に喜ぶべきだが、2年間のハイエンドの新モデル不在は、ファンをやきもきさせた。しかし、ついに2007年末、「SXRD+キセノン」のハイエンドモデルの新モデル「VPL-VW200」が登場した。価格は136万円。型番を“+100”してモデルチェンジした「QUALIAの遺伝子を受け継ぐもの」の実力はどこまで高められたのだろうか? なお、最近、下位モデルの「VPL-VW60(45万円)」を使用していることもあって、VW60との細かい比較を織り交ぜている。
■ 設置性チェック ~ボディ色を変更するも、設置性はVPL-VW100互換
ボディカラーを天板をラメ入りの深い紺色とし、シックで高級感のある装いになったが、基本的なデザインにVPL-VW100から大きな変更はない。外形寸法は、VPL-VW100の496×574×175mm(幅×奥行き×高さ)に対し、VPL-VW200が500×578×175mm(同)。ミリ単位でVW100よりも大きくなっているが、見た目に大きな違いはない。本体重量は約20kgで、こちらもVW100からの1kg増しとなった。 VPL-VW60(395×471×174mm、11kg)と同じイメージのデザインではあるが、VPL-VW200はVW60よりも2回りは大きく、重さもほぼ2倍。VPL-VW200にはたしかにハイエンドの風格たる重厚さが感じられる。 天吊り金具は、角度調整付のヒンジ機構搭載の「PSS-H10」(80,850円)と、天井からの吊るし位置を調整可能なパイプ式の「PSS-610」(52,500円)の2タイプが用意されている。ソニーサイトではPSS-610の掲載がないが、対応はしている。ただ、天吊り時の総重量は25kgにもなる。天井の耐久重量を確認するなどの入念なシミュレーションをしておきたい。 吸排気は、本体前面下部のスリットから吸気して背面後部スリットから排気するという設計だ。このため壁に寄せすぎての設置はエアーフローを阻害する可能性がある。今回の評価でもクリアランス不足だったためか、画面に「高温警告」のメッセージが表示されたことがあった。オンシェルフ設置を考えている人は背面のクリアランスをしっかりとっておきたい。
騒音レベルは公称値22dBと圧倒的に静かだ。本体に近づいて耳を澄まさないと動作音は聞こえない。この絶対的な静粛性能はVPL-VW50/60/100/200に共通するフィーチャーであり、「SXRDベースのVPL-VWは静粛性能に優れる」というイメージすら確立されつつある。この利点は今後も継承し続けていって欲しいものだ。
SXRDベースの伝統として忘れることが出来ないのは投射レンズ。VPL-VW50/60/100がそうであったように、VW200も電動ズーム/フォーカス/シフト対応の1.8倍ズームレンズ(f=18.7~33.7mm/F2.54~3.53)を採用する。なお、レンズそのものの表向きスペックはVW100とほぼ同等であり大きな仕様変更はない。 100インチ(16:9)の最短投射距離は約3.1m。最近のホームシアター向けの焦点性能としては標準的。ハイエンド機ではあるが6~8畳クラスの部屋でも100インチ投影が可能な投射性能を有する。一方、最長投射距離は5.3m。16~18畳クラスの大きい部屋や中小規模の会議室、宴会場にも対応できる長焦点性能を兼ね備えている。 前述したようにレンズのフォーカス、ズーム、シフトが電動リモコンで調節でき、設置時の操作性は非常に良い。特にフォーカス合わせはこだわり派には実に嬉しいフィーチャーだ。テストパターンを表示したスクリーンに極限まで目を近づけてピクセル単位のピント合わせができる。使うたびにセットアップする必要がある用途にもすこぶる便利な機能だといえる。 レンズシフトも電動式で、シフト量は上65%。また、左右シフトは基本的には未対応。ただし、プラスドライバーでレンズを固定しているロックを外してスライドすることで本体実装レベルで±1mmをずらすことが可能だ。これは100インチ(16:9)投射時で約±15cmの左右シフト量に相当する。スクリーンと天吊り金具などの設置が微妙にずれていた時などに対処するための、いわば緊急対応措置的なものだ。 レンズシフト機能が、現在の他社製ホームシアター機と比較してやや抑えめなのはVPL-VW100以降のVWシリーズ共通仕様だが、これはシフト量が大きいほど光学的な画質が犠牲になるのを嫌ってあえてそうしている。これはVWシリーズならではの「こだわり」なので、これはそういうものだと納得するしかない。個人的には、「特徴」として捉え、むしろ歓迎すべきことだと考えている。
光源ランプはハイエンドSXRDの証である400Wキセノンランプを採用する。ランプ型式番は「LMP-H400」(103,950円)で、VW100と同じ。VW60の超高圧水銀ランプが税込み42,000円であることを考えるとランニングコストに関しては、やはり高い。 また、ランプ出力が高いこともあって、消費電力も650Wとかなり高めだ。VW60が300Wなので2倍以上の電気食いということになる。購入を検討している人は本体価格だけでなく、交換ランプ、消費電力のような、ランニングコスト面も十分に検討しておきたい。 なお、スリットの多さが特徴的なボディデザインではあるが、こうしたところからの光漏れは皆無であった。優秀だ。
■ 接続性チェック ~HDMIが2系統に。HDMI CECとx.v.colorにも対応
接続端子は正面向かって左側面側の下部に横長にレイアウトされている。 共通部分が多いVPL-VW100とVPL-VW200だが、この接続端子については、VW200のほうが時代の要求に応えた2年分の新しさを感じるものに改良されている。 まず、HDMI端子は1系統増やされて2系統となった。HDMIバージョンは1.3で、HDMI CEC(Consumer Electronics Control)とx.v.colorに対応している。VW100はHDMI 1.1だったので、ここの部分は2年分の新しさがわかりやすい。 その代わりVW200ではDVI-D端子が省かれている。VW100のDVI-DがHDMIに置き換わったと捉えてもいいだろう。DVI-HDMI変換アダプタを利用すればPCとデジタルRGB接続することは可能だ。ただし、VW200では、階調範囲をビデオ用(16-235)とPC用(0-255)の切換が明示的に出来ないため、場合によっては黒レベルがおかしくなる可能性がある。ここは競合機のように階調範囲を明示的に設定できる機能が欲しかった。 コンポーネントビデオ入力はRCAピンタイプが1系統で、D端子はなし。コンポジットビデオ、Sビデオ端子は1系統ずつ配備する。D-Sub 15ピン入力端子は、PC向けのアナログRGB入力に対応するほか、別売りの変換ケーブルを用いることで、追加のコンポーネントビデオ入力として利用することも出来る。 この他、PC経由でVW200を制御するためのRS232C端子、Ethernet端子、DC12Vを出力する外部機器連動用のトリガ端子が搭載されている。
■ 操作性チェック~ ~リモコンを完全新調!ハイエンドの風格
VW100ユーザーが羨みそうなのは、この新デザインのリモコンだろう。 基本的なボタンレイアウトはVW60のリモコンとほぼ同じなのだが、上面パネルが金属製となりずしりと重く、ボタンもソリッドな樹脂製となり、押したときの手応えもカチリとしていて質感が高い。全ボタンがバックライトで自照式にライトアップされるが、そのLEDも白色と青色に色分けされるところもプレミアム感を駆り立ててくれる。ちなみに、このリモコンはVW60にも普通に使えた。 電源オンでHDMI1入力からの映像が表示されるまでの所要時間は約18.5秒。VW100の時よりも高速化され、VW60より圧倒的に高速だ。入力切換は[INPUT]ボタンで順送りして切り換える方式。コンポーネントビデオ→HDMI1で約2.5秒、HDMI1→HDMI2で約2.5秒とあまり早くない。 それとVPL-VWシリーズ全てに対して思うことだが、入力系統が6系統と多いため、一番遠いところへの切換は結構時間がかかる。やはり、ダイレクト切り換え方式の操作系が欲しい。ちなみに、順送りの順番は「HDMI1→HDMI2→ビデオ→Sビデオ→入力A(D-Sub15ピン)→コンポーネントビデオ→」のループになっている。もちろん、未接続の端子をスキップさせる「入力オートサーチ」の機能はあるのだが、信号が来ているかどうかのチェックのときなど、強制的に希望の入力に切り換える使い方も多いので、その入力に一発で切り換えられる操作系の導入を望みたい。 アスペクト比の切り換えも[WIDE MODE]ボタンによる順送り切り換え方式となっている。切り換え速度は約1.0秒とまずまずの早さだ。 用意されているアスペクトモードはVW60と全く同じ、以下の5モード。
「アナモーフィックズーム」は、VW60にも搭載されている上級ユーザー向けのユニークなアスペクトモードだ。これは機能としては映像ソフトデータに記録されているアスペクト比情報を無視してパネル全域に表示するもの。BDソフトなどではシネスコ2.35:1記録された映画ソフトが多いが、その映像をパネル全域にフル解像度で表示し、そのアスペクト比補正を別売りのアナモーフィックレンズを使って光学的に補正する。 アナモーフィックレンズはソニー純正品の設定はなく、PANAMORPHの「UH380」などの他社製品を利用する必要がある。UH380には電動アタッチメントオプションもあり、2.35:1のシネスコ映像を見るときにだけ自動的にアタッチさせることができる。 リモコンの上部には比較的使用頻度が高い色域モードの[COLOR SPACE]、色温度設定の[COLOR TEMP]、黒レベル補正の[BLACK LEVEL]、ガンマ補正の[GAMMA CORRECTION]、アイリス設定の[ADVANCED IRIS]、レンズ制御の[LENS]といった操作ボタンが実装されている。 色域モード「カラースペース」は「ノーマル」と「ワイド」が選択できる。ノーマルはNTSCやITUの規格に準拠した色空間モードで色を再現するもので、ワイドはキセノンランプの色再現性を最大限に活用した色空間で映像を再構築して表示するものになる。インプレッションについては後述する。
レンズ制御は前述したレンズフォーカス、ズーム、シフトをコントロールするためのもの。誤操作でせっかく合わせた設定を壊さないように、「設置設定」の「レンズコントロール」を「切」設定とすると、このボタンを無効化できるようになっている。 調整可能な画調パラメータはVW60と同じ。「コントラスト」「明るさ」「色の濃さ」「色あい」「色温度」「シャープネス」といったごく一般的な項目を調整できる。 VW200にはパラメータの一括リセットの操作はないが、調整項目にカーソルを合わせてリモコン上の[RESET]を押すとその項目のみを工場出荷状態に戻すことが出来る。ただし、カーソルを項目にあてている状態で[RESET]ボタンを押すと「無効キーが押されました!」とエラーが出てしまう。ここはちょっとわかりにくい。また、プリセット画調モードの初期化は「画質設定」メニュー下の「標準に戻す」で行なうことが出来る。欲を言えば、すべての設定項目を工場出荷状態に戻せるオールリセットの機能も欲しい。 「画質設定」における特殊設定項目としては「シネマブラックプロ」「Motionflow」「エキスパート設定」の3つが別階層メニューとして用意されている。
「シネマブラックプロ」の階層下はアイリス制御の「アドバンスアイリス」の設定項目しかなく、なぜ階層化してあるのかが謎だ。と思ったら、VW60の「シネマブラックプロ」階層下にはランプモードの設定「ランプコントロール」があった。VW200ではランプ駆動モードの切換ができないためこの項目が削除されていて1項目しかないようだ。メニュー設計を流用したがために、このような構成になってしまっている。VPL-VW200はハイエンド機なので、このあたりは使いやすさ重視でメニューを再構成してほしかった。 「Motionflow」はVPL-VW200の特徴的な機能である倍速駆動モードに関連した設定項目だ。これについては後述する。 「エキスパート設定」階層下にはリモコンからも直接設定可能な「NR」「DRCモード」「フィルムモード」「黒補正」「ガンマ補正」「X.V.COLOR」といった項目が並ぶ。 「NR」はアナログ放送に目立つ画面全体を覆うざらついたノイズを低減させるノイズリダクションフィルタの設定で「切-弱-中-強」の設定が選択できる。強くかけてもあまり解像感の劣化は感じられないので、古めのVHSソースなどを楽しむ際には強めにかけるのもありだろう。 DRC(Digital Reality Creation)は「ブラビア・エンジン・プロ」に含まれるソニーお得意の高画質化ロジックで、簡単に言えば「倍密化回路」のこと。VPL-VW200のDRCは最新DRC-MF v2.5が搭載されており、「DRCモード」はその設定。これもどちらかといえばアナログ放送やVHSソースなどのエッジ表現や解像感が劣化した映像の高画質化ロジックなのでデジタルソースを楽しむ分には「切」設定でいい。DRCモードはモード1と2が用意されているが、モード1は16:9映像、モード2が4:3映像向けの設定で高画質化のアルゴリズム自体に差はない。DRCパレットを呼び出して、「くっきり」100段階と「すっきり」100段階の100×100の2軸のマトリクス設定が行なえる。 「フィルムモード」は24fps→60fpsの変換モードの設定になる。2-2、2-3プルダウンの効き方を設定する項目だ。「切」はオフ設定。オート1が動き重視の変換を、オート2が標準的な変換を行なう。試してみた感じでは、効き目の強い「オート1」でも不自然さはなかったので、「オート1」の常用で問題ないだろう。 「X.V.COLOR」は、x.v.color対応機器を接続し、x.v.color準拠の映像を表示する際に「入」設定として利用する。普段は「切」設定にしておいて問題なし。
プリセット画調モードは「ダイナミック」、「スタンダード」、「シネマ」の3種類。インプレッションは後述するが、これらのプリセット画調モードの切り換えは[DYNAMIC]、[STANDARD]、[CINEMA]の3つのダイレクトボタンを押すことで直接行なえる。これらの3つのプリセット画調モードはエディットが可能で特に保存操作をしなくてもユーザー調整は維持される。入力系統ごとに管理が別なので、各入力系統ごとにプリセット画調モードを好みの調整に追い込んでいくことが可能だ。ある意味、これらをユーザー画調メモリ的に活用できる。 これとは別に、各入力系統ごとに管理された3つのユーザーメモリも用意されている。こちらも[USER1][USER2][USER3]の3つのボタンでこれまた直接的に切り換えられる。ユーザーメモリは初期状態では「シネマ」設定と同等になっており、これを好きなようにエディットしていける。ユーザーメモリへの保存操作のようなものはなく、シンプルでわかりやすい。 特定の色だけを選択式に調整できる画調調整機能「RCP:Real Color Processing」も当然、VPL-VW200にも搭載されている。リモコン上の[RCP]ボタンがこの調整モードへの起動ボタン。赤、マゼンタ、青、緑、シアン、黄色の6色の代表色を手がかりにして、調整したい希望の色を実際に表示中の映像の中から選択し割り出し、その色調を調整していける。 調整結果は(ユーザーメモリとは別の)ユーザー1~ユーザー3のRCP専用のユーザーメモリに保存することが可能。なお、RCPユーザーメモリは、全ての入力系統から共有利用される。
■画質チェック 画質の根幹をになう映像パネルは、ここでいうまでもないだろうが、ソニー製LCOSパネル「SXRD(Sony Crystal Reflective Display)」だ。
パネル自体はVW60に採用されたものと同系の0.61型フルHDのSXRDパネルだが、ソニーによれば「製造プロセス等に変更はないが世代的には新しいもの」になっているという。 パネル平坦化の精度を上げて迷光を低減させるといった順当な進化促進の他、後述するMotionflow倍速駆動技術に対応させるためにパネルデバイスとして高速書き込みへの対応を果たしたとしている。 「倍速」はあくまでデバイスの書き込み速度の向上がメインであり、LCOS画素はリファインこそされているものの、応答速度は従来の公称2.5msのままだとのこと。パネルサイズがそのままのため、開口率も約90%のまま据え置かれていると見ていい。 前述したように投射レンズは同設計ながらも構成レンズは選別品から成っていることもあって投射映像の画素は非常にくっきりとしている。同画面サイズ、同投射距離で比較してもVW60の画素との見え方の差は確かにある。光学解像度が高いというのだろうか。LCOSパネルなので画素を区切る格子線は非常に微細だが、その筋のぶれの少なさ、くっきり感に違いがあるのだ。 フォーカス力も優秀で画面端と中央のフォーカスむらは最低限だ。色収差は多少あるが、これも最低限だ。解像度劣化に結びつくほどではない。
こうした微妙に感じるRGBの色ズレについては、VPL-VW200では、「パネルアライメント」調整機能で補正をかけられる。VW60にも同様な機能があるが、VW200では、より細かい補正が掛けられるようになっている。 VW60ではパネル全域に対して垂直/水平方向の補正が可能だが、VW200では、パネルの任意のエリア(ゾーン)の複数ピクセルに対して個別の垂直/水平方向の補正が行なえる。パネル貼り合わせ誤差や色収差による色ズレを気のすむまま補正ができるというわけだ。 原理としては隣接する各ピクセルのRGBサブピクセルの階調バランス補正を行なうデジタル画像処理が行なわれている。いわばアンチエイリアスやピクセルフィルタに相当する処理なので、あまりやり過ぎると映像の輪郭部が甘くなったりする。このあたりはユーザーの映像に対する趣味性が反映される部分といえる。 公称最大輝度は800ルーメン(アイリス開放時)。これはVW60よりも200ルーメン暗い値になる。実際、VW60と同一のカラーバーのようなテストパターンを表示させるとピーク輝度はVW200の方が暗い事が分かる。ただし、部屋を暗室として実際の映像を表示させると、コントラスト感はVW200の方が高く、映像がとてもエネルギッシュに感じられる。 最大コントラストは、動的絞り機構(アドバンストアイリス)の最大効果モードのオートモード1選択時で35,000:1となっている。これは、VW60と同じであるが、暗部の沈み込みはVW200の方が鋭いため、体感上は明らかにVW200の方が上だ。 これはパネルのリファインの成果なのか、画調の調整の効能なのか、あるいは選別品の光学系の効果なのかはよく分からないが、視覚上はVW200の方がハイコントラストだ。なお、ソニーによれば、VW200に採用されているSXRDパネルのネイティブコントラストは7,000:1だとのこと。また、アドバンスドアイリス機能の構造はVW60と同じだが、アルゴリズムの改善が行なわれているという。このあたりも視覚上のハイコントラスト感に貢献しているかもしれない。 アドバンスドアイリス機能は、「切」設定、積極的に絞るオート1、控えめに絞るオート2、固定絞りの「手動」設定が選べるが、「切」設定でも十分なコントラスト感は得られている。オート1,オート2も不自然さはなくどちらを常用してもよいと思う。コントラスト感重視ならばオート1だが、ピーク輝度が寂しくなるので筆者個人としてはオート2を推したい。
発色は、キセノンランプらしい純色の鋭さが際だつチューニングで、VW60と見比べると違いは確かにある。 純色でいうと、赤に朱色感が少なく鋭い。水銀ランプでは暗い色でダイナミックレンジが狭い印象がある青が、VW200では深く見える。緑は他2色ほど大きな差異はないものの、それでも純度が幾分か増し、ダイナミックレンジが広くなった印象をもたらしている。 人肌は透明感の表現が素晴らしく、また、血の気の感じがリアルに見える。VW60も人肌はいい感じでまとまっていたがVW200の描写と見比べると若干ダイナミックレンジが狭い。 微妙な違いではあるが、確かにキセノンパワーの一端は手応えとして感じられる。 キセノンパワーを満喫するための特殊機能として、VW200にもNTSC色域を超えた色域で映像を表現する広色域モードが搭載されている。「カラースペース」を「ワイド」設定にすると、キセノンランプの表現色の最大域を使って色表現をさせることができるのだ。これもうまく調整されていて、イヤミのない自然な色合いにチューニングされている。色深度も広色域モードの方が各段に深くなる。これは常用OKだ。この機能はキセノンランプの優位性を満喫する意味でも、ぜひ活用したい。
そして、VPL-VW200のもう一つのホットトピック、倍速駆動についても触れなければなるまい。 倍速駆動とは、毎秒60コマ(60fps)で表示される映像に対し、中間フレームを算術合成しトータル120fpsで表示させ、液晶のようなホールド型映像表示の弱点である残像感を低減させようとする技術だ。最近の液晶テレビ製品にも実装例が多く、人気の技術となっている。VW200では、この倍速駆動技術をおそらく世界で初めてフロントプロジェクタに応用した。
VW200に搭載されたこの倍速駆動機能は「Motionflow」と命名されている。ソニーの液晶テレビBRAVIAシリーズにも搭載されているものと基本的には同一のものだ。ただし、VW200への搭載にあたり「フィルムプロジェクション」という新フィーチャーも盛り込まれている。 フィルムプロジェクションは、元フレームと算術合成した中間フレームとの表示をブラウン管ライクな(あるいは映写機ライクな)インパルス駆動式に表示させる機能だ。液晶テレビの残像低減技術にあった黒フレーム挿入技術を連想してもらえればイメージしやすいだろう。 「切」設定がこの疑似黒挿入なし、中間フレームの輝度レベルに応じてモードは3つあり、モード1が最も暗く、モード3が最も明るい設定となる。 実際に、このMotionflowを活用して見たが、結論から言えば、良くも悪くも、実にカスタマイズのしがいがのある機能だと感じた。 倍速駆動用の中間フレームを生成する「モーションエンハンサー」は、生成しない「切」設定、中間フレームを強く表示する「強」設定、中間フレームに元フレームの情報割合を多くブレンドして表示する「弱」設定の3段階設定が行なえるが、「強」設定の完成度がかなり高い。 今回の評価ではHD DVD版のCGアニメ「エクスマキナ」を視聴したが、字幕のスクロール、カメラのパンといった映像の基本的な動きが美しいのはもちろん、チャプタ21の、バラバラに逃げまどう群集の動きまでが非常に細かくスムーズに見せてくれたのには感動した。 しかし、ゲーム映像などにおける、フレーム単位で明滅するようなオブジェクトの描写に対しては強いノイズを伴うことが確認された。「弱」設定だと大部このノイズも起こらなくなるので気になる人は「弱」設定をお勧めするが、一般的なビデオ鑑賞であれば、概ね、「強」設定を常用しても問題ないと思う。 一方、フィルムプロジェクションは、輝度が暗くなるため、画面にメリハリ感が無くなった事の方が強く感じられ、個人的にはあまり積極活用したいとは思わなかった。
各画調モードの活用方針とインプレッションは下記のとおりだ。 VW200のプリセット画調モードは、モード名こそVW60と共通だが、チューニングの状態や画調パラメータのデフォルト値が異なっている。ソニーによれば「VW100ではしっとり感を重視した画調モードの作り込みを行なったが、よりクリアな質感を臨むユーザーからの声が多かった。VW200ではこれに応えた」とのこと。
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